【掌編集】処刑   作:Z-LAEGA

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ルストの場合

無限の風が、()()に受け流されて歌っていた。

 

歌の先に存在する旋風が、突風が、烈風が―――すべてが、異様なほど静かにただ場を駆け巡る。それはまさしく()()のようであり、荒野に対峙する二機のネフィリムの、今まさに切り落とされんとしている火蓋を、これでもかと()()()()ていたのである。

ネフィリムの片方―――八砲微塵(ハッポウビジン)のパイロットたるルストは、機体間通話回線にてもう片方に話し掛ける。

 

『……準備はできた、()()()()

 

もう片方―――三岐腸(プラナリア)のパイロットたるサンラクは、外からは見えもしない頷きを無意味に行い、返信する。

 

『ああ―――無問題だぜ、ルスト』

 

『そう……じゃあ、カウントダウンを始めるね』

 

『……お願い、モルド』

 

【5】

 

『いやちょっと待って?』

 

『……何』

 

【4】

 

『何でモルドが機体に搭乗してるんですかね』

 

『何って……ネフィリムは普通オペレーターとパイロットが一人ずつ乗り込む物だろう?』

 

『……えっ』

 

【3】

 

『……もしかして:オペレーターがいない』

 

『はい』

 

『えぇ……』

 

【2】

 

『うるせェ~~~ッ!!布団が吹っ飛んだ!!!!』

 

『ふ、ふふふふふふふふ』

 

『……モルド、マイク切って』

 

【1】

 

『ま、まあいいさ……これでモルドが使い物にならなくなった以上、状況としては事実上の1対1だ―――負けない、からな』

 

『……それは、こっちの台詞』

 

【0】

 

【START】

 

 

三岐腸(プラナリア)は初手で自爆した。

 

と言っても、何も戦闘を諦めたわけでは無い―――さらに言えば、操作ミスでもない。それは()()()()()()を同時に得るための行動に他ならず、爆発によって舞い降りた鉄塵は、実際の所三岐腸(プラナリア)の加速に恐ろしいほどに貢献していた。かくして黄赤の中量機は戦闘開始と同時に黄赤の軽量機へと()()し、超軽量機並みの加速と共に、眼前の八砲微塵(ターゲット)へと突っ込んだ。彼の機体は、いわば()()()()()()することがコンセプトだ―――すなわち、無駄な武装を戦闘中に爆破し、切り離し、撃ち抜く。コアにダメージがいかない以上敗北とはならないこのネフホロ2において、こういった変形機体は大量に見ることができる。

 

『そこッ!』

 

一方の八砲微塵(ハッポウビジン)は、その断速たる一撃をどう躱したか―――それは。

 

『……甘い』

 

『……()()()()、だとッ!?』

 

三岐腸(プラナリア)が足の裏を少しばかり自爆させ、カウンターに備えつつ呟く―――そして、それはまさに状況を的確に表した発言と言えた。超重量機だった八砲微塵(ハッポウビジン)の機体は、今や()()()()()()()へと変化している。

 

『……可逆的な物でなければ、分離機構を搭載するのは簡単』

 

そして―――その八つ、厳密には七つは、それぞれ理想郷(シャングリラ)における最前線(フロンティア)に相応しい高性能人工知能を搭載されていて。

三岐腸(プラナリア)へと、総攻撃(袋叩き)を―――始めたのだ。

 

『クソがッ!』

 

『……悪いけど、勝たせてもらう』

 

その時、サンラクの脳裏は様々な考えに埋め尽くされていた―――()()()。見た所それぞれにリソースはそこまで振られていなさそうだから、一機落とす分には簡単だ―――だが、()()()()()()()()()()()。ネフホロ2はコアの破壊が必要だから、本体を―――即ち、ルストが乗っている機体を―――破壊しなければ意味が無い。しかし眼前の八機は、舞い踊る閃光(フラッシュ)も相まって()()()()()()()()()()。狙い撃ちは、基本的に運ゲーと化すだろう―――サンラクは、乱数が嫌いだった。

だからこそ、()()()()()()()()

 

『そこだァ!』

 

確実に()()()のを確認すると、一瞬後に発生する膨大たる弾幕を回避すべく()()()()()する―――極めて平たいそれ(プラナリアン)と化した顔面に構いもせず、自爆による加速力を駆使して後ろへと退避し……

 

『……()()()()

 

分析を、完了させた。

()()()()事に対し、AIは基本的に反応しない―――仲間の撃墜真偽はマップで確認することが可能だし、それよりも前方の相手に重機を乱射することが先決だ―――だが、人間は違う。撃墜音に対し、例え思考の中のごく僅か―――それこそ、シナプスを砂粒にも満たないほど小さく使用する程度の―――ものであっても、必ず()()してしまう。そして。

 

『知ってるかルスト―――VRでは、思ったことがそのまま行動に出る』

 

片腕のスナイパーレールガンによる、再びの狙撃。

それはまさしく、当たり(ルスト)を完全に―――そう、完全に撃ち抜いたのであった。

完了した処刑の先には、落ちていく機体が一機だけあった。

 

 

『……妙だな、勝利表示が出ない』

 

サンラクは呟いた。それがボイスチャットに垂れ流されている事にも構わず、眼前の不可思議に外からは見えもしない首を捻った。

 

『ひょっとしてアレか―――確かにルストの乗ってる機体は落としたが、コアは別の機体に入ってるとか?だとしたら、こいつらを順繰りに落とせば―――』

 

その時。

そう―――サンラクは気付かなかった。八砲微塵(ハッポウビジン)の分離先は()()()()()()事に。背後に回り込んだ、構造上特殊な形状にせざるを得なかった、その一機、そしてそれを操縦する―――

 

『―――取った』

 

()()()()

 

処刑の行方は、まだ分からない。




続く
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