焼けつくような暑さの砂浜の中、ビーチパラソルの影で水着姿で横になりながら佇む香月博士。
「……フゥ」
肌を焼くような暑さだが時折吹く風が適度に肌から熱を奪っていく。そして彼女のすぐ隣にはキンキンに冷えたビールがクーラーボックスの中に大量に入っていた。
「ングッ、ングッ、ぷはぁぁ~~」
「博士、親父臭いです」
彼女の隣で砂のお城を作っていた霞が彼女の声を聞いてそう呟く。
「いいのよ社。もう
「そう、なのですか?」
「そうよ。それにもう私も十分に働いたんだし今後は自由にのんびりと過ごすからいいのよ」
そう話す彼女の顔は笑顔だったのだが何故か瞳は濁っていた。
アキラが佐渡島ハイブの上層部を吹き飛ばした後、アキラはハイブ突入部隊と一緒にハイブ内に進入した。地下という事も有り広範囲攻撃は出来なかったがそれでも次元連結砲とエネルギー波だけでも十分だった。ワラワラと溢れ出すBETAを吹き飛ばしながらどんどん先に進んでいくアキラとGZ。
それを後ろから着いていく突入部隊。彼らは半ば現実逃避仕掛けながらも遅れずに後を付いていった。そうして30分と立たずに佐渡島ハイブの反応炉の前まで誰一人欠けることなく到着できた。ここまでくると笑うしかない、と突入部隊の隊長は後に語った。
反応炉もアキラが、りんごを木からもぎ取るかのごとく簡単に確保してしまい突入部隊の隊員達は「……もうあいつ一人でいいんじゃないかな」と投げやりな事を考え始めていた。
そんなこんなで部隊の全滅を覚悟の上で望んだ佐渡島ハイブ攻略作戦は被害が一割にも満たないまま終了した。
そんな中アキラはどうやら満足できなかったようで香月博士に「じゃあ他のハイブも潰してきますね」ととても軽く、それこそ朝の挨拶を交わすかのごとくそう言い飛び去っていってしまった。
香月博士は呆けた表情をしたがすぐさまアキラに一度戻ってくるように言ったがすでに通信は繋がっておらず香月博士の声は届かなかった。
通信からホンの数十分ほどで世界は大混乱に陥る事となった。なぜなら世界に26あるハイブの内オリジナルハイブを除く全てのハイブの消滅が確認されたからである。
香月博士の下に届いてくる情報の中には“光線種の攻撃をモノともしないミサイルでの絨毯爆撃によって消滅した”“気象衛星に写るような竜巻によってハイブがバラバラになった”“地平線の向こうからでも分かるような光によって消滅した”等などとどれもこれも信じられない様な情報ばかりだった。だがその情報全てに共通している事は“ハイブが消滅している”と言う事実だった。
そんな信じられない、いや信じたくないような情報が入り込んでくる中香月博士のもとに再びアキラから通信が入った。認めたくない現実と共に。
「香月さん聞こえますか?アキラです」
「聞こえますか?じゃ無いわよ!!今いったい何所にいるのよ!!こっちはハイブが消滅したって情報が入ってきてパニック状態なのよ!?」
「……やっぱり一気に消し飛ばしすぎましたかね?」
「消し飛ばしたって本当に貴方がしたの……」
「はい、俺がしました。いや~ハイブって意外と脆いんですね~。威力を最小限に抑えた攻撃でも消滅してしまうんですから。あ、後で画像送りますね」
「……最小限?」
「ええ。いやね、グレートゼオライマーがフルパワーで最強攻撃放つと月クラスの衛星なら消し炭すら残さず消滅できるんですよ。あ、これ本当ですよ。実証済みですから」
「……」
「ああ、それと今いる所ですけど何でしたっけ?たしかオリジナルハイブとか言う所の最深部にいます」
「……ハァ?」
「で、いまそこにいたBETAの司令官的な奴を見つけたのでそいつに自己崩壊するようにウイルスを流し込んでる最中ですね。これで地球どころか月や火星にいるBETAやこの宇宙に存在している全てのBETAは自己崩壊するようになりますよ。やったね香月さん、BETAが死ぬよ」
彼が言ったことが事実である事を示すかのように画像の後ろでBETAの司令官?と思わしきBETAがのたうちまわっていた。そこまで理解した時、彼女の脳は自身の理性を守るため意識を切った。
「香月さん?どうしたんですか?香月さーーん!!」
彼女が目を覚ました時、世界情勢は気を失う前よりさらに大変な事になっていた。各ハイブの突然の消滅にBETAが突如同士討ちをはじめその数を減らしていき、月や火星のハイブも崩壊を始めていったとのことだった。
目を覚ました直後に再び気絶しそうになった彼女だったが、何とか気を保ち現状把握に乗り出した。その結果、オリジナルハイブを含む全てのハイブの消滅、ならびに残存BETAの同士討ちが事実という事が分かった。これだけでも頭が痛くなる彼女に追い討ちをかけるかのごとく衛星軌道上に直径で100キロはあろうかと言う人工物が3基現れたとの報告が入り込んできた。
もはや考えるのを止めてベットで眠りたくなる彼女だが現実が彼女を放してくれることは無くその人工物が何なんか調査してくれと指令がきた。
彼女はゆっくりとした動きでアキラに通信を入れる。
「……あの人工物、あんたのでしょ」
「人工物?ああ、あのコロニーの事ですね。はいアレは俺のですよ」
「……なんで見えるようにしたの?」
「その事なんですけど、あのコロニー3基貰ってくれません?」
「ハ?」
「いやね、あの3基、初期に作った奴で最新型と比べるとどうしてもいろいろと物足りないんですよ。かといって破棄するのも大変ですし別に使えないってわけじゃないですからなら、これから大変だろう香月さん達に使ってもらえる方がいいかな?っておもいまして」
「……」
「初期型とは言え食糧生産コロニーは年間で数億人が三食+おやつを食べれるだけ作れますし工業コロニーでは最新鋭の戦術機も月当たり数千機は余裕で作れるだけのスペックはあります。あと春夏秋冬四季折々のスポーツやレジャーが楽しめるアミューズメント施設コロニーは兵士や民間の人たちに人気が出ると思いますよ」
「……」
「ああ、維持管理の方は気にしないで大丈夫ですよ。あのコロニーには維持管理用のAI搭載型のロボットがそれぞれ十万近く配置されてますからそれらに任せておけば勝手に維持と管理をしてくれますから」
「……」
「……香月さん?あの、どうかしましたか?」
「ど」
「ど?」
「どうかしましたか?じゃないわよぉぉぉーーーーーーーー!!!」
「な、なんですか急に!?」
「数億人が食べていけるだけの食糧生産ができるコロニー!?最新鋭の戦術機が月数千機作れるコロニー!?四季が一緒くたになったアミューズメント施設!?それらを古くなったからあげる?ふざけてるのかぁぁぁぁーーーーーー!!!」
理性が吹っ切れたのか叫ぶ彼女。
「確かにBETAの脅威が無くなった今それらの施設は魅力的よ。でもそんな物を簡単に渡されても困るのよ。どの国が管理するのか?施設の利用順位をどうするのか?施設の利益はどうするのか?ただ渡されても困るのよ。ホントに」
「……すみません」
「分かってくれたならいいのよ。せめて一言相談ぐらい……」
「もう香月さん名義で日本帝国に譲渡するって世界各国に通信入れちゃいました」
「……え?」
「アレからは酷かったわ……四六時中通信がなりっぱなしで寝る暇も無かった」
「博士ェ……」
死んだような瞳で虚空を見詰めながらそう呟く香月博士。その姿は老人の雰囲気をかもし出していた。
「でもようやく、ようやくひと段落着いてこうやってのんびり出来るようになったんだからゆっくりしないと。いやゆっくりするの」
目を瞑り大きく伸びをする。
「社も好きなように遊んできなさい。私はここで休んでいるから」
「私はここでいいです。博士と一緒にいます」
「……そう」
波の音を子守唄にしながらゆっくりと意識を手放していく香月博士。彼女が今はいなくなったアキラに対して思うことはただ一つ。
(あの男、面倒事押し付けて逃げたな)
こうしてこの世界でのBETAと人類の戦いは一人と一機の介入であっけなく終った。これは数多の並行世界で起きた一つのあいとゆうきのものがたりである。
「武ちゃん、どこなのー」
兵士の皆様はリゾート用コロニーで各部隊1週間交代で休暇を過ごしました。