INFINITE STRATOS ~The Fourth Knight of Death~   作:とんこつラーメン

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それは大人達の罪。







Forbidden blue knight

 無事に事件が解決し、後はデュノア家の皆を家へと帰すだけになった。

 勿論、帰宅の際にも葉月と同じドイツから派遣されてきた精鋭が厳重に護衛をする事になっている…のだが、その途中でアルベールがこんな事を言い出した。

 

「済まないが、私と彼女だけデュノア社で降ろしてくれないか?」

 

 あんな事があったばかりだというのに、いきなり何を言いだすんだ。

 最初は葉月を除く誰もが同じことを考えたが、その後に言われた言葉で納得せざる負えなくなった。

 

「私とて本当は今すぐにでも休みたいとは思っているが、その前に社長としてやっておくべき事がある。彼女のISの修復する事を伝えないといけないしな」

 

 その気になれば、休むこと自体はいつでも出来る。

 だが、葉月がフランスに居られる時間は限られている。

 葉月としても少しでも早くペイルライダーが修理されるに越したことはないので異論は無かった。

 

「…仕方ありません。では、二手に分かれてお送りする事にします。それでよろしいですね?」

「頼む」

「コード80。君はアルベール社長と一緒の車に乗ってくれ」

「了解しました」

 

 隊長の言葉に頷きながら敬礼で返す。

 それを見ると、否が応でも彼女が軍の人間であることを思い知らされる。

 

「ねぇ…お父さん。ボクにも何か手伝えることは無い? IS関係ならボクも少しは……」

「その気持ちは嬉しいが、今回は話が別なんだ」

「どういう事?」

「彼女のISはドイツ軍の最高機密の塊とも言える機体だ。幾ら、お前が候補生成り立てだからと言って、簡単に関わっていい代物じゃないんだ。分かるね?」

「うん……」

「いい子だ。シャルロットは、母さんと一緒に一足先に帰って休んでいなさい。今のお前には休息が必要だ」

 

 自分達を体を張って救ってくれた葉月に少しでも恩返しをしたいという気持ちからだったが、善意だけで関わるにはペイルライダーは余りにも危険すぎた。

 

「では行こうか。よろしく頼むよ」

 

 普通ならば、あんな事件があった後は心身ともに休む事を最優先する筈だが、自宅ではなく会社に向かうと言い出す辺り、伊達に大企業の社長をやっていないと思い知らされるのだった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

「ここで結構。君達はどうするのだ?」

「我々は、ここで社長が戻ってくるのをお待ちしております。ご帰宅されるまで護衛するのが我々の仕事ですので」

 

 デュノア社の本社ビルに到着すると、父の顔から社長の顔に変わり、急に威厳が溢れ出る。

 これが会社にて彼が被っている『仮面』なのだろう。

 

「中ではコード80が護衛を務める事になります」

「どのみち、私も一緒に行かなくてはいけないで。ご安心ください」

「君に関しては全面的に信頼しているよ。では、ここで待っていてくれ」

「了解です」

 

 車から降り、アルベールの後ろから葉月も続く。

 そこでふとある事を思い出しアルベールが立ち止った。

 

「どうなされました?」

「いや…そう言えば、まだ君の名前を聞いていなかったと思ってな。グレイヴや彼らからは『コード80』と呼ばれていたが……」

「それは私のコードネームのようなものです。本来ならばその呼び方が正しいのですが、言い難いのであれば私の事は『ハヅキ』とお呼びください」

「ハヅキ?」

「はい。現在、所属している部隊の皆から、そう呼ばれているのです。恐らくは愛称のようなものかと」

「愛称…か。分かった。では、私もそう呼ばせて貰う事にしよう。では改めて…行くとしようか。ハヅキ君」

「了解です。アルベール社長」

 

 正面玄関から中へと入ると、そこには大勢の社員たちが様々な話をしていた。

 だが、社長の姿を確認した途端に全員が立ち止り、彼に注目していく。

 社長なのだから当然と言えば当然なのだが、彼の後ろにメイド服を着た少女が一緒にいるのだから、その注目度はいつもよりも高かった。

 

「今、戻った」

「お帰りなさいませ社長。ところで、その後ろの子は……」

「彼女は私個人の客だ。気にしなくていい」

「お…お客様ですか。分かりました」

 

 受付嬢に戻ってきたことを報告するアルベールだったが、当の受付嬢の視線は彼の背後にいる葉月に向けられていた。

 どう考えても10代前半ぐらいのメイド服を着た少女が社長と一緒に戻ってきたのだ。

 怪しむなという方が無理だろう。

 

「ところで、開発部の連中はどうしている?」

「主任さん達なら、今は休憩中だと思います」

「そうか。だとすれば、恐らくはあそこだな……。こっちだ。着いて来てくれ」

「分かりました」

 

 軽く話をしてから、アルベールは開発主任がいる場所がいると思われる場所へと向かって歩き出す。

 その時、少し気になった事があったのか、葉月がそっと後ろから小声で話しかけてきた。

 

(会社の皆さんは今回の事件に関してご存じではないのですか?)

(流石に、あんな事があったと知れたら会社内が大パニックになってしまうからな。あの事を知っているのは一部の幹部連中を除けば、後は今から会いに行く開発部の連中と君、家族の皆だけだ)

(成る程…無用な混乱は避けるに越したことはありませんからね。賢明な判断だと思います)

(ありがとう。正直、一番パニックになっていたのは他ならぬ私自身なのだがね)

(娘が人質に取られた挙句に会社までもが狙われたのですから当然かと)

 

 この短時間にて、葉月は物凄い勢いでアルベールの信頼を得ていた。

 こんなにも素直で頼りがいのある少女がグレイヴの部下だと思うと、何とも言い難い気持ちになった。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「矢張り、ここにいたのか」

「社長?」

「無事に戻ってきたって事は、まさかデュノア社はもう……」

「馬鹿な事を言うな。娘は無事に救出したし、会社も取られていない」

「「「「マジですかッ!?」」」」

 

 アルベールと一緒にやって来たのは喫煙室。

 透明の壁に囲まれている空間で、真ん中には灰皿が幾つか並べられている。

 そこでは、白衣を着た者達が一様に煙草を吸いながら息抜きをしていた。

 

「本当だ。全ては、この少女が体を張って我々を守ってくれたお蔭だ」

「そういや、さっきから見た事のない美少女がいるなーとは思ってたけど…」

「なんでメイド服?」

「っていうか何者?」

 

 案の定、一気に注目される葉月。

 場違い感がハンパないのだから当然と言えば当然なのだが。

 

「この方たちが社長の仰っていた開発部の方々ですか?」

「そうだ。ここは普通の会社とは違って今はISを専門分野にしているからな。半分は研究所みたいな事もやっているんだ」

「成る程なー…」

 

 どうやら、一言に『デュノア社』と言っても相当に広いようで、伊達に量産型ISシェア世界第三位と呼ばれてはいない。

 最近の任務はつくづく勉強になる事が多いとしみじみ思う葉月だった。

 

「皆さん、初めまして。この度、ドイツから派遣されたシュヴァルツェ・ハーゼ隊所属のコード80と申します。言い難いのであればハヅキとお呼びください」

「ハーゼ隊って言えば……」

「ドイツ軍のIS用特殊部隊!」

「競合相手のドイツから救援が来るって、どんだけ……」

「それだけ危なかったという事だ。実際、呑気にしていたのはお前達だけで、この事を知った幹部連中は七転八倒の大騒ぎだったぞ」

「「「「だよねー」」」」

 

 のんびりとした口調で話す開発部の面々に若干の戸惑いを感じていた葉月ではあったが、すぐに『一言に開発者や研究者と言っても色んな人間がいるか』と割り切って納得した。

 最初に会った開発者であるイギリスのカムラが人格者過ぎたので、そのギャップは激しかったが。

 

「…で、どうしてそのハヅキちゃんがここにいるんですか?」

「それが本題だ。実はな……」

 

 彼らに対して機密やら何やらと言った事は無用と判断したのか、微塵も隠す様子も無くペラペラと葉月がここに着た理由を話し出す。

 それを興味深そうに聞いてはいるが、驚く様子は見られない。

 

「…という訳だ。頼めるか?」

「そんな事ならお安い御用で」

「大事な仕事先を守ってくれたってのもあるけど……」

「ドイツお手製のISがどんな物なのかも純粋に気になる」

「いきなり空から降ってきたっていう謎のISもね」

「ついでに、軍にて現役で活躍してるっていうハヅキちゃんの意見も色々と聞いてみたい」

「なにもかもが今後の研究開発に役立ちそうだし、断る理由は無いでしょ」

「そうか…助かる」

「ありがとうございます」

 

 理由はどうあれ、ペイルライダーの修復の目途が立ったのは喜ぶべき事だ。

 他のISに乗れると言っても、一心同体とも言うべきペイルライダーが一番いい。

 これだけは、何を言われようとも変えられない事だった。

 

「それじゃ、早速行きますか」

 

 口に咥えていた煙草を灰皿に押し付けてから全員が立ち上がり、ゆっくりと喫煙室から出て行き、そのに続くようにアルベールと葉月も出て行った。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

「ここが……」

 

 到着したのはビルの地下にある施設。

 まさか、本社の地下にこんな施設があるとは思わなかった葉月は、目を丸くして純粋に驚いていた。

 

「IS関係はデリケートだからな。こうしておかないと、今回よりも酷い目に遭いかねない」

「そうですね。ドイツでも、IS関係の施設は非常に厳重な守りとなっています」

 

 流石にドイツ軍のIS関係の施設は地下には無いが、その代わりに常に軍が警備に付き守りを固めている。

 それこそ、女性権利団体すらも真正面からは突破できない程に。

 

「もっと企業色が強いのかと想像していましたが、思っていた以上に本格的なのですね」

 

 複数台のISを固定できる専用のハンガーに、一流の研究施設にも勝るとも劣らない程の機器の数々。

 まるで、どこぞの傘のマークが印象的な製薬会社を豊富とさせるレベルの施設だった。

 

「もっと奥まで行けば、試験運用の為のアリーナもある。シャルロットも時折、そこで訓練や会社で開発した新しい武器などの試射などを手伝ってくれている」

「そういえば、ここに来る前にシャルロットさんに候補生成り立てと仰っていましたが……」

「聞いていたのか。その通りだ。あの子は少し前にフランスの代表候補生に選出されてな。今はまだ専用機を与えられてはいないが、いつかはこのデュノア社で開発した機体を贈呈したいと考えている」

「それは素晴らしい事だと思います」

 

 イギリスにはセシリア。フランスにはシャルロット。

 どうも自分には代表候補生の知り合いが多いような気がする。

 自分自身は候補生でもなんでもないのに。

 

「じゃあ、君のIS…ペイルライダー…だっけ? それの修復作業を始めようか」

「了解です」

 

 そして遂に、ペイルライダーの修復が始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




出会いが絆を生み、絆が力を生む。
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