INFINITE STRATOS ~The Fourth Knight of Death~ 作:とんこつラーメン
頑張って、ペイルライダーの持つ『狂気』を表現したいです。
「フッ……。目障りな女共を始末してくるだけの任務だった筈が、まさか非合法に鹵獲されていたリヴァイヴ三機を持ち帰ってくるとは。そうでなくては、先行投資をした意味が無い」
執務室と思われる部屋にて一人の男が、椅子の背凭れを傾けながら葉巻を吹かし、報告書をじっくりと読んでいた。
「ISが無ければ我等に刃向う事すら出来ん蛆虫共が…貴様等は大人しく、男達の上で腰を振って孕み袋になっていればよいのだ。邪魔者には一切容赦はせん。全て排除する」
葉巻を灰皿に押し付けて火を消し、報告書を机の上にばら撒く。
机の引き出しから葉巻の入った小さな箱を取り出して、追加の一本を口に咥えてからジッポライターで火を着ける。
「もうそろそろ、奴を日本に送り込みたいところだが…。あそこはIS発祥の国であり、最も蛆虫共が蠢いている場所でもある。故に、下手に送れば簡単に察知されてしまう可能性がある。どうにかして入国させる方法は無いものか……」
男が自分の顎に手を当てて唸り始めた時、いきなり通信が入ってきた。
『御休憩の最中、失礼いたします閣下!』
「一体どうした?」
『実は……』
通信機の向こうから届けられた報告を聞いて、男は心の中で密かに笑みを浮かべた。
「それは由々しき事態だな。軍人として看過は出来ん。現場には例の部隊が派遣されている筈じゃなかったか?」
『それが…全く気が付きすらしなかったようで……報告を聞いてから、やっと動き出そうとしている始末で……』
「役立たず共が……。まぁいい。所詮はお飾りの部隊、何も期待などしてはおらん」
『どうしますか?』
「『奴』を使う。黒兎連中よりは遥かに役に立つ。私から直に命令を下すので、お前達は現場の周辺で待機していろ」
『了解しました』
「なに、奴の存在は公には存在しない事になっている。極秘裏に動かした上で、全ての手柄はお前達の物になるだろう」
『それは何より。息子にいい誕生日プレゼントを送れそうです』
「なんなら、私からも何かプレゼントしてやろうか?」
『ありがとうございます。きっと息子も喜びます』
「ははは……では、頼んだぞ」
『はっ!』
通信が切れ、男は力を抜くようにして椅子にもたれ掛って天井を見上げた。
「ククク……運が向いてきたな。上手くいけば、一気に事を運べる……」
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『つい先程、第二回モンドグロッソ会場にて織斑千冬の弟が何者かに誘拐されたという報告が入った。貴様の任務は、極秘裏にその少年を救出することだ。いいな?』
「了解です。閣下」
格納庫の隅、体を小さくして座っていたところにISを介して通信が入る。
コード80は驚く様子も無く、その通信に応じていた。
『猶、対象は誘拐犯と一緒にいる可能性が高い。下手に目の前で犯人を殺害してトラウマでも植え付けたら後々で厄介な事になる。可能な限り犯人グループの殺傷は控えろ』
「では、今回はペイルライダーの使用は厳禁と?」
『基本的にはな。だが、もしも犯人グループがISを所持していた場合は別だ。迷わずISを展開、それを鎮圧せよ。最悪、逃がしても構わん。最優先事項は対象の無事な救出にある。場所は既に特定してあり、すぐにでもそちらに座標を送る』
「はっ」
『分かっているとは思うが、今回の救出任務は単独で行う事になる。これは下手に犯人たちを刺激しない為でもある』
「はい」
『では、直ちに出撃せよ。事は一刻を争う』
彼女の返事を待たずして通信は切れた。
どっちみち行くことには変わりはないので、彼女からしたら大したことではないのだが。
「……ここか」
言われた通り、ペイルライダーに誘拐犯と救出対象がいると思われる座標が送られてきた。
それを液晶地図と照らし合わせて場所を特定した。
「廃工場……」
そこは、会場から少し離れた場所にある廃工場だった。
近々、取り壊される予定となっているので、派手に暴れても支障はないだろう。
「…………」
格納庫の出入り口まで歩いていき、そこから空の向こうを静かに見上げる。
そして、ペイルライダーを展開してからステルスを発動した後に高速飛行にて廃工場へと飛んで行った。
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そこらじゅうに色んな残骸や廃棄されたコンテナなどが放置してある廃工場。
全体的に埃っぽくて、お世辞にも衛生的とは言えない。
そんな場所に、彼は誘拐されて閉じ込められていた。
「くそ…! なんなんだよアンタら! 俺なんかを誘拐して何をする気だよ!」
恐怖に耐えながらも、若さ特有の無謀さで目の前にいる犯人グループの一人と思われる女に喰って掛かる。
そんな彼の名は『織斑一夏』。
現在、第二回モンドグロッソに出場中の日本代表『織斑千冬』の弟である。
彼は姉の勧めで、彼女の雄姿を見る為に日本からドイツまでやってきて、そこで誘拐されてしまった。
現在、一夏は鋼鉄の柱に鎖で縛りつけられていて身動きが取れない状態にある。
「何をする気だと思う?」
「それが分からないから聞いてるんだろ!」
女は挑発するように一夏に話しかけ、周りでは仲間である男達が嘲笑を浮かべている。
まさか、自分が誘拐されるだなんて想像もしていなかったので、完全に頭は混乱しきっていた。
「まぁ…別に話してやってもいいか。今更知った所でどうしようもないんだしな」
「なんだよそれ……」
女は一夏の目の前に座り込み、彼の顔を覗き込むようにしながら人差し指で顎をクイっと上げ、笑みを浮かべながら誘拐理由を話した。
「このまま行けば、お前のねーちゃんの優勝はほぼ確実だ。あたしらは、それを阻止してくれって頼まれたんだわ。誰に頼まれたかは秘密だけどな」
「千冬姉の優勝を阻止って…それが俺と、どう関係があるんだよ……」
「察しの悪いガキだなぁ~…。お前を誘拐したって聞かされりゃ、奴は試合を放棄してでもテメェを救出しに来るだろ? つまりは、そーゆーこった。分かったか?」
「そ…そんな……」
要は、自分は姉を誘き寄せる為に誘拐されたという事だ。
大切な姉の晴れ舞台なのに、自分のせいでそれを滅茶苦茶にしてしまった。
情けなさと罪悪感で、一夏は悔しそうに歯を食いしばりながら俯いた。
「で…でも、大会に出ている千冬姉にどうやって俺がいなくなったことを知らせるんだよ……」
「その点もちゃんと抜かりはねぇよ。ま、こっちも秘密だけどよ」
「…………」
「まーそう落ち込むなって。別に身代金を要求してる訳じゃねぇンだ。お前の姉貴が会場を出て、こっちに向かってくることが確認できたらお仕事終了なんだからよ。それまで精々、大人しくしてな」
そう言うと、女は立ち上がってから徐に仲間の男達の一人から煙草を貰って火を着けようとした…その時だった。
「……なんだ?」
ライターの火が激しく揺れた。
まるで、風でも吹いたかのように。
ふと顔を見上げると、暗闇に包まれた奥から何かがやって来るような僅かな気配を感じた。
織斑千冬がやって来たのか?
そう思って仲間の男達に目配せをすると、彼らは顔を横に振った。
まだ千冬は会場を出ていない。通信によってそれを知らされたようだ。
(じゃあ、一体どこのどいつが……?)
念の為に警戒をするように周りに促す。
いつでも銃やナイフを出せるように身構えていると、一番奥側にいた仲間の一人が、いきなり闇の中へと引きずり込まれた。
「な…なんだ貴様はっ!? ぐぼっ!?」
何かを殴るような音が聞こえ、同時に男の悲鳴が上がる。
殺されたか、もしくは気絶させられたか。
どちらにしても、相手が普通じゃないのは確実だった。
ズル…ズル…
大きく重たい物を引きずるような音と一緒に、気配の正体が姿を現す。
「…………」
「なんだ…テメェは……」
それは、穴だらけの真っ黒な外套を頭から被った小柄な人間だった。
その手には、さっき悲鳴を上げた男が白目を向きながら涎を垂らして気絶している。
「死んじゃいねぇ…ようだが、それでも一発かよ……」
ここにいる者達は、いずれもが元は軍人だったり傭兵だったりした者ばかりだ。
それを一発で倒してしまう時点でタダ者じゃない。
「お前は何だ? どこの組織の奴だ?」
「…………」
「…答えるわけ…ねぇよな。当たり前か」
手に持った男をコンクリートの床に放り投げ、両手を自由にする。
一夏は、色んな事が同時に起こり過ぎて、さっき以上に頭が混乱していた。
あの謎の人物は自分を助けに来てくれたのか?
それとも、何か別の目的があるのか?
「…………」
「え?」
一瞬、目があったような気がした。
影で隠れて目元なんて全く見えないが。
「そうか…お前、誰の差し金から知らねぇが、目的はそこのガキか」
「…………」
「別に言わなくてもいいぜ。力づくで喋って貰うからな! お前ら!!」
男達の一人が謎の人物にナイフを持って襲い掛かる。
その動きは洗練されていて、並の相手ではすぐに刺されてしまうだろう。
だが、今回の相手は『並の相手』ではなかった。
「なっ!?」
突き出されたナイフを易々と避け、一瞬で懐に入ってからの鳩尾エルボー。
その威力は凄まじく、一発で筋骨隆々の男に大ダメージを与えた。
「ぐぼぁっ!?」
一瞬の隙を突いて背後に周り、抱き着くように背中に飛び乗り、そのまま太い首に自分の腕を伸ばして頸動脈を全力で締め付ける。
「は…はなぜ……!」
「…………」
男も必死に腕を引きはがそうとするが、全くもってビクともしない。
こめかみに血管を浮かび上がらせながら抵抗するも、更に力を籠められて完全に白目を向き気を失い派手に倒れる。
「がは……!」
二人目撃破。
殺してはいないが、暫くは目が覚めないだろう。
(今の腕……あれは子供、しかも女のガキの腕だった。だとすると、あたし等と同じ『裏』の人間ってことか…?)
他の男達が驚愕する中、女だけは一人冷静に謎の人物の事を分析していた。
だが、考えれば考えるほどに分からなくなる。
幼い少女を道具にするような組織なんて、それこそ世界中に存在する。
名前を上げていけばキリが無い。
「どうやら、大ボスの前に裏ボスがやって来ちまったようだな…!」
冷や汗を掻きながら、女は目の前で悠然と佇む謎の少女に対して最大級の警戒をするのだった。
女の正体は…言うまでも無いですよね。
次回は本格的にペイルライダーが活躍する…かも?