「――まずいことになったな、マスター」
「んー……」
顎に手を置いて悩む慎二に、ライダーは畳みかける。
「あの金ピカ野郎と俺の相性は最悪だ。あいつが射つあの宝物は、必ず俺の身体を抉り、場合によっちゃ、踵を穿たれる最悪な事態にもなりかねない。それが、俺の見解だ」
悔しそうに拳を握りしめるライダー。
だが、その見解はあながち間違いではなかった。
あの場では収められていたが、ライダーは英雄王の神性を確かに肌で感じ取っていた。それも、ライダーが不死たる所以の宝具を打ち破れるほどの。
その宝具は、ライダー――駿足の英雄アキレウスを語るうえで欠かせない逸話が基となったものであり、彼が母神テティスから授かった肉体である。
その名は――『
しかしあの英雄王は、その宝具を無視し、かすり傷ではあるが、確かにアキレウス――ライダーの頬を斬っていた。
となれば、答えは明確であった。
「あんの金ピカ野郎、神性を有してるうえ、反応速度や敏捷こそ俺が勝っているものの、それらを全て潰してしまうほどの手数を持ってやがる……」
目を閉じつつ苦虫を噛み潰したように歯を食いしばりながらも、ライダーは英雄王ギルガメッシュの脅威を認める。
「本当ならそんな奴と戦いてぇ。でもな、流石の俺でも時と場合は弁えるさ。
それにマスター、聖晶石? だったか。あれ、もうほとんどないんだろ? だからしばらくは、癪だが様子見に徹することにしねぇか?」
慎二はそんなライダーの提案を聞き、目を見開く。ライダーの性格を鑑みて、予想外の一言だったからだ。
だが実際、戦いの素人である慎二にもその理屈は通っていた。
万全ではない状態で、不利な相手と戦えばどうなるか?
無論、敗北はほぼ確実だ。
ライダーは遠回しに、そう言いたかったのだろう、と慎二は勘繰る。
「わかった。ならそうしよう。しかし、様子見はいつまでにする? 俺としては、三日ぐらいが好ましいけど……」
慎二の意見にライダーは首肯する。
どうやら、ライダーに異論はないようだった。
「ってことで、今日から様子見だな。あっ、ライダー。それと俺は学校に通い続けるからな。絶対に休むとかしないからな!」
頬を膨れさせ、慎二は釘を刺した。
ライダーは一瞬戸惑うも「まあ、いいか……」と諦観し、床に寝転んだ。
晴れた夜空では、月が妖しげに輝いていて、なにかの凶兆にも見える。
「……なんか、嫌な予感がしてならん」
窓からそれを眺めるライダーは、ひとり呟いた。