でも空中戦だけは勘弁な。   作:ぜんざい

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ゆどうふ。


邂逅の錬金術師

 

 

 

4、邂逅の錬金術師

 

 

前回のあらすじ。

・デルフリンガー=大根=50ドニエ

 

 

夜明け前。

まだトリステイン魔法学院の人間の大多数が寝静まっているであろう時刻。

無人の広場で騒がしくして居る一人と一刀が居た。

『おらぁっ!

腰が引けてるぞ!

ごっこ遊びじゃねえんだ真面目にやりやがれ!』

「お、お前が重過ぎんだよこの大根魔剣…!」

『てめぇはオレッちを怒らせた…!

素振り五百追加だぁ!

終わるまで飯食うんじゃねえぞ!』

「ふざけんなぁぁぁぁあああっ!」

 

何故俺が大根魔剣ことデルフリンガーに命令されているかというとだ。

俺がこの大根魔剣に鍛えてくれと頼み込んだからである。

 

このデルフリンガー、実はただの口煩い鉄製大根ではない。

俺が手にするまで色々な剣士の手に渡り、様々な戦場を切り抜けてきた歴戦の剣なのだ。

そして喋れると言うことは当然、記憶能力を持っている。

歴戦の剣の経験とは、即ち歴戦の剣士の経験。

口の悪い鉄大根だが剣の師匠にするにはこれ以上ない一刀なのである。

 

まあ地力が足りないから今はひたすら素振りなのだが。

「腕が持って行かれるぅぅぅううう!!」

『そう言って持って行かれた奴は一人もいねぇから気にすんな!

…ん? 相棒、お客さん見たいだぜ。

一旦休憩だ。』

そう言われた瞬間、デル公を地面にかなぐり捨てて倒れこむ。

『てめぇ…。』

正直、休憩中位はうつ伏せで寝ていたい。

 

「お、おい!

大丈夫かよ!?」

「お前の主観的に見てこれが大丈夫に見えるならとんだドSだよ。」

「そ、そうだな…。

えっと、医務室まで運ぶか?」

「あいや、俺の主観的に見てただの疲労だから大丈夫だ。」

「うつ伏せで倒れながら人と話してる奴を大丈夫とは言わねえよ。」

「逆に考えろ、うつ伏せで倒れてるのに話す余裕があるなら大丈夫だ。

所でさっきから大丈夫を連呼しすぎた結果、俺の中で大丈夫がゲシュタルト崩壊を起こし始めている。」

「全然大丈夫じゃねえだろそれ。」

 

 

数分後。

「ふう、だいぶ落ち着いてきた。」

「落ち着いてきたなら責めて仰向けになってくれないか?

傍から見たらただの殺人現場じゃねえか。」

凶器はそこの鋭利な大根だな。

この状況の原因的には間違ってない。

「いや、驚いたぜ。

珍しく早起きして散歩してたら寮から離れた広場で悲鳴と怒号が聞こえたから。」

あー、悪い。

これからは出来るだけ静かにやるよ。

「…所であんた名前は?」

「人に名前を尋ねる時は…。

いや、どうせ練習再開したら忘れるだろうしいいや。

柳之介、青川柳之介だ。

覚えにくいならリューノスケで良い。」

「っ!……やっぱり…。

あんたって確か貴族に使い魔として召喚されたって言う…。」

「あー、そうだ。

もう一人と違ってただの平民だけどな。」

「剣と腹話術で会話しながら素振りしてるやつをただの平民とは言わねえよ。」

「いやあれは腹話術じゃなくて…。

話がこじれそうだからそれでいいや。」

「柳之介、あんたに会ったら聞きたいことがあったんだ。」

「一つだけな。

ボチボチ練習再開しないと飯に有り付けなくなる。

早く行かないと飼育小屋のおっちゃん残飯片付けちゃうんだよ。」

「お前残飯食ってるの!?」

「そうだよ。

だって捨てるなんて勿体無いだろ?」

 

はい質問終了。

デル公、もう少し離れた場所で練習再開するぞ。

さっさとあと659回終わらして飯だ飯。

『やっと終わったか。

後一分遅かったら100回追加してしてたぞ。』

「やめて下さい腕の骨がイカれてしまいます。」

 

 

「あ、ちょっと!」

俺の呼びかけも虚しく、柳之介は茂みの中に消えてしまう。

『お前は俺と同じ世界の住人なのか?』

一番聞きたかったことを聞けずに…。

 

と言うか、朝食が残飯て…。

俺も現在進行形で色々辛い目にあってるけど、ルイズってかなりマシな方だったんだなぁ…。

っていけねえ!

そろそろ洗濯しないと!

 

 

ーーーーーー

 

今朝からサイトもといバカ犬の様子がおかしい。

急に今までの反抗的な目が形を潜め、若干ぎこちないが従順になった。

早朝時は遂に私の『バカ犬調教計画』が功を奏したのかと思ったが、幾ら何でも不自然だ。

そしてさり気ないつもりか知らないが、やたらとホーエンハイムについて聞いて来る。

正確にはもう一人の使い魔の主についてだけど。

 

錬金のルカ。

あの女は土系統のドットメイジ。

ただそれだけで説明文を切れば、何処にでもいる普通のメイジだ。

だがあの女の場合は違う。

錬金の魔法だけを愚行とも呼べる程に修練し、他の魔法を全て捨てることで、総合的にはドットにも関わらず、トライアングルクラスの錬金を行えるのだ。

 

一つのことに長期間集中できる人物は紛れもない天才だが、そのせいで座学と錬金以外は私と同じ劣等生なのだから本末転倒もいい所だろう。

いや、教師陣からすれば爆発しない分、私よりはマシな生徒なのだろうが。

 

しかし何故あのバカ犬があの女に興味を持ったのだろう?

何時もの発情期なら癪に障るが、あの女がツェルプストーより魅力的に見えるとは思わないし、同じ平民の使い魔に興味を抱いたなら、こんな何処ぞの恋する乙女の様な事をするほど人見知りな奴ではないないだろう。

よもや仕える主人の鞍替え…?

いや、それだと今朝のあの態度と合致しない。

あの目はまるで『言うことを聞くからどうか捨てないでください。』とでも言っている様だった………。

 

!! そうか! そういうことだったのか!

 

 

ーーー日記はここで終わっている。

 

 

深夜。

「なあルカ。」

「なんだいリューノスケ?

私はもう寝るから君も早く宿舎に行きなさい。」

俺は現在、使用人用の宿舎と称して、使い魔の飼育小屋で寝泊りしている。

勿論、主人(仮)とは言え、女の子と同じ部屋と言うのはかなり犯罪くさいし、雄鶏の使い魔が居るから、朝起きるのが楽だからであって、別に俺がサバイバル精神旺盛且つ被虐趣味があるからではない。

シルフィードの尻尾枕が心地良すぎるんや。

 

「最近妙に皆が優しい気がするんだよ。」

具体的には練習終わって残飯貰いに行ったら、代わりにパンと出来たてのシチューを貰うから、錬金術の練習ができなかったり。

魔法の詠唱と効果を書き取ってたら、先生が終わるまで待っててくれるから、結局全部の説明を書くことになったり。

飼育小屋に行ったら、隣に小さい小屋が建ってて、『粗末だが、取り敢えずはここで寝泊まりしたまえ。』って言われて、シルフィード枕が使えなかったり。

まあ具体的には言わないけど。

 

「へえ、それは良かったじゃないか。

私は最近妙に避けられてる気がするんだ。」

「何だそれイジメじゃないか。」

「いや、何と言うか…。

妙にその行為に正当性を感じると言うべきか。

言うなれば悪いことしたものが相応の罰を受けていると言った空気を感じるんだよね。」

「明日コルベール先生に相談しようぜ。」

「いや、うーん…。

一応理由は知っておいた方がいいか。」

 

 

後日、俺がルカに一晩中叱られたのは言うまでもない。




おむれつ。
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