ショタ化した雁夜君に目潰しやら関節技を喰らった後、検査が終った桜ちゃんと合流して遅い時間の夕食を食べてます。
「モグモグ……ところで雁夜く、雁夜さん」
「ガツガツ、んっなんだよアキラ」
小さくなった手で大きな器を持ち料理を次々と平らげていく雁夜君。その隣では小さな口を忙しなく動かしながらもっきゅもっきゅと、料理を食べる桜ちゃん。
その姿はハムスターを連想させてとても癒される。
「これからの事なんですが、聖杯戦争どうします?」
「どうしますってどういう事だよ」
空いた器に新たに載せられた料理に手をつけながら返事をする雁夜君。料理は食糧生産用のコロニーから直送された最高級品の食材を料理専用に調整されたキューブ君が調理して配膳してくれている。
「いやね、一応俺と雁夜さんは今回の第四次聖杯戦争でしたっけ?それにマスターとサーヴァントとして参戦してるじゃないですか」
「それが?」
「でもマスターである雁夜さんの願い、桜ちゃんを助けるってもう叶ってますよね」
「……そうだな」
「で、サーヴァントである俺の願いは別に聖杯に願わなくても俺の宝具で十分に叶うんですよ。だから一応サーヴァントである俺も聖杯に願う事が無いんですよね」
桜ちゃんはお腹いっぱいになったのか料理に箸をつけるのを止めたようだ。ただし食後のデザートは普通に食べている。
デザートは別腹ですね、分かります。
「そう考えると、俺達が今回の聖杯戦争に参加する必要性がなくなったな」
「そうなんですよね~。たかだか膨大な魔力で世界の法則を捻じ曲げて願いを叶えるだけならGZでも出来ますからねぇ……それに中身が汚れきってヘドロを煮詰めたような聖杯(笑)を使って願いを叶えようとしても絶対まともな願いが叶うとは思わないですしね」
「……汚れきった?」
「ええ。雁夜さんの家にあった書物やら資料やらを片付けていたら聖杯戦争の大まかなシステムについて書かれた書物が出てきまして。その書物曰くそもそも聖杯戦争における聖杯は二つあるらしく『大聖杯』と『小聖杯』という二つの聖杯があってその内小聖杯は問題が無いようなのですが聖杯戦争の大本である大聖杯、これがちょっっと汚れてるみたいですね。まあ何百年も掃除をしてなければ汚れるのは当たり前ですけどね(笑)」
「掃除ってお前……」
俺の発言にゲンナリしながらも運ばれてきたデザートを頬張る雁夜君。桜ちゃんはお腹いっぱいになったのかうとうとし始めていた。
「それにしても一体どんな利用の仕方をしたらあんなに汚れるんですかね?GZから調査結果を聞いたらホントビックリしましたよ」
「俺は街角のアンケート結果のようなノリで大聖杯を調べてきたお前にビックリだよ」
「大聖杯の中には、
「
俺の言葉に手が止まる雁夜君。
「いやぁ~危うく飲み込まれそうになりましたけど逆に大聖杯から取り出して封印してやりましたよ。で、これがアンリマユを封印した結晶です」
懐から黒く濁った色をした結晶を取り出しテーブルの上に置く。GZの封印のおかげで周囲に悪影響は無いのだがその色合いは見ているだけで気分が悪くなる。
「ちょ、お前!?そんな物此処に出すんじゃない!!」
雁夜君は慌てて椅子から飛び降りて隣に座っていた桜ちゃんを抱きしめて距離を取る。抱きしめられた桜ちゃんは慌てた様子もなくポーとしていた。どうやら本格的に眠いらしい。
「そんなに慌てなくても大丈夫ですって。この結晶は見た目脆そうですけどこう見えても地球の中心部と同じ圧力を掛けても変形しないぐらい丈夫ですし、俺の知っている封印魔法を10の10乗掛けて有りますからそうそう壊れませんよ」
そう話しても近寄らない雁夜君。むしろゆっくりと離れていっている。
「……で、アキラお前それをどうするつもりなんだ」
「そこが問題なんですよねぇ」
「どういう事だ」
「これGZを使って消滅させようと思ったんですけど、仮にも
「……確かに。じゃあどうするんだよそれ。俺は魔術師としては三流だからそんな悪意の塊をどうにかするなんてことは出来ないぞ」
「ですよねぇ。かといって大聖杯に戻すわけにもいかないですし……」
2人して頭を捻る。が片方は魔術師としては力も知識も三流でもう片方は力や技術は規格外だがこの世界の知識に疎い。
そんな2人が話し合っても解決策は出てこなかった。ちなみに桜ちゃんはキューブ君に連れられてふかふかのベットがある寝室につれられて寝ていた。
「しょうがないですね。こうなったら最終手段です」
「最終手段って何か方法があるのか」
「今回の聖杯戦争に参加している他の魔術師に渡しましょう。対処法を知らない俺達が考えても仕方が無いですしね」
「それ、最終手段じゃない。押し付けるって言うんだ」
「大丈夫!!引き換えに大聖杯と同じ機能を持つアレを渡せば何とかなる……はず」
「はずって……と言うか大聖杯と同じ機能を持つ物を普通に持ってるお前がアレだよ……」
日付が変わろうとしている深夜の冬木市のコンテナターミナル。そこに第四次聖杯戦争に参加した七騎のサーヴァントの内四騎のサーヴァントが集まり睨みあっていた。
「……で、どうだ?待遇は応相談だが」
「「くどい!!」」
訂正、四騎の内ライダーをセイバーとランサーが睨みつけその姿をアーチャーがニヤニヤと眺めていた。
「フフフ、なかなかに面白い余興よ。だが我を差し置いて話を進めるのは気に食わんな」
「気に食わん、と言われてもなぁ」
ライダーが頭を掻きながら首を捻る。その姿に隣で立っていたライダーのマスターは無言でライダーの足を蹴飛ばすがビクともせず逆に自分の足を押さえて蹲っていた。
「フン、面白い余興は此処までよ。我を差し置いて王を語る紛い物の共は此処で消えてもらおうか」
アーチャーの言葉の後背後の空間が揺らぎ、そこから剣、槍、鎌、斧等など様々な姿をした武器が現れた。
「な、あ、アレ全部が宝具だって!?」
ライダーのマスターが震える声で叫ぶ。セイバーとランサーも顔を険しくしお互いに武器を構える。
「我の財にどこまで耐えられるか我に見せて「すみませ~ん。ちょっと良いですか~」誰だ!!我の言葉を遮った不届き者は!!」
アーチャーが今まさに彼が持つ宝具を打ち出そうとしたその瞬間、場違いな声が当たりに響いた。その声が聞こえた方にこの場に居た全ての者の視線が向く。
視線の先に居たのは、青年だった。
青年の姿はごくごくありふれたものでそれこそその姿は一般人としか言い様がなかった。そして一般人としか言い様が無いゆえに不自然であった。
なぜならば彼らが居る場所は事前に人払いの結界が張られており、青年がただの一般人ならば立ち入る事など不可能であるからだ。
「貴様のような下賎な輩が王たる我の言葉を遮るとは不届きな。万死に値するぞ」
「いやいやいや、言葉を遮っただけで万死って酷くないですか」
「王たる我の言葉は何にも勝るものと思え」
「えぇ~……」
アーチャーと青年の会話を聞きながらライダーは自身のマスターに声をかける。
「のう小僧、あの男どうするのだ。魔術師の常識には疎いが表の人間にばれては不味い事ぐらいは我輩にも分かるのだが「ち、違う」ん?」
アーチャーと青年、2人の姿を眺めながらライダーはマスターに質問したのだがその質問に帰ってきた言葉はある意味とんでもない言葉だった。
「あ、あの男は
「はぁ!?」
姿かたちは一般人。なれどその中身はサーヴァントだと、ライダーのマスターは質問にそう答えた。
「いや小僧よ。我輩もサーヴァントだからある程度相手が英霊かどうかぐらいは分かるが、あの男はどう見ても一般人にしか見えんのだが」
「でも、見えるんだよ!!あの男のステータスが!!」
「ほう。で、あの男、いやあのサーヴァントのステータスは?」
いつの間にか、アーチャーと青年を除く他のマスターとサーヴァントも聞き耳を立てながら青年のステータスを知ろうとしていた。
「あのサーヴァント。幸運値以外は全部Eなんだよ」
「「「え」」」
ステータスがE。それは歳相応の一般人並の能力しかないという事。つまり、あの青年は幸運値以外は見た目そのままの身体能力しか持っていないという事なのである。
「……たしかにそんな能力しか持っていなかったら一般人と代わりが無いな」
何所か納得がいったような顔つきでそう言葉に出すライダー。その言葉に同調するほかのサーヴァントたち。
だが、その言葉も青年が次に言った言葉で否定する事となる。
「いやだから、俺が此処にきたのは聖杯戦争が
青年が何気なく言った言葉。
『聖杯戦争はもう終っている』
あらゆる願いを叶える万能の器である聖杯をめぐる魔術師達の戦いが、人によっては何年、何十年と時間をかけて準備してきた聖杯戦争が、まだ七騎の内一騎もかける事無く終了している。
そんな異常極まりない事をごく普通に話す青年。
かくして極東の地で始った第四次聖杯戦争は誰も予想だにしなかった方向へ進みだした。