平日の夜。私はいつものようにジュエルシードを探し終わって帰ってきたところでした。
Pururururu!
私の携帯電話がなった。電話をかけてきたのは不知火拓人くん。私がこの前、怒らせちゃったみたいで、嫌われちゃったと思っていた子でした。
「……すぅ……ふぅ……も、もしもし?」
「もしもし? なのは?」
電話から聞こえた声は低く、元気の無い声だったけどたっくんの声でした。
「あの……ごめんなさい!」
「え?」
私が謝るとたっくんは驚いた声を出した。
「私が何かしちゃったんだよね? だから、ごめんなさい」
「……え? い、いやいや!謝るのはこっちだよ! なのはにはいきなりあんな訳の分からないこと言っちゃって……こっちこそ本当にごめんなさい!」
今度は私が驚いちゃいました。絶対、私があのジュエルシードを見逃していたことを怒っていたと思ってたから。
「じゃあ、どうしたの?」
「いや、なのはが知ってるかどうか分からないけど、あのジュエルシードが発動した日にサッカーの試合があっただろ? その選手がジュエルシードを持っているって俺は知ってたんだよ」
たっくんは言いづらそうに話してくれます。
「なのに俺はなのはに任せれば良い。なのはなら気がついて対処してくれる。なんて考えちゃって。一緒にジュエルシード探してるのに、なのはに全部丸投げしてた。そう思ったら情けなくて、顔を会わせられなくなっちゃったんだ。本当にごめん」
たっくんは本当に申し訳なさそうに言ってくれた。
「……私もだよ。私もね?翠屋にジュエルシード持っている子がいるって気が付いてたんだ。でも、気のせいだって思っちゃって……あの時、私が気のせいって思わなかったらたっくんも怪我しなかったと思うの。だから、私こそ……ごめんなさい」
「いや、それは……そうなの?」
たっくんが聞いてくる。
「うん!だから私の「なら、俺達二人のせいだ」え?」
「なのはは気が付いてた。俺は気が付いててなのはに丸投げしてた。まあ、明らかに俺が悪いけど。なのはがそう言うなら、俺達二人のせいだな! なのはもそれで良い?」
「う、うん」
「あのさ……これからも一緒にジュエルシード探しても良いかな?」
たっくんが聞きずらそうに聞いてきた。
「うん! もちろん! これからもよろしくね? たっくん!」
たっくんの言葉が嬉しくて私はすぐに返事をした。
その後はたっくんと普通の話をしていました。
「 そういえば、たっくんにあの子のこと言うの忘れちゃったなぁ」
ベットに入って眠る前に思い出したあの子。私がこの前、すずかちゃんの家で出会ったもう一人の魔法使いの女の子。とっても寂しい目をした女の子の事を。
日本国内は全国的に連休になりました。喫茶翠屋は年中無休ですが連休の時はお店を店員さん達にお任せしてちょっとした家族旅行に出かけたりもします。
今回は私のお友達一同……といってもたっくんには来るの断られちゃったけど。それとお兄ちゃんの彼女の月村忍さん。そしてすずかちゃん家のメイドさん達も一緒です。
近場で二泊、のんびり温泉に浸かって日ごろの疲れを癒そうという、高町家の家族旅行としては、いつものプランです。
旅館についてからは旅館の周りを楽しく散策したり、アリサちゃん達やユーノ君と温泉に入ったりしてました。温泉から上がって、廊下でアリサちゃん達と次に何をするか話をしていると。
「ハアーイ!オチビちゃんたち!」
前からオレンジ色の髪をした女の人が私たちに声をかけてきました。
「ふんふん。君かね? うちの子をあれしてくれちゃってるのは」
女の人が私に近づいてそう言ってきました。
「え、え?」
「あんま、賢そうでも強そうでもないし、ただのガキんちょに見えるんだけどなぁ?」
女の人は私の目を見てそう言ってきました。私は訳がわからずに唖然としてしまいました。
そんな私の様子を見かねたのかアリサちゃんが私の前に出て女の人を睨み付けました。女の人は少し下がりました。
「なのは、お知り合い?」
アリサちゃんが聞いてきます。声からしてちょっと不機嫌そうです。
「ううん」
「この子! あなたを知らないそうですが!? どちらさまですか!?」
アリサちゃんがきつく質問しますが、女の人は面白がっているのか、笑いながらアリサちゃんを見下ろしています。
「あははははっ! ごめんごめん! 人違いだったかなぁ? 知ってる子に良く似てたからさぁ」
「あ、なんだ。そうだったんですか」
そう言われて少し安心していると、不意に念話で女の人の声が聞こえてきました。
(今の所は挨拶だけね? 忠告しとくよ? 子供は良い子にして、お家で遊んでなさいね? おいたが過ぎるとガブッといくわよ?)
それだけ言うと女の人は私の横を通って行ってしまいました。
「何なのよあれ!」
「ア、アリサちゃん……」
その後は、女の人に怒ったアリサちゃんをなだめる事になってしまったのでした。
夜になって、アリサちゃん達と一緒に布団に入って寝ようとしたんですが、昼間の女の人が気になって眠れなくなっちゃいました。
(ユーノ君。起きてる?)
(う、うん)
(昼間の人、こないだの子の関係者かな?)
(たぶんね)
(また、こないだみたいな事になっちゃうのかな?)
先週、すずかちゃんの家でジュエルシードが暴走して子猫が大きくなっちゃって、その時に黒い魔法使いの子が来ました。その子は魔法で私を倒して、その後、すぐにジュエルシードを封印してどこかに去っていってしまったみたい。私は気絶しちゃって覚えていないんだけど。
また、あの子と戦うことになるのかな?
(なのは。僕ね? あれから考えたんだけど、やっぱりここからは僕が(ストップ!)っ!)
(そこから先言ったら怒るよ?)
私はユーノ君の言葉を止める。
(「ここからは僕が一人でやるよ。これ以上、なのはを巻き込めないから」とか言うつもりだったでしょ?)
私はユーノ君を撫でながら言う。
(ジュエルシード集め、最初はユーノ君のお手伝いだったけど、今はもう違う。私が自分でやりたいと思ってやってる事だから。私とたっくんをおいて一人でやりたいなんて言ったら怒るよ?)
(うん)
ユーノ君が頷く。
(少し、眠っとこう? また今夜にも何かあるかも知れないからね)
(うん)
その後、私達は布団に入って眠るのでした。
「あ……」
その夜。本当にジュエルシードの発動を感じて私は飛び起きて、服を着てすぐに飛び出しました。
その様子を見ている人がいる事も気がつかずに。
「はぁ……はぁ……」
「なのは」
ユーノ君が運動が苦手な私を心配して声をかけてくれました。
「大丈夫! 急ごうユーノ君! レイジングハート! お願い!」
レイジングハートを起動しながら走って行きます。
「あれは!」
ジュエルシードがすぐ近くに有ってこの前の女の子ともう一人、誰かがいました。
近づくと二人とも私に気がついてこっちを向きます。
「あーら、あら、あら」
その声で、魔法使いの女の子じゃない、もう一人の女の人を見ると、その人は今日私達に声をかけてきた女の人でした。
「子供は良い子でって言わなかったっけか?」
「それを、ジュエルシードをどうする気だ! それは、危険な物なんだ!」
ユーノ君が女の人に言う。
「さあねぇ。答える理由が見当たらないよ? それにさぁ、あたし親切に言ったよね? 良い子でないと、ガブッといくよって!」
女の人がそう言うと女の人の雰囲気が変わりました。
次の瞬間、女の人の体が見る見るうちに人じゃなくなっていきました。
爪が伸びて、体が毛に覆われて、足は二本足から四本に、口が裂けて、目が人から肉食動物の鋭い目に変化していきました。一秒後にそこに居たのは女の人じゃなくて大きな狼さんになっていました。
「オオオオォーー!」
「やっぱり! あいつ、あの子の使い魔だ!」
「使い魔!?」
「そうさ。あたしはこの子に作ってもらった魔法生命。製作者の魔力で生きる代わり、命と力の全てをかけて守ってあげるんだ。先に帰って。すぐに追いつくから」
使い魔さんは女の子を見てそう言う。
「無茶しないでね?」
「オーケー!」
そう言うと使い魔さんは私達に向かって飛び掛ってきました。
「あっ!?」
私がそれに驚いていると、ユーノ君が肩から降りて私の前に立ちました。
私とユーノ君の周りに緑色の光が放たれて丸い球が私達を包み込みます。
「ちぃ!」
使い魔さんはその壁から拒絶されるかのように入ってこれません。
「なのは! あの子をお願い!」
「させるとでも、思ってんの!?」
使い魔さんが壁に爪を立てて壊そうとしてきます。
「させて見せるさ!」
ユーノ君がそう言うと使い魔さんの真下に魔法陣が現れます。
「移動魔法? ……まずっ!」
「ふっ!」
ユーノ君が魔力を込めるとユーノ君と使い魔さんはどこかに消えていってしまいました。
「……結界に、強制転移魔法。良い使い魔を持っている」
「……ユーノ君は使い魔ってやつじゃないよ。私の、大切な友達!」
私がそう言うと女の子が私をにらみつけてきます。
「……で、どうするの?」
「……話し合いで、何とかできるって事、ない?」
「私は、ロストロギアの欠片を、ジュエルシードを集めないといけない。そして、あなたも同じ目的なら、私達はジュエルシードを賭けて戦う敵同士って事になる」
「だから! そういう事を簡単に決め付けないために、話し合いって必要なんだと思う!」
「話し合うだけじゃ、言葉だけじゃ、きっと何も変わらない。……伝わらない!」
そう言って、女の子が杖を向けてきた瞬間。女の子の姿が消えるように移動した。私はすぐに後ろを向く。女の子が移動しながら杖を振りかぶっていた。
[Flier fin]
女の子が振り下ろした杖を少し屈んで避けて、もう一度振り下ろしてくる前に魔法で飛んで攻撃を避けた。
「でも! だからって!」
「賭けて。それぞれのジュエルシードを1つづつ」
追ってくる女の子を説得しようとしたら女の子がそう言ってきました。
[Photon lancer get set]
女の子の杖からそんな声が聞こえる。気がついたら女の子が私の前に来ていて杖を振り下ろしていた。
「わっ!?」
私は攻撃を避ける。すると女の子が振り向いて杖を向けていました。杖から魔法が飛んできます。
[Divine Shooter]
私も魔法を同じ数発射して、ぶつけ合わせて魔法を消しました。
「ま、まっ、きゃあっ!?」
私が女の子を説得しようとしていても女の子は飛び回って魔法を撃ってきていて、説得するどころじゃありません。
[Thunder smasher]
女の子が足を止めて手をこっちにかざしてきます。
きっと、強い魔法だ。
そう思った私もレイジングハートを女の子に向けます。
[Divine buster]
両方の杖から魔法が放たれて、空中でぶつかる。
「レイジングハート! お願い!」
[All right]
私が魔力を込めて、レイジングハートがそれをもっと強くして、魔法に伝わらせる。ディバインバスターの威力が上がって女の子の魔法を吹き飛ばす。その魔法は女の子を巻き込む。
当たった!
そう思った瞬間。
[Scythe slash]
「なのは! 上だ!」
その声が聞こえてきて、私は上を見上げる。
女の子がすごい勢いで飛んできてる。杖から魔法が鎌みたいな形になっていてそれを私に振り下ろしてきた!
避けられない!
私はそう思ってしまって思わず目を閉じる。
…………あれ? 何もない?
私は片目をそっと開いてみた。そこには……
「なっ! 何!?」
女の子の攻撃を受け止めている”誰か”がいた。
「ふっ!」
「きゃあ!?」
その人は女の子を地面に向かって投げる。凄い勢いで女の子が飛んでいく。でも、女の子は地面とぶつかる前に体勢を立て直した。
私を守ってくれた誰かは重力にしたがって落ちていって、女の子と向かい合うように着地した。
女の子はその人を見て言った。
「灰色の……魔法……生物?」
その人は……ううん。人って言っていいのかわからないけど、その人は全身が灰色だった。女の子の使い魔さんみたいに毛の色が灰色とかじゃなくて、全身のその木の幹のようなデコボコや、体のいたるところに生えている、松みたいな葉っぱも全てが灰色だった。
「木の魔法生物!? どうしてこんな世界に!?」
ユーノ君も驚いている。もちろん、私も、ここに居る灰色の人以外が驚いていた。
「あなたの使い魔?」
女の子が聞いてくる。
「ち、違うよ!?」
「そう」
女の子はそれだけ言うと灰色の人に目を向ける。
「何であの子を助けたのか知らないけど……邪魔しないで!」
女の子はそう言うと、得意の高速移動を使って、灰色の人の後ろに回りこんだ。……つもりだった。
「えっ?」
灰色の人はいつの間にか後ろを向いていて女の子と向き合っていました。右手が握られていて女の子の額の前に掲げられています。
「どうやっ」
女の子が驚いて、呆けていると……
ばちーん!
「はぅ!?」
そんな音がして女の子が悲鳴を上げて額を押さえていました。
灰色の人を見ると手が開いていました。
「で、でこピン?」
ユーノ君がそう言って私はようやく、灰色の人が女の子にでこピンをしたのだとわかりました。
「な、何を、はぅ!?」
ばちん!
また音がして女の子が蹲ります。
「くっ! そんな!?」
女の子が高速で灰色の人から離れます。でも、灰色の人の姿が掻き消えたと思うと女の子の前に立っていました。
「フェイト!」
使い魔さんが灰色の人に飛び掛ります。
女の子の名前……フェイトちゃんって言うんだ。
私は目の前の光景にそんな事しか考えられませんでした。私をあんな簡単に倒した女の子が、さらに簡単そうにやられているのを見て、ちょっと混乱しちゃってるみたいです。
「アルフ!」
あ、使い魔さんの名前はアルフさんって言うんだ。
アルフさんも灰色の人に襲い掛かると、いつの間にか避けられていて、でこピンをされていました。
「う、……うぅ……」
「く、くそぉ……」
フェイトちゃんもアルフさんも灰色の人のでこピンでやられていて、戦意喪失しちゃってます。灰色の人は攻撃しないと何もしないみたいで、二人を見ています。
「アルフ。引くよ」
「で、でもフェイト!」
「良いから」
そう言ってフェイトちゃんは私を睨み付ける。
「出来るなら、もう私たちの前に現れないで。もし次があったら今度は止められないかもしれない」
「ま、待って!」
私は帰ろうとするフェイトちゃんを引き止める。
「名前……あなたの名前は!?」
「言う必要があるとは思えない。アルフとも何度も呼び合っている」
フェイトちゃんは静かに言う。
「あなたから聞きたいの!」
「……フェイト。フェイト・テスタロッサ」
「あの! 私は」
私の名前を言う前にフェイトちゃんは魔法を使って飛んで行ってしまいました。
「あんたを次見たら……」
アルフさんは灰色の人を見てそう言い残してフェイトちゃんを追いかけて行きました。
「なのは! 大丈夫!?」
ユーノ君が走って私の所まで来てくれました。
「うん。大丈夫だよ。この人が助けてくれたから!」
私はそう言って灰色の人を見る。
「そっか。良かった」
ユーノ君はそう言ってから灰色の人を見る。
「あの、助けてくださってありがとうございました!」
「あ、ありがとうございました!」
ユーノ君に倣って私も灰色の人にお辞儀する。
「…………」
「? あの[Protection]え?」
灰色の人が何も言わないから不思議に思って顔を上げると、レイジングハートが防御魔法を発動させていて、灰色の人はそれを左手に持っていた大きなナイフで切っていた。
ばちーん!
「はぅ!?」
頭から良い音がして痛みが走る。思わずしゃがみこんで額を押さえていました。それがフェイトちゃんにやったのと同じでこピンだと気がつくのに時間は掛かりませんでした。
「な、何を……はぅ!?」
ぱちん!
抗議しようとしたユーノ君にも灰色の人のでこピンが炸裂していました。
「……」
灰色の人は少しの間、悶えている私たちを腕を組んで見ていました。
「イタタタ……あ……」
痛がっている私たちに灰色の人が近づいてきて、屈んで頭を撫でてきました。
なんだか安心する。
灰色の人に頭を撫でられていて私はそう感じていました。
「……」
灰色の人は少しの間、私たちの頭を撫でていると、立ち上がり、歩いて行きます。
「あの! あなたのお名前は!?」
フェイトちゃんに聞いたように灰色の人にも名前を聞く。
灰色の人は振り返って肩越しに私たちを見ましたが、すぐにさっきと同じ様に消えてしまいました。
「なんだったんだろう? なのは、あの生物の事知ってる?」
「ううん」
「そっか」
その場には、私とユーノ君だけが残っていました。
フェイトちゃんはなんでジュエルシードを集めているんだろう? 灰色の人はどうして私を助けてくれたんだろう?
私の頭の中にはそんな考えが渦巻いていました。
open your eyes the next 555
たっくんジュエルシードが!?
これは、ちょっと色々あってさ
オルフェノクと会ったの!?
オル……フェノク?
あなたの持っているその宝石をください
逃げるんだよーー!
疲れました! 今回は大長編でしたね。ちょっと、長くしすぎましたかね。皆さん的にはどうなんでしょうかこの長さ!
今回はリリカルなのは本編にオルフェノクが出現しました。シダーオルフェノクさんです。とりあえず、木でデカイやつ=縄文杉! くらいのイメージでこのオルフェノクにしました。
ちなみにこのオルフェノク。今後、本編に出てくるかはわかりませんが、スピードだけならゴートオルフェノクより上、って言う設定があります。どうでも良い? そうですか。
さて、それでは次回もよろしくお願いします!
感想や、アドバイス等ありましたらコメントよろしくお願いします!