【掌編集】処刑   作:Z-LAEGA

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変なテンションで書きました


ペンシルゴンの場合

今日はペンシルゴンが処刑される日なので、俺はいつもと比べ30分ほど早起きし、その30分でだいたいのタスクを終了させ、万全の状態で処刑を見られるように、早いうちにデスゲーム・リベリオン・オンライン製品版にログインした。

 

身体を軽く()()()つつ向かう広場、最初に会ったのはカッツォだった。

 

「ようカッツォ―――このゲームではマカッツォだっけ?」

 

カッツォは妙に気合の入ったキャラメイクの女アバターを振り向かせ、

 

「惜しいなサンラク―――正解は、マナカッツォだよ」

 

言った。アァ~~~そりゃ惜しいなぁ。俺は悔しがりつつふと空を見上げて、あまりの曇天に少々顔を顰めた。

 

 

鉛筆がデベリオンに最初にログインしたのは少し前のことだ。

勧めたのは他でもない、俺である。お前このゲーム向いてそうだよな~~みたいな、深夜テンションと話の流れが絡み合った感じに勧めた。だが誰にも言っていない。恐らくレイさん辺りは気付いているだろうが、彼女はどうやら俺を気遣って言いふらさないでいてくれているようだ。ありがたい、本当にありがたい事だ―――何せ俺が()()だなんて知られたら外患誘致罪がどうこう言われるのは()()な流れであり、結果として絞首台がもう一つ埋まることになるのも、その流れの上に存在する確定的事象だからな。

 

正直、俺としても後悔しているところだ―――彼女の持つ資源(NPC)が1000人を超えるのに、2日もかからなかったって言うんだからな。

 

 

少々早く来すぎたかななどと考えながら、しばらくマナカッツォと共に空っぽの絞首台を見つめる―――そんな折、見覚えのある(キャラメイク)が近づいてきた。他でもない……レイさんである。()()()()はどこかに派遣しているのか、周囲には狂信者一人として見られない。軽く会釈すると同じ動作を返してきて、程無くして隣に立った。

 

「けっこう、人が……います、ね」

 

レイさんが言う。シャンフロにおける地位を考えれば、彼女はゲームにおける()()に慣れているだろう―――そのうえで言ってきたとなればこれは緊張ではない、単純に()()()いるのだ。ペンシルゴンという一個人の処刑に、ここまでの人間が集まるという事実に。

 

「そうだね」

 

だから、俺はそう返した。

 

 

鉛筆の存在は、最初はそこまで重視されるものじゃなかった―――ただちょっと頭角を現すのが速いだけのルーキー、そんなイメージだった。でも鉛筆の「絶対吸上(アブソリュート・アブゾーブ)」作戦が各地の強豪NPCをどんどん吸収し始めると、彼女の評価はニューエストルーキーからパブリックエナミーへと様変わりし始めた。()()までそれが止まらなかったから、プレイヤー全体のNPC所持率は下がり気味だった。影響を受けないのなんてそれこそ、レイさんのような()()()()を排除できる魅力-愛玩(ビルド)くらいのものだった。ストローに次ぐストローの末、『打倒鉛筆計画』という名の『魔王討伐計画』が組み立てられ始めるまで、ほとんど時間はかからなかった。

 

 

「これより―――」

 

デベリオンに音声増幅器(メガホン)は存在しない。魔法で近いことはできるらしいのだが、なにせカースポイント関係は色々ややこしいからみんなやりたがらない。だから騒めきの中で張り上げられた()()()()はどこか弱弱しくも聞こえて、なんだか不吉を浮かび上がらせた。

 

「―――ペンシルゴン、公開処刑を執り行う!!」

 

騒めきが一気に―――厳密には、波状を描いて―――止まる。蚊の鳴くような開始宣言のせいではない……()()からだ。すなわち、絞首台をまさに満たす、天音永遠そっくりのその顔を。

 

曇天は、一向に曇天のままだった。

 

 

鉛筆王朝二期は拡大を見せるばかりだった。既に対抗のためのNPCは吸い尽くされ、更に言えばダンジョン各層のボスモンスターすら彼女は掌握し切っていた。しかしあらゆる災禍において、()()は強大なる武器となる―――だからこそプレイヤー達は立ち向かった。本来PvPであるこのゲームを投げ捨て、一周回って団結し。そして勝利を掴み取り、処刑は―――事実上の今クール中の退()()は、今まさに執行の最中にあったのだ。

 

 

物理エンジンによって重力が働き、働いた重力によってアバターが落下し、落下したアバターによって縄が締められ、首が絞められる―――後は簡単だ。窒息によるDoT、若干のもがき―――そして、(爆散)。永く続いた地獄の鉛筆時代に、遂に幕が下ろされた瞬間であった。大衆のうちいくつかの箇所から、溜息が漏れるのが感じ取れる―――『やっと、終わったのか』と。

 

その時、俺の肩を叩くものがあった。

 

()()()()()()()()()()()()()、整った顔つきを維持しながらこう言った。

 

「ひょっとして―――もう処刑、終わっちゃったかな?」

 

俺は頷き、ついでに言っておきたかったことを付け足す。

 

「あの影武者、もうちょっとキャラメイクどうにかならなかったの?」

 

曇天は結局のところ曇天で、何かしらに対する処刑をジィと見下ろしていた。

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