INFINITE STRATOS ~The Fourth Knight of Death~   作:とんこつラーメン

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青と蒼。兵器と少女。






Who would have wanted such a fight

 周囲はすっかり暗くなり、光り輝く星空が空を覆い尽くす。

 それ自体は非常に美しくて素晴らしい光景だが、今の彼女達にはそれに見とれている暇は無かった。

 

「ハヅキさんの予想では、今夜に再び奴らはやって来るのですのよね?」

「そう思っています。仮に今日襲撃が無かったとしても、明日には必ず来るでしょう。連中は無駄にプライドだけはある上に、この世の全ては自分達の思い通りになると本気で信じ切っています。なのに、昼間にカムラ大尉から徹底的に拒絶をされた」

「それが、彼女達のプライドに傷を付けた。だから……」

「躍起になって襲い掛かってくるでしょう。今度は、自分達にとっての力の象徴とも言うべきISに乗って」

「どこまでも私利私欲の為だけにISを利用するなんて…代表候補生としても、一人の人間としても許してはおけませんわ…!」

 

 いつ襲撃が来てもいいように、持ってきた青いリヴァイヴに乗ってから拳を震わせるセシリア。

 貴族の少女とは思えない程に、その目には燃え盛る闘志が見え隠れしている。

 

 因みに、食事などは葉月が持っていた某栄養補助食品を二人で分け合って食べた。

 普段から葉月が食べている物だが、セシリアには珍しい物だったようで、目をキラキラさせながら口にしていた。

 

「……! これは……」

「どうしましたの?」

 

 自分の頭に手を当てて、何かに集中するかのように目を瞑る。

 以前にも本人が言ったが、葉月は体内にISコアを取り入れ融合している。

 彼女自身が云わば『生体IS』とも言うべき存在なのだ。

 今は誤魔化しているが、実際には生身の状態こそがペイルライダーの待機形態になる。

 故に、葉月はISを展開していなくても、ある程度の機能ならば使う事が出来る。

 その中に一つにはハイパーセンサーも含まれていて、傍から見れば千里眼でも使っているかのように思われてしまう。

 

(今いる場所から、かなり離れた場所になるけど…間違いなくISがこちらに向かって真っ直ぐに接近してきている。数は三体…あの女達が乗っているのか? それはそれで色々と好都合だけど……)

 

 目を開き、夜空の向こうを見上げる。

 そこには瞬く星空しか映っていないが、葉月には違った光景が見えていた。

 

(この速度だと…あと10分ぐらいか? にしても、幾ら夜になっているとはいえ、まだ街は完全に寝静まっている訳じゃない。それなのにもう仕掛けてくるだなんて…よっぽど腹が立っていたんだろうな。どうでもいいけど)

 

 少し息を吐いてから、葉月はハイパーセンサーをカットする。

 

「…もうすぐ奴らが来ます。案の定、ISに乗って」

「ほ…本当に来ましたのッ!? 彼女達にはルールも常識も無いんですの…?」

「あいつ等にとっては自分達こそがルールであり、常識であり、法律なんでしょう。それよりも迎撃の準備を」

「りょ…了解ですわ!」

 

 普通ならば、屋外でのISの稼働及び戦闘は条約で禁じられているが、二人がいまいる場所は研究所の敷地内。

 この場所なら問題無く戦う事が出来る。

 無論、仕掛けてくる方は立派に条約違反だが。

 

 葉月に促されてセシリアは、拡張領域内から長大なIS用スナイパーライフルを展開して装備した。

 それは、彼女の身長よりも巨大な代物で、ISを纏っていなければ絶対に扱えない銃だった。

 

「こう見えても私、狙撃が得意なんですのよ?」

「それは実に頼もしい。では、私も準備をしましょうか」

 

 そう呟くと、葉月は再び目を瞑ってから自分の胸に手を当てる。

 己の中にある『ナニか』と対話をするかのように。

 

「……ペイルライダー」

 

 青白い光の粒子が彼女の身体を取り囲み、一瞬で肉体が鋼鉄の装甲で覆われていく。

 両足から始まって、腰に腹、胸に両肩に両腕、最後に頭部を覆い尽くして展開完了。

 ここまでの所要時間は一秒にも至っていない。

 間違いなく、葉月が熟練者である証拠であった。

 

「青い…全身装甲のIS。それがハヅキさんの専用機『ペイルライダー』なんですのね…」

「その通りです。一応、これも機密扱いになっているので、口外はしないようにお願いしますね?」

「も…勿論ですわ」

 

 セシリアとて、それぐらいの事情は把握している。

 それ以上に、折角できた親友を困らせるような事はしたくなかった。

 

 本来ならば、以前の任務の時のような陸戦重装備仕様にするところなのだが、下手に高火力な武装を使って流れ弾が研究所に当たりでもしたら大変なので、念には念を入れるという意味もあり、今回は両手に何も持たずに接近戦で挑む腹積もりだ。

 

「ハヅキさんは何も持たなくてもいいんですの?」

「本当はそうしたいんですけどね……」

 

 重火器の類を装備しない理由を話すと、セシリアはすぐに納得をしてくれた。

 この手の事に理解がある相棒(バディ)がいると本当に助かる。

 

「成る程…納得しましたわ」

「なので、私の背中はセシリアにお任せします」

「えぇ…ハヅキさんの背後は、このセシリア・オルコットが必ずや守ってみせますわ!」

 

 力強く頷いてくれたセシリアを見て、葉月は装甲の中で少しだけ微笑んだ。

 そんな少女同士の和やかな時間は、すぐに終わりを告げるのだが。

 

「…どうやら、来たようですよ」

 

 肉眼で見れば小さな点にしか見えないが、ISのハイパーセンサーを駆使すれば一発で分かる。

 夜空を飛んでやって来る無粋な訪問者たちが。

 

「ご近所迷惑なので、適当に御引き取り願いましょうか」

「賛成ですわ」

 

 こっちが気が付いているという事は、向こうもこちらに気が付いているという事だ。

 見張りの為に入り口付近で待機をしていたが、まさか本当に真正面から来るとは思ってもみなかったので、二人は女達を少しでも広い場所で迎え撃つ為に移動を開始した。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 そこは、葉月が輸送機に乗って降りたった場所で、ここならば多少派手に暴れても問題は無い。

 葉月とセシリアはそこに女達を誘導し、女達もそれに素直に引っかかってくれた。

 それを見て、葉月は心の中で呆れながら溜息を吐く。

 

(私があいつらの立場なら、こんな見え見えの搖動なんかに引っかからずに、真っ直ぐに目的のブツを取りに行くのに…。やっぱり、アイツ等はどこまで行っても、只の馬鹿でしかない)

 

 少しは怪しいとは思わないのか?

 奴等には警戒心というものが存在していないのか?

 これまでに幾度となく権利団体の女達を虐殺してきた葉月であったが、それでもまだ奴らの思考が理解出来ないでいた。

 いや、理解出来る日なんて永遠に来ることは無いだろう。

 

「フフ……その青いリヴァイヴに乗っているのがセシリア・オルコットなら、全身装甲のISに乗っているのは、あの時いた黒い服を着たお嬢さんね?」

「だとしたらどうするんですか?」

「決まってるじゃない」

「その青いリヴァイヴも、全身装甲のISも、私達が使ってあげるわ。この世に真の楽園を築く為にね」

「光栄に思いなさい。貴女達は揃って、私達の糧になれるのよ?」

 

 本気で何を言ってるんだコイツらは。

 流石の葉月も言葉が出なかった。

 隣にいるセシリアに至っては、眉間に皺を寄せて頭を抱えている。

 

「…だ、そうですが?」

「はぁ~……論外ですわ。立場上、色んな人々にお会いしますけど、ここまで頭の中がお花畑な人間を見るのは生まれて初めてですわよ?」

 

 もう笑う気すら微塵も起きない。

 道化師ですら、もう少しマシな冗談を言うだろう。

 

(バカもここまで来れば勲章ものね。しかも、今までに散々と自分達の仲間を殺しまくったペイルライダーの事を全く知らない様子。まともな情報共有すら出来ていないだなんて組織として失格だ。今まで存続してられたことが奇跡に近いな…)

 

 今回の任務はあくまでも『防衛』なので、こいつらを殺す必要はない。

 必要であるならば命だけは勘弁してやろうとも思ったが、その気も完全に失せた。

 

「と言う事なので、五体満足でいたいのであれば速やかにお帰り下さい。出口はあちらです」

「なんですって…?」

「子供の分際で!!」

「少しは手を抜いてあげようと思っていたけど気が変わったわ。もう容赦はしない…二体のティアーズ型も、あんた達のISも纏めて貰っていく!」

 

 簡単に怒りを露わにして敵意を剥き出しにする。

 本性が明らかになった所で、結果は何も変わりはしないのだが。

 

「セシリア!」

「もうやってますわ!」

 

 慣れた動きでスコープを除き、長大なスナイパーライフルを構える。

 とっくにマニュピレーターは引き金に添えられていて、いつでも発射できる状態にあった。

 セシリアの事を全面的に信頼しているからなのか、葉月は腰部マウントラックに装着されているビームサーベルを引き抜きながら、背後を見ることなく女達へとブースト全開で突撃していった。

 

「な…なんてスピードッ!?」

「落ち着きなさい! どれだけISが凄くても、数はこちらの方が多い上に相手は子供! 簡単に一捻りし……」

「本当に出来ると思うのか?」

「ひぃっ!?」

 

 ごちゃごちゃと話している間に、葉月はもう懐に飛び込んでいた。

 その手には、宵闇の中でも怪しく光るビームの刃。

 現存している近接武装の中では最上級クラスの攻撃力を誇るソレのことを全く知らないのか、三人の女達の取り巻きの一人は生意気にも何のコーティングもされていない盾を出して防御しようと試みた。

 その気になれば盾を構える前に攻撃が出来たが、態と自分達の無力さを教える為に盾の展開を許してやった。

 

「無駄な足掻きをする」

 

 一閃。

 横薙ぎにビームサーベルを振るうと、盾を溶断しながらIS本体にも大きなダメージを与えた。

 切断面は真っ赤に赤熱していて、ビーム兵器の恐ろしさを如実に語っている。

 

「盾が…斬られた……!?」

「そんな馬鹿なッ!? このガキがぁぁぁぁっ!!」

 

 激高したもう一人の取り巻きが葉月に向かって銃を向けるが、それはすぐに遠くから放たれた一撃にて弾かれる。

 

「なっ!?」

「構え方がなってない上に、大振りすぎますわ。それでは代表候補生を相手にするには力不足ですわよ?」

『ありがとうございます』

 

 プライベートチャンネルで感謝の意を示しながら、葉月はもう一人の方へと斬り掛かる為に、さっき攻撃した女を踏みつけながら加速を掛ける。

 

「わ…私を踏み台にしたですってぇっ!?」

 

 

 

 

 




身の程知らずは馬鹿を見る。
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