その日、アニマルファイト・オンラインに新規プレイヤーが一人増えた。
その
「へぇ、本当に動物のアバターで格ゲーするんだなぁ……よし、このイノシシにしよう」
そうして肉体を仮置きとしての現実のものから突進攻撃を強みとする四足歩行獣に変更したカッツォエボシは、意気揚々とオンラインマッチをスタートする―――そこが蟲毒なのか楽園なのかすら、判別を付けられていない状態で。
◇
最初に当たったのはライオンだった。一応トレーニングモードで一通りの操作を覚えてきたカッツォエボシは小手調べとばかりに突進と見せかけてフェイントを挟んで
しかし。
「ニャー」
そんな、気の抜けた一鳴で。
「
恐ろしいほどに短い予備動作と、恐ろしいほどに長い攻撃判定残留時間を持つ猫パンチは、猛猪へと無情なまでのクリティカルヒットを入れ。
「ニャーガルル、ニャーガルル、ニャ、ニャーガルル、ニャーガルル、ニャ、ニャーガルル、ニャーガルル、ニャ、ニャーガルル、ニャーガルル、ニャ…………」
そのまま、
◇
「……えぇ?」
カッツォエボシは戦慄した。ハメ技という格闘ゲームにおける明確過ぎるイリーガルが自らの身体を対象として軽いノリで披露されたためである。そもそも無警戒に手に取ってしまったものの、冷静に考えてこのゲームは
「……アレだ、キャラ相性がちょっと極端なのかもしれない」
カッツォエボシは何者かに向けての―――それはひょっとしたら、このゲームを
「……カンガルー、か」
◇
次に当たったのもライオンだった。カッツォエボシはひとまず距離を置きつつ、隙あらば懐に忍び込もうと当然のように直立二足歩行し始めるライオンを睨みつける―――先に動いたのはライオンだった。直立二足歩行をそのまま跳躍姿勢に変え、丁度先程のカッツォエボシの如く
しかし。
「ガオー」
そんな、気の抜けた一鳴で。
「
短めとキャラ説明文に記されている物の普通にそこそこの長さを持つ
「ニャーガルル、ニャーガルル、ニャ、ニャーガルル、ニャーガルル、ニャ、ニャーガルル、ニャーガルル、ニャ、ニャーガルル、ニャーガルル、ニャ…………」
そのまま、
◇
「クソゲーでは?」
カッツォエボシは今更極まりない台詞を吐いた。もはや彼は
「……何か、何かキャラは無いのか」
再び彼はセレクトに戻る。ワニ、サイ、カバ……様々な動物が画面内に文字情報として表示されては、スクロールの波に押され消えていく。そんな中、彼が選び取ったのは。
「……クマ、か」
◇
次に当たったのもライオンだった。カッツォエボシは開始直後にデスロールを受けて十割削られ負けた。
◇
「クソゲー」
カッツォエボシは確信した。ストレスが溜まった脳が、量子波とVRシステムを隔ててアバターをも苛立たせる。彼はもはや対戦ゲームにおけるキャラ差などどうでもいいと考えており、このゲームは全員ライオンで戦って一番ライオンを使うのが上手い奴が勝ちなゲームなのだと推察し切っていた。だからもはや迷うことも無く、誘い込むようにメニューの一番上に記された「ライオン」の文字列をタップすると、急ぎ足で
◇
次に当たったのはライオン、では無かった。カッツォエボシは驚き、咄嗟にプレイヤーネームを―――即ち、眼前の
「……サンラク」
「奇遇だな―――カッツォ」
カッツォエボシは、腕組みをするゴリラに若干の本能的恐怖を覚えつつ言い放つ。
「……このゲームのカラクリはもう知ってるよ、ゴリラだろうが何だろうが、このクソチート百獣の王で蹂躙してやる」
そして、処刑が始まった。