起きると毛布をかけてもらっていた。毛布をかけたのは誰だろうか?と考えつつ、艦長室から出る。艦橋に向かい、副艦長に現在地を聞く。
「今どの辺だ?」
「はい。ただいま相模湾沖です。」
「なるほど。」
俺は伝声管に「待機艦娘は信濃の近くに出撃し、信濃を護衛せよ。」と言う。信濃の後方ハッチが開き、用意ができた艦娘達が出撃していく。すると、金剛が叫んだ。
「テイトク!その先に大和型の反応があるヨー!」
「大和型?んな馬鹿な。沈んだはずだろ?」
「違うクマ。それは多分大湊で修理された…ここで言うならシナノクマ。」
「なるほど…無線手。相手の方に無線。」
無線手が館山にいる艦船に無線を飛ばし、手旗信号もする。
手旗信号の返答が帰ってきたらしく、伝声管から伝えられる。
「あれは大和型3番艦の吾妻とのことです。」
俺は伝声管から伝えられた情報を確認し、無線手からも情報が来る。
「吾妻だと来ています。」
「なるほど、近づこうか。」
「了解です。第2戦速。館山沖へ。」
俺は艦橋から甲板におり、艦娘たちに指示を飛ばす。
「時雨と球磨は先行して吾妻との合流。金剛を含めた残った艦娘たちは引き続き信濃の護衛を頼む。」
「了解ネ!」
「任せておけ。」
「りょうかい〜。」
信濃は第2戦速で吾妻に近づく。時雨から無線で吾妻と合流したと情報が入り、信濃も急ぐ。そして、吾妻の近くまで来て吾妻の隣に錨を下ろした。
「紀伊鎮守府の信濃です。」
「こちらは大湊総監部の吾妻だ。今回遅れた原因を教えて頂こう。」
「はい。まず、最近私は呉へ出張しておりました。戻った時にh…!」
大きく信濃と吾妻が揺れた。近くで水柱が立っていた。双眼鏡で監視してた人達に確認させると剱崎砲台から撃たれたものだと伝えられた。
「剱崎砲台から撃たれたものです!」
「剱崎砲台…?撃っているのは深海棲艦か?」
「いえ!あれは…人です!」
「人!?とりあえず、機関始動!」
俺は大湊の吾妻から信濃に戻り、艦橋へ登った。
「状況は?」
「はい、損傷無しです。しかし、なぜ市民が…?」
「もしかしたら…今回の空襲で…だと思う。」
「Hey!テイトク。一刻は要するかもしれないヨ。」
「なんだと?」
「今、響達から無線が来たネ。『今、市民たちが大暴動を起こして横須賀鎮守府を占拠しようとしてる。出来れば援軍が欲しいかな。』らしいヨ。」
「信濃第3戦速。これより信濃は横須賀に入港する。 」
信濃が横須賀へ進むと吾妻もあとについて来た。そして無線が来る。
『吾妻、貴艦のあとにつき横須賀へ入港する。』
『力添え感謝する。』と手信号で返す。信濃が横須賀へ近づくにつれ、看板が立ってるのがよく見えた。俺らはそれを無視し、横須賀へ近づき横須賀港へ入る。そして船笛を鳴らし、横須賀に信濃(大和)が来たことを艦娘と暴動隊に伝えた。艦娘たちは顔を笑顔にし、暴動隊はまだ抵抗した。しかし、後から来た吾妻の空砲で暴動隊は完全に戦意を失い武器を捨て投降した。
「遅かったじゃないか?提督。」
「すまんな響。」
「ん。じゃあ、今の横須賀見に行こうか。」
「ああ。」
「大湊のみなさんはどうしますか?」
俺は吾妻から出てきた大湊総監部の人達に話しかけるがどうやら、横須賀の周りをパトロールしに行くらしく拒否された。俺と響はガングートが守っていると聞いた裏口へ向かった。
「ん?おお、これはこれは貴様!来ていたのか?」
「さっきの船笛聞こえなかったのか?」
「聞こえなかったさ。暴動隊の声で聞こえなかったのだ。さて、私たちをこんな仕事に付けさせたのだから何か持ってきたのだろう?」
俺は黙る。何も持ってきてないからこそ黙っている。
「なるほど…持ってきていないのだな?」
「はい、持ってくるわけないだろ!」
「そうか。ならばこうだな。」
「あの…なぜピッケルとツルハシを渡されたんだ?」
「貴様も工事手伝え。」
「あの…?そんな無茶やだよ?」
「金剛からも言ってくれないかな?」
「OK!響!」
「げっ…金剛いつから…」
「さっきからネ!さて、テイトクゥ…やろうヨ。」
「いーやーだ!」
「待つネ!テイトク!」
「待てって言われて待つ提督が居るわけないだろ!」
俺は逃げ出す。横須賀に少しだけだが居たから大体の地形はわかっていた。しかし、隠れれる物陰がなくどうすることも出来なかった。すると、走って追いかけてきた金剛に手を取られて一緒に逃げ出した。
「金剛?!何してるの?」
「デートネ!この先よく私が落ち込んだ時に来てた場所があるネ!そこにテイトクをご招待するヨ!」
「そこはバレにくいか? 」
「んー…バレにくいと聞かれたらdifficult questionネ。多分見つかりにくいとは思うケド?」
「ありがたい!そこまで連れて行ってくれ!」
「OK!ついてきたくださいネー!Follow Me!」
金剛は俺の手を離し、俺が走りやすいようにしてくれた。そして金剛に誘導されるようについて行くと、そこは小さな森があり森を抜けると横須賀港がはっきりと見えた。
「ここは少し丘になってるからよく見えるネ。いつもなら鎮守府があって皆が笑顔だけど…今日のみんなは違ったネ。」
「それほど怖い思いしたってことじゃないか?」
「横須賀に居た私達は…私達の家と思い出を全て無くしたネ。そして紀伊に行って改めて人の温かみを感じたヨ?」
「そうか。どうだった周りの人達は?」
「とっても…優しくて…横須賀にいた記憶が蘇るネ。」
「そうか。じゃあ1つ質問いいか?」
「YES。なんでも答えるヨ?」
「横須賀はなぜ敵と空襲を許した?」
「ンー…それは憶測になりマスが…その時レーダーの故障があったはずネ。」
「レーダーの故障?」
「YES。あの日の前日何故かレーダーが急に使えなくなってしまって、修理中だったヨ。その時を狙われたのか…もしくはレーダー故障は深海棲艦の策略だったかもしれないネ。」
「なるほど…。」
「まあ、それも全てテイトクが海に鎮めたから終わりネ。さて、索敵するヨ。むむむ…。」
「そこまでしなくても…さ?」
「待つネテイトク。そこの森に隠れてくだサーイ。」
「わかった?」
金剛は険しい顔になり、俺を森に隠した。金剛がさっき来た道を睨みつけていた。そこに来たのは市民たちだった。
「久しぶりデース皆さん。」
「久しぶりだね金剛ちゃん。」
「要件はなんデスカ?」
「もうあんな思いしたくないんだ。急に空襲が来て街が燃えるのは見たくないんだ。だから…出ていってくれ…。」
「なるほど…。皆さんの考えもわかりマス。じゃあ、私たちが居なくなってここを守るのは誰デスカ?」
金剛はそう言って市民たちを牽制する。市民たちは海軍の基地を撤去しようとするがそこを守る者がいなくなると言うことは裸同然となる。逆に空襲される頻度が上がるかもしれない。
「それに、その深海棲艦はもう撃沈されたネ。だから皆さんが怖がることはないデスヨ。それに、派遣されてる艦娘たちは、私が所属する紀伊鎮守府の中でも優秀な子達ネ。私が認めるんデスから実力は問題なしヨ。だから、そんな怖い顔せずに笑顔になるネ。」
「それもそうだな…。いやぁ、1度でいいから横須賀鎮守府を空襲した奴を倒した提督に会いたいもんだよ。」
「ンー…皆さん会いたいデスカ?」
「そりゃね。会ってみたいし、謝りたいからね。」
「そうデスカ。テイトク出てきてイイヨ。」
俺は呼ばれたので森から歩いて出てくる。市民たちは口を開けたまま固まっていた。
「紹介するネ。この人が今の私のテイトクでここを空襲した深海棲艦を倒した張本人ネ!」
「そんな…俺は指揮しただけで何もしてないからな?」
「それでも感謝されるほどのことをしたってことネ。」
「ええ…。」
「仇をありがとうございます。」
「これで…恐れなくていいんだ。」
「そうですよ。今、ここに居る艦娘たちは俺が育てた強い子達です。どうか仲良くしてやってください。 」
「わかりました。これからもよろしくお願いします。」
「こちらこそ、急にお邪魔してしまい申し訳ありません。」
俺は市民たちと握手をして金剛と一緒に丘を降りた。金剛は誇らしそうに俺の前を歩く。
「金剛前見ないと転ぶぞ。」
「大丈夫ネ。転びそうになったらテイトクが支えてくれると思ってるヨ?」
「そんな無茶な…。」
「だからこんなにクルクル回って…目が回ってしまったデース…。」
金剛が目を回して転びそうになったので俺は急いで金剛を支えるために走り出す。金剛は目をぐるぐる回してよろよろと歩いてく、俺は急ぐ、そして金剛の手を掴み俺の方に引き寄せる。
「ンー…テイトクの顔が見えマース。これは…ドリームネ?」
「夢ならどれほど良かったでしょう。」
「夢ならばってどうゆうことヨテイトク!」
「おはよう金剛。」
「Goodmorning?今は昼だと思いマース。」
「ああ、起きたらおはようじゃないのか?」
「そうなのかも知れまセーン!」
「ほら、帰るぞ鎮守府に。」
「どこのネ?」
「横須賀。」
俺は金剛を置いて鎮守府に戻ろうとしたが金剛に止められた。
「待つネテイトク。」
「どうした?」
「このまま戻ったらガングート達のWork手伝わせるヨ?」
「それもそうだな…。どうするべきだ?」
「こっちに、Goodな隠れ場があるヨ!」
金剛はまた俺の手を引っ張って行く。さっきの丘の森の中に入っていく。俺はどこに向かっているのか?と考えながら引っ張られている腕を見る。金剛は無意識なのだろう。手を繋いでいることに気づいていない。俺は視界に入るので意識したくなくても意識してしまう。金剛が「ここネ」と俺の手を離し、小屋に近づく。
「ここは?」
「元監視職についてた人達の小屋ネ。今は横須賀鎮守府の所有でよく私達が直しに来てたヨ。まあ…あの時から直しに来てないから少しボロボロになってるケドネ。」
「なーに。これぐらい時代の流れと思えばいいだろう。入れるのか?」
「もちろんネ。ここは隠れBARにする予定だったネ。」
「ほう。グラスとか中には?」
「それはまだ持ってきてないデース。中に棚を作ってマシタ。」
「まあ、落ち着いてるところだし少しは隠れていられるだろう。」
俺はこのBARになる予定だった小屋に入り、息を潜める。金剛も俺の横に来て一緒に隠れる。2人で小屋に隠れており、響が見たら「浮気」を疑うかもしれない。でも、仕方ないことだ。ガングートが俺を働かせようとしているからこそ逃げているのだ。
「テイトクは平和な世界を見たことはありますカ?」
「平和な世界…か。深海棲艦が出る前か?」
「YES。私達は深海棲艦に対抗するために生まれた艦娘。平和の世界なんて知らないヨ。」
「平和な世界ってなんだろうな。」
「What?」
金剛は俺の独り言に反応する。俺は金剛の方を向いてもう一度独り言を言う。
「平和な世界ってなんだろうな金剛。」
「私に聞かれても分からないヨ?」
「金剛の望む平和ってなんだ?」
「私の平和は誰でも笑顔で怖がってない世界デース。」
「そうか。なら、今は平和じゃないのか?」
「テイトク…?何を言ってるか分からないヨ?」
「今の世界。皆じゃなくても笑ってる人達が多い。内陸では怖がってない人だっている。金剛の言ってる平和はこれじゃないのか?」
「違いマス。それは…平和じゃアリマセン!」
「じゃあ、改めて聞く。お前にとっての平和ってなんだ?」
「それは…一つだけデース。深海棲艦を倒す以外ないヨ。」
「そうだな。そのために俺らは頑張るべきだ。」
「そうネ。」
「さて、1つ聞きたい。」
「どうしたノ?」
「いつまでいるんだ?」
「そろそろ戻るべきカナ?」
「戻ろう。」
俺は小屋のドアを開ける。やっと暗闇から出てくるとそこにはタシュケントと響が立っていた。
「やぁ!同志提督!同志ガングートには内緒に迎えに来たよ!」
「司令官、待ったかい?」
「ちょうどだお前たち。」
俺と金剛はタシュケントと響に保護され、近くに作ってあった地下道を通って横須賀鎮守府に戻る。4人で歩いているとタシュケントがクルっとこっちを向いて話しかけてきた。
「同志提督、さっきの同志ガングートはごめんね!少し、気が立ってたみたいでね。暴動のせいなんだけどね。」
「あの暴動か…。あれはずっとか?」
「いや、それがつい最近なんだよね。犯人も誰か分からないしって困ってた時に同志提督の戦艦が入港したってわけさ!皆戦意失ってたよ。」
「戦艦信濃は見た目大和だからな。大和が横須賀に来たとなれば総司令官が来たと思ったのだろう。」
「にしても、来た理由ってなんだい?来るのなら電報でも送ってきたら出迎えとかしたのに。」
「元々、横須賀近海の調査だったんだけどなぁ。まあ、砲撃を受けたら調査せざる負えないだろ?」
「それもそうだね。さて、そろそろ横須賀だよ。同志ガングートに見つからないように気をつけて。」
「今居ないのか?」
「今のうちに行くよ同志提督。」
俺らは静かに信濃に戻る。物陰にかくれながらこっそりと歩きこっそりと走りしている。
「同志提督…この先が信濃だよ。みんな休暇に出てるけど私達がいるから大丈夫だよ。さぁ、入って。」
俺はタシュケントにそう言われて信濃の艦長室に入る。ドアの前で呆然になっているとノックされドアが開いた。
「Hey!テイトク!そこ邪魔ネ。どけデース。」
「え?ああ。すまん。」
「別にいいケド…急に押し込まれて大変だったネ。一緒にTea timeする?」
「んー。ガングートに隠れながらしないといけないからここでしようか。」
「YES!ならここに持ってきマース!」
金剛は満面の笑みで紅茶を取りに行った。1人艦長室で置かれていた横須賀鎮守府復興資料に目を通す。横須賀鎮守府は瓦礫を片付け終わり、次は木材を鎮守府に搬入し、建物を建てていくのが要所要所書かれていた。さすがロシアの艦娘たちでしっかり書かれており、よく分かりやすかった。
「Hey!テイトク!紅茶待ってきたネ!」
「ああ、そこに椅子があるから…。」
「テイトク、船の中の荷物って固定されてるはずダヨ?」
「そういえばそうだった。甲板で飲むか?」
「それはNOネ。タシュケントがさっき『近くにガングートが来たから同志提督をしっかり隠しといて』って言われたヨ。」
「えっ…近くにガングートが?」
「とりあえずベットに座っていい?」
「大丈夫だ。これは?」
「ダージリンネ。この戦艦に載ってたのはこれだけだったヨ。私はアッサム茶っぱが好きネ。もちろん、テイトクなことも好きネ!」
「ははは。ありがとう金剛。」
金剛はドアの方を見始めて、俺に抱きついた。
「こ…金剛!なに…してるんだ?」
「しー…今ガングートが廊下を歩いてるネ。」
「もごもご!もご!もごごごご!」
「もー!テイトク興奮しないで欲しいネ♪」
俺の顔は金剛の胸に押し付けられ、息もなかなかできずもごもごしていた。
「テイトク?テイトク!?」
「もご…もごもご!」
「テイトク!生きてたヨ…安心したヨ。」
「は…離して…くれぇ…。はぁはぁ…。」
金剛は自分のやっていたことに気づき、俺の事を離した。俺は酸欠状態で深呼吸をする。金剛は頬を赤く染めて「テイトクに抱きついてしまったネ。」とクネクネ動いていた。俺はドアをノックし、タシュケントを呼ぶ。
「どうしたんだい?同志提督?」
「ガングートは?」
「今艦橋に行ったよ。」
「響とタシュケント艦長室に入ってくれ。」
「わかったよ。同志入ろう。」
「…了解。」
タシュケントと響を艦長室に入れ、どうするか作戦を練った。
「タシュケント。ガングートは歩き回って居るのか?」
「んー。そろそろ事務所に戻るはずだよ。」
「その時に…信濃を…いや、乗組員休みか。」
「1日だけ休みってだけにするのが1番いいかもしれないよ。」
「なるほどな。とりあえず、横須賀鎮守府で数日間居ようか。」
「同志ガングートから隠れながら数日居るのかい?」
「いや、こうするんだ。」
俺は艦長室から飛び出し、甲板に出て叫ぶ。
「やーい!カングート!悔しかったらモデルガン持ってサバゲーするぞ〜!」
「貴様!いいだろう!私たちが勝ってやる。」
ガングートも乗ってきた。俺は金剛と時雨、荒潮、利根を呼び、ガングートは響とタシュケント、瑞鶴、涼月を呼んでいた。俺と金剛、利根は『M4A1』を持って荒潮は拳銃を持つ。ガングート達は『AK47』を持ってサバゲーが始まろうとしていた。
綾凪…九尾です。
疲れました。では、投稿遅れてしまい申し訳ありません。
やる気が飛んだりして遅れてました。
疲れたので短くてすみません。
次からは横須賀サバゲー編です。1話で終わるので許してください。
時雨の武器が出てない?それは秘密ですよ。
それでは失礼します。