INFINITE STRATOS ~The Fourth Knight of Death~ 作:とんこつラーメン
女性権利団体 ドイツ・ベルリン支部。
これまでずっと行方が不明だったこの施設は、意外な場所に存在していた。
首都から遠く離れた、街外れにそびえ立つ廃ビル。
もう随分と長い間放置されていたのか、どこもかしこもボロボロになっていて、どうして解体されていないのかが不思議な程。
だが、その理由はすぐに解明された。
この廃ビルの地下に、ベルリン支部があったのだ。
一体どうやって、こんな場所を確保して、地下になんて場所に支部を作れたのか。
その資金源はどこから手に入れたのか等々…疑問を上げれば尽きないのだが、それでも見つけてしまった以上は排除する他ない。
今回は流石のグレイヴも相当に骨が折れた。
国中のどこを探しても、それらしい建築物が見当たらないのだから。
だが、ある事が切っ掛けとなって突破口が開けた。
前々からずっと怪しいと判断して泳がせていた女が、人気が全く無い廃ビルに一人で入っていった事を怪しみ、もしかしてと思って調査隊を向かわせたら…ビンゴだった。
見つけてしまえばもうこっちのもの。
後は自分達の『秘密兵器』を投入し、一人残らず排除するのみ。
潜伏場所が街外れ、しかも地下ということもあって、周囲に遠慮なんて全くいらない。
故に、今回はいつもよりも重武装で向かう事となった。
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「ぎぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「なんなのよ! なんなのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
「だずげでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
悲鳴と嗚咽と鮮血と銃弾が飛び交う。
これは戦いなんて崇高なものなどではない。
殲滅…否、一方的な虐殺である。
両脚部に三連装ミサイルポッドに、左腕には伸縮機能を持つスパイク・シールド。
両手にはブルパップ・マシンガン、腰部背面から伸びている支持用アームに固定されている折り畳み式のキャノン砲。
全身に武装を身に着けた圧倒的な火力の前に、権利団体の女達は成す術も無く殺されていく。
地下という狭い空間である為、ペイルライダーの青い装甲が真っ赤な血で染まっていった。
(なんて…虚しいんだろう。何も感じないのはいつもの事だけど、今日はそれ以上に…詰まらない)
マシンガンの引き金はずっと引きっぱなしで、吐き出される銃弾が逃げ惑う女達を次々と撃ち貫く。
淡々と作業のように銃を撃ち、弾丸が無くなれば拡張領域から予備のマガジンを出して補充する。
これまでに幾度となくしてきた事だが、今回に限ってはいつもよりも捗っているような気がした。
そうして進んでいくと、妙に開けた場所に辿り着く。
少し前までの彼女ならば、そこがなんなのか理解出来なかったかもしれないが、ハーゼ隊と一緒にいる今のコード80には分かる。
ここはアリーナだ。ISの試合をする場所。
どうして、それがここにあるのか。
そんな事を考えていると、自分が出てきた方とは逆の場所から、碌に整備もされていない事が一発で判明できるほどに消耗しているリヴァイヴを纏った女達が三人やって来た。
「ははははははははははっ! ISさえ使えればこっちのもの!」
「同じ女でも、弱い奴に生きる価値は無い! だが、いい時間稼ぎはしてくれた」
「私達のように選ばれた人間だけが、篠ノ之博士の築く素晴らしき理想郷へと導かれる権利があるのよ!」
仲間達が大量に殺されたというのに、それに対する哀悼の意を示さないばかりか、馬鹿げたことを言い始める始末。
それを聞いて、彼女はある結論へと辿り着いてしまった。
(あぁ……そっか。そうだったんだ。同じ女でも、こいつらはハーゼ隊の人達や織斑教官とは全く違う。あの人達は、こんな殺すしか能のない兵器である私にも優しく接してくれた。あの人達は、私の事を『人間』として見てくれた…)
思わず、マシンガンを握る手に力が籠る。
それと同時に、コード80の中に残っていた最後の慈悲すらも跡形も無く消えてなくなった。
(けど、こいつらは違う。仲間死んでも心を全く痛めないばかりか、気にも留めようとしない。今になって、やっと理解出来た。グレイヴ少将が常日頃から仰っていた事はこういう事だったんだ。ハーゼ隊の人達のような『優しい人達』を、こいつらのような『害虫』から守る為に私達は戦っているのですね……)
装甲の中で、コード80の目に初めて感情が宿る。
その感情の名は『憤怒』。
目の前で未だに叫び続けている『害虫』に対する圧倒的な『怒り』。
「どこの誰かは知らないけれど、同じISならば絶対に私達が勝つ! 何故ならば、私達こそがISに選ばれた……」
ここでリーダー格と思われる女の声が途切れた。
コード80が…ペイルライダーが
それと同時にHADESも発動しており、バイザーと全身のセンサーが彼女の怒りを表すような真紅に染まる。
「五月蠅い…黙れ…!」
「ひぃぃぃぃぃぃっ!?」
両手のマシンガンを一瞬で収納し、ビームサーベルを装備する。
女が構える暇も与えず、瞬きの内に無数の光の斬撃をお見舞いした。
「が…はぁ…っ!?」
ビーム・サーベルの高い攻撃力に加え、ペイルライダーの高い性能とコード80の実力とが重なれば、スクラップ一歩手前状態のリヴァイヴなんて相手にすらならない。
文字通り、一瞬で全てのSEが削られ、強制解除の後にリーダー格の女は放り出された。
「な…なに…今の動き……」
「に…人間の動きじゃない……化け物…!」
部下と思われる二人は恐れ慄いて後ずさりをしていて、無防備になったリーダーを全く助けようとはしなかった。
「そ…そこの二人! 早く私を助けなさい! じゃないとどうなるか……」
「黙れと言った筈だ」
「うぎぃぃ……!」
左手に持っていたビーム・サーベルを腰のアタッチメントに収納してからリーダーの女の首を掴んでから持ち上げ、右手のビーム・サーベルは敢えて刃の部分だけを消して、そのまま呼吸が出来ずに大きく開けている女の口の中に突っ込んだ。
「お前はもう……死んでいい」
「ぐぎゃ……!」
それが、リーダー女の断末魔だった。
口内にビーム・サーベルの柄を突っ込んだままの状態で光の刃を形成。
超高熱の剣によって、女は苦しむ暇も無く貫かれて即死した。
「し…死んだ…? ヒ…ヒヒヒヒヒヒヒヒッ! なら、今度は私がリーダーだ!」
「何言ってんのよ! 早く逃げないと、私達も殺され……」
発狂した女の懐に凄まじい速度で潜り込んだかと思ったら、折り畳まれていたキャノン砲を展開し、その長い砲身を女の腹部に突き立てた。
「な……に……っ!?」
「お前みたいな奴は……!」
そのまま、ゼロ距離で発射。
ペイルライダー自体にも大きな衝撃があったが、そんな事はお構いなしだった。
「吹き飛んじゃえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
アリーナの天井付近までド派手に吹き飛んだが、そこで終わらせることは無く、追撃としてミサイルポッドを発射。
ちゃんとロックオンしていた上に、女は今の一撃にて完全に気を失っていたので回避する事もままならず、そのまま全弾が命中して大爆発を起こす。
空中でISが強制解除されて、地面に付く前に肉体とISが離れた。
ぐしゃ。
そんな音を立てつつ床に叩きつけられ、女の周囲には血溜りが広がる。
どうやら落ち方が悪かったらしく、落下の衝撃で死んでしまったようだ。
トドメを刺す手間が省けたと思いつつ、コード80は残った最後の一人の方を向いた。
「な…なんでなのよ…! なんでなのよ! ISを使っているって事は、アンタだって女なんでしょうッ!? なら仲間じゃないの! どうしてこんな事をするのよっ!?」
「仲間…? 何を言いだすかと思ったら……」
キャノン砲を折り畳み、再びサーベル二刀流を構える。
リヴァイヴを纏った状態にも拘らず尻餅をつき、小便を漏らしながら両手足を使って後ずさっている。
さっきまでの勢いは何処にも無く、完全に恐怖に屈していた。
「私を、お前達のような『害虫』と一緒にするな」
「が…害虫…?」
「そうだ。糞山に集る蛆虫以下の考えに至ってしまった時点で、お前達はもう人間じゃない。この世界にとっての害悪だ。だから……」
背部と脚部のスラスターに火を入れ、真っ赤なオーラを纏って突貫した。
その姿まさに、赤い目を持つ死の騎士そのもの。
「消えてしまえ!! 優しいあの人達を傷つけようとする者達は全部!!!」
二本のサーベルで斬り上げるようにしてから空中に吹き飛ばす。
そこに左手のサーベルを投げつけてから突き刺し、全速力で追い駆ける。
「もう…やべで……」
台所に出たゴキブリを躊躇なく叩き潰すように、今更になって許しを請われても慈悲なんて与える筈も無い。
追いついてから刺さっていたサーベルを抜いて、乱舞のように何度も何度も斬って斬って斬りまくる。
腕を斬り、胸部を斬り、脳天から斬り、両足を斬る。
スパイク・シールドをパイルバンカーのように使って超至近距離からの一撃を食らわせてから、吹き飛んだ女の背後に回ってから逆手に持ったサーベルを背中にぶっ刺す。
そこからの流れで、全身の筋肉を使って床に叩きつけるように斬り下ろした。
「あ……が……!」
あれだけの猛攻を受ければ、当然のようにISは強制解除される。
女は最後の力を振り絞って這い蹲りながら逃げようとするが、そんな事なんて許されるはずも無かった。
「あ…あぁぁぁ……!」
頭から血を流し、鼻血も出しながら自分を覆い尽くす影を見上げる。
そこには、真紅の目を光らせる第四の騎士の姿があった。
「じにだぐない……じにだぐ…ない……!」
「知るか。死ね」
女が最後に見たのは、自分に向かって振り下ろされる光の刃だった。
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この支部にあったISを全て沈黙させた後、コアだけを抜き取って回収し、その後は碌な戦力すらも無くなったベルリン支部にいた全ての女達を皆殺しにし、ついでに奴らの悪事の証拠となるような書類や帳簿の数々を押収した。
自分以外の生体反応が完全に無くなり、コード80は死体の山の中でグレイヴに任務完了の報告をしていた。
「…という訳で、無事に『害虫駆除』は完了しました」
『御苦労。にしても、害虫駆除…か。ククク……』
「…? どうかなさいましたか?」
『いや…な。まさか、貴様の口から、そのような言葉が飛び出すとは思わなくてな』
「私は単純に、少将閣下の考えを自分なりに理解しただけです」
『ほぅ…?』
「奴等こそ、この世で最も嫌悪すべき害虫。放置しておけば、ハーゼ隊のような心ある人々が危険に晒される。それだけは絶対に看過できません」
『そうか……』
通信を聞きながら、グレイヴは予想外の事に驚きつつも、同時に望外の幸運に喜んでいた。
『(最初は単純に織斑千冬と接触させる為だけにあそこに送ったのだが…まさか、それが思わぬ効果をもたらすとはな。あの役立たず共も少しは貢献できたという事か。自らの意志で我等と志を同じくするのであれば、これ以上に都合のいい事は無い。色々と余計な手間が省けるやもしれんな……)』
コード80の感情の発露は想像出来なかったが、結果としては申し分が無いので何も言わない。
それどころか、今まで望み薄だったペイルライダーの
貴重なデータと最強の戦力。
その二つが同時に手に入るのであれば、多少の事は大目に見られる。
『お前は急いでそこから離れろ。もうすぐ処理班が到着する。回収したコアに関しては、合流した処理班に渡せばいい』
「了解です。コード80、これより基地に帰還します」
『うむ。明日に備えて、ゆっくりと休め』
「お気遣い感謝します。では」
通信が切れ一息つく。
ふと、足元に転がっている苦悶の表情で死んでいる女の死体の頭に目が行く。
「……目障り」
たったそれだけの理由で、彼女は女の死体の頭を踏み潰す。
それに何の感慨も抱くことなく、単に『後で機体各部を洗浄しないとなぁ』としか考えなかった。
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コード80が基地へと戻ってきたのは朝になってからだった。
起床と同時に枕元に置いてあった置手紙を読んだ千冬が、ハーゼ隊全員を叩きこしてから訓練場に集合させた。
「あいつを最後に見たのはラウラだったんだな?」
「は…はい! 夜中の寮の屋上にて少し話しました!」
「その時は、何かあいつに通信のようなものは来ていなかったか?」
「来ていませんでした。恐らくは、私が去ってから彼女個人に送られてきたのかと……」
「だろうな……くそっ!」
守ると誓った矢先の、この事態。
どうして、この世界は彼女をこうも使い潰そうとするのか。
千冬は、久し振りに世の中の理不尽さに怒りを感じた。
「きょ…教官! あそこに!」
「ペイル…ライダー…?」
基地の上空、ゆっくりと降下してくるペイルライダーの姿が見えた。
機体表面はなにやら濡れていて、どうやら帰還する途中にどこか適当な場所で返り血を洗い流したようだ。
ペイルライダーが地面に降り立つと同時に解除されるが、コード80は足元がふらついて倒れそうになる。
そこに千冬が全速力で駆けつけ、彼女の事を抱きとめることに成功した。
「だ…大丈夫かっ!?」
「コード80……只今…帰還しました……」
「あぁ…よく帰ってきた……ご苦労だったな……」
「はい……HADESは夜中に使うものではありませんね……。反動による疲労と眠気が同時にやってきて…何回か途中で落下しそうになりました……」
「ハ…ハデス…? それよりも、今日は一日ゆっくりと休め。部屋まで運んでやるからな……」
「お手数…お掛け…し…ま……」
ここでコード80は目を閉じ、緊急休眠状態に移行する。
千冬の腕の中で静かな寝息を立て、その寝顔は先程まで殺戮をしていたとは思えない程に穏やかだった。
知らぬが仏。知って得する事も無し。