「さて、これからどうするんだ? マスター」
ライダーの問いに対して、慎二は顎に手を置き、考える。
「そうだなぁ……。まずはキャスターかアサシン辺りを脱落させておきたいところだけど……」
特にキャスターはな、とつけ加える慎二。
「敢えてキャスターの首を獲りに行くのか?」
「ああ。正直、キャスターは今回の聖杯戦争の中で、かなりのトリックスターになると思ってる。たとえば、サーヴァントとマスターのパスを断ち切る宝具を持ってるとか、かな。もしそんな宝具を使用されて、セイバーかランサー辺りがキャスターの手駒になったら、こちらは目も当てられないからな」
疑問を呈するライダーに、慎二はそれとなく今回のキャスターの情報を示す。
ライダーはなるほど、と頷き、納得する。
「ま、とりあえず、今のが僕としての方針だ」
「了解した。ひとまずは、その方針に従おう」
槍を霊体化させ、ライダーは応じる。
それに慎二は安堵し、胸を撫で下ろし、息をつく。
そのとき、会話に横槍を差すように小屋に冷たい風が入ってきて、慎二の背中を通り抜けていった。
よほど冷たかったのか、慎二は腕を肩に交差させ、ガチガチと歯を鳴らす。
「……寒いから、そろそろ屋敷に入らないか?」
こいつ、大丈夫か? というような表情を一瞬浮かべるも、ライダーは「おう」と答え、霊体化する。
慎二は身を震わせ、ライダーと共に本邸へ戻ろうとする。
いざ扉に手をかけた瞬間、慎二の背中を先ほどとは全く違う寒気が伝った。
「ク、ハハハハ! まさか貴様が、令呪を宿していようとはな! 予想もできんかったわい!」
間桐臓硯が不気味な笑みを浮かべ、慎二の背後に立っていた。
咄嗟に振り返る慎二だが、眼前にはすでに臓硯の使役する蟲が迫りきている。
しかし、それらは瞬きもしないうちに殺されていた。
「――おっと。俺のマスターには手出しさせんぞ」
ライダーがいつの間にか霊体化を解き、殺していたのだ。
ライダーは槍を薙ぐように払い、臓硯に穂先を向ける。
「さて、と。俺のマスターを殺そうとしたってのは、俺に宣戦布告するって意味だ。この意味が――わかるな? 老魔術師」
殺気がこの場の空気を、一瞬で支配する。
しかし臓硯は、顔色ひとつ変えなかった。
「ハハ、ハハハハハ! そうかそうか! ワシを殺す、ということか!」
臓硯の哄笑が小屋に響く。
「やれるものなら、やってみせるがいい! ライダー!」
臓硯がそう言い放った刹那――ライダーの槍の如く鋭い蹴りが臓硯の頭蓋を穿った。
いきなりの一撃に、臓硯は反応もできず壁に叩きつけられ、そのままもたれかかる。
唸るような声を捻り出す臓硯の前に、ライダーが立ち塞がった。
「どうした、こんなものか? あっけないぞ」
そう挑発しながらも、いつでも槍を突けるよう構える。
「……ジジイ」
そんな中、慎二は憐れむような眼差しを臓硯に向けていた。
ライダーはそれを察してか、慎二のほうを一瞥する。
「……いいんだ。殺ってくれ、ライダー」
この瞬間、小屋の壁に深紅の花が描かれた。