「ここが巧さんの住んでるところか」
俺は草加さんに教えてもらった『西洋洗濯舗 菊池』に来ていた。店には主婦の皆さんがたくさん来ていた。
「意外に繁盛してるのかな?」
クリーニング屋なんて余所行きの服を洗濯してもらうくらいしか用は無いと思うんだけど。まあ良いや。
「ごめんください!」
俺は店の中に入る。
「聞いてよ! うちの息子がね? 最近学校に行ってくれないのよ」
主婦のおばちゃんと店番しているお兄さんが話している。なるほど、こういう事を相談できるくらいのフレンドリーなところが店の特徴か。
「それでね? 啓太郎ちゃん。息子を何とかして学校に行かせるように説得してくれない?」
「わかりました! 、任せてください!」
え?
「本当!? ありがとう!」
「じゃあ、今度の土曜日にお伺いしますね!」
店番していたお兄さんがそう言うと、おばちゃんはお礼を言って帰っていった。
……息子の更正って、親がやれよ。
少しだけ様子を見ていると主婦のおばちゃん達がしょうもない事をお兄さんに相談していった。お兄さんは全部、笑いながら承諾してしまっていた。
すごい店だな。ある意味。
店からおばちゃん達が居なくなったので俺はお兄さんに話しかける。
「すみません」
「うん。初めましてだよね? 僕は菊池啓太郎。一応、この店の店主なんだ。君の名前は?」
お兄さんは俺にそう言ってきた。
店主!? バイトじゃないの!? それであれだけの頼まれ事を引き受けてんの!? ……大丈夫なのかな?この店。
「ん? どうかしたの?」
俺が驚いているのを余所に菊池さんは人懐っこそうな笑顔を見せていた。
「あ、いえ。何でもないです。ここに来たのは人を探していて」
「そうなんだ! どんな人? 特徴は?」
「ここで働いてるって聞きました。乾巧さんって今、いらっしゃいますか?」
「え? たっくん!?」
俺が巧さんに用事があると聞くと菊池さんは驚いた。
「……わかった! ちょっと待ってて!」
少し、戸惑っていたみたいだけど菊池さんはすぐに店の奥に消えていった。
というか巧さんってたっくんって呼ばれてるんだ。俺と一緒だ。……ちょっと嬉しい。
少しすると菊池さんが戻ってきた。
「早くきなよたっくん!」
「うるせえ! 引っ張るな!」
巧さんが菊池さんに引きずられてくる。かなり面倒くさそうだ。
「お前……」
巧さんは俺を見て驚く。
「お久しぶりです! 巧さん!」
「ほら! この子がたっくんに会いに来たんだよ! 何したのさ。たっくん?」
「何もしてねえよ!……何しに来た」
巧さんはぶっきらぼうに言う。
「この前巧さんにオルフェノクに襲われている所を助けてもらった時のお礼がしたくて来ちゃいました」
「そうなの!? たっくん!」
「知るか! 覚えてねえよ」
そう言って巧さんは店の奥に行こうとする。
「待ってください! 覚えて無くても良いんです! あの時助けて貰った事は確かですから。あの、これ受け取ってください!」
そう言って俺はお土産用のお菓子を差し出した。
「いらねえよ。持って帰って親とでも食え」
「あ、いえ。……菊池さん! 代わりに受け取ってください!」
そう言って菊池さんにお菓子を渡す。
「いらねえって言ってんだろ」
そう言って巧さんは菊池さんからお菓子を引ったくり俺に押し付けてきた。
「うわっ!?」
かなりの勢いだったから俺はしりもちをついてしまった。
「ちょっとたっくん! 何するの!? この子はたっくんにお礼がしたいって「余計なお世話だ!もう来るなよ」たっくん!」
巧さんは菊池さんの制止を無視して店の奥に行ってしまった。
「もう! 大丈夫?」
菊池さんが心配して話しかけてきてくれた。
「はい。ちょっと驚いただけなんで」
「ごめんね? 乱暴なんだからたっくんは!」
そう言って菊池さんは俺を起こしてくれた。
「えっと、今日はもう帰ります。これ受け取ってください」
「ありがとう。……そうだ! 送っていくよ! お家はどこかな?」
菊池さんがそう言ってくれる。
「いえ、悪いです。そんなの」
「良いの良いの! 配達のついでだと思ってさ。ね?」
「ありがとうございます。お願いします」
俺は菊池さんに孤児院まで送ってもらうことにした。
孤児院までの道のり、俺は啓太郎さんと色々話した。
「そっか、あそこの孤児院の子なんだ。ごめんね。たっくんが無神経な事言っちゃって」
啓太郎さんが申し訳なさそうに謝ってくる。
「大丈夫です。普通は親が居て当然ですし、知らなかったことですから」
良い人だな啓太郎さん。少し話しただけでこの人が歴代ライダーや某衛宮並みにお人よしだって事がわかる。きっと巧さんも目が離せないからこの人の傍に居るんだろうな。
「それにしても拓人くん大人びてるね。たっくんにも見習って欲しいよ」
「あはは、よく言われます」
実年齢9歳+前世。だからね。そりゃ、大人びもするさ。
「ん?」
前を見ると車の前、道の真ん中に人が立っていた。
あ、やばい。この先の展開見えた。
道の真ん中に居た人が一瞬の内に灰色の異形に変身した。昆虫のような複眼。大きな顎。シマウマのような横縞が特徴だ。蜂のオルフェノクか。
「うわぁ!?」
啓太郎さんが急ブレーキをかけ車を止めた。そのまま首にかけてある携帯を慌てた手つきで開けて電話をかける。
「たたたたたっくん!? オルフェノクが!」
な、情けねぇー。
「に、逃げるよ拓人くん!」
そう言って啓太郎さんが俺のシートベルトを外して車の外に出る。俺もすぐに車の外に出てる。啓太郎さんが俺の手を引いて逃げだした。
「フン」
オルフェノクはそんな俺たちを笑い。追いかけてきた。
速い! このままじゃ、すぐに追いつかれる! いや、追いつかれた!
オルフェノクが先回りして俺たちの目の前に立ちふさがる。
「はっ!」
「うぁっ!」
「啓太郎さん!」
啓太郎さんがオルフェノクに殴られ吹き飛ぶ。
「バカが、逃げられるわけねぇだろ」
オルフェノクが啓太郎さんを嘲笑う。
「う……うわあああああ!」
啓太郎さんが立ち上がってオルフェノクに向かっていく。
「な、何っ!?」
オルフェノクもあれだけ情けなく逃げていた啓太郎さんがいきなり向かってきて驚いたのか啓太郎さんのタックルを受けてしまう。だけど、その程度じゃオルフェノクは倒れなかった。啓太郎さんはオルフェノクを抱き締めるようにしがみつく。
「逃げて! 拓人くん!」
啓太郎さんが俺に逃げるように言ってくる。でも、普通の人間じゃあオルフェノクを10秒も足止め出来ない。すぐに振りほどかれて殺されてしまう。このままだと犬死になってしまう!……だったら!
「いえ! 俺も手伝います!……すぅ……ふぅ……」
深呼吸して心を落ち着かせる。大丈夫。俺の力はオルフェノクに効く!
「見ていてください! 俺の……変身!」
俺は魔力をジュエルシードに集中させて願う。力を! 俺にこのオルフェノクを退けるだけの力をくれ!
次の瞬間、俺はこの前のオルフェノクと同じ姿になった!
「何だと!?」
「た、拓人くん!? 君!」
オルフェノクも啓太郎さんも驚いている。
「うおおおおおおお!」
オルフェノクに向かって走り出す。
「おらぁっ!」
手甲を消してオルフェノクを殴りつける。
「ぐあっ!」
オルフェノクが倒れ、啓太郎さんもその衝撃で転び、オルフェノクから離れた。俺はすぐに手甲を取り出しオルフェノクに振り下ろす。
「ちっ!」
オルフェノクが転がりながら爪を避けて、すぐに立ち上がった。
「まさか、お前もオルフェノクだったとはな」
「なんでこんな事をするんだ!」
「はぁ? てめぇ、同じオルフェノクなのにそんな事もわかんねぇのか? 楽しいからに決まってんだろ? てめぇもオルフェノクなら楽しくやろうぜ? イロイロ教えてやっからよ」
オルフェノクは笑いながら言う。
「断る! 俺はこの力をくだらない事に使うつもりは無い!」
「はっ! 所詮ガキか。正義感丸出しでバッカみてえだ」
俺が断るとオルフェノクは吐き捨てるように言い、手に巨大な槍を出現させる。
「なら、くだらねえ正義感のまま……死んで逝けえええ!」
オルフェノクが槍を突き出してくる。
「くあっ!?」
俺は手甲で掠らせる様に受け流す。
「いてぇ……んなっ! これは!?」
手甲を見ると俺の手甲に溶けたような一筋の後があった。
「俺の槍の毒だ。食らったらオルフェノクとも言えどおっ死んじまうぞ!」
やっかいな能力持ちやがって! 毒なんて今の仮面ライダーじゃあんまり使われねえぞ!
「おら、おらっ! ちゃんと防がねえと死んじまうぞ!」
「う……くぅ!」
何とかオルフェノクの槍を防ぐがもう手甲が溶けてぼろぼろだ。
「おらぁ!」
「ちぃ!」
オルフェノクが槍を薙ぎ払う。俺は何とか反応して後ろに跳んで避けた。
「今度はこっちの番だ! おらぁ!」
俺は手甲を投げ捨て、魔力弾を放つ。魔力弾はオルフェノクに向かって飛んでいく。
「何だこれは? ちっ!」
オルフェノクは簡単に手で打ち落としてしまった。
「なら、連弾だ! でりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!」
「ちょっと驚いたが、鈍いんだよ!」
オルフェノクが魔力弾を横に避け俺に向かってくる。
「うわっ! な、なんか出ろ!」
慌ててそう言うと俺の手に大剣が現れる。
「おらぁ!」
「でりゃ!」
オルフェノクの突きににあわせて俺も大剣を薙ぎ払う。オルフェノクは攻撃の威力に振り回され吹き飛ぶ。
大剣を見ると溶けてはいなかった。どうやらあの槍の先にしか毒は無いらしい。
「ちぃ。馬鹿力が! だが、パワーだけじゃどうにもならねえぞ!」
オルフェノクが連続で突きを放ってくる。何とか防ぐが大剣が溶けていく。
「ぜりゃぁ!」
「うあっ!」
オルフェノクが大剣を薙ぎ払い、俺の大剣を吹き飛ばした。
まずい、また武器を失った。またなんか出てくれ!
俺が願っても今度は何も出なかった。
「ははっ! もう何もでないみてぇだな! なら、これで終わりだぁ!」
オルフェノクが槍を振り上げ振り下ろしてくる。
くそっ! これで終わりか!
次の瞬間、バイクの音がしてオルフェノクが吹き飛ぶ。
「うごぁ!?」
「え?」
「た……たっくん!」
俺はオルフェノクを吹き飛ばしたバイクを見る。そこには……
「巧さん!」
バイクに乗り険しい顔をした巧さんがいた。
巧さんはアタッシュケースからベルトを取り出し腰に巻く。携帯を取り出しボタンを押した。5・5・5・Enter
【Standing by】
「変身!」
携帯を掲げた後、ベルトに挿しこむ。
【complete】
巧さんがファイズに変身した。
「よかった。これで大丈夫だ」
安心したせいか俺の変身が解ける。
「お前……オルフェノクだったのか」
「そうなんですけど、そうじゃないって言うか」
「なんだそりゃ?」
巧さんは訝しげな表情を浮かべる。
「てんめぇえええ! やってくれやがったなぁああっ!」
「ちっ、うるせえな」
巧さんはオルフェノクを一瞥すると俺を見る。
「よくやった。後は俺がやる」
「ははは……巧さんなら任せられます」
あれ……なんかきゅうに……ね……む……
俺の意識は急激に闇に沈んで言った。
「はっ! ここは!? オルフェノクは!?」
「大丈夫!? 拓人くん!」
起きると傍にいた啓太郎さんが話しかけてきた。
「啓太郎さん! よかった、無事だったんですね?」
「うん! ありがとう。助けるつもりが助けられちゃったね?」
「おい。そんな事より、お前、オルフェノクだったのか」
啓太郎さんに割り込んで巧さんが俺に話しかけてきた。
「たっくん! 今はそんな事言ってる場合じゃないだろ!」
「大丈夫です。お話します。この力の事を」
俺は魔法の事やジュエルシードの事、そしてそれを集めていることを話した。
「そ、そんなことしてて大丈夫なの!?」
啓太郎さんが心配そうに言う。
「はい。このまま何事も無ければ普通に終わるはずです」
「何か手伝えること無い?」
「気持ちは嬉しいですけど、魔力が無い人はちょっと……」
「そ、そっか」
啓太郎さんは残念そうな顔をする。
「おい。俺達には関係ないだろ。さっさと帰るぞ」
「ちょっとたっくん! そんな言い方無いだろ!」
「俺達じゃ無理だって言ったんだ。なら関係ないだろ。余計なことに首突っ込むな」
「たっくん!「ほ、本当に大丈夫なんで! ありがとうございます。お気持ちだけで嬉しいです」拓人くん」
巧さんと啓太郎さんが喧嘩を始めそうだったから何とか止めた。
「ふん」
巧さんは興味が無くなったのかバイクに乗ってすぐにいなくなってしまった。
俺はその後、啓太郎さんの車で孤児院に送り届けてもらった。不機嫌なのか終始無言な啓太郎さんと一緒なのはかなり堪えたとここに追記しておく。
open your eyes the next 555
ごめんなのは!
大丈夫。私が何かしちゃったんだよね?
おいたが過ぎるとガブッといくよ?
話し合うだけじゃ、言葉だけじゃきっと何も変わらない。……伝わらない!
灰色の……魔法生物?
こんにちは! 何とか魔法少女リリカルなのは~疾走する本能~の6話目が投稿できました!
それにしても戦闘シーンを入れると話が長い! 読んでくださっている方が長いとか思わないかドキドキです!
次回はなのはちゃん視点! ここにもオルフェノクが出てきてしまいます! どうなる?なのはちゃんとフェイト!
次回もまたお会いしましょう。それではゆっくりしていってね!