対魔忍にはなりたくない!!!(必死)   作:胡椒こしょこしょ

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仕事は始めると、途中でダレてくる

パーティの日から一日後、俺達は不知火の捜索と救出の任務の為にヨミハラへと向かっていた。

里から出発して数時間。

面子は俺、ゆきかぜ、凜子....そして別件で捕らえられていたオークのゾクト君。

隣の悪人面してるこの人豚ちゃんが俺達がヨミハラに潜入する為の手段にして、連絡係らしい。

...まぁ正直一度捕らえたとはいえ対立してた魔族の男。

一度捕まったのだから下手なこと出来ないだろうとアサギ先生たちは言っていたが、俺にはその理論が良く分からなかった。

アレかな?圧倒的な戦力差を見せて屈服的な奴かな?

上の采配は良く分からないが、まぁそこら辺はどうでもいいや。

 

「...なにジロジロ見てるのよ、殺されたいの?」

 

「ひっ!な、何言ってるんすか姉御ォ~、俺ァ見ちゃいませんって...!!」

 

卑屈に笑って露骨にゆきかぜのご機嫌を窺うゾクト君。

...なんだろう、そういう恥も外聞もない所、嫌いじゃないよ。

なんだろう、目に見えてクズで親近感感じちゃう.....。

 

しかし、そんな俺とは対照的に凜子とゆきかぜはまるで便所ゴキブリを見るかのような軽蔑した目でゾクトを見ていた。

 

「なんでこんな奴と一緒に行かないといけないのよ。」

 

そう言うゆきかぜを諫めるように声を掛ける凜子。

 

「しょうがないだろう....私達はヨミハラに入る手段を持たない。それに奴には潜入調査中の連絡係という役目がある。....まぁ、大方ゆきかぜと同意見だがな。」

 

ギロリとゾクトを睨みつける凜子。

ゾクトは媚びたような笑顔をずっと浮かべていた。

ゆきかぜは目に見えてゾクトを避けており、なぜか俺に近かった。

良いのかいホイホイ近づいて?

俺はコイツにも負けず劣らずのクズだって自負してるんだぜ....。

 

すると、ゆきかぜが俺にも目を向けて尋ねる。

 

「アンタは不満じゃないの?」

 

不満かどうかと聞かれたら正直どうでもいい。

実際、奴経由じゃないと俺たちはヨミハラへの入り方も知らないのだからしょうがない。

それは凜子と同じだし、別に俺もクズだからそりゃ敵方に捕らえられてたら媚び売るに決まってるし、ゾクト君の気持ちはわかるしな。

ていうか俺としては...。

 

「そんなことより対魔忍スーツ脱いで良いか?」

 

これ股間にぴっちり張り付いて気持ち悪いんだよなぁ。

俺はパンツも結構余裕もって履きたい派だからこのスーツは最悪以外の何者でもない。

俺がそう言うと、呆れた顔をするゆきかぜ。

 

「答えになってないし.....もし脱いだとしてどうするのよ。裸で侵入でもするの?」

 

それ対魔忍どころかただの不審者なんですがそれは....

いや、案外ダンボール辺りを被れば伝説の傭兵みたいにステルスできるだろうか。

そう思うと男の子心をくすぐるな。

だが、そういうわけでは決してないのでちゃんと否定はする。

 

「いや、ちゃんと任務用の俺の為だけの一点もの。俺にとっての秘中の秘があるのさ...。」

 

「...ほう、秘中の秘か。面白い、見せてくれ。」

 

俺がカッコつけて言うと彼女が食いついた。

忍らしいもんね、秘中の秘とかって。

なんなら武道の流派の技とかでもそういうのがあるところがあるらしいしな。

それなら剣術を嗜んでいる彼女が食いつくのも無理はなかった。

 

割と自信作だから別に見せるのはやぶさかじゃない。

むしろ見て欲しい物だ。

物作るって言うのは良いな。

ちゃんとした自分の努力の証が残るのだ。

そう考えると、服飾関係とかも良いかもな。

...いや、やっぱなしだ。

なんで汗水たらして他人が着るもの作らないといけないんだよ。

俺は自分から奴隷になりはしない!!

 

「見たけりゃ見せてやるよ。後ろ向いてホラホラホラ!」

 

「良いだろう....。お前の秘中の秘、どんなものか楽しみだ....。」

 

「は?普通ここで着替える?凜子先輩も乗り気だし.....。」

 

不敵な笑みを浮かべて後ろを向く凜子。

そんな彼女と俺を交互に呆れた目で見た後に渋々後ろを向くゆきかぜ。

そして後ろを向かないゾクト。

 

「おっ、なんだゾクト君。お前男色の趣味でもあんのか?しょうがねぇなぁ....」

 

「い、いや旦那ァ、そんなものありませんよぉ~。ただ同性だから別に大丈夫かなっと。」

 

そうやってニコニコと笑うゾクト。

こういう時に笑ってるクズは大概碌な事考えていない。

もし俺が捕まって、その捕まえている勢力のガキが他の二人のガキに着替えるから後ろを向いてろと言ったらどうするか?

当然その後に策がないのであれば襲い掛かって上手く行けば二人に対する人質にするくらいは考えるだろう。

服を脱いでいる最中は人間は無防備だ。

だからこそ成功率がその瞬間だけは高い。

俺もクズだからな、考えている事が分かるよゾクト君。

 

「なんかゾクトの目が嫌らしいからゆきかぜ、なんとかしてくれ。」

 

「....アンタ、向かいに立ちなさい。」

 

そう言うと、動揺した様子を見せるゾクト。

 

「い、いや見てないっすよ旦那!なんで見る必要があるんでやすか!!」

 

「...いいから来い。今すぐ死にたいの?」

 

なんかゆきかぜが滅茶苦茶怒ってる。

なんでだろ?

アレかな?俺が変な目で見てるって言ったから嫌悪感が出ちゃったのかな?

確か彼は奴隷商人で女性の奴隷の売買を専門にしていた。

そういう意味ではゆきかぜに俺のせいでバイのオークと思われたのかもしれない。

まぁなんにせよ約束通り俺を守ってくれようとしてくれるのはポイント高いぞゆきかぜ。

Foo↑イケメンすぎぃ!!

 

ゆきかぜの怒気に当てられておずおずと彼女の前に立つゾクト君。

するとゆきかぜは銃を彼に向ける。

とたん、青い顔をしてゾクト君が震え出した。

止めないのかな?と凜子を見ると、凜子は凜子で目の前の後輩の行動をスルーしている。

うわぁ....ありゃゾクト君生きている気しないわな。

捕まってガキに連れまわされてバイ認定されて銃突きつけられるって控え目に言って不幸すぎだろww

マジおもし....可哀想だなぁ。

同情するわ。

 

まるで生まれたての小鹿のように震えているゾクト君を尻目にさっさと服を着替えていく。

俺も外で着替えるのだからあまり長く裸で居たくないしな。

図らずも利害の一致だなゾクト君。

強く生きて、応援してる!!(他人事)

 

「おしっ、着替えたぞ。」

 

俺が言うと、凜子はそのまま振り向き、ゆきかぜはゾクトに対して横に立てと銃口をくいくいと移動させて指示する。

ゾクトはゆきかぜの横に立ち、ゆきかぜは振り返りながら凜子の方へ寄る。

そして振り返った凜子とゆきかぜが固まった。

 

「どうだ?これが俺の秘中の秘。特製任務服だぞ!」

 

「...た、た....」

 

ゆきかぜが言葉を漏らしだす。

何だお前、かなり昔のガキの頃一回おもらししたと思ったら今度は言葉まで漏らしだしたのかよ。

良い御身分ですね。

 

俺が感心していると、彼女は口をついに開いた。

 

「ただの私服じゃない!!!!」

 

そう叫ぶゆきかぜ。

その隣の凜子は頭を抱えていた。

ただ唯一ゾクト君はご機嫌を取る為か似合ってますぜ旦那!!と言ってくれた。

ありがとうゾクト君。

今度、フローラルの香りの入浴剤をあげるよ。

お前なんか臭いし。

 

「TDNは私服じゃないぞ。当時は若く、お金が必要だっただけで....」

 

「だから何の話してんのよ!脱線癖止めなさい!それとただ私服着てきただけじゃない!何が秘中の秘よ!!」

 

ゆきかぜに脱線癖を注意された。

それ今更じゃない?

すると凜子も露骨にガッカリした顔で口を開く。

 

「...貞一。お前には失望したぞ....秘中の秘とは何かと思えば私服って....はぁ.....」

 

まるで父親が買ってきたプレゼントが欲しかったものと違った子供の如く溜息を吐く。

どんだけ楽しみにしてたんだよお前....少年か!

確かに秘中の秘って響きが既にカッコイイけどもよ!

しかし、これは本当にただの私服ではない。

そこはしっかりと言わないと。

 

「おいおい....見た目に騙されるなんてお前らどうした?確かにこれは見た目は普通にシャツの上にジャンバー着て、ジーンズとブーツを履いたイケメンだ。だがなぁ...これらはほら!!」

 

そう言ってまるで露出狂が自分の肢体を公共に晒すかの如くジャンバーのチャックを降ろして中を見せる。

するとそこにはシャツの上から胴体に巻き付く蛇の如く巻物が何本もストックされており、ジャンバーの裏側には至る所にナイフや銃のホルダーがあり、ナイフなどの刃物や拳銃が仕込まれている。

 

「この巻物は口寄せの奴で、ジャンバーの裏側の刃物たちは全部瞬時に出せるように練習してある。今や俺は働く車ならぬ働く武器庫と化しているわけだ。どうだ、すげぇだろ。」

 

正真正銘俺の秘中の秘。

俺の持ちうる戦力を全て持ち歩くために作ったとっておきだ。

確かにいちいち武器を持ち歩かなくても巻物さへあれば良い。

対魔忍スーツにも巻物ホルダーしかなかった。

だが、それでは瞬時に武器が必要な時に面倒だ。

なんてたって巻物を広げて血を付けて詠唱する必要があるんだぞ?

そんな暇が戦闘中にあるわけないだろ!いい加減にしろ!!

やっぱり武器は身近に持ってないと。

 

するとゆきかぜは変らず白い目を向けていた。

な、なんだ...その目は.....。

 

「....なんか地味。ていうか重くないの?」

 

「いや、重いよ?でも軽々動けるくらいの重さだし....なんならこの重さが安心感に繋がるって言うか...つか人の秘中の秘を地味とか言うなよ....。」

 

地味ってお前....これ何時間かかったと思ってんだ。

丹精込めて作ったんだぞお前。

そんな一言で片づけられたら傷つくわ!

 

すると、凜子はどこか憐れむ様な目を向けてくる。

 

「う、うん....悪かった。お前に過度な期待をしたことが間違いだったんだな....。」

 

「おい、おっぱいお化け。もう一回言ってみろやコラ!!」

 

詰め寄るも軽く流される。

コイツ....人のとっておきを馬鹿にしやがって....後で覚えとけよゴラ.....。

そう思っていると、ゾクトが手を揉みながら口を開いた。

 

「お、俺は好きですぜ旦那!よっ!流石旦那!日本一!!」

 

ありがとうゾクト君。

....でもね、このタイミングでそんな見え見えのおべっか使われても腹立つだけなンだわ。

二度と笑えねぇようにしてやろうかな....。

 

とっておきの自信作を貶されて機嫌を損ねながらも、俺達はヨミハラへと着実に近づいていた。

 

 

 

 

街を抜け、森を歩き、とうとう坑道の中を進むに至った。

なんだろう...どんどん文明から遠ざかっている気がする。

まぁそれもそのはず、俺達は今裏の世界へと向かおうとしているのだ

そりゃまぁ表の世界から遠く離れたところにあるに決まっている。

地下都市だから坑道を進むのは不思議じゃないしね。

それにしても埃っぽいな....。

けほけほと咳をしながら、歩みを進めていく。

 

「なによこれ...だんだん暗く...それに埃っぽくなってくじゃない!」

 

「あまり埃を吸い込むなよゆきかぜ。呼吸器に悪い。」

 

二人もグチグチ愚痴を言っている。

俺はまぁ部屋に閉じこもっている間は薄暗いし、別に呼吸器も強いので気にならない。

それに所詮まだ入り口付近だ。

ただ所々手彫りのような跡があって頑張ってたんだなぁと漠然と思わせられただけだ。

穴掘って態々地下で暮らすとか穴熊を想起してしまう。

ちょうどニコニコで将棋の配信を二日前に見たばかりだからか。

俺的には正直櫓の方が守りやすいと思うが、戦法としてある以上凄いプロが使ったら強いんだろうなっと関係ないことに思考を飛ばしていると、急にゾクトが手を揉んで口を開く。

 

「旦那らぁ!あそこの杭を見てくれよぉ!」

 

そう言われて見ると赤い杭に危と刻まれているのが見える。

それをゾクトは指さすとそのまま話し出した。

 

「ここから先は奴隷商人が扱い切れなくて放棄したオーガやトロールが跋扈してらぁ。それにそれだけじゃねぇ!武装難民も出るって話だぜ!!」

 

偉く畏まった態度で言ってくるゾクト。

なんか企んでるなぁ....。

ここまで必死に何かしようとしてると逆に健気に思えてくる。

応援したくなってくるな。

頑張れ❤頑張れ❤

脳内でゾクト君を応援していると、ゆきかぜが面倒そうに返答する。

 

「それが何よ。」

 

「いやぁどこに誰の目があるか分からねぇ。特に旦那ら対魔忍はヨミハラでは特に警戒される。このまま引き連れたら容易に潜入って怪しまれちまいますぜ....。」

 

態々声を小さくしてそう言ってくるゾクト。

なるほど...そう来たか。

確かに地下都市ヨミハラは魔族の街。

そして欲望の街ともいう。

ならば政府の犬である対魔忍なんて最も疎ましい存在に違いない。

そして俺たちはヨミハラの事情は知らない。

だからコイツの誰に見られてるか分からないという言葉が嘘か真か分からない。

今、主導権は完全に奴が握っている。

 

「じゃあどうすると言うのだ。」

 

するとゾクトは懐から首輪と手枷と足枷が連結したような拘束器具と、アイマスクとギャグボールだった。

やっぱ奴隷商人の商売道具だからか持ってんのかな。

持ち歩くには重そうだ。

よしよし、頑張ったね❤

テメェが何言うかなんか想像できてるんじゃこのクソ豚がよぉ....。

 

「対魔忍は対魔忍でも、拘束されて奴隷として運ばれれば誰も怪しみませんぜ!旦那らは知らないかもしれねぇが、俺達の所では対魔忍の奴隷は珍しくねぇんだ...。そんなあたかも対魔忍にしか見えない恰好じゃそうしないとすぐに大騒ぎになるに決まってますぜ!」

 

そう言うゾクト。

どう思うと視線を送ってくるゆきかぜ。

俺は彼女の視線に応えるように言葉を口にした。

 

「確かにエロ動画サイトでそう言う動画は色々見たことあるぞ。」

 

そう言うと、ゾクトは大きく頷く。

そしてこちらにずいっと寄って言った。

 

「そうでしょうそうでしょう!ささっ!善は急げ!!」

 

着けるように勧めてくる。

やっぱりな。

拘束して視覚も奪う。

そうすればゾクトは自由に動けるうえに、俺達は彼の言う事の真偽を判別することが出来ない。

そして喋れないからお互いに意思の疎通も取れなくなるのだ。

そしてなによりゾクト君の話は理にかなっている。

ゆきかぜと凜子は完全にどうみても対魔忍と言ったようなぴっちりとしたスーツを着ている。

どう見ても入れば大騒ぎになるのは目に見えている。

そして対魔忍が何人も帰れなくなっている時点で奴隷になっている対魔忍も居て、それは許容されていることは想像に難くない。

今まで辛酸を飲まされた相手を辱められるんだ。

誰だってそーする、俺もそーする。

 

....あれ?ちょっと待てよ。

ゆきかぜと凜子を見た後に、自分の恰好を見る。

....これ、対魔忍に見えなくないか?

普通の人じゃん。

普通のイケメンじゃんこれ。

なら俺付けなくても良くないか?

 

「なんで私達がそんなこと!!」

 

「...いや、ゆきかぜ。確かに一理ある。...気は進まないが、ここは奴の要求を飲むしか.....」

 

二人はゾクトを睨みながらも、その拘束器具を受け取る。

これ、止めるべきな気が....。

そう思った矢先、あることに気づいた。

 

....そう言えばコイツら、さっき俺の丹精込めた服を馬鹿にしてなかったか?

少し、痛い目合わせてやるか!しょうがねぇな!!

 

「ねぇ、アンタはどう思う?」

 

「潜入する為につけるしかないなら付けるしかないだろ。今優先されるべきは任務だってはっきり分かんだね。」

 

俺がそう言うと、納得はしていない様子だが付け始める。

まぁゆきかぜは不安だったから俺に聞いたんだろうな。

助かったよ。

 

そして凜子も釈然としないながらも、任務の為に拘束具を付けた。

やっぱ生真面目だなこの人。

普通こんな姿したくねぇよ。

 

ゾクトは拘束の甘い所を締めなおしたりしている。

ちょっと楽しそうだ。

そりゃ相手が思う通りに動いてくれたら楽しいでしょうよ。

そしてゾクトはこちらにも渡してくる。

 

「それじゃ旦那も....」

 

「なぁゾクト君。こっち来て。」

 

手招きする。

それを受け取る為の物と勘違いした彼は上機嫌でこちらに近寄る。

そこで、咄嗟に懐に入り込み懐からナイフを取り出した。

 

「て、てめぇ!な、なにを....!!」

 

急にナイフを突きつけられて、本性が出かかっているゾクト君の口を押さえる。

そして小さく後ろの二人に聞こえないくらいの声で彼に語り掛けた。

 

「俺は付けないよ、ゾクト君。俺は君のやろうとしていたことが分かるんだ。...俺も、君と同じ穴の貉でね。」

 

ゾクトは目を見開く。

ナイフを突きつけたまま、後ろの二人を顎で指す。

 

「俺は普通の恰好で私服の一般人にしか見えない。...君がどう言おうがゆきかぜたちの反応を見たから確信がある。それに...見えなくても、その時はなるようになるし...お前が俺の事を付き人とかそういう言い方すれば良いだろ?」

 

すると、ゾクトが俺を睨みつける。

自分の思い通りに運びかけていたのを妨害されてとてもイラついているんだろう。

なんたって今までここに来るまで俺たちみたいな子供に下げたくもない頭を下げて、態々媚びへつらっていたのだ。

ストレスも溜まっていただろうし、痛い目見せる気だったろう。

ねぇどんな気持ち!?邪魔されてどんな気持ち!!?とでも聞きたかったが、そんな時間はない。

後続の何も知らないヨミハラに入ろうとする奴に見られると面倒くさいのだ。

 

「お前の気持ちは本当によく分かる。こんな餓鬼に良いようにやられるなんて悔しい。でも....ここで死にたくもないだろう?」

 

そう言いながら少し首に切れ込みを入れる。

すると首の皮を斬られる感覚に、彼はとうとう涙目になってしまう。

おっ、泣いちゃうんか?

女の子みたいに泣いちゃうんか!?

 

「これは脅しじゃない。交渉だよ....君は俺を用心棒とする。友達になろう。そうすれば入れた時に君を自由にしてあげる。ダメならここで殺す。どうします?制限時間は10秒な?」

 

そう言ってカウントダウンを始めた。

すると目に見えて過呼吸になりだすゾクト君。

そりゃこんなことされたら俺だったら漏らす自信あるもん。

ただ嫌だなぁ、これコイツが10秒経っても何も言わなかったらせっかく丹精込めた俺の仕込みジャンバーとかが汚れるってことだろ?

勘弁してくれよ....。

 

そう思っていると、ちょうど3秒辺りで彼が首を小刻みにだが縦に振った。

口を覆っている手を放すと、彼は口を動かした。

 

「わ、分かった!言う通りにする!だから勘弁してくれ!」

 

「そうか良かったよ。服が汚れずに済んだからね。....俺は銃も出せるし、出そうと思えば爆弾も出せる。下手な事したらすぐに殺す。分かったら先を歩け。」

 

一応釘を指しておくし、銃もチラつかせる。

それだけで奴は一瞬悔しそうな顔を見せるも、人の顔を見ていっちょ前に怯えてやがる。

たとえこちらを罠にはめようとしていたって一度は対魔忍に痛い目に遭わされた男。

対魔忍に対しての恐怖はないわけではないはずだ。

まっ、そこを過信したりはしないけど。

 

「ん~。」

 

「んむ~!」

 

ゆきかぜと凜子は中々先導されないことでずっと唸っている。

目元はアイマスクで覆われていて、拘束具で身動きが自由に取れず、そしてギャグボールで話すこともできない。

その姿はお笑いだった。

ざまぁみろ、人の努力を馬鹿にしたらそうなるんだぞ。

 

....いやでも、待てよ。

ヨミハラってそういう場所だから門番とか居るよな。

もし目の前のゾクトが自暴自棄になってそいつらに助けを求めたらどうなるんだろう。

...ちょっと怖いな。

 

「なぁゾクト君。やっぱさ、コイツ等の鍵頂戴よ。なっ?友達のお願い!!」

 

「んむっ!?」

 

「ん~~~?」

 

そう言って銃を突きつける。

すると横の二人は状況をいまいち理解できていない様子で唸りだす。

うるさいわ。

 

すると、ゾクトは歯軋りをしてこちらを睨みだす。

 

「餓鬼が....イキリやがって.....」

 

「実際、今主導権を握ってるのって俺だし。別に良いっすよ。こっちはお前殺してから鍵貰ってもいいわけだしね。」

 

正直、そもそも俺が二人に復讐しようとしなければそんなことする必要なかったんだけどな。

すると、ゾクトはよっぽど悔しいのか歯軋りをしながらこちらに鍵を投げ渡す。

それをキャッチした。

 

「...クソッ!クソクソ!!クソ!!!俺の計画が!!!!ふざけやがってぇ!!!!」

 

余りにも堪え切れなかったのか悪態を漏らしまくるゾクト君。

はえ~やっぱり人の思惑の邪魔するって最高。

たぶんこんなに怒っているのは一回二人を拘束できたことで成功したと確信したからなんだろうな。

そう思うと仕返しのつもりで二人の拘束を看過したのも良かったかもな。

少なくとも超気持ちいいわぁ、豚君冷えてっかぁ~?

 

っと、勝ち誇る前にちゃんと正しい鍵か確認しないとな。

ゆきかぜの後ろに回ると、足枷に鍵を挿し込む。

...うん、入った。

そしたら回してみる。

すると子気味の良い音が鳴った。

そのほかの枷にも鍵を入れて回してみる。

確かアイツ一つの鍵で全部やってたもんな....。

 

「んむ?んむ~~~!!」

 

ゆきかぜが急に拘束を外されてなんか言ってる。

だからこそ、俺はゆきかぜに声を掛ける。

 

「作戦変更だ。あの豚なんか企んでたみたいでな。だから奴隷の振りをしろ。そうだなぁ....ちょっとヨツンヴァインになれ。いいか?」

 

すると自由になった手でギャグボールとアイマスクを外して何か言う。

 

「ちょっ、いきなり作戦変更!?ちょっと何があったのよ!あと四つん這いとか嫌よ!!」

 

なんか急に質問攻めしてきた。

なんというか典型的な生き急いでる日本人だな....。

もっとゆっくり質問してくれよ....。

それと四つん這いじゃない。

ヨツンヴァインだ二度と間違えるなクソが。

 

「なんか拘束付ける前に豚が怪しい動きしてた。だから問い詰めた、ゲロった。今ここ。」

 

「もっと詳しく教えなさいって!!ちょっ、凜子先輩拘束されたままじゃない!」

 

ゆきかぜが隣の凜子を見て、声を上げる。

 

「凜子はほら...一人くらいマジモンっぽい奴居た方が良いだろ?それにアイツが一番あの時イラっとしたし。」

 

「今イラっとしたって...」

 

「お前も居た方が良いと思うよなァゾクトォ!!」

 

ゆきかぜが痛い所を突こうとしたので話を逸らした。

これ私服呼ばわりしたことへの仕返しに看過したとか言ったら怒られるの確定だもんな。

するとゾクトは目的が上手く行かなかったのがそこまで響いたのかハブてていた。

 

「うるせぇ!!勝手にしろ!!どうせ俺ぁみじけぇ命でさぁ!!!」

 

「....なんかあの豚がやろうとしたのは本当っぽいわね。」

 

ゆきかぜは納得したように言葉を漏らす。

どうやらゾクトは俺が逃がすと言ったのを信じていないようだ。

まぁ信じていないが、今死にたくないから言う事を従うしかないと言った状況か。

 

「それでさ、どういうシチュエーションで入るかよ。なぁ、ゾクト。ここに人を連れてくる時って仕事仲間以外はどんなだ。言わないと撃つからな。3・2・....」

 

「金持ちのボンボンとか政治家のおっさんを手引きしたりもしてたよっ!!これで良いのかよぉあぁん!!」

 

投げやりな様子で答えるゾクト。

もうなんかゾクト君くたくただよ....

あんなくたびれたおっさんなんか見たくなかった。

誰があんな目に遭わせたんだ!?

俺やったわ。

 

「じゃあ俺、対魔忍ところの名家のバカ息子な。そんで実は裏切者で奴隷連れてきた設定で。実際名家じゃないけどバカ息子だからバレねぇだろ。よろしくな奴隷。」

 

そう言ってゆきかぜの肩を叩くと、キッとこちらを睨む。

 

「はぁ!?なんでアタシが奴隷なのよ!?アンタがやりなさいよ!!!」

 

そう言ってくるゆきかぜ。

はぁ、分かってねぇなぁ...。

俺は呆れ顔で彼女から視線を外すと、ゾクトに呼びかける。

 

「なぁ、ソクト君や。君は男の奴隷とか売るのかね?」

 

「ゾクトだよ!!!....んなもん誰も俺の顧客は買わねぇから仕入れねぇよ。」

 

ゾクトは最初に怒ると、その後は気力もないのかぼやくようにそう呟く。

はえ~なるほどやっぱりね。

俺も男の奴隷なんかいらないし、一部からしか需要ないってはっきり分かんだね。

ゾクト、俺は今君に初めて心から感謝するよ。

 

「なっ?男の奴隷はないんだよ。怪しまれるわけ。」

 

「なら凜子先輩でも良いじゃない!!」

 

そう喚くゆきかぜ。

いい加減物わかりの悪い女だな...。

どうしてハイと一言言えんのだ!!

 

「ならお前でも良いじゃないか。なんだお前、任務遂行したくないのか?おかあさんを助ける為には必要なんだぞ?任務の為なら私情を捨て置く。それが求められる対魔忍像じゃないのか?お前がなりたい対魔忍ってどんな対魔忍だ。あの時語った夢は嘘なのか?」

 

そう言ってゆきかぜを詰めていく。

なんで俺が対魔忍像とか語ってるんだろ。

俺は断じて対魔忍じゃないです。

服も一般人だからね、多少はね?

こんな任務の為に奴隷の振りしないといけないとか俺だったら絶対にならないわwww

 

「う、ううぅ~~~~....わかった、やるわ....。」

 

彼女は断腸の思いと言わんばかりに、溜息を吐いてやると答える。

まさかあの時の夢のことを持ち出しただけでまさかここまで効くとは....

下手に引き合いに出す物じゃねぇな、やめとこ。

後で責任取れないもん。

 

「そうか。ならまぁ奴隷ってどんな感じのことさせたりするんだ?ソフト?」

 

「だからゾクトだよぉ!!!....はぁ、奴隷によくボンボンがやらせてるのは.....」

 

疲れた様子で俺たちに奴隷の振る舞いを教えてくれるゾクト。

その目にはもはやいつ罠にかけようかと爛々と輝いていた眼光は失われ、くたびれた中年がそこには居るだけであった。

 

 

 

 

「おっ、ゾクトの旦那!お帰りか!!ん...その人らは.....」

 

ネオンの輝きを眼前に湛えた街ヨミハラ。

その玄関口にて、一人の警備員がゾクトを見て手を挙げる。

その傍には犬。

犬と言ってもダックスフンドやトイプードルのような可愛い物ではなく、軍用犬のような厳つい奴だ。

しかも異形と来ている。

多分強い。(小並感)

 

「ん?あぁ。この方は俺の得意様でな。対魔忍好みの坊ちゃんだ。今日はヨミハラでの遊びの手ほどきを頼まれていてな。」

 

ゾクトは警備員にそう言う。

よっぽど疲れたのか、ゾクトは下手な事を行おうとはしていなかった。

そして、俺もゆっくりと前に出る。

いや、前に出させた。

 

「どうも、すいませんねこのような有様で。車が少し間抜けでして....。おらっ!ご主人様に恥かかせやがって!!謝れ!!」

 

「ご、ごめんなさい!ご主人様ぁ!すいませんでしたぁ!!」

 

警備員は唖然としただろう。

そこには奴隷を車扱いしながら奴隷に暴力を振るっている少年が居たのだから。

奴隷は褐色でツインテールの顔も整った少女。

 

まぁ要するに俺は今ゆきかぜをタクシー代わりにしている。

どうやら金持ちの坊ちゃんはこういうことをよくやるらしい。

正直、ゆきかぜをぶつのはちょっと怖い。

事実、奴隷の振りをしてくれはするが、微かにギリギリと歯軋りの音がする。

そうとう俺の自分への行いを我慢しているのだ。

 

まぁでも?

今まで脛蹴られたり、噛み付かれたりしていた女に乗るって言うのはやぶさかじゃない。

はえ~こんな景色があるなんて。

....奴隷の主、悪くない。

 

「この二人は対魔忍でな。なんとこの坊ちゃんも対魔忍と繋がってんだ....コイツら捕まえられたのも坊ちゃんのおかげなんだぜ....。」

 

「そ、それは.....やべぇな、同じ勢力の仲間を...上の奴にしてはイカレてるぜ......」

 

警備員が俺を見る。

疑っているのか....ならばアピールするしかない。

結局ミスったら全部ゆきかぜの忍術で消し飛ばすんだ。

やれることやっておこう!!!

 

「コイツの出来る技は、バックはもちろん、ローソク、鞭打ち、それから…小便を飲んだりも、クソを食ったりも、調教したから出来るようになってるんすよ。どうです?中々のM奴隷でしょ。」

 

「そ、そんなことまで....この年で仕込んだのか....。」

 

なんかホモビのセリフアレンジして吐いたら警備員のおっさんが驚き出した。

しかし、ここではただの俺の戯言扱いされるかもしれん!

念には念を入れて、ケツを叩きながらゆきかぜに言葉を浴びせる。

 

「なぁ!?色々仕込まれてどうだ!?えぇ?幸せかお前!!?」

 

ケツを叩くと、身体がビクンと揺れた後、ガギィと言う歯軋りの音が一瞬聞こえてくる。

その音を聞くと背筋がスッと寒くなった。

許して....許してクレメンス....

俺は悪くねぇ!全部、ゾクトがやれって言ったんだ!!俺は悪くねぇ!!

 

心の中で豚に責任転嫁すると、ゆきかぜがゆっくりと口を開き始める。

 

「ご、ご主人様にバックから責められて、むち打ちされるとペットになった気分で気持ちいいです...。ろうそくを垂らされると、熱くて熱くてご主人様ぁ...ご主人様ぁ...って頭の中がご主人様でいっぱいになります...。大好物はご主人様のクソと小便です....私、ご主人様の奴隷で幸せです....ご主人様大好きです....。」

 

「す、すげぇ....こんなことまで言わせられるなんて.....」

 

警備員のおっさんは更に面食らってた。

そんでもって俺も面食らってた。

何だコイツよくそんなセリフ思いつくな....。

 

「お、お前....そういうコンテンツよく見てたりするの?偉く流暢に言葉が出て来たけど....」

 

「...アンタ、殺すわ」

 

小声でそう問うと、小声で返事が返ってきた。

まるで地獄の底から響くような声。

これ、死ぬかもなぁ。

どうやら藪蛇だったようだ。

踏んではいけない地雷を踏んでしまった後悔と、後には戻れない諦観が入り混じる。

俺、同級生の上でこんな気持ちになるなんて思わなかったよ母さん。

 

そして警備員のおっさんは俺を見た後に、口を開いた。

 

「...百年に一度の稀代のクズだ...こりゃ。」

 

「え?」

 

思わず聞き返してしまう。

ど、どうした警備員のおっさん。

なんか偉く感動している様子だが....。

 

しかし、おっさんは呆気にとられている俺にサムズアップする。

なんだその爽やかさ。

2000の技を持つ男かよ。

青空になりそう。

 

「安心しな、アンタみたいなクズにとっちゃこの街は天国だ。飽きるほどに溺れちまいな!ようこそヨミハラへ!!!通って良いぜ。おらっ、犬っころ!うるせぇ!!!」

 

ひたすらこちらに牙を剥き、噛み付こうとする犬をぼやきながら制止する。

俺はそんな彼に会釈する。

 

「それは楽しみだ...それでは。」

 

「じゃ、じゃあな!」

 

ゾクトも手を挙げて彼に別れを告げた。

 

 

....ヨミハラに入るの、なんか成功しちゃったよ。

 

ゾクトを見ると項垂れていた。

 

「どうした、ゾイド?」

 

「....あの犬は対魔忍に反応して襲い掛かる対対魔忍用の番犬なんだ。まさかアイツ自身が抑えちまうなんて....てめぇ、なんで通過してやがる......」

 

ゾクトが信じられないといった表情をする。

俺もよく分からない。

ただ、分かることいえばゾクトはもう自分の名前を訂正する気力もないこと、自分が何もしなくてもあの犬が嗅ぎつけてどうにかするとさっきは思ってたという事だろうか。

従う振りして俺たちを始末する気満々だったということだ。

....それって背信行為じゃないか?

許されんだろう。

処す?処す?...処す!

 

訓練された軍用犬は人を容易く殺すことが出来る。

ましてやあれは異形の犬。

人型ならいざ知らず、犬では普通にやられていたかもしれない。

...まぁ結局いざとなったらゆきかぜの雷撃で消し飛ばしてもらうんだけど。

 

でも危なかったのは事実だ。

あの警備員のおっちゃんが俺を稀代のクズ認定しなければ通れなかった。

だからこそ....。

 

「なっ....なぁ。もう良いだろう?ヨミハラへの案内は終わりだ!俺はもうお前らには付き合い切れねぇ!自由にしてくれるって言ってたし許してくれよ!なっ!?」

 

浅ましくそう懇願するゾクト。

面の皮が厚いにも程がある。

とはいえ少し弄りすぎたかもしれない。

俺はゾクト君の目を見て、しっかりと言葉を告げた。

 

「まだだよ。入れたら自由にするとは言ったけど、ヨミハラに入れたらとは一言も言ってない。アンダーエデンまで案内しろ。」

 

そう言うと、ゾクトはこちらを睨みつける。

 

「クソガキ...足元見やがって.....」

 

「随分偉そうになったね。死にたいの?」

 

武装している相手に悪態吐けるとかコイツすげぇな。

尊敬しちゃうわ。

それはそれとして殺すけど。

 

するとゾクトが笑みを浮かべた。

 

「テメェは自分が優位に立っていると勘違いしてるがそれは思い違いだ...ここは闇、俺達の領域だ。下手なことすればこの街全体から睨まれる。テメェは街敵に回して生きていけんのかよ....」

 

どうやら彼は自分の領域に引き入れたことでこちらより優位に立っているつもりらしい。

確かにここで銃なんかぶっ放そう物なら誰に見られるか分からない。

そしてゾクトは奴隷商人。

この街の稼ぎに貢献しており、何人かとも顔が効いてそうだ。

俺は拳銃を下げる。

するとゾクトは勝ち誇った笑みを浮かべた。

さしずめ勝負に負けて試合に勝ったかのような心境だろう。

 

「....コイツ、私がやろうか?」

 

隣のゆきかぜがそう耳打ちしてくる。

しかし、そういうわけにはいかなかった。

俺は首を横に振るうと、肩を落とす....振りをする。

そして、そのままジャンバーの内ポケットに手を突っ込むとナイフを二本取り出した。

 

一瞬身構えるゾクト。

だが、もう遅い。

瞬時に二本を投げる。

それは彼の左右に突き刺さり、逃げ道を塞ぐ。

そしてその隙に肉迫して蹴りを放つ。

 

脚をピンっと、伸ばす!

すると伸ばした動きに連動してブーツの靴先から仕込んでいた薄いナイフが飛び出す。

なんとか逃げようとしたゾクトはその予想外の機構に対応できずにナイフが防ごうとした腕に刺さる。

 

「っ...!!」

 

痛みで表情を歪めるゾクト。

そしてその間に一歩踏み込む。

そしてシャツの袖に通していた千枚通しを引き抜くと、そのまま喉に勢いよくぶっ刺した。

 

「ごひゅ!!...ひゅ...ひゅ,,,,」

 

「...これで叫べない。」

 

叫ばれるとまるでRPGの雑魚敵並みになんか来そうだからなぁ。

この豚、そこそこ名前知られているっぽいし。

ゾクトは痛みと驚きから目を見開いた。

ソイツに笑顔を向ける。

 

「ゾクト君。友達として教えてあげるけど....俺は勝ちを確信した表情をする奴がそれを取り上げられた時の顔を見るのが好きだし、反対にお前みたいな明らか格下の奴に勝ち誇られると凄く腹が立つんだよねぇ。そんでもって自分でも自覚しているけど、お前と同じく弱い相手には強く出るタイプなんだよ。俺。」

 

そう言ってゆっくりと屈むと、彼の左右の地面に刺さっているナイフを抜き取り、彼の腹に突きつける。

彼は今にも腹を掻っ捌かれかねないという恐怖からか動けない。

 

「ちょっ....アンタ.....」

 

ゆきかぜが後ろでなにか言おうとしている。

けど、それどころじゃないんだよなぁ。

この豚さっきから媚びへつらってたくせに上に立った気でいい気になりやがって....

勘違いしてやがるのだ。

俺は勘違いしている奴が大嫌いだ。

自分の立場を知れ。

自分でも分かるが、バチギレ状態だった。

それにここぞとばかりに訓練などで溜まっていたキチゲも放出する気でいる。

まぁ端的に言えば、良い八つ当たり先が見つかったのだ。

 

正直、アンダーエデンは自分達で聞き込みなどして探せばいいのでコイツはもう必要ない。

だけど挑発してきたのでこのまま許すつもりも毛頭ない。

ストレス発散に使おう。

連絡係らしいが、正直奴隷として潜入するという作戦は俺自身乗り気じゃないし、結局アンダーエデンもゆきかぜに出入り口を電撃でぶっ飛ばして、凜子の空遁で侵入してヨミハラ無双すれば良いんじゃないか?って気がしてきてるし。

はっきり言ってここまで来て、勝ち誇る豚を見て萎えて来たし、面倒くさくなってきたのだ。

 

「ゆきかぜ、どっか適当な建物の中にコイツ運び込むぞ。」

 

「ちょっ、何する気よ!」

 

ゆきかぜが聞いてくる。

俺は彼女の方を見ずに答えた。

 

「コイツ、なんか舐めてるからな。立場を分からせる。別に殺さないよ、ただ耳切って鼻を削げば流石に自分の立場を弁えてくれるかなって」

 

そういうと、彼女は溜息を吐いた。

 

「...気持ちはわかるけど、とりあえず落ち着きなさい。....ゾクト、もう一度コイツの代わりに聞くわ。アンタ、アンダーエデンの場所知ってる?」

 

ゆきかぜがそう聞くと、ゾクトは首を縦に振った後に痛そうに表情を歪めた。

首に千枚通しが刺さっているからだろう。

するとゆきかぜがこちらを向いて言葉を続ける。

 

「ならコイツはまだ利用価値があるわ。....普段のほほんとしているアンタがそこまでキレてどうすんのよ。そういうのって自分で言うのもなんだけど....私の役目でしょ。アンタ見てたらコッチが冷静になったわ。」

 

「....この豚の言う事が信じられるとでも?」

 

俺が問うと、ゆきかぜは呆れた表情で言葉を紡ぐ。

 

「少なくとも喉刺されながら嘘が付ける程の胆力はコイツにはないわ。」

 

「...上の奴らもそうだけどさ、こういうのは一度ボロクソにしないとこちらの足をすぐ掬おうとする。俺だってそうだけど、一度立場を分からせた方が良いんじゃない?今までの生ぬるいやり方がこうやって舐められる原因になってる気がするんだよなぁ?知らんけど。」

 

まぁ上層部がどういう対応をこの豚にしてたのかは本当に分からないが、少なくとも最低限人権には留意していたのがこの男の健康具合で分かる。

そしてこういうクズはそういう付け入る隙があったら容赦なく付け入るし、遠慮なくこちらを舐める。

そういう救いようのない生物なのだ。

自分も似たような物だからよく分かる。

するとゆきかぜが咎めるような視線を向ける。

 

「アンタとそいつは全然違うわ。その的外れな同族嫌悪やめなさいよ。....アンタがさっき言ったけど、任務達成には私情を捨てる。それが求められている対魔忍像、そうでしょ?」

 

「....俺、対魔忍じゃないもん。」

 

ぐうの音も出ないのでぼやくようにそう呟く。

すると彼女は呆れを通り越して少し笑った。

お前....今、俺の事笑ったか?

 

「なに拗ねてんのよ...そいつは私に任せて、アンタは少し休みなさい。色々あって疲れてるのよ、アンタ。」

 

そう言ってくるゆきかぜ。

別に俺は疲れてはいない。

....が、確かにここでごねる必要もないな。

そう思うと、ゾクトの首に深々と刺さった千枚通しから手を放し、凜子の拘束を解きに向かった。

 

「別に勘違いしないで、ただアイツの暴走を止めただけ。引き続き、アンタを利用させてもらう。....けど少しでも不穏な動きを動きを見せたら容赦なく撃つわ。潜入任務は駄目になるけど、本来の目的はお母さんの捜索と救出。やりようなら探せばあるはず。死にたくないなら大人しくしなさい、どうせ喋れないんだから。分かったわね?」

 

ゾクトに歩み寄ると、銃口を突きつけながらそう言うゆきかぜ。

....確かに冷静な様子だ。

ゆきかぜの様子を見ながら、拘束具を解く。

すると凜子は目隠しとギャグボールを外し、周りを見てこちらに聞いてきた。

 

「こ、これは....どういう状況なんだ?」

 

...凜子を完全な奴隷に仕立てた代償に、説明する手間が生じてしまった。

面倒臭.....。

そう思いながらも、キョトンとしている凜子に事の経緯を語っていくのだった...。




任務中に対魔忍をハメる為にヨミハラへ向かうゾクト。
(振り回された)疲れからか、不幸にも黒塗りのナイフに衝突してしまう。
後輩をかばいすべての責任を負った三浦に対し、車の主、暴力団員谷岡が言い渡した示談の条件とは・・・。
ゆきかぜをヨツンヴァインにして辱めたのは私の趣味だ、良いだろう?
次回は多分ヨミハラでなんかします。
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