彼は一体この戦争に何を齎すのか?
はい、皆さんこんにちは。元居た世界に帰れない鈴木アキラです。
さて、俺は前回の転移で念願の俺が元々いた世界に転移する事ができた。ただしもといた時代の三千年も昔の時代だったが。
流石に三千年もの間過ごすわけにもいかず転移した付近にあった樹齢数百年はあろうかと言うほどの大木にちょっと手を加えて転移する時の目印にしてその目印を元に転移したのだが、転移が終ってはじめて目にしたものは元いた世界の風景ではなく、薄暗い地下室?の様な所で死に掛かっているような見た目の青年の姿だった。
「……ここ何所?」
取り合えず目の前に居た青年に此処がどこなのかを聞いてみたのだがなにやら俺の顔を見て驚愕し、そして何かを必死に抑えるような顔をしてからもう一度俺の顔を見て、血を吐きながらぶっ倒れた。
「え?いやいやいや、ちょっと大丈夫ですか!?」
慌てて倒れた青年に駆け寄り脈を見る。どうやら死んではいないようだ。なのでとりあえずGZに検査させようとした直後、俺の耳に低くしゃがれた声が届いた。
「カッカッカ、所詮は三流が縁も由縁も分からぬ物で召還したサーヴァントよ。大した物では無いな」
声がした方向に顔を向けると背の低い老人が気味の悪い笑みを浮かべ、佇んでいた。
「召還?サーヴァント?」
「カッカッカ、どうして呼ばれたのかすら分からぬか」
俺が頭に疑問符を浮かべているとその老人は笑みを深めこう言った。
「三流以下の魔術師に神秘性の無いサーヴァント。まあ、余興としてなら楽しめるじゃろう」
そう言って老人は低い声で笑いながらこの地下室らしき場所から出て行った。
「……結局どういう事なの?」
俺の呟いた言葉は地下室に虚しく響いた。
臓硯はこの時、雁夜が召還したサーヴァントを見て落胆していた。いくら召還に使った物が自身でもよく分からない物であったとしても、仮にも英雄を召還する儀式で召還されたなら、多少なりとも神秘性を秘めているはずなのに召還されたサーヴァントには神秘性が一切感じられなかった。ゆえに臓硯は、早々に今回の聖杯戦争を諦め、次回の聖杯戦争のための準備に取り掛かった。
この時、少しでも臓硯が呼び出されたサーヴァントに興味を持てば、いや少しでもいいから会話をすれば臓硯の運命は大きく変わったであろう。
なぜならば雁夜が召還したサーヴァントは
もしも臓硯がこの事を知ったのならいかなる手段を用いても雁夜からサーヴァントを奪い自身の手駒に使用としただろう。もっともそんな事をしようとしたのならば跡形もなく、それこそ魂から消されていただろうが。
あれから少しして、今俺はこの目の前で倒れた成人男性を背負って移動しています。流石にあんな薄暗い所に放置するわけにもいかないしそれに俺がどうしてこの場所に転移してしまったのか、知っていそうだったからな。
にしても、この男性軽いな。成人男性とは思えないぐらい軽いんだが。それに今さっきGZにちょっと検査させたらなんか体の中に大量の蟲らしきものが入っているみたいだ。なに?寄生虫ダイエット?
そんな風に考えていたら前の部屋の扉から少女が出てきた。
「あ、君」
「……」
声をかけたら顔だけこっちに向けてこの少女。なんだ、顔に、いや全身から生気が感じられない。
「おじさん、どうしたの?」
「お、おじさん!?……。あ、この人のことか。そうだ君、この人を寝かせられる場所分かるかな」
「……こっち」
少女はこの男性の顔を一度見てから歩き出した。それについていく俺。数分とたたずに着いた部屋には簡易ベットがあるだけの質素な部屋だった。
その部屋にあるベットに俺はこの男性を寝かせ、一息つく。
「ふぅ……ありがとう。助かったよ」
「……」
俺がお礼を言ってもこの少女は特に反応をせずにじっと男性を見ているだけだった。
「そうだ、君の名前を教えてくれる?俺の名前は鈴木アキラ、って言うんだ」
「……」
「……」
顔をこっちに向けてじっと俺の顔を凝視する少女。
「……桜、間桐桜」
「桜、って言うんだ。かわいい名前だね」
俺の返しに一切の反応を見せてくれない桜ちゃん。ちょっと気まずいんだが。
「……おじさんは、大丈夫なの」
「おじさんってこの人の事?」
顔を縦に振って応える桜ちゃん。
「きっと大丈夫だよ。ちょっと疲れちゃっただけだよ」
「うん……」
そしてしばらく無言でいたが桜ちゃんの目がうとうとしてきたのでとりあえずこの家の桜ちゃんの部屋に戻して俺はこの男性のいる部屋に戻り、とりあえずGZにこの男性とこの家の精密検査をさせた。
男性の方はなにやら体中に小型の蟲が何十匹も寄生しているようだった。しかもこの蟲は宿主である男性の体を蝕みながらどうやら魔力を作り出しているようで男性が死に掛かっていたのもこの寄生虫に体を蟲まばれたせいだ。
一体何を考えてこんな
男性の方はとりあえず置いておき、この家のなのだが一見ただの古い洋館なのだがその裏腹では何十何百と言う蟲が蠢いていた。しかもこの蟲はどうやら自然界の蟲ではなくこの男性の体内に寄生している蟲と同じ、魔力を用いて作り出された蟲のようだ。
さらに詳しく調べさせたら俺が転移した場所に居たあの老人も一見年老いた老人だったがその実態はこの家の中にいる蟲の集合体が人の形をしていただけであったのだ。気持ちが悪い。
さらにこの家の蟲の魔力の繋がりをたどっていったらなんと先ほどであった少女、桜ちゃんの心臓に向かっていたのだ。
つまりこの家の中に蠢く蟲の親玉といえる蟲を桜ちゃんは心臓に宿しているという事になる。一体全体この家の住人はどうなっているんだ?
「う、うぅん」
そんな風にこの家の住人の事で戦いていると男性の意識が戻ったようだ。
「こ、ここは……?」
「起きましたか?」
「お、まえは……ッ!!」
最初は意識がハッキリとしてなかったのか呆けた表情だったのが俺の顔を見た瞬間驚愕の表情を浮かべベットから立ち上がろうとして全身を襲ったであろう激痛によって再びベットに倒れ伏せた。
「ちょっと、大丈夫ですか?さっき急に目の前で血を吹いて倒れるんだからビックリしましたよ」
「あ、ああそれはすまなかった……じゃない!!お前は、本当にサーヴァントなのか?」
「サーヴァント?どういう事なんですか?」
いろいろと攻め立てるように質問してくるこの男性から何とか情報を聞き出した結果。
「えーっと、纏めると過去に偉業を達成した英雄を召還する『英霊召還』でバーサーカーって言うクラスで英霊を召還しようとした所、俺が何故か召還されてしまい、しかも俺のクラスはバーサーカーではなく???で埋まっていてクラスは分からない、と」
「……そうだ」
「さらにサーヴァントを召還したマスターはサーヴァントのステータスを見れるが俺のステータスは幸運以外は一般人とほぼ変わらなく、英霊が持っている宝具?って言うのも判別不可能だった、と」
「……」
「で、そもそもサーヴァントを召還する事になった切欠はあらゆる願いを叶える万能の器たる『聖杯』を手に入れるため七人の魔術師と七騎のサーヴァントを一人と一騎になるまで戦わせる『聖杯戦争』に参加するためだった、ねぇ……」
そこまで何とか話を纏めて俺は考え思った。ぶっちゃけ、俺関係なくね?
雁夜さんの話によればそもそも召還されるのは
「……ねえ、雁夜さん。その召還する時に一体どんな物を使って召還しようとしたの?話を聞く分には召還したい英霊に縁があるものを使わないといけないみたいなんだけど?」
「それは、俺にも分からない。爺が持ってきた物を使っただけだったからな」
「それは一体?」
「……
「は?
「違う。あれは心臓だけなのに脈を打っていたんだ」
「心臓だけなのに脈を打っていた?」
「そうだ。あれを爺から渡された時触ってみたが人肌程度に温かかったし、血が出ていないにも関わらず一定のリズムで脈を打っていた。正直俺にはあれがどうして動いていたのかなんて分からない」
脈を打つ心臓をを触媒にしたら俺が召還された?なんでそんな触媒で俺が召還されるんだ?心臓だけになっても脈を打つような存在に心当たりなんて、心当たり……。
「あ」
「どうしたんだ」
「その触媒になった心臓。ちょっと心当たりがあるかもしれない」
「はぁ?」
雁夜さんが、何言ってるんだコイツ、見たいな顔で俺を見てくる。
「ま、まあその話は置いておいて「おい!!」雁夜さんはどうして『聖杯戦争』なんていう物騒な物に参加したの。そんな
「(
「助けたい子?」
そこからぽつりぽつりと話してくれた雁夜さんによると、雁夜さんはどうやらこの間桐家を一度出家したらしい。何でもこの家の魔術、と言うか魔術自体を嫌っていた雁夜さんは自分自身が魔術師になる事が嫌だったらしい。
が、雁夜さんが家を出家してから間桐家に一人の女の子が養子として迎えられたらしい。その子がさっきであった間桐桜ちゃん。元の名前は遠坂桜、何でも雁夜さんがかつて思いを寄せていた女性が嫁いで行った家の子供らしい。
で、雁夜さんの変わりにこの家を継ぐ事となった桜ちゃんなのだが雁夜さん曰く間桐家の現当主である間桐臓硯の手によって体中を刻印虫、と言う魔術によって生み出された蟲に犯され、体中をこの家の魔術に適応させるために作り変えられていたそうだった。
まだ10歳にも満たない幼い子がそんな事に耐えられる事もなく精神が麻痺してしまい今のような生気の無い人形のような子供になってしまった事を知って、雁夜さんは自分がこの家を出家しなければかつて思いを寄せいていた女性の子供がこんな事にならなかったのでは、と自分を責めていた。
そんな中自分に令呪という『聖杯戦争』の参加資格である物が自分の体に現れそれをきっかけにこの間桐家に戻り臓硯と交渉し、今回の『聖杯戦争』に自分が間桐の魔術師として参加し、聖杯を手に入れる代わりに桜ちゃんを遠坂家に戻すように交渉したらしい。
つまり雁夜さんは桜ちゃんを助けるために自分の体を削りながら『英霊召還』に望んだのに現れたのが一般人並のステータスしか持っていない俺が現れて血を吐いて倒れてしまった、と。
「あ~、なんて言うかごめんなさい?」
「フ、フフフ。ゴメンね桜ちゃん。おじさんはもうだめだよ」
光を消して濁った瞳で不気味に喋る雁夜さん。
「でも、桜ちゃんを助けるって言ったってあの子の心臓にはこの家にいる蟲の親玉か寄生してるけどそれはいいの?」
「……?何だって」
「いや、だから桜ちゃんの心臓にはこの家にいる蟲に指示を出している親玉が寄生してるって言ったんだけど」
「……はああぁぁぁ!?」
声を荒げて驚く雁夜さん。
「蟲の親玉、ってどういう事だ!?親玉はあの爺のことだろ!!」
「爺ってあの時一緒にいた老人の事?あれは蟲が集まって人の姿をしているだけでしょう?雁夜さんは知ってたんじゃないの?」
「蟲の集合体!?そんなことは知らないぞ!!」
どうやら雁夜さんはこの家の蟲の事を知らされていなかったらしい。
「じゃあ、仮にあの爺を殺しても桜ちゃんに寄生している蟲を殺さない限り桜ちゃんを助けられないのか!!」
悔しそうな顔で拳をベットに叩き付ける雁夜さん。
「そんなに落ち込まないでくださいよ雁夜さん」
「ふざけるな!!俺はあの子を、桜ちゃんを助けたくてこんなくだらない戦争に命を削ってまで参加したんだ!!それなのに桜ちゃんを助けられない、なんて……」
「いや、寄生している蟲だけを摘出するのは俺が出来ますから」
「寄生している蟲を摘出できても……摘出できる?」
「あの程度の寄生なら桜ちゃんに後遺症を残さずに摘出できますけど」
「……それを最初に言えやああぁぁぁぁーーーーー!!ごふ」
「ちょ、雁夜さん!?しっかりして!?」
興奮しすぎて血を再び吐いてぶっ倒れた雁夜さんを慌てて介護する俺。
こうしてこの世界での第四次聖杯戦争が始った。