「ひぃ! うわあああ!」
俺を襲ってきたオルフェノクは急に叫び声を上げて逃げ出した。
「逃がすか!」
すぐに手甲をしまい、走り出して追いかける。どうやら足は俺のほうが早いらしい。どんどんオルフェノクとの距離が縮まる。
「待てコラ!」
オルフェノクに飛び掛かり、引き倒す。相手はたまらずに倒れて転がる。俺はすぐに体勢を立て直してオルフェノクに近づく。
「おい、あんた! 何で俺を襲ってきた? 理由を言え!」
倒れているオルフェノクに聞く。
俺はジュエルシードのおかげで変身出来たけどこの近くには俺の住んでいる孤児院がある。こいつを止めないと心配で夜も眠れなくなる!こんな事は確実に止めてもらう!
「ひ、ひぃ……」
男の変身が解け、人間態に戻る。
やっぱりおかしい。まだ条件が対等になっただけなんだぞ?怯えすぎだ。こんな男が俺みたいな子供とはいえ襲ってくるとは思えない。
「あんた、もしかして脅されているのか?」
男は震えていて何も話さない。
「沈黙は肯定と受け取るぞ。……なるほど、殺して来いと脅されているが簡単に人を殺すのは抵抗がある。だが孤児なら他に悲しむ人間がいない。だから少しでも気が楽になる奴を殺しに来た訳か」
「ち、ちがっ!」
「違うとしてもあんたがここの孤児院の皆をいつか襲わないとも限らない。だから……」
手甲を出してしっかり握り締める。
「ここで再起不能になってもらう!」
「ひぃいいいい!」
男が走り出す。すぐに道を曲がり見えなくなってしまった。逃がすか!
「待てコラ!」
俺もすぐに道を曲がるがすぐに立ち止まってしまった。
「…………」
曲がった先にさっきのオルフェノクとは違う男の人が立っていたからだ。
さすがにマズイ。偽者とはいえオルフェノクの姿を見られた。どうする?にげ……いや! ここで逃がしたらまた来るかも知れない。ここで逃がすわけにはいかない! この男の人には悪いけど少しスプラッタなシーンを見てもらう!
だが俺のその一瞬の逡巡の間に男の人は行動していた。まるでこんな事は日常茶飯事でいつもオルフェノクと会った時にはこうしているとでも言うかのように、男の人は持っていたアタッシュケースをあけ中にあったベルトを巻いて携帯を開いていた。
9・1・3・Enter
【Standing by】
「ま、まさか!」
仮面ライダーだと!
「変身」
男の人は携帯をベルトにセットする。
【complete】
ベルトの音声と共に男の人が黄色の閃光に包まれ姿が変わる。
黒い鎧に青く輝く複眼。そして闇を塗りつぶすかのように眩く輝く黄色の線が不気味に光を放っていた。
ま、拙い! こんなタイミングで仮面ライダーに、しかもカイザに出会ってしまうなんて!
ファイズに出ていた仮面ライダー。ディケイドにも敵役で一度出てきていたから知っている。たぶんだけど悪役ライダーだ。主に銃とビームサーベルみたいな物で戦っていた。
だけど、本当に悪役なのか? カイザの行動は明らかに俺がオルフェノクを倒そうというのを阻止するものだった。もしかして悪役じゃないんじゃ……
俺がそんなことを考えている間にカイザは次の行動に移っていた。腰についている銃を取り出し俺を撃ってきた。黄色い銃弾が噛み殺そうと襲い掛かってくる。
「ぐあっ!?」
拙い。避けないと……
だがカイザは避けることも反撃することも許さないとばかりに銃を撃ち込んでくる。体を削る痛みが俺をその場に釘付けにして避けさせてもらえない。
「あ……あぐ……」
俺は堪らず倒れてしまった。
「これで終わりだ」
カイザがベルトについているメモリを取り、腰についている望遠鏡のような物にセットする。あれはたぶんファイズと同じような蹴り技に使う物の筈だ。
俺を殺すつもりだ。でもまだ諦めない! まだ死ねない! これはチャンスだ! 一か八か変身をといて俺が人間だという事を伝えるんだ。
「ま、待ってください!俺はオルフェノクじゃありません!」
俺は変身を解き、カイザを説得する。
「何!?」
カイザが驚いて動きが止まる。俺が正体が子供だった事に驚いたんだろうか? とにかく今はカイザを説得しないと……
「俺は……この宝石の力でオルフェノクの姿に変身できるんです」
俺はいつの間にか手の甲に埋まっていたジュエルシードを見せて言う。
「でもオルフェノクじゃない! さっきの男の人を追いかけていたのは、あの人がオルフェノクで俺の住んでいる孤児院を狙っていたから仕方なく撃退して……撃退しただけです!」
再起不能にしようとしたとか言ったらやばいかも知れないからそれは伏せて真実を言う。
「どういうことなんだい? 聞かせてくれないか?」
カイザが変身を解いて話しかけてきた。
危なかった。マジで殺されるかと思った。
俺は何とか生き残ったことに安心しホッと息をつく。
カイザである草加雅人に事情を説明する。ジュエルシードの事、魔法の事、それをなのはと一緒に集めている事、すべて話した。
「なるほど、大変だったね」
「いえ、俺は戦闘が出来なかったんで戦うのはその子に任せてたんです。だから俺がやったことはジュエルシードを探すことだけでその子に比べたら俺なんてぜんぜん」
「そんなことないさ。戦っている時もその子の傍に居たんだろう? 戦えないのにそんな事が出来るなんて勇気があるじゃないか。勇気があるんだね」
「……ありがとうございます」
草加さんは俺の話を真剣に聞いてくれた。
「あの! ……ファイズを……乾巧さんを知っていますか?」
俺は思い切って聞いてみる。草加さんは驚いて目を見開く。
「そいつがどうかしたのかい?」
「俺があの姿になる前にオルフェノクに襲われた事があって、その時に助けて貰ったんです。俺はあの人に命を救われました。でもあの人は自分の事は何も話してくれなくって、俺……乾さんにお礼がしたいんです!」
「そうだったのか……俺は乾巧を知っている。けど会うのは止めておいた方が良い」
草加さんは少し考えてそう言った。
「え? どうしてですか!?」
「彼が助けた君にあまり言いたくないんだけど……彼は、乱暴な男なんだ。ファイズの力を自分が楽しむために、自分の力を試すためにファイズの力を使っているんだ」
「そんな事は!」
「いいや、あいつはそういう奴なんだ」
草加さんは頭を振り悔しそうに言う。
「それでも、会いたいんです。会って、お礼だけでも言いたい」
「……わかったよ。そこまで言うなら教えてあげよう。菊池ってクリーニング屋に行くといい。そこであいつは働いている」
「わかりました。ありがとうございます!」
「気にしないでくれ。ただ、本当に乾巧には気をつけてほしい」
「はい」
「もう遅い時間だね。送っていくよ。この先にある孤児院でいいのかな?」
そう言ってくれた草加さんに俺は孤児院の入り口まで送ってもらった。
「ありがとうございました。ここまで送ってもらっちゃって」
「別に構わないさ。さっきオルフェノクに襲われたんだろう? このあたりも物騒になってきたし、それにお詫びって訳じゃないけどさっき君に酷い事をしてしまったからね。すまなかった」
そう言って草加さんは頭を下げてきた。
「そ、そんな事しないでください! ちょっと痛かっただけで体は大丈夫でしたから!」
「そうかい? 本当にごめんね。……それじゃあ、俺は帰るよ」
「あ! 最後に一つだけ聞きたい事があるんですけど」
「ん? なんだい?」
草加さんが首を傾げながら言う。
「仮面ライダーディケイドって……知ってますか?」
俺が質問すると、草加さんの目が真剣な物になる。
「また新しい単語だね。ディケイド……十番目? 仮面ライダーってやつの十番目ってことかい?」
「……いいえ。知らないんなら大丈夫です。今日はありがとうございました」
「そうか。うーんちょっと気になるけど、今日は時間も遅いしね。今度、機会があったら教えてくれるかい?」
草加さんは苦笑いして言う。俺はその言葉に頷く。
「それじゃあね」
そう言って草加さんは帰っていった。
「ふあぁ! 今日は疲れた!」
ベッドに倒れこむ。色んな事がありすぎだろ今日は。サッカーの応援にジュエルシードの暴走に巻き込まれたり、オルフェノクに襲われ、オルフェノクに変身して更にカイザに襲われるなんて。今日は厄日だ。
「……草加さんかぁ」
悪い人じゃなさそうだよなぁ。巧さんと確執があるみたいだけど。巧さんぶっきらぼうだし、ちょっと言い方が乱暴なんだよなぁ。そこら辺で勘違いされちゃってるのかなぁ。良い人だと思うんだけど。
「なんとか仲直りさせられないかな……って、なのはと喧嘩別れしちゃった俺が出来るわけないか」
やっちまったなぁ、あれも。まさか高町なのはが泣くなんて誰が予測できるよ。不屈の心を持った女の子。管理局の白い悪魔。
あの子があんな事で泣くなんて予想もしてなかった。……ううん。俺は考えないようにしてきただけなんだ。ここはかなりごちゃ混ぜだけどリリカルなのはの世界でなのはは不屈の心を持った最強の女の子そう思い込んでたんじゃないだろうか。そうだとしたら最低だ、俺。
なのはに何とかして謝らないと!でも、謝りずらい。どうしよう?
Purururururu!
考え事をしていたら携帯が鳴り出した。
「誰だ。こんな時に……アリサ!?」
な、何でアリサから電話が!? そういえば電話番号交換したわ。……ど、どうしよう!? と、とりあえず出ないと!
俺は電話に出る。
「……も、もしもし、アリサさん?」
緊張で声が上ずってしまった。
「拓人……あんた、なのはに何したの?」
アリサが声を低くして質問してくる。『ドドドドドド』という擬音が聞こえてきそうだ。きっと目の前にいたら俺を養豚場の豚を見る目で見てくるんだろうなぁ。……良いかもしれない。じゃなくて!
「いや、あの! ちょっと……いや、かなりキツイ言葉をなのはにぶつけてしまいました」
「……何て言ったの?『詳しく』教えてくれる?」
「いや、帰ってくれ、とか。来ないでくれとか。色んな事言っちゃったから覚えてない」
とりあえず覚えていないことにした。
「……ま、良いわ。追求しないでいてあげる」
ありがたいです。
「でもあんたなのはに謝りなさいよ? あの子の涙声なんて喧嘩した時以来初めて聞いたわ」
やっぱりなのははあんまり泣いたりしない子なんだな。
「どうやって謝れば良いかな?」
「あたしが知るわけないでしょ。自分で考えなさいよ」
「仰るとおりです」
情けないな。自分よりかなり年下の女の子に謝り方を聞くなんて。
「それじゃあね。何があったか知らないけどちゃんと謝っておきなさい」
そう言ってアリサは電話を切った。
謝らないとだめだよな。別にこのまま何事も無かったかみたいに日常に戻る事も出来るけどそれは最初に決めた『この世界を楽しむ』事を放棄することになる。それはダメだ。
俺はこの世界を生きているんだ。ここで止めたら後悔することになる。それは……嫌だ。
「……決めた! 俺はこれから皆を悲しませないように動く! 皆が泣かないように。なのはも! フェイト・テスタロッサも! 八神はやても! 涙を流す未来を笑顔に変えてやる!」
それが、俺の楽しんでこの世界を生きる事に繋がる。
「決まったらすぐに行動! 未来に対してメタを張る! まずは無印の事からだ」
さて、そうは言ったものの。……どうしよう? プレシア・テスタロッサは。
最初から最大の難問が出てきてしまった。
「プレシア・テスタロッサの目的は自分の娘、アリシア・テスタロッサを生き返らせること。そうするためにフェイトを創ってジュエルシードを集めてアルハザードに行こうとしている」
プレシア・テスタロッサは生かしておくべきか? フェイトが悲しむだけじゃ……いや、皆を笑顔にするって決めたばっかりなんだ。最初から諦めるのは良くない。ならどうしよう。あの人はアリシアが死んでいる限りフェイトに優しくしたりはしないだろう。ならどうやってアリシアを生き返らせるかだ。
だけどどうやってやるか? 方法を考えてみよう。
まず一つ。魔法で生き返らせる。不可能だと思う。生き返らせる魔法が無いからプレシアはアルハザードを求めているんだ。都合の良い魔法なんてないと考えるべきだ。
なら次。……石仮面。これなら生き返る。スピードワゴン財閥があるのならばある可能性がある。ゾンビや吸血鬼になった事を生き返るという言い方をするのならばだけど。不可。ダメに決まっている。吸血鬼にした瞬間、アリシアがプレシアを襲うバットエンドしか見えない。
三つ目。これはありえないと思うけど、765プロの異世界訪問で方法を見つける。出来るわけが無い。そもそもあれは二次創作だ。原作でそんなことが起こるわけが無いし、そんなのがこの世界で起こっているのなら管理局がもう介入しとるわ!
四つ目。仮面ライダーの不思議パワー。これかな? これが可能性としては一番ある気がする。仮面ライダーには人が生き返ったりするのが結構な確立で起こってるからな。……ファイズにそんなのがあるか知らないけど。
ブラックの『そのとき不思議なことが起こった』とかアギトの神の力とか龍騎のタイムベント。ブレイドのアンデットやカブトのハイパークロックアップ。電王もデンライナーを使って過去を変えたり出来る。ディケイドなんてそれが全部出来るかもしれない。
「よし! こうなったら仮面ライダーを見つけ出してアリシア・テスタロッサを生き返らせるぞ! まずは事件とかを検索だ!」
そうして俺はパソコンに向かう。
……そのせいでなのはに謝るタイミングを見失って後々泣く羽目になったことは言うまでも無い。
open your eyes the next 555
お久しぶりです! 乾さん!
何しに来た
お礼がしたくて来ちゃいました!
俺にも手伝わせてください! ……変身!
お前……オルフェノクだったのか
お久しぶりです。また投稿させて頂きました。
今回は草加を登場させましたけどどうでしょうか? 草加が良い人に見えますかね?
草加は正直、好きじゃありませんがあの人を惑わせる事が出来る言動や目的のためなら何でもする行動力は尊敬してます。好きじゃないことに変わりはありませんが。
草加が主人公に優しくした理由は木場とかと同じです。
これからどうやって主人公が未来を良くしていくか。悩みどころです。
それではまた次回に会いましょう。