対魔忍にはなりたくない!!!(必死)   作:胡椒こしょこしょ

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凜子さん!?まずいですよ!!!


野獣と化した先輩

ジリジリと差し込む日光。

炎天下、俺はただひたすらにスナイパーライフルを構えていた。

遠くでは的の横にクソデカ胸部の教師、上原燐が立っていた。

彼女が手を挙げる。

それを見て、コッキングした後にしっかりと銃身を固定、スコープから覗き込んだ。

 

握った瞬間に使い方は大体わかる。

まぁ銃なんか言うたら装填して弾当てりゃいいんだから当然なんだが。

そして遠くでバチッと音が、合図が鳴った瞬間引き金を引いた。

....少し、ズレてるかな?

 

だがまぁ、最後の弾丸は撃った。

これで任務の為の訓練は終わりだ。

スコープから目を離して立ち上がる。

彼女の方に歩み寄る。

 

「これで、狙撃訓練は終わりでいいっすか?」

 

上原先生に尋ねると、彼女は側頭部を押さえて言った。

 

「いいわけないだろ。....おまえ、やる気あるのか?」

 

なんだこの覇気は。

彼女は的を指さす。

真ん中から少し右と左と下らへんに穴がほげている的。

 

「しっかりと真ん中に当てろ。実戦でお前は相手が二度スナイプの機会を与えてくれると思ってるのか?」

 

「お言葉ですが先生。機会っていうのは与えられる物ではなく、自分で作るものだと思います。どうぞ?」

 

そもそも使えると言っただけで使いこなせるとは一言も言ってないから....

それなのに真ん中近く撃ち抜いているんだし、良いでしょ。

このくらい誤差だよ誤差!!

 

俺の言葉を聞いて、眉根を引きつらせる上原先生。

 

「...口が良く回るものだな。」

 

「口から生まれて来たんで。どうぞ?」

 

俺の言葉を聞き、目を閉じて溜息を吐く。

そして言葉をひねり出した。

 

「...私は、君ほど不真面目な生徒は、初めてかもしれないな。」

 

何を今更。

そもそも学校にも行かず、行ってもサボタージュばかりしている奴が任務を受けるからと真面目になるわけがないってそれ一番言われてるんだよね。

こんなことしないといけないならやっぱ対魔忍になんかなるべきじゃねぇよ、うん。

 

「とにかく、もう一度やり直せ。ほら、戻れ戻れ!!」

 

「うーす。」

 

そのままさっきの狙撃ポイントまで走って戻っていく。

アサギ先生に土下座して数日。

俺達はヨミハラ潜入任務遂行の為に訓練を行っていた。

ゆきかぜと凜子は纏の訓練。

そして俺は後方支援だ。

前に一度、なんで態々後方支援なのに訓練なんかしなきゃいけないんですか?と率直な疑問をサクラ先生にぶつけた所、そもそもしっかり学校に行ってたら後方支援の訓練なんかしなくてよかったらしい。

ちなみにゆきかぜや凛子は一応房中術の手習いを受けてるらしい。

保健体育かよ。

人がずっと銃撃ってる間に何やってんだ。

 

正直、ゆきかぜに条件まで出して手伝うと言った手前言い出せないが、日に日にやる気がなくなっていく。

任務の度になんでこんなめんどくさいことしないといけないんだよ。

早くも止めたい気分だった。

ここで気さくに打ち明けられる池沼の大先輩とかが居たら、「やめたくなりますよぉ~任務ぅ」と愚痴を溢していることだろう。

 

まぁでも、ヨミハラに送り出すのに十分な実習を行う必要がある。

それはわかる、よく分かる。

意欲が伴うかは別としてな。

 

合図が出た時に、撃つのを繰り返していると真ん中に当たった。

数撃ちゃ当たる。

まぁそりゃ10発も撃ってれば真ん中に当たるのも当然だった。

 

「....まぁ、今日はその辺にしとこう。これからもこれを続けて狙撃の精度を上げていくからな。」

 

上原先生はどこか先が思いやられると言わんばかりの様子で俺にそう言ってくる。

といっても、真ん中以外もニアミスだったわけだし、少しは大目に見てもいいんじゃないか?

ラジオ体操でも大目に見ようって言ってたぞ。

 

「うす!」

 

そうは思いつつも、逆らえないので俺はただ頷くだけだった。

 

 

 

 

訓練期間終盤。

今日一日の訓練を終えれば俺は晴れて自由の身....というわけにもいかず、任務になってしまうのだが。

そう思って訓練場に向かっていると、不意に最も出会いたくない人間に出会ってしまった。

 

「あら...刃渡君。こんにちわ。」

 

「お、風紀委員長。うす。」

 

俺の天敵である氷室と偶然廊下で出くわしてしまった。

氷室と出くわすとろくなことがない。

俺のジンクスだった。

 

今日はどんな災厄を運んできたのか。

半ばこれでは黒猫,,,,,いや、なんかこれでは可愛いイメージになってしまう。

それは自分の中でもあまり望ましくない。

間を取って黒猫大和にしておこう。

ごめんね、運送の人たち....天敵の渾名に使っちゃって.....

いつもAVの通販でお世話になってます!

心の中で詫びを入れると、彼女は話し出す。

何を言うつもりだ....内容によっては逃げねば......。

 

「....話聞いたわ。態度は別としてちゃんと訓練を受けてるそうじゃない。安心したわ。」

 

彼女は引き締めていた表情を和らげて俺に話しかけてくる。

....なんだ。

いつもと声色が違うぞ。

なんかそういうの止めてくれないか?

戸惑ってしまう。

 

「...まぁ、そりゃ任務受けるって言った手前、適当なこと出来ませんよ。」

 

上原先生をブッチしたら後が怖いからな!!

初日のように舐めた口を聞いてたら、ある日、堪りかねたのか一度電撃でバリバリダ―されたことがある。

あの時は本気でコイツ頭おかしいんじゃねーの?と疑ったものだ。

あの女には、やるといったらやる凄みがあるッ!

そう学習した今では、彼女に対しての呼び名がマムに変わっていた。

天敵が一人増えた瞬間だった。

 

しかし、俺の真意など知りもしない氷室は感心した様子。

 

「へ~、そういう責任感はあったのね。常に発揮してほしいものだけれど...まぁ、更生までの第一歩と考えると良い変化ね。」

 

したり顔で頷く氷室。

更生って....いや、ただ単に訓練に毎日参加してるだけでこれとか俺どれだけ問題児だと思われたんだよ。

まぁだが、彼女は彼女なりに俺の事を見直してくれているのかな?

まぁだとしても正直、どうでもいいんだが。

もうね、風紀委員長って字面だけで蕁麻疹出るんだわ。

宿敵、生まれながらの敵と言ってもいいね。

そもそも、俺そんなに優等生好きじゃないし。

 

そう思いながらも愛想笑いを浮かべる。

 

「そうっすかね?じゃ、俺今から訓練あるんで.....」

 

そう言って去ろうとしたら、彼女が再度俺に声を掛ける。

 

「ただ....少し手を抜いていると噂も耳にしているわ。修練は己の身を助けるんだから、しっかりと真面目にやりなさい。いいわね?」

 

さっきとは違って引き締まった顔を見せる氷室。

めんどいな....。

まぁ返事くらいはしておこう。

苦手な相手に角の立つようなことはするべきではない。

敵に回すと面倒くさいから。

それが俺の処世術だ。

 

「そうっすね、了解っした。」

 

適当に返事してその場を後にする。

まぁ3回に1回は真ん中に当たる様になってきたし、早く終わるだろ。

明日が任務だからなぁ。

帰りは遅くなるが、達郎の家に挨拶にでも行っておいた方が良いだろう。

幼馴染と姉が暫く近くにいなくなるんだ。

俺と比べて月とすっぽんレベルで周りの人に好かれている達郎なら心配する必要はないだろうが、それでも何も言わずに行くのは少し気が引ける。

やっぱ、幼馴染だもんげ!!

 

まぁゆきかぜも連れて行って盛大にお別れ会でもやるか!

....こういうのって事前に何か言っておいた方が良かったのか?

いや、まぁ料理とかはその場で適当に誰かに作ってもらって、飲み物は凜子に空遁で買いに行かせればいいか。

それにしても....お別れ会とか、やったことねぇなぁ。

 

そんなことを考えながらマムの下へと急ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

「それで?結局今日もまたこの時間まで残らされてたの?アンタどんだけ成長しないのよ....。」

 

「違う、俺はちゃんと成長している。あの女の考え方が微塵も進歩していないだけだ。昭和かよ.....。」

 

上原のクソったれに日頃の修練を十全にやってこそ任務で実力を発揮できるなどと言われてこの時間まで銃を発砲させられた。

時刻は夕刻をとうに回っており、辺りは既に暗くなっていた。

正直、どこかで夕食を済ませたいような時刻だ。

案の定、マッマにメールしたらそんなに遅いなら外で済ませてきてなどと抜かしやがる。

飯くらい簡単なおにぎりとかだけでも良いから作ってくれよ....

それが親の姿か?アンタに親としての情はないのか?

 

「ゆきかぜ....もしかしたら俺は、橋の下で拾われた子なのかもな....。」

 

「だとしたら今頃橋の下に逆戻りしてるわ、馬鹿な事言ってんじゃないわよ。」

 

呆れた表情でそう言ってくるゆきかぜ。

今は二人で下校中。

考えてみれば、コイツも俺が銃撃っている間に保健体育してたんだよな....

...あれ?でも、俺が終わったくらいに靴箱で待ってたし、実はすぐに終わってたのか?

 

「なぁ?お前保健体育結構早く終わってたの?」

 

俺が聞くと、彼女が訂正する。

 

「保健体育じゃなくて、房中術の講習よ!!...ただアンタを待ってたの、悪い?」

 

そう言ってそっぽ向くゆきかぜ。

もしかしてコイツ.....。

 

「友達、居ないのか?それか...凜子と喧嘩でもしたか?」

 

「....アンタ、マジで殺すわ。」

 

眉根をひくつかせて目に見えて怒っているオーラを出すゆきかぜ。

どういうことなの....?

あっ、もしかして図星だったのか....。

う~ん、そうなると達郎の下に行くのは難しいか?

俺が頭を抱えていると、彼女は口を開いた。

 

「馬鹿な事考えているみたいだけど、勘違いしないで。私と凜子先輩は仲が良いし、ちゃんと友達は居るわ!アンタとは違ってね!!!」

 

「俺を引き合いに出したら誰でもそうでしょ.....」

 

ただでさえお前らのせいで妬まれているのに、碌に授業も出ないちゃらんぽらんを比較に出す時点でおかしいでしょ。

下を見るなよ、上を見て生きろよ。

下ばっか見てたらキリがないぞ。

 

てかそれならなんで俺の事なんか待ってたんだろ?

暇だったのかな?

うーむ.....。

まぁ、そんなことどうでもいいか。

コイツが待っていようが、いまいがいまいち関係ないし。

そんなことよりもお別れ会だ!!!

 

「ところでさ、お前今日今から達郎の家に押しかけてパーティだからな。飯作れよ?」

 

「は?今初めて聞いたんだけど。」

 

「まぁ初めて言ったからな。」

 

俺が言うと彼女が頭を抱える。

おっ、どうしました?(にっこり)

眩しいばかりの笑みをゆきかぜに向けて、俺は口を開く。

 

「おっ、何作るか考えてくれてんのか?気が早いよ...まだ秋山家の冷蔵庫に何が残っているかも分かってないんだぜ?」

 

「アンタの突飛すぎる思考についていけてないのよッ!!今!?急に!?それなら事前に言っときなさいよ!せめて今日の朝にでも!!!」

 

詰め寄ってくるゆきかぜ。

そんな彼女に返答する。

 

「いや、今日の訓練前に思いついたことだからな。朝に言えって言われても無理な物は無理だ。」

 

「あ~~~~~!!もうっ!!!.....それで、なんで急に達郎の家に?」

 

彼女は俺のパーティの件については思考することを放棄したようで、疲れた顔で俺に聞いてくる。

なんで勝手に疲れてんだコイツ....。

まぁいいや。

 

「幼馴染と姉が暫く居ないんだぜ?寂しくなるだろ。その前にパッーと騒いで思い出作ろうって寸法さ。どうだ?幼馴染思いだろ俺って?」

 

したり顔で行ってやると、彼女は暫く考え込むと口を開く。

 

「...まぁ、それには賛成だわ。会いに行く事自体は良いと思う。」

 

「あれ?また噛みつかれると思ってたんだがなぁ.....」

 

意外にもすんなりと俺の言葉を受け入れるゆきかぜ。

どうしたお前....お前、そんなんじゃないだろ。

ダークシグナーだった頃のお前はもっと輝いていたぞ。

なんだ?この一瞬でなんか変な物で食ったか?

 

俺がそう言うと、彼女はまるでやれやれと言わんばかりの様子で溜息を吐く。

 

「はぁ...まぁ、パーティ云々を除けば言っている事はまともだしね。それじゃ今から行くの?達郎の家に。」

 

何だコイツやれやれ系主人公かよ....死ゾ。

やれやれ系は飽和して最近は許されないってそれ一番言われてるから。

 

「ゆきかぜの家で食料....って言っても執事が居るしなぁ。」

 

「アンタ、本当に苦手よね~。少なくとも不法侵入しようとしなければ何もされないわよ。」

 

ゆきかぜが呆れた顔で言ってくる。

しかし、そのことを言っているのではない。

 

「いや、ゲームやろうとして追い返されたのはまぁ、俺が悪いけどさ。....あの人、お化けじゃん。こわい。」

 

ホラー系は少し、少しだけだが苦手なんだ。

なんでリアルでホラーしないといけないんだよ。

何が生きている人間が一番怖いだ。

人間は理解できるけど、お化けは理解できないだろエアプ共がよぉ....。

 

「このヘタレ。」

 

「うっせぇ。」

 

ぐうの音も出なかったから言葉があんまり出なかった。

ゲームとか映画とかのフィクションは何ともないんだけどなぁ....。

 

「まっ、足りない物とかあったら凜子に空遁でスーパーに買いに行ってもらおうぜ。」

 

俺がそう言うと、ゆきかぜはこちらを睨みつける。

 

「駄目よ。言い出しっぺなんだからアンタが行きなさい。」

 

「やだよ、適材適所ってあるだろ?俺食べる係で、オナシャース!」

 

「しばきまわしたいわね....取り敢えず、行きましょ。」

 

そう言って彼女は先行していく。

すると、ふと彼女は急にこちらを振り向いた。

 

「料理作れって....私の料理、食べたいってこと?」

 

「は?いや...別に、俺作りたくないだけだから料理無理ならお前じゃなくてもいいぞ。」

 

「..まぁ、でしょうね。アンタのことだし。」

 

そう溜息を吐くと先を歩いていく。

なんだコイツ....へんなの。

 

 

秋山家に着く。

普通に呼び鈴を押そうとするゆきかぜを止めた。

 

「...なによ。」

 

「ちょっと上の部屋見て、居るか判断するわ。」

 

「はぁ?ただ単に呼び鈴鳴らせばいいでしょ。」

 

そう言って憚らない彼女。

それを見て、溜息を吐く。

分かってねぇな....人の家みたらまず二階の様子を見るのは当然だろう?

ゆきかぜの家に遊びに行くのもそうだし。

長年の積み重ねから、癖になってんだ....二階から入るの。

 

そう言って彼の家の近くに生えた木に登り始める。

ゆきかぜの視線を感じる。

下を見ると、彼女は疲れた様子でこちらを見ていた。

 

「もう、勝手にしなさいよ....。」

 

おう、言われなくても勝手にさせてもらう。

慣れた手つきで木を登っていき、いよいよ二階の窓の前くらいの高度まで昇ることが出来る

窓を見ると、少しカーテンが開いていた。

おーし、じゃあここから入るか!と窓べりに跳び移ろうとしたところ、不意にカーテンの隙間から部屋の中が見えた。

 

それは、ベッドに横たわった達郎にのしかかる凜子。

その表情はどこか艶で、達郎に何か語り掛けている。

ていうかあの様子....まるで......

 

「事を行う前じゃないか.....、マジかよ。」

 

言葉が自然と漏れる。

それと同時に背筋が強張った。

ま、待て...待て待て待て。

二人は姉弟だ。

うん、れっきとした血のつながった姉弟。

....えっ、やばくね?

ちょっと受け止めきれないんだけど.....

 

「何してんのよー?入らないのー?」

 

「しっ――――!!!!」

 

何テメェ大きな声出してんだ空気読め貧乳。

ここで大きな音立てて向こうに見ていたこと気づかれたら絶対ヤバいわ!!

そのくらいはこんな俺でも分かるわ!!!!

 

そんな俺の態度を見て、首を傾げるゆきかぜ。

...そうだ。

一人で抱え込む必要はないじゃないか。

こんな身近に共有できる友が居る。

一人じゃない!

俺のこのどうしたら良いか分からない...幼馴染の見てはいけない面を見てしまった感を共有できるはず!

俺は携帯を取り出して、くれぐれも静かに木に登り、横に来いとゆきかぜにメールする。

 

すると、彼女はそれを見て面倒そうにしながらも、渋々木を登って来てくれた。

流石活発少女....悪くない登攀だ。

そう思っていると、横にまで来て彼女が口を開く。

 

「....何よ態々。」

 

「バッカ!声がでけぇよ!....あそこのカーテンの隙間をよーく見てみろ。飛ぶぞ。」

 

俺が言うと、彼女は呆れた様子で目を凝らす。

そして明らかに信じられないと言った様子に変わる。

 

「う、嘘.....こ、これって......」

 

「...あぁ。どうやら俺たちは俗に言うヨスガりの現場を目撃したのかもしれない。」

 

俺がそう言うと、彼女はキョトンとする。

あ、あれ?ヨスガノソラ知らない?

アレある種の伝説なんだけど.....。

ま、まぁ確かに?兄妹と姉弟ではあべこべだと思うが....。

 

「き、近親相姦ってことだ。」

 

「えぇ....ど、どうすんのよ。これこの後どんな顔して会えば良いのよ?」

 

「笑えば良いと思うよ。うん。」

 

「笑えないわよ。」

 

俺をジト目で見るゆきかぜ。

どうやらゆきかぜも受け止めきれずにテンパっている様子でどこか落ち着かない。

すると、ゆきかぜはどこか現実逃避するかのような様子を見せる。

 

「そ、そうだわ!あの清廉潔白な凜子先輩がそんなことするわけがない!あれはきっとマッサージよ!!」

 

「いや達郎仰向けになってたし.....」

 

「馬鹿ねぇ、鎖骨付近の凝りを和らげようとしてたのよ。邪な目で見るのは止しましょ?」

 

そう言ってくるゆきかぜ。

いや、流石にそれは無理ないか.....?

 

「いや、お前も邪な目で見てたろうが。....てか凜子は達郎大好きだろ?なら可能性はなくもな.....」

 

「あー!聞こえない聞こえない!あれは絶対マッサージよ!じゃないと幼馴染が近親相姦とかどうしたらいいか分からなくなるじゃない!!」

 

どうしても認めたくないと言った様子で首を横に振って耳を押さえるゆきかぜ。

いや...てかマッサージも結構グレーゾーンじゃないか?

なんかこの世には性感マッサージなるものもあるらしいし。

だが、後半の言葉は同意に値する。

どうしよう....そうだ!!

 

「こ、ここは見なかったことにしよう。〇ックスかマッサージのどちらであったとしてもそっちの方が面倒くさくなくて良い....。なっ!?」

 

「はっきり〇ックスって言うな!!.....あっ。」

 

俺が提案した瞬間、ゆきかぜが呆けた声を出す。

どうしたんだ....?

 

「い、今....凜子先輩が振り返って.....」

 

「え?」

 

ゆきかぜの方から窓の方に向き直る。

そこにはどこか諦めたかのような表情でカーテンを開けて、凜子がこちらを見ていた。

窓が開く。

 

「....見たのか?」

 

どう足掻いても言い逃れ出来ない状況。

俺とゆきかぜは顔を見合わせると、口をそろえて言った。

 

「「....はい。」」

 

 

 

「「「「.......」」」」

 

あの後、まるで俺はお前が俺を見たのを見たぞと言わんばかりの気迫で家に上がる様に言われたので、俺とゆきかぜは秋山家の中に居た。

空気が重く、苦しい。

おい、ゆきかぜ....なんか喋れ。

 

ゆきかぜの方向を見ると、彼女も同じような意図を込めた視線を俺に向けていた。

クソッ、人に任せるなんて....無責任な奴め.....

 

「確かに、見たんだな?そのっ....私が達郎に....」

 

その言葉を聞いた瞬間、まるで死の間際のように思考が高速化した。

ここで彼女はなにを言おうとしているのか。

無性に感じる嫌な予感から、俺の憶測は間違いじゃないことを確信する。

その時点で、正直目の前の少女には引いている。

だが、それでも幼馴染なのだ。

これまでの関係が変わるのはアレだし、なによりこれからヨスガを留意しながら生活するのはとても面倒くさい。

そうだ、ここが正念場だ。

受け入れられないなら、押し付けてしまえ。

押しきれ....。

凜子、ついてこれるか.....。

 

「よ....」

 

「えぇぇぇぇ!!??達郎にマッサージしてたんですかぁ!?めっちゃ羨ましい!最近凝っちゃってさぁ!Foo↑誰か俺にもやってくれよな~頼むよ頼むよ~」

 

ハイテンションで押し切ろうとしていた。

横を見ると、お前何言ってんだと言った様子のゆきかぜ。

まぁそりゃさっき頑なに受け入れなかったマッサージという彼女の主張を今度は俺が使っているのだから。

だが、その発想はとても使える。

マッサージならあそこまで接近しててもおかしくないからな!

過去の事なんか忘れた!

俺はこの主張を真実にしてみせる!

最初の自分を騙せ!世界を騙せ!

 

俺の言葉を聞くと、凜子は非常に戸惑った様子を見せて口を開く。

 

「え、えっ...だ、だが私のしようとしてたことを見てたはず....」

 

「マッサージだよなぁ?なっ?ゆきかぜ。」

 

「そ、..そうよ(便乗)当たり前じゃない。それ以外の何に見えるって言うのよ。」

 

ゆきかぜに話を振ると、一瞬戸惑うがこちらの意図を察して合わてくれる。

流石だゆきかぜ....俺を良く分かってる。

日本一やお前。

 

「だ、だが....」

 

「俺にもやってくれよな~、あっ、ゆきかぜお前俺にやれよ。」

 

「えっ!!?あ、あんなことアンタに出来るわけないでしょ!あんないかが...」

 

「マッサージ!!マ・ッ・サ・ー・ジだよな!!!なんだお前マッサージも碌に出来ないのかよ、つっかえ!!!」

 

凜子に被せるようにして発言できなくする。

...が、そうしようとした時になぜかゆきかぜがボロを出そうとしたので適当に話を切る。

前言撤回。

お前、クビやゆきかぜ。

ダメだ、この話をしていたらゆきかぜがボロを出しかねない....

どうする.....

 

すると達郎が凜子を見て口を開く。

 

「も、もしかして凜子姉....あれってマッサージしようとしてくれてたの?」

 

「あっ、そ、それは......そ、そうだ!最近お前は頑張ってるからな!任務で居なくなる前に労わろうと思っていたんだ!」

 

凜子は気まずそうに目を逸らしながら、そう返事した。

そりゃ凜子はヨスガ未遂だし、マッサージと頑なに言い張る幼馴染が居るのであれば達郎の言葉に同意せざるをえないだろう。

すると達郎は笑顔になる。

 

「なぁんだ....そんなことしなくてもいいのに。凜子姉たちの方がこの後任務とかあって大変なんだから...なんなら俺が凜子姉のマッサージしないとな。」

 

「そ、そんなことしなくて大丈夫だ!その気持ちだけで私は充分癒される。」

 

お、なんか良い雰囲気になってきたじゃん。

ヨスガもなかったことになりそうだった。

よし、これなら当初の目的を果たせるな!

話を変えるぞ!!!

 

俺はそれを確認すると口を開く。

 

「ところで凜子と達郎さ、この家でぇ、任務前に楽しいパーティ、したいんすよ。しませんか?しましょうよ!」

 

唐突に話を切りだす俺。

するとゆきかぜが口を開く。

 

「このバカがここに来る前に急に言い出したことなんですけど....しばらく達郎と離れ離れになるんだから最後にパーティでもパッーとしようって。...私達、そのためにここに来たんです。」

 

すると達郎は目を輝かせる。

 

「えっ、本当!?良いね!やろう.....凜子姉はどう思う?」

 

しかしハッとして凜子の顔を窺う。

すると凜子は慈愛に満ちた笑みを浮かべて首を縦に振った。

 

「構わないぞ。ただそうなると買い出しが必要だな.....。」

 

考えるような仕草をする。

買い出しについては俺も考えていた。

そしてそれについては最適解は既に出ている。

 

「じゃけん凜子が買い出しに行って、どうぞ?空遁使ってくれよな~頼むよ~」

 

「だからぁ!言い出しっぺのアンタが行きなさいよ!!」

 

「は?そういう発想がナンセンスってさっきも言ったんだよなぁ。分かれよ~?」

 

睨み合う俺とゆきかぜ。

すると凜子がその様子を見兼ねたのか言葉を紡いだ。

 

「それなら、間を取って私と貞一で行くとするか?」

 

「えっ....それは......」

 

「は?正気か?」

 

なんで俺がお前と一緒に行かないといけないんだよ。

俺は空遁要因として凜子を指定した、つまりは楽して早急にパーティを始めたかったのだ。

しかし一緒になると買い出しに行くという労力がかかる。

俺は面倒くさいことはしたくないんだよ。

それにしてもなんでゆきかぜが言い淀むのだろう?

 

「り、凜子先輩の手を煩わせるわけにはいかないですよ!それなら私が!」

 

「いや、それならゆきかぜは今日も鍛錬に励んでいただろう?それに私も貞一に話があるからな。」

 

「そ、それなら...分かりました.....。」

 

ゆきかぜは凜子の言葉に肩を落とす。

何だコイツ、そんなに買い出しに行きたいなら一人で行って来いよ。

ちょうどいい、コイツがいるじゃん。

 

「それじゃ、行くぞ貞一。」

 

「は?行きたがってるんだからゆきかぜ一人に行かせようぜ。そんなにやりたいならしょうがねぇなぁ....優しい俺が譲ってや...おい、引っ張るな!!」

 

「それじゃゆきかぜと達郎、待っていてくれ。」

 

凜子は俺の襟首をつかんで引っ張っていく。

すると達郎は手を振った。

 

「分かったよ凜子姉、貞一!早く帰って来てね!」

 

「...はぁ、いってらっしゃい。」

 

ゆきかぜも手を振るがどこか元気がなかった。

どうした、今度こそこの一瞬に目に見えない速さで変な物でも拾い食いしたのか?

クロックアップか?

 

「ちょっ、やめろ!行くから!自分から行くから引っ張るのはやめろ!!」

 

「分かったから、行くぞ~。」

 

凜子は俺の話を聞いていない。

クソッ...コイツ力が強い。

振り解けないぞ....。

僕に触るなぁぁぁぁぁ!!!!

 

 

 

「ダル~重~、なんで俺が物運ばなきゃならないんだよ.....。」

 

「その程度の重量で根を上げているなんて情けないぞ!ほら!シャキシャキ歩け!」

 

凜子が横で荷物を持つ中、俺もビニール袋を両手に下げる。

ただ量が多くて、その重量に負けてしまいそうだった。

ただでさえこんなやる必要のない労働をやらされて萎えてるんだからもうちょっと軽い物を持たしてくれよ....

 

項垂れていると、凜子が口を開いた。

 

「その....有難う。さっきのアレは....」

 

....アレというのはマッサージ(意味深)のことだろうか。

もうその話題振ってくるの止めろよ。

なんだお前、触れて欲しいのかよ!?

ド変態がよぉ....。

そう心中で悪態を吐きつつ、俺は返答する。

 

「何がだ?マッサージとか取り立てて話す必要ないじゃねぇか。」

 

「...本当に、ありがとう。」

 

やめろや。

意味分かんねぇ。

そう思いつつも、歩いている。

 

「そう言えば....ゆきかぜもよくやったものだな。あのお前を任務に引っ張り出すことが出来るなんて。それに真面目に訓練も受けているし....まだ、対魔忍になりたくないという気持ちは変わってないのか?」

 

凜子は恐る恐る聞いてくる。

最近は良く聞かれる。

家でもマッマとパッパに期待感見え見えの様子で聞かれるし、氷室にも前に揶揄いか聞かれたし、達郎に続いて今度は姉まで来てやがる。

そりゃ任務に参加しようとして、あれほど不真面目にしていた修練も比較的真面目にしているのだ。

心変わりしたと思われてもおかしくはない。

だが、その質問には俺としてはもううんざりだった。

 

「いや?なりたくねぇのは変らないよ。なんで態々危険な仕事をしないといけないのかっていう思いはいつも抱いてる。....ただまぁ幼馴染に頼まれたらね。それにアイツ、俺の事守ってくれるらしいし。....ま、足りない単位を任務で補填して、無事卒業して対魔忍に関わらないような職業に就くためにも任務に行くって感じだ。必要ないなら行きたくねぇよ。」

 

「それじゃお前、卒業したら何になりたいんだ。」

 

だからそれがないから今まで目標もなくのほほんと遊んで暮らしてたんだろうが!!

しかしそう目標がないのもそういう俺自身の適当さに起因している。

だが、それを知っていてもなお開き直りたい気分だった。

これから探します~あなたには関係ないですぅ~!

なんで真面目に答えないといけないのか....パーティ前だぞ。

さっさと話を終らせたい俺は適当な言葉を吐いた。

 

「大物YouTuber。」

 

「お前なぁ....。」

 

俺が適当に答えてるのが分かったのか呆れた顔で溜息を吐く凜子。

人間が、そう一夜で簡単に変わるわけないだろいい加減にしろ!!

そんな彼女よりも前に行くために重い荷物を持ったままなんとか俺は走った。

あ~、きっつい。

重い荷物持つのもきついし、聞き飽きた質問に答えるのもきついわ。

 

しかもこの後、パーティが終われば家に帰って明日に向けてやることがある。

あのパッツパツで股間への引き締めがヤバそうな対魔忍スーツを着たくないので、自分で任務用にジャンバーとかを改造しないといけないのだ。

これでも手先は器用なので、裁縫はお手の物だったりする。

 

そしてそれよりも重要なのは持っていく巻物を用意するのだ。

武器を口寄せする為の巻物を。

正直毛ほども戦闘中においては存在価値のない俺の忍法だが、遠く離れた地ヨミハラにおいて家の蔵に置いてある武器を口寄せして持ってこれるなら越したことはない。

 

やることは色々あって、そのどれもが面倒くさい。

だが、やらないと面倒だし一番嫌なのは対魔忍スーツを着ることだ。

それを回避するにはしなければならないのだ。

明日の自分の為に、どれだけ動けるか。

何の意味もない労働はしたくないが、やりたいことをやる為、そして楽になる為の労働なら我慢できる。

そうだ、頑張れ!頑張れ俺!

俺は一人っ子、長男だ!

次男じゃ我慢できないことも長男なら我慢できる!!

そう自分を叱咤しながら、やるべきことの重圧で潰れそうな身体に鞭打っていくのだった。

 

 

 

鞭打った甲斐があってか、その日のパーティはとても楽しかった。

なぜか凜子の部屋から出てきたツイスターゲーム。(誰とやる予定だったんでしょうかねぇ....)

それをみんなでやった時は大いに盛り上がった物だ。

俺は積極的にゆきかぜの妨害をしていたらゆきかぜにボロカスにやられたんだが。

こんなに楽しい思いをしたのならまぁ.....帰った後の労働にも耐えられる。

俺はそう思った。




こちらはですね、うちの凜子が襲おうとした… これ襲おうとしたんかな? いや襲おうとしてないかもしれへんわ。イヤ紹介すんのやめとくわ。確信がないわ。襲おうとしたかどうかわからへんから

次からヨミハラに入ろうとします。
ゾクト君もちゃんと出るよ、可愛いね!
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