東方万事屋録 The Fantasm of Silver soul   作:曙光

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「人間はどんなところでも学ぶことができる。知りたいという心さえあれば」
11eyes 広原雪子

パチュリー「学習する事は進化の糧よ。知識が多ければ、それだけ幅が広がるわ」
銀時「パッチェさん。俺なりに賭博のデータ取ってきたんすけど、確率ってどう出すんすか?」
パチュリー「あなたの場合は進化じゃなくて退化ね。人としての」



第十八訓 そうだ、冥界に行こう

───冥界。

この単語を聞いて何を想像するか。

死者が行く世界……なるほどそれが一般的な認識だ。

人は死してどこに行くか。

これは古代より人類が考えてきた問題である。

 

ある者は死者しか立ち入れない異界に行くと言う。

ある者は生前の行いの裁きを受けると言う。

───どちらも正しい。

それは、数ある宗教の中で共通した事柄だった。

 

取り分け日本の死後のシステムは、神道と仏教、そして道教の概念が混成されていると言っても良い。

死後は閻魔の裁判を受け、罪有りとされれば地獄に墜ちてその罰を担う。

罪無しとされた魂は冥界に行き、成仏して涅槃に逝くか、転生をして新たな生を歩むまでを幽霊として冥界に暮らす。

 

……だが、この冥界というものはそれすらも躊躇わせるほど魅力的な世界だった。

静かだが四季が豊かで、春に桜が咲き乱れ、秋には紅葉で美しく染まる。

 

しかしここは死者の世界。

そこに住まう虫も鳥も獣も植物も、全てが幽霊──ゆえに、声という声は無く、静かで華麗な常世の国。 

その道を歩く四人の姿があった。

 

 

 

 

 

「………」

「見てくださいよ銀さん、幽霊がまるでメダカのように飛んでますよ」

「………」

「いつ来ても静かねここは。てか現在進行型で生きてる私達が入ってもいいのか疑問だけど」

「………」

「それなら私達はすでに死んでるのかしら?」

「こうして喋れるなら生きてますよ。幽霊は基本喋りませんし」

「…………………………なぁ」

 

足を止めて先に進む四人に声を掛ける。

早苗とアリスとレミリアと咲夜は、同じように立ち止まってこっちに顔を向けた。

 

「お前らさ、何でそんなに陽気なの?ここ冥界だよ?言わば無間穢土みたいなもんだろ?もう東征なんてかなぐり捨てて帰ろうぜ」

「別に一年中秋って訳でもないでしょう。ここにはちゃんと四季があるわよ」

「いやそうじゃなくてさ……」

 

──数日前に遡る。

万事屋に一人の来訪者が現れた。

八雲藍。

紫の式神が伝言があるとやって来た。

 

「先日のお詫びにと、幽々子様が一席設けたいからぜひお越しくださいですって」

 

と、あの決闘に対しての詫びがしたいから家に招待すると藍は伝えた。

 

俺は別に気にしてないがレミリアがやたら乗り気だったな。

そういえばあれ以来妖夢にも会ってないし、様子見ついでにお呼ばれされてみるかと誘いに応じた。

 

──さて、冥界に向かうには空を飛んで行かなければならないそうだ。

無縁塚から行けると前に聞いたが、生者があそこから冥界に行くには絶対に無理と言われた。

しかし、上空から向かうルートは生者と死者を分ける境界が緩いという。

なのでそこから侵入する事になった。(というか全員がそこから通るしか無い)

といっても、俺は空を飛ぶ事は出来ない。

河童が改造したバイクには、空を飛ぶ機能が付いているのでそれを使う事になる。

早苗は手を叩きながら「デロリアン号みたい」とはしゃいでたけどな。

 

でもこれって、江戸で言えば宇宙船が空飛ぶのと同じ技術だよな?

ファンタジー世界でこんなもん作っていいのか疑問だが、早苗が言うには──

 

「実現していない科学も幻想のカテゴリーに入るみたいですよ」

 

そう語ってくれた。

なるほど、発達し過ぎた科学は魔法に等しいってやつかね。

ホバークラフトみたいに空を飛ぶバイクに乗り冥界に入り、入口近くにバイクを停めて幽々子達の下に向かうが──俺は途中で心が折れ掛けた。

 

冥界っていうからもっと薄暗い所かと思ったがそんな事はなかった。

澄み渡る青空と木々が現実感を無くす。

──幽霊(スタンド)達がうようよいる事を除けばな。

典型的な人魂が列を成して進む。

空を舞う。踊る。遊ぶ。

先程から気分が落ち込んでいるのは主にこれが原因だ。

 

「ほんとにあんた幽霊苦手ね。まぁ外来人らしいちゃらしいけど」

「怖くありませ~ん!何言ってんのお前怖い訳ないじゃん!俺はやろうと思えばジェイソンフルボッコに出来ます~!そしてスタンドと呼んでください!」

「ジェイソンは幽霊じゃ無いわよ~」

 

くそう、ここぞとばかりにいじって来やがって……。

慣れよう慣れようと思っても根本的に無理だよちくしょう!

誰だよ冥界なんて概念創ったヤツ!死ねよほんと!

……もう死んでるか。

 

「大丈夫ですよ銀さん。私も最初は慣れませんでしたけど、よくよく見ると結構可愛いですよ。これをデザートにすればどうなるのとか」

「毒にも薬にもならねぇよ。捨ててきなさい」

 

捕まえてきたスタンドを見せてきた早苗を手で追い払いつつ早足で進む。

……そうだ、何もスタンドと思わなきゃいいんだ。

これはマシュマロだ。

マシュマロと思えば怖くねぇ。

いや怖くねぇけど一応な?

 

「なんだ単純な話じゃねぇか。よしそうと決まったら善は急げだ。おらお前ら早くいくぞぉ!」

「勝手にビビって勝手に元気になってるわね」

「人はああやって心の安寧を図るのよ。そっとしときなさい」

「うるせぇよテメェら!!」

 

後ろでグダグダ言ってる奴らを無視して先に進もうと駆け出す。

そうだ、森羅万象の全てはマシュマロだ。

そう思えば心が軽い、こんな気持ちは初めてだ……もう何も怖くない!

 

「いらっしゃ~い」

「ギャアァァァァァァァァァァァ!!」

 

掛け出して数瞬、突如頭上から逆さまに降りて来た誰かが俺達の前に現れる。

我ながら、よくこんなデカい声出せたなと思う声量が冥界の空に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

「いや~、大成功よ。ここまで驚いてくれるとやりがいがあったわね~」

「幽々子様……流石にやりすぎでは……」

「何言ってるの妖夢。幽霊は人を驚かせてなんぼでしょう?」

「そうでしょうけど……」

 

いたずらが成功した子供のように笑う一人と呆れながら諫めようとする半人。

まんまと引っかかり、無様な様を見せた俺は死にたいくらい恥ずかしかった。

どんまい、と咲夜が肩に手を置いてくれたけど慰めにならねぇよちくしょう!

 

「──さて、遊びはここまでにしますか」

 

切り替えたように花模様で彩られた青い着物を直し、俺達に向き合う女が口を開いた。

 

「ようこそ坂田銀時さん。改めて自己紹介しましょう。私が冥界──白玉楼の管理者、西行寺幽々子よ」

「どーも、万事屋銀ちゃん幻想郷支店オーナーの坂田銀時で~す」

 

……第一印象としては雪、または桜を想起した。

触れれば散ってしまいそうな儚げな雰囲気──

しかし、確かな存在感がそこにはある。

前に行ったスタンド温泉のレイが暗中の光なら、幽々子は陽光に照らされた雪月花と言った所か──

 

「どうしたの?」

「……いや、あんたが綺麗だったからつい見惚れてね」

「まぁお上手だこと」

 

扇子を口に当てコロコロと幽々子は笑った。

──本当にスタンドなのかと思えるくらいの貴人特有の、楚々としながらも無邪気な表情。

輝夜の姫さんみたいだが、こっちはゆらりとして掴み所が無い。

 

「───いてっ」

 

脚に何かが突き刺さる感覚があったから何事かと視線を落とすと、レミリアが爪を立てながらこっちを睨んでいた。

 

「何すんだよ」

「べっつに~」

 

ぷいと顔を逸らして素知らぬ顔をされた。

……ったく、分かんねぇガキだな。

 

「……お久しぶりです銀時さん」

 

ここで俺に話し掛けてきたのは魂魄妖夢。

若干の申し訳無さを顔に出しながら一歩前に出た。

 

「……おう、お前さんもう怪我は大丈夫か?」

「……おかげさまでピンピンしてますよ」

先日殺し合ったという、なんとも奇妙な事があったせいか、照れ臭いようななんというか、俺達に妙な間があった。

どう話し掛けたらいいか検討がつかねぇな。

 

「おうおう、うちの居候を傷もんにしおって、どう落とし前付けてくれるんじゃコノヤロー!」

「どこのヤクザだよテメェは」

「痛いっ!」

 

どこからか取り出したサングラスを掛け、質の悪いチンピラのように詰め寄るレミリアの頭をバチンと叩いた。

 

「何するのよっ」

「恥ずかしいから止めろって。妖夢も被害者だし、互いに生きてたんならそれでいいじゃん。俺はこの後のメシですべて忘れるつもり

だから」

「そう言ってくれるとこちらもありがたいわ。さぁさ案内するわ。紫も待ってるわよ」

 

……来てるんだなあいつ。

進展について聞いておきたいし、早くいくかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

冥界の並木道を歩く。

立ち並んでいるのは全て桜の木だ。 

春になればさぞ立派な桜並木になっているだろう。

 

「もう少し早かったら桜も見られてたのに残念だったわねぇ。……さぁ、見えて来たわよ」

 

十分くらい歩いてその建物が見えた。

結論から言わせて貰えば、ただデカい。

幕府高官の屋敷が何十と入るくらいに巨大だった。

塀の端がまったく見えず、地平線の彼方まで続いているように思える。

──白玉楼。

それがこの屋敷の名称らしい。

 

「ようこそ、万事屋御一行様」

 

入口で出迎えたのは八雲紫と藍。

門前に立って俺達を迎えてくれた。

 

「よう、今度はセサミンでも使ってんのか?」

「あなたさ、一回しばき回されたいの?いつもいつも会う度にその手のネタ振ってきてるけど」

「だってお約束じゃねぇか」

「そのお約束ごと塵に帰されたい?」

「冗談だよ」

 

一通り弄りまくるとふと藍の後ろに誰かがいた。

確か化け猫の橙だったか?

 

「よう元気か?」

「………………」

 

声を掛けても橙は返事を返してこない。

 

「お~い」

「シャッ!!」

 

続けて声を掛けると、牙を見せて威嚇して来た。

橙はそのまま屋敷の奥に消えていく。

それを見届けてから藍が口を開いた。

 

「ごめんなさいね。あの子、あれ以来あなたを目の敵にしてるのよ」

「そりゃ無理やり連れて行ったもんな。仕方ねぇか」

 

多少強引だったけど連れてこいが依頼だったし、素直に付いてこないあいつも悪い。

 

「まぁ積もる話は後で、早速座席まで案内するわ」

 

紫の先導で屋敷の門を潜る。

年期が入っていながらも、どことなく新しい感じがする屋敷の中には、あっちゃこっちゃと忙しく動き回るスタンド達がいた。

 

「──仙望郷みたいだな」

「あら、なにそれ?」

「スタンド専門の温泉宿だよ。この世に未練を残したスタンド達をもてなしてるのさ」

「へぇ、そんな面白いものがあるのね」

「信長とか光秀とか秀吉とか家康とかザビエルにも会ったよ」

「岸波白野も来てたの?」

「そっちのザビエルじゃねぇよ」

 

ツッコミを入れていると大広間に辿り着く。

大広間から見える庭は、枯山水と玉砂利で敷き詰められた日本庭園の姿だった。

 

「白玉楼とは中国、唐の詩人「李賀」が臨終する際に天帝の使いが「その才を披露して欲しい」と彼を連れて行き召し抱えた天上の宮殿。ゆえに文人や歌人が死後に行く建物なの。──まぁ、歌人に限らず才能ある魂も招いているけど」

 

座席に座りながら幽々子は言う。

つまりここにいるスタンド達は生前それなりに才能があったヤツって事か。

死んだ後も就職が大変なんだねぇ。

 

「では私達は食事の準備をして来ます」

「私も手伝うわよ」

「あぁ助かる。仕込みさえすれば後は幽霊達がやってくれるわ」

 

妖夢と藍が席を立ち、咲夜もそれについて行った。

 

「じゃあ私達が先にお酒でも頂いておきましょうか」

 

残された俺達は、紫がスキマから出した酒を振る舞われる。

杯に並々と注がれた酒は、底まで見えるほど透明だった。

一口飲むと、何とも言えない清涼感が喉を潤す。

──ああ美味ぇ。

 

「いい飲みっぷり。もう一ついかが?」

 

紫からの手酌に杯を出す。

再び酒が注がれた所で幽々子が口を開いた。

 

「………先日はうちの妖夢が御迷惑をお掛けして申し訳なかったわ。この程度の謝罪で済まされる問題では無いけれど」

「あぁその話?別に気にしてないぜ」

「私は気にするけど」

 

話題は先日の決闘。

妖夢の軽率な行動により起こされた事態についての謝罪。

俺は特に気にしてないが、レミリアは不満そうに唇を尖らせた。

 

「私を辱めた罪は、万死でも償えないわよ。その程度の謝罪で満足すると思ってるの?」

「止めろ止めろ、済んだ事だ。これ以上荒立てる必要はねぇよ」

「でも……」

 

まだ言いたい事があるとレミリアは言いたげだが、俺は首を横に振って制した。

 

「悪いのは妖夢をけしかけた神坐ってやつだろ。そこんとこ汲んでやんな」

「……………」

 

一応は納得したのか、レミリアはそれ以上何も言わなかった。

 

「それについてなんだけど──あなたの世界、後少しで見つかりそうなのよ」

 

それに口を開いた紫の言葉は、俺の世界についての進捗についてだった。

 

「と言っても、後は鍵一つで扉が開くような状況ね」

「……どういう事だよ?」

 

うむと頷いて紫は語り出した。

 

「端的に言えば痕跡よ。時空と言うものはねじ曲がっている。そこからたった一つの世界を探す為には、その世界から来たっていう痕跡が必要。先日来たあなたの知り合いの痕跡から辿ろうと思ったけど遅かったわ。すでに消えて掴めなかった」

 

つまり、猟犬を使って動物の後を追おうにも、すでに痕跡が無いからか追えないって事か。

 

「今は直ぐに痕跡が掴めるように私の知人が見張ってるわ。あなたの世界の人が来ても、直ぐ反応が出来るわ。後はこっちの物よ」

 

せせら笑う紫に、そうかいと言って酒を一口飲んだ。

──もう少し…か。

案外時間が掛かるもんだな。

 

「ところで、神坐という男はご存知なの?」

「知らんね。皆目見当がつかねぇよ」

「そう、ならあなたの世界に呪術的な組織は無いのかしら?」

「呪術?」

「魔術、妖術の類を使う組織よ。妖夢から聞いたけど、その男は明らかな魔を操る術を持っている。ならそこから当たろうかなと思ってるのよ」

「…………」

 

そう言えばパチュリーもんな事言ってたな。

こと妖魔を拘束、使役する道具だとか。

それなら──

 

「……結野衆と巳厘衆って言う陰陽師の大家があるぞ」

「陰陽師…か。なるほど分かったわ」

「やっぱり神坐を探すのか?」

 

問い掛け、紫は頷いた。

 

「幻想郷を手に入れる、なんて蒙昧を吐く以上は見過ごせないわよ。それにね、幻想郷は妖怪、ひいては幻想の為の世界。人間が支配するという事がおこがましいのよ」

「──それなら人間なんていらねぇんじゃ無いのか?ただ妖怪が暮らすだけの世界なら」

「妖怪の存在を信じて、それを伝えるのは誰だと思う?」

「……人間か」

 

答えると紫は頷いた。

 

「摩訶不思議な現象に遭遇した際、人間が取る行動は二つ。一つは記録を残す事、もう一つは体験した事を人に話す事。そうしてその土地の伝承や伝説を照らし合わせ脚色し怪談を創る。まぁ、妖怪って言うのは──超常現象の擬人化よ。人間を越える存在でありながら、その実人間に生み出された存在。この世の不思議は、妖怪達の仕業とされたかの時代は、文明の発展と共に腐り落ちた」

「………こっちで言う天人襲来か?」

「そう、海の向こうから来た国がもたらした文明と文化に、人々は徐々に受け入れた。──そして、先進国に追い付かんと妖怪と神(われわれ)を科学で暴き、迷信として切り離した。生み出した人間達から否定されれば、妖怪は存在を保てないからね」

 

ふっ、と片肘を突きながら紫はさらに言葉を紡ぐ。

 

「そして私は、「このままでは妖怪という存在が淘汰される」と危機感を覚えてね。この幻想郷を外の世界から隔離する事に決めたのよ。当代の博霊の巫女と協力して、外の世界の"幻想を否定する力"を"幻想を肯定する力"に変える結界を張ってね。これが博麗大結界。これで外の世界で必要が無くなった概念や道具が幻想郷に辿り着くってわけよ」

 

……難しい事は分かんねぇが、要はだだっ広い野原に円を描いてその中に引きこもってるわけか。

それで特定のヤツしか入れないっつう事だな。

 

「勿論、問題が無かった訳では無いわよ。結界を維持する為には幻想を語り継ぐ人間の存在が重要になった。だから妖怪はやすやすと人間を襲えなくなったし、人間も襲ってこないなら退治する必要も無くなったの。結果、存在意義(おそうりゆう)を失った妖怪達は日に日に弱体の一途を辿った。──その矢先に」

 

チラリと、紫はレミリアの方に目を向けた。

 

「そこの吸血鬼が幻想郷にやってきてめちゃくちゃに掻き乱したおかげで、戦いの必要性が出て来たのよね」

「吸血鬼異変だったけか?その後にスペルカードが出来たんだよな」

「まぁ私のおかげよね」

「「なんで偉そうな態度?」」

 

紫と同時にツッコむと、レミリアは素知らぬ顔で酒を煽る。

 

「まぁおかげで人間と妖怪は付かず離れずの距離で交流出来るし、結果オーライかしらね」

「………ところで、幻想郷にいる人間達って、今この現状をどう思ってるんだ?」

 

気になった事を訊いてみる。

突然結界を張って、「あなた達は今からこの世界に閉じ込めます」って言われてるようなもんだろう。

それって奴隷みたいなもんじゃないのか。

 

「確かに妖怪の存在の為に閉じ込める形になっちゃったけど、案外馴染んでるわよ。人間ってのは適応出来る生き物だし、十分に満足してるわ。──一部を除いてね」

「一部って事は……」

「幻想郷の暮らしに満足出来ない者も存在するわ。妖怪達を下し、幻想郷を人間の物にしようとする集団も存在するわ。おそらく、神坐が接触したのはこいつらね」

 

幻想郷に置ける手駒を揃える為か。

神坐が春雨や鬼兵隊に資源を横流しする為に任されていると高杉は言った。

後手に回ったらヤバいかもしれないが、相手の全容が分からない以上、下手に動けないな。

 

「まぁ難しい話は追々語るとして──」

「お待たせしました。お料理をお持ちしましたよ」

「今は宴を楽しみましょう」

 

襖が開かれる。

手にお盆を持って料理を運んできた咲夜、藍、妖夢達。

確かにメインはこっちだ。

精々楽しみますか。

 

 

 

 

「外の世界から取り寄せた食材を使ってるから、遠慮せずに召し上がりなさい」

 

そう言った紫の言葉に偽りなく、並べられた料理は豪勢だった。

和食、洋食、中華。

選り取り見取りのラインナップ。

正に豪華絢爛の一言だ。

江戸にいた頃はこんな食事にありつけるなんて滅多にないだろう。

 

「海の魚なんて本当に久しぶりです~」

「これが鮪ねぇ。血のような赤身が気に入ったわ」

「本でしか知らなかったけど、おいしいわね」

 

刺身を頬張りながら早苗は笑顔を綻ばせる。

幻想郷は地理的に山だから海の魚は食べられない。

外の世界出身の早苗は、さぞ懐かしく思っただろう。

レミリアとアリスも、気に入ったのか海の食材に舌鼓を打ちながら黙々と食べる。

俺も食べようとしたが──目の前の光景に目を奪われた。

 

「美味しいわぁ。流石藍ちゃんも腕を上げたわねぇ。あ、お代わり頂戴。それとお肉追加で」

 

目の前で空になっていく皿を積み上げながら、西行寺幽々子は食べ続ける。

目まぐるしく料理を運ぶスタンド達と皿を回収するスタンド達が若干シュールだった。

永遠の二番手が主役のゲームにこんなキャラがいたよな。

つうか、この人神楽と同じ位食ってるのに喰い方がめちゃくちゃ優雅だ。

トリコかよ。

 

「俺が知ってるスタンドは、柿ピーあげれば言うこと聞いてくれるけどなぁ」

「え~、それだけで言うこと聞けって言われたら、私なら秒殺する自信があるわ」

「怖いなあんた!」

「ところであなた、何で幽霊をスタンドなんて呼ぶの?」

 

笑いながら恐ろしい事を口にする幽々子。

そこに、ふとしたように紫は問い掛けた。

 

「………いや、背後に立つもんだろスタンドって」

「紫~、この人は幽霊の類が苦手なのよ察してあげなさいな」

「なに口走ってるのこの人!」

「あぁ、直接言うのも苦手なほどだからスタンドで誤魔化してるのね」

「誤魔化してません~。俺はただそう呼びたいだけです~」

「知らなかった?あなた、嘘言うと鼻が赤くなるのよ?」

「え!?」

「ウッソ~」

「~~~~~~~!」

 

計られた………!

ニヤニヤとシテやったりと紫は笑う。

つかこんな手に引っかかる俺もだけど、妖怪って基本人間をおちょくるのが好きなんだよな。

一杯食わされたと憤りながら俺は白米をかき込んだ。

 

「幽霊とは"死"を彷彿させる代表的な存在よ。死を恐れずして何が生物か。それは恥ずかしい事ではないわ」

「………」

「人は幽霊を恐れる。これは死に対する忌避と、最終的にこうなるという終着点を見せられたようなものね。そして、存在そのものが呪いみたいなものだから、という先入観もあるのでしょう。幽霊と亡霊は違うのにね」

「──あれ?その二つって同じじゃないのか?混同されやすいし」

「あ~、その手の話は幽々子に任せるわ」

「むぅ?」

 

ここで名指しされた幽々子は箸を止める。

皿は積み上げられ、まるで塔のような有り様だった。

もぐもぐと口を動かしながら、お茶を一口含んでホッと一息つくと口を開けた。

 

「────任されたわ。えっとね、まず幽霊は、生物、物質が持つ気質の具現なのよ。それが持つ根本的な性格や態度が文字通り浮遊する現象ね。生物が死ぬと、それを構成する気質が幽霊として現れる。幽霊をみれば生前がどんな性格だったのか判るわよ」

 

なんか血液型占いみたいだな。

 

「で、幽霊は精神が剥き出しになった状態だから、近付いたものに影響を与えるの。陽気な幽霊は周りを陽気に、陰気な幽霊は周りを陰気にってな具合にね。それだけならまだいいけど、一番厄介なのは──怨霊と呼ばれる幽霊ね」

 

怨霊。

広義では、生前に怨みを持って死んだ人間の魂。

有名所では将門、道真、崇徳院など。

死して人を害する存在になった悪しき霊体。

 

「怨霊は、悪人だった人間の魂。存在そのものが周りに悪影響を与えるの。同じように悪人に誘い込もうとするわ。特に妖怪にとって怨霊は鬼門よ。とり憑かれでもしたら死に等しいわ」

「妖怪が怨霊に負けるとか変な話だな」

「妖怪は肉体が強いけど、その分精神が脆いのよ。人間は逆に肉体が脆いけど、精神が強いわ。妖怪にとって死の病は主に精神の病よ。だから怨霊には気をつけなさい」

 

グイッと煽るように酒を傾けながら幽々子は言った。

要は精神攻撃が基本ってわけか。

──そういやレミリアもおちょくるとすぐボロが出るよな。

体がお子ちゃまなら精神面もお子ちゃまなのかねぇ。

 

「妖夢はどうなんだよ?白玉が剥き出しだけど」

「妖夢はそういう一族の生まれなのよ。血族と言うか、種族というか。そういったもんだと思えば良いわよ」

「というか、私の半霊を白玉って……」

 

箸を進めながらジト眼で睨んでくる妖夢。

いいじゃねぇかそう見えるんだから。

 

「次は亡霊についてね。亡霊は、生前に強い未練や心残りがある者が成るのよ。これは人間しか成れないわ。人以外で生に執着するような死に方は出来ないもの」

 

──言わんとしてる事は分かる。

動物なら"自分が犠牲になれば他の仲間の命が助かる"という、システムめいた感情があるのかもしれないが、果たしてそれだけで解決してもいいのだろうか。

 

「その余りにも強い執着で生前の姿をとることが出来るわ。物に触れる事も話す事も出来るけど、怨霊に近いものだから、やっぱり悪影響ね。呪いってあるでしょう?あれって人の念が起こすものなの。何かを強く想う気持ちは、剥き出しの呪いをばらまくようなものなのよ」

「だから早々に退場してもらうってわけか」

「そう。成仏させる方法は主に二つ。心残りを解決するか、自分の死体を供養する事よ。後者は自分が死んだ事に気付かないパターンが多いけど、自覚してる人は自分の死体を隠したりするわ。身近な人を操ってね」

 

成ってみれば意外と楽しいもんだから、このままでもいいかと策謀するのか。

そういう奴は地獄行きだろうよ。

 

「じゃああんたはどんな未練で亡霊になったんだよ」

「──あ~、幽々子はちょっと例外でね。別に未練があるからってわけじゃないのよ」

「?」

 

訊こうとしたことを紫が答えたが、何か含みがあるような感じがした。

まぁ、人の過去を詮索するのは野暮か。

 

「それにしても良い食いっぷりだな。そこまで行くと惚れ惚れするぞ」

「確かに幽々子さんの食べ方は見てるこっちも元気になりますね」

「"一杯食べる君が好き~"ってやつ?」

「その歌、外の世界じゃ女を堕落させる悪魔の歌みたいね」

「あってるっちゃあってるな」

「そう言ってくれると嬉しいわ~。ねぇ追加持ってきて~」

「ここに赤城と弥子とカービィ連れてきたらどうなるかな」

「止めてぇぇぇ!うちの食費が枯渇するぅぅぅぅぅ!!」

 

悲痛な妖夢の叫び声は、冥界の静かな空に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~モフモフだわ~」

至高の天(グラズヘイム)はここにあったんだ……」

「そうだろそうだろ」

 

酒が回って来たのか、酔いどれながら藍の尻尾に顔を埋める早苗とレミリア。

俺も触ってみたが……ヤバいわこれ。

背筋がウズウズと騒いでしまう。

これに顔を埋めればさぞ幸福だろう。

藍は特に気にすることもなく、もっと褒め称えよと行った具合に放置している。

 

「定春以上だなこの毛並みは」

「あなた、動物を飼ってたの?」

「よく分からないけど、なんか犬神って言うやたらデカい犬なんだよ。おかげで食費がかさんでさぁ」

「……犬神?」

 

犬神という単語に、紫は眉を細めた。

 

「ああ呪術の方じゃなくて、元は龍穴っつうケツの穴みたいな所を管理する神社の守護獣だったんだよ。天人達はそこをぶっ壊して、ターミナルって言う宇宙船を飛ばすバカでかい塔を建てたんだ」

「……つまり、地球の霊的エネルギーを利用してるのね。幻想の力を上手く科学の枠に取り込んでいるのかしら」

 

考え込むように口に手を当てる。

俺は難しい事は専門外だが、なぁなぁで聞いた話しか出来ないし、こういうのは紫の領分だろう。

 

「でも、そんな由緒ある神獣をなんであなたが飼ってるの?」

「前の飼い主は「先代の犬神がバカでかい子犬を産んだせいで、経済的に無理だから捨てるしかなかった」だとよ。縁あって俺んとこで引き取った」

「仮にも守護獣をそんな扱いしたら祟られてもおかしくないわよそれ」

「デカいデカい言うけどどれくらいなのよ」

 

隣に座るアリスが訊いて来たのでふむと頭の中で定春の大きさを思い浮かべた。

 

「大人二人くらいなら乗せられる大きさだな。それでいてまだ子犬だぞ」

「──ごめん。私でも多分捨てるかも」

「だろうな」

 

まあそれでも役にたつし、立派な本店のエースだよ。

───ふと、江戸の事を思い出した。

俺がここに来て三カ月くらいか。

あいつら今どうしてるだろう。

家賃もあるし、かぶき町もどうなってるか気になるし、せめて俺が無事だって報告出来ればなぁ。

 

「ウェーイ、銀さん飲んでます~?」

 

背中に何か暖かいものが乗っかり、耳元に甘ったるい声が聞こえた。

 

「……何やってんだよ早苗」

「だって銀さんだけ楽しそうにお喋りしてズルいですも~ん」

 

甘えたように抱き付く早苗は酒臭かった。

酔っ払ってるからだろうか、こうも積極的に絡んでくるとは思わなかった。

それに──

 

「……すんません当たってますよ」

 

年相応、いやそれ以上位かの立派な膨らみが背中を押す。

豊満な肉体は豊穣の証だと何かで読んだ。

神奈子さんは豊穣神らしいから、その影響だろうか。

 

「え~当ててるんですよって言えばいいんですかぁ?アハハハハハハハ!」

「──なぁこいつ酒飲んだら酒乱になるとかないよな?」

「いや、早苗はお酒に弱いから宴会だとまっ先に潰れるわよ。でも誰かに絡むとか無かったわね」

 

余りの料理をタッパーに詰め込みながら答える咲夜だが、この既知感めいた感覚はなんかヤバいと戦慄させた。

 

「ねぇ銀やんももっと飲みましょうよぉ」

「銀やんって何!?お前呂律が回らなくなってるだろそこまでにしとけよ」

「なんで銀やんそんなこと言うんやぁ!もっと私とダンスマカブルしまひょうよぉ!」

「めんどくせぇよこの子!」

 

話全然聞いてねぇし!

抱き付く力も強くなってるし!

やべぇよ早くなんとかしねぇと──

 

「くぉらぁ、愚民如きがぁ──私のものに触れるとは良い度胸ねぇ」

「誰がお前のもんだよ似非アーカード!」

「へ~んだ。レミリアしゃんは延々と原作設定と二次設定の間をさ迷い、カリスマとかりちゅまの中間のキャラになってればいいんですよぉ」

「貴様ぁぁぁッ!宇宙空間に吹っ飛ばすぞぉぉぉぉ!!」

「うるせぇよ!二人纏めて柱に封じ込めるぞォ!」

 

遠山の金さんよろしく、左右から引っ張り合う早苗とレミリア。

なまじ力が強いから痛い痛い!

 

「咲夜!なんとかプリーズ!」

「はいはい。ほらお嬢様こちらにいきましょうね。早苗もこっちに来なさい」

『うー…』

 

咲夜に引きずられる二人は不満を言いながら手を離した。

なんか、母猫に連れられる子猫が頭をよぎった。

 

「モテモテね」

 

ケッ、と何故かふてくされるように杯を傾けながらアリスが言った。

 

「いやお前さ、これのどこがモテてるの?完全に遊ばれてたぞ」

「何言ってるのよ。女の子に囲まれているこの状況をモテてると呼ばないでなんて呼べばいいのよ」

「しらねぇよそんなの……」

「妖夢。真の男はね、ただ存在するだけで女を寄せ付けるものよ」

「吸引力の変わらない、ただ一つの侍ですか」

「俺はダイソンじゃねぇよ!!」

 

好き勝手言いやがってこいつら!

そんなに俺を女たらしにしたいのか!

 

「まぁまぁ。人であれ人外であれ、好かれるっていうのはある種の能力よ。誇らしい事よ」

「……へっ」

 

紫はそう言うが、俺はラブコメなんて性質(たち)じゃねぇよまったく。

もっとこう、ワンピースやドラゴンボールみたいな感じが好きなんだよ。

──そろそろデザートが欲しい頃だな。

だいぶ酔ったし、出るまで一眠りしようかね。

 

「ねぇ銀時さん」

 

横になろうとした瞬間、唐突に口を開いた幽々子の言葉は──

 

「私と手合わせしてくれないかしら」

「────はぁ?」

 

どうやら俺を寝かしつけてくれそうになかった。

 




グダグダ座談会 東京SOS

銀八「もうすぐ一年だなぁ。見ろよ、お気に入り数がもうすぐ四百だぞ」
レミリア「私たちの総軍がどんどん増えていくわね」
アリス「駄目なエインフェリアだけどね」
銀八「さて、アニメも再開したし、マイペースながら頑張っていこう。……ところで冒頭の時に知ったけど、映画って十七億円もいったんだな」
早苗「ブリーチが七億だそうですね。こうみると銀魂もかなりの人気ですよね」
アリス「女性ファンが圧倒的に多いからねぇ。男で銀魂が好きな人ってどんな人かしら」
レミリア「泥臭いバトルじゃない?他のジャンプ漫画はバトルに華やかさがあるし、そのあたりの違いかしら」
銀八「まぁとにかく、ファンの方の熱い声援のおかげでアニメ再開したし、ウチらも張り切っていこうか。……そういや今季のアニメで「なのはvivid」始まったな」
早苗「なのはですか。もうstrikersから何年たったんですかねぇ」
アリス「確か十年以上前かしら。もうそんなにたつのね」
銀八「 俺は奈々様フェイトが聞けるだけで満足さ。奈々様と言えばフェイト、フェイトと言えばブレイドワークスだよ」
アリス「それ違うFate!」
レミリア「そのうち、未来のヴィヴィオが今のヴィヴィオを消しにくるバイオレンスな展開に……」
アリス「ならないから!」
銀八「つか、んなことしたら別の意味で危険だよ。如月が轟沈する並のショックがファンを襲うよ?……如月で思い出した。艦これ改の発売が八月に決まったそうだな」
アリス「なんで今の流れから艦これに変わったのよ?」
レミリア「システムとかどうするのかなぁ。PV見た限り、普通のシュミレーションみたいになるそうだけど」
銀八「ブラウザゲーを家庭用にするだけでも大変だろ。パズドラはDSでも移植しやすいが、何時間も放置する艦これじゃシステムから変えにゃならんわな」
早苗「あれと同じ仕様で言ったら、私は怪盗ロワイヤルしかやってませんね」
銀八「あったなぁ怪盗ロワイヤル。課金せずにやってたからもうしんどかった。もう投げ出したわ」
アリス「課金するソーシャルゲームが蔓延る中、ほぼ無課金の艦これはウケたでしょうね」
銀八「それ以上にキャラの豊富さだろう。俺さ、女の子がゴツい装備持って戦うヤツが好物なんだよ。大和がストライクだったねぇ。いつか艦これの二次創作やりたいなぁ」
早苗「まだこっちも終わってないのにもう次の連載ですか?」
銀八「妄想するだけならOKだろ。銀さんは提督じゃなくて戦技教導官みたいな立ち位置で、足柄さんがるろ剣の斉藤な性格で、沖田と龍田を組ませたら最強に見える話が書きたいな」
レミリア「足柄と斉藤は狼繋がりか」
銀八「婚期を逃しまくった結果ああなった、みたいな?そして沖田と龍田は二人して天龍をイジメます」
アリス「フフ恐さんかわいそう……」
早苗「じゃあじゃあ、羽黒さんも加えてみましょうよ」
アリス「そんなコトしたら、足柄さんが魚雷で零式牙突撃ってくるわよ」
レミリア「なにソレ燃える!」
アリス「燃えんでいい!」
銀八「そろそろ時間だ。質問ほんとにこねぇな。感想はありがたいけど質問も送っていいんだよ」
アリス「それじゃあまた次回で。アウフ・ヴィーダーゼーン!」
三人「ジークハイル・ヴィクトーリア!」

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