〜コウジンタウン〜 コウジン化石研究所
「コウジン化石研究所」は「コウジン水族館」と並び、此処コウジンタウンの発展に大きく影響している場所だ。
此の研究所では数十年前に「輝きの洞窟」にて発見された顎の化石と鰭の化石の復元に成功し、チゴラスとアマルスという新種のポケモンを此の世に蘇らせた事で一躍世界的に有名になった。
又、其他にも「輝きの洞窟」で発掘される化石は非常に保存状態が良く、化石と化したポケモンを完璧に近い状態で復元する事が出来、其れにより詳しい化石ポケモンの生態を明らかにした事も、此の研究所の名声が高まった要因の一つだろう。
何処かの地方とは違い、化石の身体の一部が欠けている様な事や、明らかに無理がある化石同士を組合せて復元し、肉体の断面が見えたり呼吸困難な両棲類を生み出す様な事は無かった。
そして其の研究所では、一般人向けに「輝きの洞窟」にて発掘された様々な化石を展示している。
又通常の化石展示以外にも、子供達の化石への興味を持ってもらう為に復元したポケモン達との交流会が開催されており、対象であった子供達以外に保護者である大人からも人気を博している。
其他にも、盾の化石や甲羅の化石等々のポケモンの化石のレプリカが併設された売店にて販売されており、其の再現度から観光客に大変人気の御土産となっている。
そんな研究所から出て来た少年は、大変幸せそうな表情をしていた。
今迄は図鑑やテレビ等でしか見る事が出来なかった化石を間近で見れて、少年はまるで幼い子供の様に興奮した様子だった。
そして折角なので、少年は化石の発掘現場である「輝きの洞窟」に行ってみる事にした。
少年の旅の予定には無かったが、元々予定は余裕を持たせてあり、此の様な観光をしても計画に支障は無い。
最低でもリーグの開催前迄にバッジを八つ手に入れ、リーグ会場で選手登録をすれば良いのだから、全て間に合えば良かろうなのだ。
早速少年が「輝きの洞窟」へと続く九番道路へ向かおうとすると、ムゲン団のTシャツを身に着けた怪しい一団が其の方向へと進んで行ったの目撃した。
其の集団に、少年は何か邪な思惑を感じ取り、急いで其の集団を追い駆ける事にした。
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〜九番道路〜 サイホーン乗り場
兀兀とした地面によって生身の人間が歩く事が困難な地形となっている此の道路は、交通の為にサイホーンが使われる事で有名だ。
人間にとっては脅威となる此の地形だが、サイホーンにとっては気持ちの良い物らしく、よく乗り手が居ない時も歩き回っている様子が見られるそうだ。
其の時の様子を人間風に例えるならば、足つぼのマッサージ板の上を歩く事になるのだろうか。
そんなサイホーンだが、少年にとっては思い出深いポケモンだ。
少年の家の近所にはサイホーンを飼育している御婆さんがおり、其の家のサイホーンは少年にとても良く懐いていたからだ。
少年の祖父母と両親と交流がある其の家のサイホーンは、其の経歴故か余り人に懐かない事で知られていた。
御婆さん曰く、乗り手として相応しい人物にしか懐かない、との事だ。
だが少年が両親と共に其の御婆さんの家に訪れた時、其のサイホーンは少年に何かしらの才能を感じたのか、突然幼かった少年の前に歩き出して自慢の角に触らせたのだ。
其のサイホーンの様子に両親と御婆さんは大変驚いていたが、楽しそうにする少年とサイホーンを見て微笑ましい物に変わった。
其後も、少年が御婆さんの家に訪れる度に、サイホーンは少年に構えと言わんばかりに頭を押し付け、彼等は信頼を高めていった。
少年が旅に出る直前に、出発の報告の為に御婆さんの家に行き、報告が終わって家から出る時に其のサイホーンと目が合った。
少年の目から思いと決意を感じたのか、サイホーンは少し寂しそうにしながらも、何処か嬉しそうに鳴き声を上げて眠り始めた。
少年が最後に角を撫でた時、其のサイホーンの目には少年では無い別の誰かも映っている様に見えた。
少年が暫しの間思い出に浸っていると、サイホーン乗り場の職員が、サイホーンの準備が出来た、と少年に声を掛けられる。
其の言葉で自分の目的を思い出した少年は、其の職員が準備したサイホーンへと駆け寄る。
用意されたサイホーンと少年の故郷のサイホーンを比較していると、目の前のサイホーンは少年の事が気に入ったのか、嬉しげな鳴き声を上げて少年に頭を押し付ける。
故郷のサイホーンと同じ仕草を見せるサイホーンに、少年は笑顔で角を撫でてサイホーンの背中に跨がる。
すると、サイホーンは楽しそうな鳴き声を上げながら、「輝きの洞窟」へ向けて全速力で走り出した。
道中で凄まじい砂埃を巻き起こしながら去って行くサイホーンと少年を、乗り場の職員は只唖然として見ていた。
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〜輝きの洞窟〜 化石発掘現場
サイホーンでの峠攻めの様な爆走を楽しんだ少年は、あの怪しい集団を追って「輝きの洞窟」へと来ていた。
本来の観光とは別の目的になってしまったが、あの集団の目的を知った後に確りと観光しようと、少年は心に決めた。
そんな少年が洞窟内で怪しい集団を探していると、数人の男性が倒れているのが見えた。
少年が急いで倒れている男性に話し掛けると、彼等は此処の警備員であり、少年が追っていたムゲン団のTシャツを身に着けた一団に倒されてしまったらしい。
少年が男性達を介抱すると、気が付いた男性は、少年にあの集団を追う様にと頼んだ。
話を聞くと、此処から先は化石の発掘現場であり、其処には数人の化石研究者しか居らず、彼等が危険な目に合う前に救助して欲しい、との事だ。
少年が男性の要望に頷くと、彼等は一度洞窟の入口に戻り、警察に連絡してから再び此処に戻って来るらしい。
其の為、彼等は少年に、無理をしない様に、と告げて入口の方へ歩いて行った。
此の先にいる筈の人達の安全確保の為に進む決意をした少年は、苔で光輝く洞窟の先へと歩いて行った。
少年が化石発掘現場へと続く貨車の線路に沿って歩いていると、突き当りで何者かの影が動いているのが見えた。
少年が近くの岩場に隠れ、息を潜めて影の様子を伺っていると、二人組らしい影の話し声が聞こえてくる。
どうやらあの怪しい集団は、此処で奪った化石を売り捌く事で大金を手に入れようとしているらしい。
化石を冒涜する様な理由で此処を襲撃した集団に、少年はつい二人組の前に出てしまったが、其の二人組は少年の存在に非常に驚き、慌てながらポケモンを繰り出す。
報連相も出来ていない彼等に、少年もポケモンを繰り出して応戦した。
其後、化石発掘現場を襲撃したムゲン団のTシャツを着た集団は少年に全て倒され、後から駆けつけた警備員と警察によって連行されていった。
そして少年は其の場に残った研究者達に感謝され、発掘したてであった二つ化石の内の片方を、御礼としてプレゼントされた。
憧れである本物の化石を手にした少年は、其の重量感と質感に感動して、興奮した面持ちで洞窟から去って行った。
無論帰り道も、少年を待っていたサイホーンによる頭文字が付きそうな速度の走りであった。
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〜コウジンタウン〜 コウジン水族館
此処「コウジン水族館」はカロス地方を代表する水族館であり、世界各地に生息する多種多様な水生ポケモンが展示されている。
そして此の水族館では「コウジン化石研究所」との提携で、水生化石ポケモンの展示を行っている事で有名だ。
そして、化石の観光や洞窟での襲撃事件を終えた少年は、そろそろ此の町を去って次のポケモンジムがあるシャラシティに向かおうと、町の出口を兼ねている「コウジン水族館」に来ていた。
受付でトレーナーカードを見せて中に入ると、少年の視界に蒼く映る大きな水槽が鎮座していた。
コウジンタウンに入る際にも見ていたが、水槽で活き活きと泳ぐポケモン達はとても惹かれる光景であり、やはり少年も例に漏れずに魅入ってしまう。
少年が水槽を見て立ち止まっていると、少年の背後から聞いた事のある声が掛けられる。
其の聞いた事のある声の人物に対して振り変えると、其処にはあの少女がいた。
少女は少年によく会う事に驚きながら、少年に、今は何をしているのか、と尋ねる。
気になる少女を前にした少年は少し緊張しながら、水槽で泳ぐポケモン達を見ていた、と答える。
其の答えを聞いた少女は少し考え事して、少年に対して、一緒に観光しよう、と話す。
此の思い掛けない展開に、少年の頭は湯気を上げながら肯定した。
すると少女は悪戯が成功した様な表情を浮かべ、少年の手を握り歩き出す。
少年は少女の手の感触の柔らかさを感じ、自身の手汗を心配しながら、少女に付いて行った。
少年が少女との観光に少し慣れてきた頃、少女は水槽に目を向けたまま、少年にある質問を問い掛ける。
「今水槽の中で泳いでいるポケモン達は、今本当に幸福と感じているのかしら?」と。
少年は其の質問に少し悩むと、少女に対して自分の考えを述べた。
其の少年の答えを聞いて、少女は只一言を呟いた。
「そう…。其れが貴方の答えなのね…。」
何か気に触る事を言ったかと心配した少年だが、少女は直ぐに少年の手を引っ張り、其の場から歩き出してしまったので、少年は付いて行く事しか出来なかった。
其後少女と少年は其のまま観光を続け、水族館の出口である黄金のコイキング像の前で別れる事になった。
此の黄金のコイキング像は釣り人にとっての御神体らしく、普段は大漁祈願や大物のポケモンを釣る前に釣り人が参拝しに来るのだが、今はそんな時期では無いらしく人は疎らだった。
少年は、少女とのデートとも呼べぬ水族館観光に意気消沈していると、少女はそんな様子を見せる少年に苦笑し、最後に二人で何かしよう、と提案する。
其の言葉を聞いた少年は、大分悩ましげな表情して考えていると、少女との写真を撮りたい、と言い出した。
写真に写る事に抵抗を示した少女だったが、少年の棄てられた子犬の様な表情を見て、溜息を吐きながら了承する。
少年は周囲の人に写真機を渡し、少女と黄金のコイキング像の前に並んだ写真を撮ってもらった。
少年は別れ際に其の写真のデータを少女にも渡して、自身はシャラシティに向けて旅立って行った。
渡された其の写真には、緊張しながらも嬉しそうに笑う少年と、何処か困った様な表情をして不器用な微笑みを浮かべる少女が写っていた。
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〜ミアレシティ〜 ムゲン団本部
少年との別れ際に写真のデータを受け取った後、少女ムゲン団の本部に戻り、何処か悲しげな表情をして其の写真を眺めていた。
団員からの報告にあった少年が、写真に写る彼だと知ってしまったからだ。
少女があの時願った微かな願いすらも、此の世界は叶えるつもりが無いらしい。
本当は敵対したく等無いが、少年が自身の目的の障害になるのならば、少女は排除するしかない。
運命とは、何故こうも皮肉で残酷な物なのだろうか。
そんな事を思った少女は、窓硝子の遠い向こうに居るであろう少年の事を考え、深い溜息をついた。
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