東方万事屋録 The Fantasm of Silver soul   作:曙光

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「魅せろ新鋭ーー主役を気取りたいんだろうが!そのなんたるか、先人(おれ)が教えてやるから掛かって来い!」
神咒神威神楽 天魔・夜刀

銀時「敵のセリフじゃねえよな。かっけーよ」
咲夜「流石は夜刀様、パシりとは大違いよね」
アリス「……ちゃんと名前で呼んであげなさいよ」


第十六君 音楽を聴いてるといつの間にか歌っている

人間の里。

幻想郷の中心に位置する里の大通りを行く少女の姿があった。

白い帽子と服を着た、一見派手な服装の快活そうな少女の周りには、トランペットが浮遊していた。

 

彼女の名はメルラン・プリズムリバー。

一般的な名称で言えば騒霊である。

西洋のポルターガイスト。

日本で言えば家鳴りと呼ばれる存在だ。

騒霊の名の通り騒がしい事が大好きで、よくライブをする姿が確認されている。

 

彼女がここに来たのは買い物ついでに今度やるライブの宣伝の為である。

 

メルランには姉と妹がいる。主にライブ活動をするのは三人でさだ。

プリズムリバー三姉妹と言えば、幻想郷では知らぬ者はいないほどの知名度がある。

 

「今度ライブやるんでどうぞ~」

 

持ってきたチラシを行く人行く人に手渡す。

渡された人も、頑張ってね、楽しみにしてるよと返してチラシを持って帰る。

上々と顔を綻ばせていたらいつの間にかチラシが手元に無くなった。

では後は買い物だとメルランは雑貨屋に向けて歩き出した。

 

 

 

「え~と、買う物は終わりかな?」

 

雑貨屋から出て忘れ物は無いかと確認しながら通りを行く。

まだ昼間なので人通りも多い。

行く人行く人はメルランの姿を見ると気さくに挨拶してくれた。

宴会やイベントの時のムードを盛り上げる余興として呼ばれることが多く、それゆえに里の人間たちから繋がりもあった。

 

「………ん?」

 

買い物のオマケにくれた砂糖菓子をポリポリ食べながら歩いていくと、風に乗って何かを聞こえてくる。

何だと思って行ってみると、人だかりが出来ており、その中心には───

 

「……付喪神たちだ……」

 

三人の少女たちが、それぞれ楽器を弾いていた。

それだけならただの音楽活動をしているだけだが、先ほどメルランが言ったように──彼女たちは人間では無い。

 

前の道具たちが意志を持ち暴れる異変───便宜上"付喪神異変"と呼称しよう。

彼女たちは普通の和楽器だったが、この異変で自我を持ち妖怪として新たな生を獲得した。

そうして同じ様な境遇の付喪神たちと組み、細々と音楽活動をして過ごしているのだ。

 

紡がれる音楽は一言で言えば幽玄的。

和楽器特有の厳かでわびさびある旋律は、聴く人の心を穏やかにする。

事実───騒がずに静かに聴いている人しかいない。

やがて演奏が終わると惜しみない拍手が響き渡り、三人の和楽器たちはありがとうと手を振ってそれに応えた。

 

「………」

 

その光景を見て、メルラン・プリズムリバーを口に含んでいた砂糖菓子を───ガリっと─気に噛み砕いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは由々しき事態よ」

 

自宅に帰ったメルランの開口一番がそれだった。

二人の姉妹は、帰って早々に緊急会議だとダイニングに集めたメルランに訝しむ。

 

「いやメルラン、いきなり集められたと思ったら何が由々しき事態なのか説明が欲しいのだけど」

「取りあえずお茶を煎れるね」

 

対して反応を示したのは、長女のルナサ、お茶を煎れるとキッチンに向かったのは三女のリリカ。

この三人こそ騒霊楽団、プリズムリバー三姉妹。

次女メルランはうむと頷き口を開いた。

 

「最近付喪神たちが人気が出始めたのは知っているでしょう?元々和風なこの幻想郷で、和楽器はすこぶる相性がいい。このままでは、私たちの存亡の危機なのよ!」

 

ダンッとテーブルを叩くメルランを見ながらルナサはそう、と言う。

誤解無いように言うと、彼女は普段からダウナーなテンションなので別に興味が無い訳では無い。

 

「付喪神のことなら私も聞いたよ」

 

やがてティーセットを持ってきた三女リリカは手早くポットからカップに紅茶を入れ始める。

温かな紅茶の香りがメルランを多少落ち着かせた。

手早くお茶請けのスコーンを配りながらリリカは口を開いた。

 

「なんかお芝居や落語の拍子を頼まれる事が多いってさ。でも、そんな危惧する事は無いんじゃない?そもそも私らとは活動内容が違うんだし」

「甘いわ!」

 

リリカの言い分を制したメルランは否と手を出した。

 

「甘いわリリカ!お茶請けのスコーンよりべらぼうに甘いわよ!そんな余裕ぶっていると足下に爆弾が仕掛けられるわよ!」

「心臓に、じゃないのね」

「どっちもおなじよ!」

 

言い切ってからメルランはフンッと座り直す。

一口紅茶を啜ってからカップを置くと口を開いた。

 

「ともあれ、このままでは私たちの存在意義が無くなってしまうわ!ここは先輩としてガツンと言ってやらないとね!」

「なるほど分かったわ、奴らに私らの怖さを教えてやろうよメルラン姉さん!」

「妹よ!」

 

ガシリと手を組むメルランとリリカ。

ルナサは妹たちの好きにさせようと席を立ち台所に向かう。

ピタリと振り向いてからルナサは口を開く。

 

「今日ハンバーグだけど、目玉焼き乗せる人は?」

「「は~い!」」

 

プリズムリバー三姉妹。

仲睦まじき姉妹たちの夜は更けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人里の通りに人だかりがあった。

その中心にいるのは三人の少女達──和楽器の付喪神達だ。

彼女らの演奏が終わった直後、握手やサインをねだる人で溢れ返る。

幻想郷に暮らしまだ日の浅い彼女たちは、日々の活動で知名度を上げようと励んでいる。

着実に功を結び、今や幻想郷に置いてそこそこの知名度を獲得できたのだ。

今日はこんなもので帰ろうかと切り出そうとした時──

 

「はいはいちょいと失礼。そこな付喪神の人たち、ちょぉっと待ったっ!」

 

人垣を割って現れる三人の影。

その姿を捉えた時、人々は口を揃えてこう言う。

 

「プリズムリバーだ」

 

その瞬間、人垣からざわざわと上がる声。

無論、プリズムリバー三姉妹の知名度は高い。

だが里でライブの予告や買い物をするのは、何時も一人ないし二人だけだった。

ライブ以外で三人揃うなど初めてのことなのでこれから何が起こるのか。

人々の興味はそれ一点のみ。

 

「おお、これはこれはプリズムリバーのお三方、こうしてお目にかかれるのは初めてですね。わたくし、堀川雷鼓と申します。以後お見知り置きを」

 

一歩進んで挨拶したのは、一見すると風変わりな衣装を来た女性。

白いジャケットと巻きスカートを着込んだ赤髪の女性。

その後ろには、三つ巴紋のプレートが展開されたドラムが鎮座していた。

彼女こそが太鼓の付喪神──堀川雷鼓。

プリズムリバー達の噂はかねがね聞いていたので握手をしようと手を差し出した。

しかし───

 

「ええい、黙らっしゃいっ!ぬけぬけと言えたものよこの泥棒猫!」

「メルラン、それ意味違う」

 

差し出された雷鼓の手を、メルランは払い除けた。

雷鼓はなぜと言いたげな顔している。

 

「今日は付喪神(あなた達)に言いたい事があって来たのよ!私らプリズムリバー幻楽団は、あなた達に宣戦布告しをするわ!」

「はぁっ?」

 

その言葉でざわめき出す人垣達。

彼らは前々から気になる事があった。

それは、「プリズムリバーと付喪神、どっちが今後の幻想郷の音楽を司るのか」、図らずも実現した組み合わせに群集のボルテージは段々と加速していく。

 

「……いきなり意味が分からないのだけど」

「分からなくて結構、これは私たちが新人の杭を打つために来たのよ」

 

腕を組み、仁王立つはメルラン。

その後ろには囃し立てる三女のリリカと、騒ぎが大きくならないようにストッパーになろうとするルナサが静かに佇んでいた。

 

「……ふむ。仰る事は分かりました。しかし、私らはあなた方の邪魔をする気は毛頭ありません。この子達とただ音楽活動に勤しむ若輩者。先輩方の領分に口を出そうなどとはとてもとても」

 

そう言って目を向ける。

そこには事の成り行きを見守る二人の少女が佇んでいた。

琵琶の付喪神の九十九弁々と、その妹、琴の付喪神の九十九八橋。

二人は何も言わず、ただただ雷鼓に場を任せていた。

それを見た雷鼓は一つ頷くと再びプリズムリバーたちに目を向けて口を開いた。

 

「そういう訳で、今日はお引き取り下さい。勝負がしたいのならお受けします。が、流石にここで騒ぎを起こす訳にはいきませんので───」

「舐めた口言ってんじゃないわよ小娘ぇっ!!」

 

ダンと足を地面に叩きつけ、指を差し恫喝するメルランは雷鼓の声を遮った。

 

「こちとらなぁ、「妖ヶ夢」が発売された2003年から十年以上も二次創作で音楽キャラやってきたのよ!それを「輝針城」が出て二年も経っていないポッと出の新参にグチグチ言われる筋合いは無いのよォォ!」

「メルラン落ち着いて、途中からおかしくなってるから」 

 

もはや止められない流れになってきた。

このままでは人里で大喧嘩に発展してしまう。

ルナサは暴走する妹を止めるために一歩進み出ようとした瞬間───

 

「お~い。なにグダグダあふあふ騒いでんだてめぇら。近所迷惑だ余所でやれよ」

 

人垣を割って一人の人間が割り込んできた。

 

『………』

 

ルナサも、メルランも、リリカも、雷鼓も弁ヶも八橋も人垣達も、突如として割り込んだ男を見た。

銀色の天然パーマ、腰に木刀を差し、死んだ魚の目をした男。

その男は小脇に抱えた菓子袋の中身を食べながら、さも面倒くさそうにこの場を見渡していた。

 

「───誰よあんた?」

 

その中で口を開いたのはメルランだけ。

男は口の中に入っていた大福を飲み込み口を開く。

 

「坂田銀時、最近ここらで万事屋をやってるもんだ」

「万事屋?」

「……あ!新聞で読んだわ!最近幻想郷に来たって言う侍の」

 

ポンと手を叩いてリリカが言うや、ザワリと空気がざわめいた。

最近何かと話題になっている侍が、プリズムリバーと付喪神───二組の喧嘩に首を突っ込んだ。

群集はどうなるのかと固唾を飲んで見守っていく。

 

「で?その侍が何か用なの?」

「いや、用ってもんじゃねぇさ。あんたらがゴダゴダやってるから何とかして欲しいって頼まれたんだ。せっかく休みだから食べ歩きしてたのによぉ」

 

頭を掻きながら、銀時は最後の大福を口に含み、クシャクシャと袋を潰すと、それを懐に仕舞いこむ。

 

「…………。要するによ、お前ら音楽の派閥で喧嘩してんだろ?どっちが今後注目を浴びるか、それを決めたい訳だ」

「………まぁ要約すれば」

「私たちはどっちでもいいですけど」

「じゃああれだ。この勝負、俺に預けろよ」

「「はぁっ!?」」

 

粗食し終えた大福を飲み込んだ銀時の提案に、メルランと雷鼓は口を揃える。

同時に群集のボルテージは最高潮。

そんな空気の中でも、坂田銀時は懐から何かを取り出した。

 

「さっき言ったように、俺は報酬さえ払えば何でもやる商売やってんだ。ここは第三者の俺に預けて、どっちが優れているか勝負しねぇか?」

 

ぱぱっと手早く渡したのは名刺だ。

鈴奈庵で印刷して貰った紹介用の名刺を、ルナサと雷鼓に手渡した。

 

「……で?あんたは私らのゴダゴダにかこつけて商売しようって訳?」

「平たく言えばそうだな。どっちみちお前らは衝突するんだ。なら早めに決着つければよしだ。どうよ?」

「………」

 

確かに、このまま言い争っていたら平行線を維持していた。

ならば第三者の銀時が仲介に入るのも道理だろう。

銀時本人は仕事を見つけたという認識でしかないが。

 

「分かりました。あなたに審議をお願いします」

「決まりだな。そっちはどうよ?」

 

問われて数瞬目を閉じて、堀川雷鼓は意を決したように静かに目を開けた。

 

「こっちもOKよ。いずれこうなるなら早めが良いわ。二人も異論は無いわね?」

 

二人の付喪神に目を向ける。

弁々と八橋も、雷鼓の言に異議なしと頷いた。

 

「よ~し決まりだ。依頼者はあんたら二人でOKだよな?」

 

頷くメルランと雷鼓。

それを確認すると銀時はまた懐から黒白の物体を取り出した。

パチュリー・ノーレッジが制作した遠距離通信端末の宝石。

少したって、宝石に顔を近付けた銀時は口を開いた。

 

「あ、レミリア?俺俺。……いやオレオレ詐欺はまだ幻想入りしてねぇだろ。仕事取ったからさ、明日紅魔館使わせてくれよ。……え?いいじゃん仕事だし、お前も面白いもん見れるぞ。……ああ分かった分かった。今晩のデザートは俺が作ってやっから。じゃあよろしく」

 

やがて通信が終わり、銀時は六人を見渡した後に口を開いた。

 

「アポ取れたから、明日昼頃に紅魔館に来いよ。報酬云々はその時に話すから」

 

それじゃと踵を返し銀時は去っていく。

後に残されたのは、ただ呆然とその後ろ姿を見送る群集だけだった。

 

 

 

 

 

 

「はいそんな訳で始まりました!プリズムリバー幻楽団対付喪神楽団の世紀の戦い!司会進行は、大体この手のイベントなら高確率……というか全て任される。清く正しい射名丸文と───」

「作者曰わく、この作品の私のポジションはブレイブルーのココノエとFateの遠坂凜を足して二で割ったものらしいわ。解説のパチュリー・ノーレッジよ」

「───何これ?」

 

翌日。

紅魔館の一室を改造した特設会場に集められた俺たち万事屋と六人の音楽組。

アリスは、突然なんだと言いたげな顔をしていた。

 

「依頼があるからって来てみれば、この二人のテンションの高さは何なのよ」

「最近出番無かったからはしゃいでんだろう。カーニバルファンタズムの佐々木さんみたいなもんだ」

「例えがおかしいわ!確かにおかしかったけども!」

 

さて、アリスのツッコミも聞けた所で周りを見渡す。

この部屋、咲夜の能力で広くしたらしい。

元は俺たち十三人では狭いくらいだが、今や少人数のパーティー会場くらいの広さだ。

咲夜の能力は時間を操る能力。

それは空間を操る事に等しいらしく、この能力で屋敷の拡張を行っている。

見た目的にはそう変わったように見えないが、中に入るとべらぼうに広くなっていることがある。

ドラえもんの空間系の秘密道具みたいなもんだ。

 

「銀さん。本日は特ダネの提供をありがとうございます」

「おお、ちゃんとネタ代払えよ」

「発行部数の四割でしたね。任せてくださいよ、フフフ…」

「お主も悪よのぉ、ふははは…」

「汚い社会のやりとりを見た」

 

レミリアの言葉でさて、と件の二組に向き合う。

プリズムリバーと付喪神。

両者はやや緊張した面持ちだが、問題無いと俺の方を見た。

 

「報酬は負けた方が払う事。現金なり価値あるもんなら何でも良いぞ。異論は無いな?」

「「無いわ」」

 

代表の二人、ルナサ・プリズムリバーと堀川雷鼓は頷いた。

 

「ルールは特に無いが、審査方法はこちらで決めといた。各々ベストを尽くせよ」

 

悪魔の館───紅魔館。

ここに二大音楽団の戦いが切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

前日から勝負方法はどうするか考えて、最初は面談でいこうとなった。

対決の為の前哨戦みたいなもんだ。

初めて会うやつがいるから顔を覚える意味も込めて企画した。

人数は俺とアリス、早苗、レミリア、後は解説役としてパチュリー。

咲夜は──茶を淹れる役かな。

 

 

そして始まった面談の最初はプリズムリバー三姉妹。

企業の面接でよくある形式ではなく、円卓で囲んでするやつだ。

お茶会みたいだが、堅っ苦しいのも面倒くせぇからこうなった。

 

「まぁ楽にしろよ。これが評価になるわけじゃねぇぞ。あんたらを知る為のもんだ」

 

三十分の短い時間でどこまでいけるか分からんが、とりあえず何か話していくか。

ドバドバに砂糖を溶かした紅茶を飲みつつ、取りあえず話題を切り出そう。

 

「プリズムリバーって名前だけなら聞いた事はあるぞ。騒がしい所にしゃしゃり出るチンドン屋だとか」

「合ってるけどさ、止めてくれないその呼び方」

 

そう言うのは、長女のルナサ・プリズムリバー。

黒い服を着た、ダウナーな感じの性格は、何だかこちらのテンションまで下がってしまう。

 

「私たちは騒霊の音楽団。騒がしい所をもっと騒がしくを信条に日々活動してるの。チンドン屋とは失礼よ」

 

言うやそーだそーだと続くのは次女メルランと三女リリカ。

まぁ確かにポリシー持ってやってるんだろうけど、それ以上に聞き逃せない単語があったぞ。

 

「……今なんて言った?」

「え?チンドン屋とは失礼よ?」

「その前。具体的には最初の行らへん」

「……私たちは騒霊の音楽団?」

 

oh……。

聞き間違いじゃ無かったよ……。

騒霊ってアレだろ?ポルターなガイストの事だよな?要はポッターさんのピーブス?あんな映画だと存在をはぶられたヤツと同じ?ガドガン卿でさえワンシーンだけだけど登場してたのに。落ち着け、落ち着くんだ俺。ここは大人の対応だ。前は醜態を晒したが今回はそうはいくまい。大体ここは幻想郷。ジョジョ好きな原作者が生み出した世界。なら腐るほどスタンド使いがいても可笑しくないだろ。要は慣れだあは、あははははは!

 

「あ、あんな所で俊雄君と貞子さんが人生ゲームしてる」

 

ガタタタタタタァァァァァァァァッッッ!!

 

パチュリーがボソリと呟いた瞬間、近場に合った丁度良い壺の中に飛び込んだ。

 

『……………』

「………何だよ」

 

ひょっこり顔を出して外を見ると、意外そうな顔をしているのが五人。

必死に笑いを堪えてるのが四人。

なんだコレ既知感か?

 

「あー……大丈夫?」

 

いや止めて下さいルナサさん!

もう俺のライフ(メンタル的な)はゼロですよ!

 

「銀時あんた……」

「もしかして幽霊が苦手ですか?」

 

アリスと早苗が気遣うように聞いてくるので、なんか段々恥ずかしくなってきたぞ……。

取りあえず出ようと、よっこらしょと壺の外に出た瞬間───

 

「ふ、あははは、あはははははッ!し、白夜叉と恐れられてブイブイ言わしてた男が、幽霊を怖れる!これは傑作だわ、あーーははは───グワンッ!?」

 

俺を指差し爆笑するレミリアを一足の元に詰め寄り、パシンと頭を叩くとその頭に拳骨を挟んで締め上げる。

グリグリと万力のように締め付けると、レミリアの悲痛な声が部屋に響いた。

 

「笑い過ぎなんだよテメェはァァァッ!この頭をコンパクトに畳んで、サクラ迷宮に放置してやろうかぁ!?」

「痛い痛い痛い!!ちょっ、止めて止めて!助けて咲夜ァッ!」

「お嬢様、人の嫌がる事をやったらこうなるんですよ?ここは甘んじて罰を受けて───ブフゥ!」

「お前もちょっと笑ってんじゃねぇか

!」

「言ってて思ったんだけどさ、実際かなりシュールよねその光景。どこにホラー要素あるのよって話」

「知らねぇよ!」

「銀さん、面白い写真頂きました」

「なに良い笑顔で親指立ててんだ!その親指とカメラを粉微塵に砕いてやろうか!!」

 

 

 

 

 

 

 

「えー、仕切り直しだけど、アレは気にしなくてもいいわよ」

 

パチュリーの一声で混沌とした空気は纏まる。

レミリアは半ベソかいてるけどな。

まぁ咲夜があやしてるからいいか。

 

「で?あんたらの活動って具体的になんだよ?」

 

新たに淹れて貰った紅茶に砂糖とミルクを投入。

横で見てたアリスの胸焼けしそうな顔はスルーしながら取りあえず話題を振った。

すると答えたのはメルランだ。

 

「私達は騒霊の名の通り、騒がしい所に赴いて更に騒がしくするのが存在意義よ。その質問は、洗濯バサミは何に使うのかと同じくらいの愚問よ」

「いや洗濯バサミは他にも使えますよ。眠気覚ましとか、お仕置きとか」

「それに使うのはあんたくらいだわ」

 

早苗の言葉は置いといて、確かに愚問だったなこの質問。

騒がしくするのが騒霊なんだし、今更何するのって聞いてもアホらしい。

じゃあ何かないかと思っていると、三人の周りを浮かぶ楽器に目が入った。

 

「あんたらの楽器ってさ、バラバラだよな」

 

統一性が無いというか、何するのか分から無いというか。

ヴァイオリンとトランペットとキーボードって、ジャズかバンドかオーケストラなのかハッキリしないと言うか。

 

「私達の音楽に統一性なんて無いの」

 

すると口を開いたルナサ。

飲んでいた紅茶のカップを置いて静かに語り出した。

 

「そもそも、音楽とは何だと聞かれれば私達はこう答える。"音を出すこと"と。

音を楽しむから音楽なのよ。ただ己と周りを楽しませる。求めるのはその一つ。楽譜なんていらないし高等な技術なんて必要無いの。私達が奏でるのは、己の感情を音にしてヒトを揺さぶる音よ」

「………」

 

なるほど。確かに一理ある。

音楽の本質は音を楽しむ。

ヒトが持つ感情。

内にある感情(おと)を外に出して伝播させる。

輝夜の姫さんの琴の音を聞いた時に思ったソレを体現している。

 

「でもそれを嫌がる人間だって存在するわよ。こんな音を出したい、こう奏でたいと思っている輩にソレが通用するのかしら?」

 

いつの間にか復活したレミリアが問い掛ける。

それをメルランは頷いて───

 

「リクエストも受け付けるわよ。私達は周りが騒げればそれでいいし、特にその辺りはこだわり無いよ」

 

あっけらかんと答える。

 

ここまで纏めれば、プリズムリバー幻楽団は、当人と周りが楽しめればそれでいいっつうことか?

──この辺りはまぁ、この後の付喪神達と比較する情報にするか。

 

「じゃあ面談はこんなもんかな。最後に何か聞きたい事はあるか?」

 

時計を見るともうじき三十分になりそうだ。

多少オーバーしても大丈夫かな。

言ってすぐに手を上げたのは三女のリリカだ。

 

「好きな曲とかあったら演奏の時にやるけど何かある?」

 

───こいつ俺達が好きな曲でポイント稼ごうってハラだな。

抜け目無い奴だ。そんな手段が通るほどうちは甘く……

 

「じゃあ私、"刹那・無間大紅蓮地獄"で。……あぁそれだと和楽器の方がいいか。

"Einsatz"をお願いするわ」(咲)

「あ、ずるい!私は"Dies irae Mephistopheles"で!」(レ)

「じゃあ私は"Thrud Walkure"お願い。あ、でも最初はドラムが必要なのよね……」(ア)

「私は"Holocaust"をお願いします!あの疾走感は病み付きですよ!」(早)

「私は"Lohengrin"を所望するわ。一番耳に残る曲だから」(パ)

「ほほう。なら私は"Rozen vamp"を推します。あれは強敵感を想起させる良い曲ですよ」(文)

 

と思ったら通ったァァァァ!?

咲夜のリクエストを皮切りにどんどん自分の好きな曲を言い出したよ!

オイやべぇよ、どんどん脱線してるよ!

三人ポカンとしてるよ!つかこれ読んでる奴もポカンだよ!

 

「おいやめろっ!どんどん脱線してるぞ!もういいから次にチェンジしろォォォォッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『───すんません…』

「もういいよ。早く次いくぞ」

 

事態は収束した。

あの後も騒いでた連中は、偶然部屋の前を通った小悪魔が止めてくれた。

 

神世界(ヴァナヘイム)に逝きたい方は一列に並んで下さい」

 

……笑顔で指を鳴らすと直ぐに静まり返ったよ。

脱線すると笑顔(ちからわざ)で止めるストッパー、恐れ入るよ。

その後はプリズムリバー達は部屋から出て行って次のグループが部屋に入ってくる。

 

「じゃあ次は付喪神達の皆さん、よろしく」

 

よろしくと頭を下げたのは三人の少女。

太鼓の付喪神 堀川雷鼓。

琵琶の付喪神 九十九弁々。

琴の付喪神 九十九八橋。

 

最近付喪神に会う機会が多いよな。

確か平安時代まで妖怪と言えば付喪神みたいな道具が化けた奴が多いって言われてたっけか?

動物系が浸透したのは江戸時代始めくらいだったよな?

 

「コイツらは咲夜が詳しいわよね?」

「はい。前の下級妖怪が暴れる異変の際に会いました」

 

咲夜曰わく、とある秘宝の影響で付喪神化した道具も異変に乗じて暴れてた所に出会ったらしい。

そういやレミリアも、剣が暴れて困ったって言ってたか。

 

「あ~私その時山にいましたから麓の出来事は知らなかったんですよ。参加したかったなぁ…」

「私も知ったのは終わった後でしたから出遅れましたねぇ」

「でも規模的に幻想郷全体なんですよね?私の大幣はちっとも動かなかったんですよ?何ででしょうね」

「動きだすほど使い込まれて無かったからでしょうね」

 

早苗の疑問を、カチャリとカップを置きながらパチュリーは答える。

 

「道具とは、使い込むほど持ち主の念や思い、感情が蓄積されていく。それを核に精神と魂が形成されるの。他にも信仰が付加されて、普通の道具でも神具として奉られる。けど、捨てる際にはちゃんと供養してあげないと化けて出る事もある。これが付喪神よ」

「つまり私の大幣も、使い込まれてないから付喪神化しなかったって事ですか?」

「そうね、ただ持ってるだけじゃ使ってるとは言わないわ。使ってこその道具よ。本来"幣"は罪穢れを祓う道具だけど、先の異変で霊夢のお祓い棒は、今まで妖怪退治に使用したせいで"妖怪を退治する"という概念で付喪神化したのよ」

「あ~確かに、霊夢のお祓い棒は強かったですよ。真っ先に飛び出して暴れてました」

「そういえば咲夜のナイフはなんで付喪神化したの?」

「あのナイフは拾い物です。デザインが気に入ったから試し斬りも兼ねて異変解決に」

 

思った以上に盛り上がる。

使い込むほど道具は強くなるか……。

前にも聞いたなそんな話。

もしかしたらあの洞爺湖の仙人もその類か?

最近出てこないし、幻想郷に来てから消滅したかね。

 

「そろそろ私達も喋っていいかしら?」

 

手を上げて口を開いたのは堀川雷鼓。

やべ忘れてた。

メインはコイツらだったな。

 

「わりぃわりぃ。……あんたらも異変とやらで付喪神化したんだよな?」

「そうよ。私達はあの異変で付喪神に成ったの。本来は時間を掛けて成るものなのに、秘宝の魔力でムリヤリ付喪神にされたと言うべきかしら。私は、"これは普通の手段で成ったんじゃない。いずれこの魔力に飲み込まれる"と、外の世界の魔力を使うことにしたの」

「外の世界の?」

「私は元は和太鼓だったんだけど、外から流れ着いた太鼓──ドラムっていうのを本体にしたの。そして外の世界にいる打楽器の奏者から魔力を供給するって呪法を編み出した。使い込まれるほど使い手の魔力が蓄積されるって言う、さっき話してた方法の応用よ」

「───ちょっと待って、それだと魔力が溜まるのは外の打楽器で、あなたの方に行かないんじゃないの?」

 

ふと疑問に思ったのか、アリスは雷鼓に質問を投げ掛けた。

魔法使いは知識の探求者。

気になることは調べるのが常なんだよな。

聞かれた雷鼓は少し考えるように首を傾げた。

 

「そうね、簡単に言えば私がタンクで外の打楽器がホースよ。まぁ取り敢えず叩いて鳴らすやつならなんでもいいの。そこから使われた分の魔力が流れて来て、私というタンクに溜まる。少ない量でも、無尽蔵の供給があればかなりの量が溜まるわ。これで新しい魔力を確保した私は、他の付喪神に同じ方法を伝授したの。それがこの子達よ」

 

ポンと左右に座る九十九姉妹に肩を置く。

こいつらは言わば一蓮托生。

同じ境遇を経験した"仲間"と言うわけか。

 

「雷鼓さんには感謝してますよ。ただの道具に戻らずにこうして体を手にいられたんだから」

「そうそう。私達はただ人間に使われるだけじゃない。好きに音を鳴らせる存在になったんだからね」

 

……仲良いな。

同じ境遇を経験した奴らは団結が強いと言うが正にソレだな。

 

「さっきの話は面白かったわね。これは何かに応用出来ないかしら?」

「使い方が同じ道具の魔力を一点に集める呪法か……。使いどころが難しそうね」

 

魔法使い二人はさっきの話で盛り上がってる。

こういう研究対象で盛り上がれるのは探求者ゆえってやつかね。

 

時計を見ると十五分経過していた。

あと半分か。

次はあの二人に焦点を当てるかな。

 

「名字同じだけど、あんたら姉妹か?」

「形式上はね。同じ時期に付喪神化したから姉妹でいこうってなったの」

「ふーん。ちなみに姉はどうやって決めたんだ?」

「え?ジャンケンで───」

 

ジャンケンか。

えらく単調な決め方だな。

 

「殴り合って勝ったから私が姉になったわ」

「まさかのバイオレンス!?」

 

なんで姉決めるのにそんな過激な手段!?

他にあるだろう音楽勝負とか!

 

「そうだよ!あの時姉さん、私がグー出したのにチョキで無理矢理グーをパーにして挟んできたんだよ!」

「姉になるものとして、妹に教えておくためよ。この世には、岩を断つハサミがあることを」

「やってること完全にオーガじゃねぇか!!俺知り合いに鬼知ってるから紹介してやろうか?」

「私のこと?」

「お前は吸血鬼だろ!」

 

...もういい疲れた...。

なんか今回俺がツッコむ回数多くないか?

アリスなんか「楽でいいわ~」って顔してるし。

 

「じゃあこれでラストだ。あんたらは付喪神になった経緯は分かった。ならあんたらの方針はなんだ?」

「方針?」

「音楽やる理由だよ。プリズムリバー達は騒がしく、ないし盛り上げたいからって言ってたぞ。ならあんたらは何かあるか?」

「それかぁ、私達も大体そんな感じよ。こうして自由に動ける身体を得たんだから、好きなように音を出したい。誰かに使われるのも悪くはないけどさ、自分でやりたいようにやるの」

「ふーん……」

 

雷鼓の言うことは間違っていない。

使われる立場から自ら奏でる立場になった。

恨みを以って化生するただの付喪神とは違う、自分で音を出したいという願いがあった。

 

「ならあんたらには、人間に対して恨みとかは?」

「無いわね。そんなことよりも、自分たちの為に使った方が楽しいわ」

 

そう問うても恨み言なしにあっけらかんと答えた。

さっぱりしてるねぇ。

普通とは違う方法で付喪神になったからかね。

 

「でもさ、たまに誰かに使われたいなって思うのよ。道具だった頃を思い出して」

「雷鼓さんって叩かれるの好きですもんね」

「ちょっと、それじゃ私が変態みたいじゃない」

「叩く系の道具ってみんなそうなのか?」

「全部がそうじゃないと思うけど……。そうだ、銀時さんと早苗さんは外の世界出身なんですよね?」

「そうですね」

「俺はちょっと違うけどな」

「外の世界では優れた太鼓使いは"太鼓の達人"と呼ばれるそうだけど、その人たちの演奏って見たことある?」

「「…………」」

 

……それって多分ゲーセンのアレのことだよな?

早苗に目配せすると苦笑いしながら頷いてるし。

 

「まあなんていうか………すげえとしか言えんよな」

「あれは人間の動きじゃないですよねぇ。手元が残像出来るくらい動いてますもん」

「前に隠し難易度の「オニ」ってやつプレイしてるの見たことあるぞ、九歳か十歳くらいのガキだったけど」

「私が見たのは八歳くらいの子でした。あれが将来バンドやってたらどうなるんでしょうね」

「どうだろうなぁ。ゲームだし、実際に楽器鳴らすのとは勝手が違うと……」

「ちょっとあんたら、勝手に盛り上がってないで彼女の相手もしなさいよ」

 

アリスの言葉で会話を切ると、目の前には目を輝かせた雷鼓の姿があった。

 

「すごいわね!外の世界のドラム奏者はレベルが高そう!私も負けてられないわ!」

 

意気揚々とはしゃぐ雷鼓をがんばれと応援する九十九姉妹。

まあいいか、別に嘘は言ってないし。

本人は嬉しそうだもん。

茶を飲みながら時計を見ると、すでに時間がギリギリだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前座は終わる。

各々と対談して分かったことは、音楽をやる理由はそれぞれ同じだが、根本が違うということだ。

片や騒霊として騒がしくしたいから奏でる。

片や道具として自立する為に自ら奏でる。

 

それぞれなんのために音楽をやるのか違っても、音楽が好きだということは同じだ。

………決着は、ソイツで決めてもらうか。

 

 

「さて、本日のメインイベント!プリズムリバーと付喪神、それぞれの演奏をしてもらいましょう!」

 

文の声に張り詰める空気。

二組は互いにエールを送るために握手を交わす。

……めちゃくちゃ強く握ってるけど。

 

「では最初はプリズムリバーからお願いします」

 

面談が終わった後に咲夜が一瞬でステージを作ってくれた。

舞台は十分だが、観客が少ねぇな。

 

壇上に上がる三姉妹。

それぞれ、自分の楽器たちに指示を出すように触れる。

騒霊は触れることはしなくても音を出すそうだ。

便利そうだな。

 

「それではプリズムリバー幻楽団、いきます」

 

ルナサの合図で、静まり返る部屋。

────瞬間、空気が振動した。

 

「───」

 

それは、三人の指揮者によるオーケストラだった。

一人一人がバラバラに、思い思いの音を奏でる。

手も触れず、浮遊する楽器は主達の指示に忠実に従っていた。

 

………騒々しくも優美さを感じさせる音色。

バラバラに奏でられたそれは徐々に一体化し始める。

流石姉妹といったところか。

互いの癖や動き方を把握している。

独奏、二重奏、三重奏。

幽霊楽団による幻想のオーケストラ。

───それは、名も知らぬ誰かに当てた祈りだった。

 

「………」

 

演奏が終わる。

音楽なんて退屈なもんだと思っていたが、見当違いだったな。

人を惹きつける、と言えばいいのか。

どこまでも優雅に、自分達の音を合成した極致。

知らず、この場にいた全員は拍手をしていた。

 

「ありがとう~ありがとう!」

 

声援に応えるプリズムリバー幻楽団。

……これはかなりレベルが高いぞ。 

次の付喪神達はこれに対抗出来るのか?

ちらりと横を向くと、同じように拍手している三人はまったく気後れしていなかった。

 

「それでは次は付喪神の方々、お願いします」

 

プリズムリバーが壇上から降りたのを確認すると、文は三人に声を掛ける。

呼ばれた若き付喪神達はみな壇上に上がり始める。

 

「さぁいざ鳴らせ太古のビート!雷鳴轟かせていざ行かん!」

 

スティックを回しながら高らかな声を上げた刹那───再び空気が振動した。

 

それは嵐のような旋律だった。

三つ巴紋のプレートを叩く度に比喩では無く紫電がバチバチと走る。

………命の躍動だと、そう思った。

身体に響く8ビートが血液に波紋を浮かべるイメージが頭をよぎる。

気が付けば、無意識に指や足がリズムを刻んでいた。

 

横を見る。

皆一様に指を叩き、足を鳴らす。

雷鼓のビートが無意識にそうさせていた。

あれはドラマー(うらかた)と同時に指揮者だ。

あの音は、生物の中にある衝動を掻き立てるそれだ。

聴いている者の蛮性を表層に出す───始原のビート。

 

弁々と八橋も、雷鼓の旋律に身を任せ、思い思いの音を出す。

琴と琵琶。

雅楽器の調律は、雷鼓の旋律で徐々に噛み合っていく。

決して雷鼓の一人舞台ではない。

むしろ、活躍の場を与えるように鼓舞していた。

 

───飛び散る汗は命の証。

 

私達は生きている。私達はここにいる。

 

名も知らぬ誰かに当てた命の鼓動。

付喪神の音楽とは、言葉にすればそんなところだ。

 

 

───そうして演奏が終わった。

俺達は拍手を打って演奏を称える。

それに応える彼女達の笑顔は、汗と相俟ってとても輝いていた。

 

「───さぁ、演奏も終わったことで、いよいよ結果発表といきましょう!」

 

文が忙しく巻き立てるが、ここで一つ問題が出来た。

 

「………決められねぇ」

 

決められないんだよ。

二組の演奏は、音楽に疎い俺でさえも聞き惚れる程だ。

これを決めるなんて酷なもんだ。

 

「これは正直迷いますね」

「どっちも捨てがたいわ。心を震わす、という点なら互角よ」

「方や心に響く静の音なら、もう片方は魂を揺り動かす動の音。……私なら両方選びたいわ」

「それだと裁定にならないわよ」

 

口を開いたのはメルランだ。

元々、どちらが優れているかを俺達が決める筈だったのに、いつまでも決めかねない事に苛立ち混じりの声を出してる。

 

「結局、こうなるのね。そも音楽で決着を着けようなんて発想からずれていたのよ。それよりももっと手っ取り早い方法があるわ」

 

言って取り出したのはカード。

スペルカードだ。

 

「後腐れも無いし、大体殴り合えば何でも解決するのが幻想郷のしきたりよ」

「………致し方ないわね。平和的に解決出来れば良かったけど、やっぱりこうなっちゃうか」

 

ふわりと、雷鼓は自らのドラムに乗り込む。

……不味い、俺達が決めかねたせいで闘う事になったぞ。

 

それに応じるように弁々が、八橋が、リリカが構える。

ルナサは乗り気ではなかったが、渋々といったように構えた。

求めるものは完全決着。

勝者と敗者を明確に分けることだった。

 

「ちょっとここで暴れないで!誰が掃除すると思ってるのよ!」

「お前じゃなく咲夜だろうがよ」

 

レミリアが怒鳴るが、もう俺達では止められない。

そう思われた時───

 

「待ってください!」

 

意外なところから救いの手が差し出された。

 

乱暴に開かれた扉から入ってきたのは十数人の若者たち。

人里のやつらか?

 

「自分達はプリズムリバー幻楽団と付喪神楽団のファンです!お願いですから争わないで下さい!」

 

そう名乗る先頭の男とそれに頷くファンのやつら。

いきなり現れたこいつらに、場の張り詰めた空気は完全に緩んだ。

 

「───つかあんたら、ここはいま立ち入り禁止だぞ。勝負の結果は新聞で知らせるからって」

「いても立ってもいられず、危険覚悟で来ました」

「美鈴はどうしたのよ!?あの子には今日誰も入れるなって言ってたのに!」

「あぁあの人、なんか木人形相手に「陀羅尼孔雀王ォォォォッ!!」って叫びながら拳を叩き込んでいましたよ。自分達はその隙に入りました」

「───咲夜、今日の晩御飯はあの子だけコッペパンね」

「かしこまりました」

 

美鈴……。

あの馬鹿なにやってんだよ……。

 

「プリズムリバーさん、付喪神さんたち、俺達はあなた達の音楽に元気付けられました」

 

が、それにかまわず男の口が開く。

 

「あなた達の奏でる音楽は趣きは違えども、人の心を打ちます。毎日仕事とかで気分が落ち込んでも、あなた達のその音で、元気を貰いました。里のみんなはどっちが勝つかで盛り上がってますが、自分達は──そんな気分では無かった」

 

男は拳を握り締める。

 

「ただ、あなた達が争って欲しくない。同じ志を持ちながら相争うことなんて望んでないんです!」

 

そう言って頭を下げる男達。

ちらりと横を見れば、メルランと雷鼓はどうしようという顔をしていた。

 

「メルラン」

 

そう言って肩を置いたのはルナサだ。

 

「この人たちの言う通りだよ。私達はどちらが優れているかなんて争ってたけどさ、ぶっちゃけどうでもいいのよそんなこと」

「…………」

 

メルランは何も言わずに俯く。

何を口に出せばよいのか解らない顔をしていた。

 

「……私も熱くなり過ぎたわね」

 

その時、雷鼓の口が開く。

 

「プリズムリバーのお三方。貴女方の演奏、感服しました。私達の演奏など若輩の至り。この勝負、貴女方の勝ちです」

「──何言ってんのよ」

 

雷鼓から出たのは自らの敗北宣言。

しかし、先達に手向けたそれを、メルランは否と返した。

 

「あんたらも凄かったわよ。泥臭い程真っ直ぐな演奏よ。一生懸命なやつの汗って、あんなにも綺麗だなんて思って無かった」

「────」

 

メルランも向こうに賛辞を送る。

それは両者の健闘を称える言葉だった。

──つまりこれは、両者が敗北を認め、両者が相手に勝利を譲ったと言うことだ。

 

「……決まり、だな」

 

この勝負は───

 

「みんな引き分けで異議は無いな?」

『異議な~し』

 

それと同時に二組を称える惜しみない拍手が巻き起こる。

三者二組は互いの労うように握手を交わした。

最初の刺々しさが無くなり、良い笑顔してるじゃねぇか。

 

「──あ、そうだ。依頼料のことですが……」

「あぁそれ?今回は無しでいいよ。元々こっちからふっかけて、審判も曖昧にしちまったからさ。まぁ口コミとか頼むわ」

「ですが……」

 

尚もルナサは食い下がる。

律儀なやつだねぇ。

絶対こいつ苦労人タイプだわ。

しかし、確かにここまでやったのに何も無しじゃ示しつかねぇな。

 

「──じゃああれだ。こうして仲良くなった記念にさ──あんたら一緒に演奏してくれねぇか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文々。新聞 

第129季 水無月の二

 

「プリズムリバー対付喪神。夢の音楽合戦!」

 

先日、人里で一つの騒動があった。

楽器の付喪神達が里で演奏をしていた時、突如乱入してきたのはプリズムリバー幻楽団。

曰わく、今後の幻想郷の音楽を司るのはどっちだという、プリズムリバー幻楽団が一方的に難癖つけて来た騒動だが、場は一触即発。

そこに一人の男が現れた。

万事屋を営む、侍の坂田銀時だ。

彼は両方の裁定役を買って出て、ひとまず場を治めた。

後日、紅魔館で対決の段取りを整えたところを私射名丸が取材することとなった。

 

まずは面談という形で、各々の音楽に対する考え方を発表。(対談のトピックは次ページに掲載)

この時、銀時さんは幽霊が怖いという、ある意味人間らしい反応を見せてくれた。

本人は隠そうとしていたが、すでに遅かった。

 

そして本番の音楽対決。

どちらも退かない鮮やかな演奏を見せてくれたが、判定に困るという事態が発生した。

これに憤ったメルラン・プリズムリバーの反応で、あわや乱闘になるかと思われたが、突如人里のファンの方々が止めに入り、

 

「喧嘩をしないで仲良くして欲しい」

 

という懇願を聞き入れ、事態は収束した。

最後に銀時さんからの提案で、二組による合同ライブが実現。

 

静と動、二つの音が交差するコラボレーションが会場を熱中させた。

 

坂田銀時率いる万事屋は、このように人妖問わず依頼を引き受け解決してくれる何でも屋であり、この記事をお読みの方で何か悩みがある方は、一度お立ち寄ることをお薦めします。

 

文面 射名丸 文

 

 

 

 

 




グダグダ座談会 時のオカリナ

銀八「新年明けましておめでとうございます。本年度も東方万事屋録をよろしくお願いします」
レミリア「と言っても、もう二月よね」
銀八「あ、お前言うなや~」
アリス「一月に更新出来なかったけどなんかあったの?」
銀八「ちょっと構成に行き詰まってさ、あとは白神さんとデート・ア・シルバーソウルの今後について相談受けたり、龍が如くクリアして、絶対絶望少女クリアして、カプセルサーバントにドハマリして、聖☆おにいさん読んでたりしてた」
早苗「ほとんど遊んでますよね?」
銀八「バカやろう、ネタ集めだよ。そう言えばゴッドイーター2 レイジバーストもやるつもりだからな。素材集めで忙しいし」
アリス「マヨマヨファンタジーに叩き込んでやろうか」
レミリア「新武器の鎌が超楽しみ。てか半年で事態が一変するって早くない?」
早苗「ジュリウスさんも大変なんですよ。PV見ましたけど、ラケル博士のラスボス感が半端なかったです」
銀八「あれだろ?精神攻撃仕掛けてくるっぽいし、仲間割れを期待してんじゃね?」
アリス「私は大車討伐ミッションの頒布を希望するわ」
早苗「嫌われてますね大車。でも極東が舞台なのに日本ゆかりのアラガミが少ないですよね」
銀八「三貴神出したからもういいやってスタンスじゃねぇの?キュウビ出したんだから鬼とか天狗も出していいと思うんだけど」
レミリア「オウガテイルの突然変異種とか、サリエルの突然変異種なら何とか……」
アリス「ねぇ、今回ゴッドイーターの話だっけ?」
銀八「いいんだよ何でも。そもそもこの後書きは、作者の思うままに書いてるから脱線しやすいから。グダグダと喋るのがこの座談会だよ」
アリス「相変わらず身も蓋もないわね」
銀八「とりあえず今回はこんなもんで。質問感想お待ちしてます」
レミリア「それでは皆さん、アウフ・ヴィーダゼーン!」
三人「ジークハイル・ヴィクトーリア!」
アリス「……今回はレミリアが〆?」
銀八「ランダムでやろうかなって思った結果だよ」

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