新・ムゲン団(カロス)   作:産業革命

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連載にしたので頑張ります。


第五話

 〜五番道路〜

 

 五番道路の一帯は緩やかな丘陵地帯が続いており、其の地形により、此の地域はカロス一の農業地域となっている。

 カロス地方一の大都会であるミアレシティの近くに位置するのも、此の地域で農業が発達した要因の一つだ。

 そして農業地域である此処で生産された穀物は、ミアレシティのみならず此のカロス地方の食卓を支えている。

 

 そんな田園風景が続き畑特有の匂いを感じさせる五番道路を、ミアレシティの観光を終えて次のポケモンジムがあるショウヨウシティに向かっている少年が歩いていた。

 

 少年は此の道路を歩いていると、自身の故郷であるアサメタウンを思い出した。

 数日前に見たミアレシティも良い街だったが、やはり少年は都会が苦手だと感じていた。

 

 少しホームシックになった少年だが、全てのジムバッジを集める迄は故郷に帰らない、と固く心に決めている。

 父親を超えるチャンピオンになると決めたあの日から、少年は此の旅を長年待ち望んでいたのだから。

 

 

 

 少年が決意を改めていると、ムゲン団の格好をした男女が少年に近寄って来る。

 すると彼等は、少年のポケモンを寄越せ、と言ってきた。

 其れに対して少年が拒否すると、彼等は少年のポケモンを強引に奪おうと其々ポケモンを繰り出した。

 其れに応じて少年がポケモンを繰り出そうとすると、突如として空から一人の男性が、少年と彼等の間に着地する。

 

 突然の乱入者に驚く全員であったが、其の男性の正体を認識すると、少年は驚愕の声を上げた。

 なんと其の男性は、少年の父親であるチャンピオンだったからだ。

 

 少年の父親は、空で見た時から少年の事を分かっていたのか、少年に一瞬だけ目を向けると、少年にポケモンを出す様に指示を出す。

 ムゲン団の格好をした男女は、既にポケモンを出してしまった為に引くにも引けない状況になってしまった。

 すると少年は、父親の相棒の子供であるハリマロンが進化した姿であるハリボーグを繰り出す。

 少年の父親は、少年のハリボーグを嬉しそうに一瞥すると、自身の切り札であるアブソルを繰り出した。

 

 そんな少年にとって初めてのダブルバトルは、とても思い出深い物となった。

 

 

 

 

 

 

 

 初めてのダブルバトルに勝利し、父親が呼んだ警官達の手によって連行されて行く男女を見届けた少年は、父親に、何故此処に来たのか、と疑問を投げ掛ける。

 すると少年の父親は、息子が心配になって来た、と発言したが、其の理由を聞いた少年は、父親に対して冷たい視線を向ける。

 其れに気付いた父親が慌てて訂正すると、今度は急に真剣な表情をし、今とある事件が発生していて、其の見回りの途中だったからだ、と答える。

 その後の別れ際に、少年に対して、メガストーンを探している人物を見かけたら気を付けろ、と警告し、少年の父親はチルタリスに跨って去って行った。

 

 其の言葉を聞いた少年は、鞄の中にあるメガストーンを取り出し、手に持って天に透かしてみた。

 

 メガストーンは煌々とし、中の模様を写し出す。

 

 

 

 

 

 其の模様は何故か、少年の運命の螺旋を示している様に見えた。

 

 

 

 

 

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 〜コボクタウン〜 ポケモンセンター

 

 コボクタウンからショウヨウシティ迄の渓谷には、数多くの古城が存在している。

 其の城の中には廃墟となってしまった場所もあれば、個人所有となり住居として使われている場所もある。

 しかし、大半の古城は観光が可能であり、中にはホテルやレストラン、カフェとして運営する場所も多い。

 そして、此の渓谷一帯は果実栽培が盛んであり、果実酒の製造において、世界的に高い評価と古い歴史を誇っている。

 

 此処コボクタウンに存在する「ショボンヌ城」も渓谷沿いに点在する古城の一つであり、主に観光と果実酒製造で有名な場所だ。

 又「パルファム宮殿」への最寄り街である事から、観光客が絶える事は無い。

 

 五番道路を通り無事にコボクタウンに辿り着いた少年は、少し手持ちのポケモンを鍛える序に「パルファム宮殿」を観光してみる事にした。

 何故ならば、五番道路を歩いていた途中で少女から貰ったタマゴが孵り、ケロマツが生まれたからだ。

 序に少年は少女との約束を思い出し、同時に天の御告げの様な言葉が頭に浮かんだ。

 

 「パルファム宮殿」に行けば少女に会える、という。

 

 其の言葉に感化された少年の行動力は凄まじく、道中に立ちはだかるトレーナー達を薙ぎ払うが如く打ち倒し、電光石火の速度でコボクタウンに向け進んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 そんな少年は先程の道中の疲れが出たのか、ポケモンセンターにある個室の寝台に横になると、直ぐに泥の様に眠ってしまった。

 彼のポケモン達は少年を呆れた様な目で見た後に、全員で目を合わせて静かな声で笑った。

 

 

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 〜パルファム宮殿〜 

 

 六番道路の並木道を抜けると、其処には巨大な宮殿が建っている。

 其の宮殿は三百年程前に当時のカロス王が建設し、市民革命によってカロス王が退任し共和制になるまでの王の住居であった建物である。

 現在は其のカロス王の子孫が所有しており、カロス市民には無料で公開されている。

 

 其の様な経緯を持つ宮殿を前に、少年は自身の感を信じて少女に会う為に訪れた。

 

 豪華な金装飾が施された門を潜り、少年が宮殿のエントランスホールに入ると、其処には黄金のミロカロス像が鎮座していた他、天井から吊るされた巨大なシャンデリアや数々の絵画、そして金色の光を放つキリキザン像や騎士甲冑が飾られていた。

 其の輝きに圧倒され、暫し呆然としていた少年だったが、自分の目的を思い出し少女を探す事に専念した。

 

 

 

 其れから暫くして、少年は宮殿のとある一室の前にいた。部屋を表すプレートには「文献展示室」と書かれている。

 少年が其の部屋の扉を開けると、其処には目的である少女がいた。

 しかし、少女は何やら集中しているらしく、部屋に少年が入って来た事に気付いていないようだ。

 其の事を少し残念に思ったが、少女が真剣に見ている巻物が気になり、少年が其れを覗いて見ると一つの絵が描かれていた。

 其の絵には、枝分かれした角を持ったポケモンと爪がついた翼を大きく広げたポケモンが戦っている様子が描かれている。

 

 少年が其の絵について考えていると、漸く少女は少年が居る事に気付き、非常に驚いた様子を見せる。

 少年は、何をしていたのか、と少女に尋ねると、少女は、カロスの伝説について調べていた、と答えた。

 どうやら此処の資料は大変貴重な物らしく、抑々伝説についての資料の数自体が少ないそうで、此のカロスの伝説は謎に包まれている物が多いらしい。

 そんなカロスの伝説の謎の一説には、イッシュ地方の『三剣士』は元々カロスの伝説の一つであった、という物もある程だ。

 

 少年が先程の絵に描かれていたポケモンについて質問すると、少女は伝説に登場する『聖獣』と『魔鳥』だと答えた。

 伝説となる程の力を持つポケモンについて少年は少し興味を持ったが、直ぐに少女に報告しなければならない事を思い出し、少女に、少し話したい事があるので移動しよう、と言うと、少女は少し悩む素振りを見せた後に了承した。

 

 

 

 

 

 宮殿内の展示室から庭園のベンチに移動すると、少年はモンスターボールを取り出し、ボールのスイッチを押す。

 すると中から少女が渡したケロマツが出て来て、少年の膝の上に飛び乗る。

 そんなケロマツの様子を見た少女は嬉しそうに微笑み、ケロマツの頭を撫で始めた。

 撫でられる事を恥しそうにしながらも、其れを受け入れるケロマツを見て、少年は笑顔を浮かべる。

 其の光景を見た周囲の人々は、微笑ましげしながら静かに、少年と少女の邪魔をしない様去って行く。

 其の事に気付いた少年が、人々に軽く頭を下げて感謝すると、少女も其れに気付いて同じ様に頭を下げる。

 

 やがて二人きりとなった空間で、少年は隣に座る少女の事を見てみると、其処には自然な笑みを浮かべ、母性を感じさせる少女がいた。

 そんな少女の新たな魅力を発見出来た事で、少年はより少女に対する想いが強くなった事を自覚した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後少女と共に宮殿を散策した少年は、最後に鏡の間のバルコニーに来ていた。

 其処はイッシュ地方に伝わる伝説の竜や人間とゴルーグを模した石像と共に、宮殿の広大な庭園が見渡す事が出来る人気の場所だ。

 普段ならば大勢の観光客で入れないであろう此の場所だが、今は幸運にも人は少なく、少女との静かな一時を過ごせそうだ。

 そんなバルコニーから眺める庭園の風景に感動していた少年だが、隣にいる少女は沈黙したまま立ち尽くしていた。

 少年はバルコニーからの絶景に夢中で気付かなかったが、少女の目は暗く濁っており、その視界にはあるはずの無いあの日の光景(旅の同期と見た花火)が映っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 少年と少女は宮殿を出て別れる事になり、少年は名残惜しそうに並木道の向こうに見える少女の背中を見つめていた。

 やがて完全に見えなくなると、少年はポケモンの鍛錬の為に六番道路脇の雑木林に入って行った。

 

 

 

 

 

 

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 〜七番道路〜 とある古城 地下研究施設

 

 道路沿いにある数多くの古城の内、ムゲン団は環境保護の名目で、数箇所の古城とその周辺の土地を保有している。

 しかし実際は、ムゲン団幹部である『炎獅子』が管理する研究施設として活用されていた。

 

 此処は其の研究施設の一つであり、現在はポケモンの生命力を利用したエネルギーの研究が行われている。

 

 そんな研究所を訪れた少女は、其処の主任研究者である男性からとある実験の報告を受けていた。

 

 「そう…。例の物体から無限大エナジーを取り出す事に成功したのね。」

 

 「はい、総帥。此れにより、通常では後三年の月日が必要であった計画も、約一年程度に短縮する事が出来ました。」

 

 「良くやったわ。貴方達は今後、其の物体からのエネルギー収集を優先する様に。私は少し出かけるから、其の間に何かあれば『炎獅子』に連絡しなさい。」

 

 「了解致しました。気を付けて御出かけ下さい。」

 

 少女が男性に見送られ研究所を出ると、空には星々が瞬くように輝きを放っていた。

 

 そんな星々の中でも一際強い輝きを放つ星を見た時、少女は昼間に再会した少年の事を思い出した。

 あの少年の瞳の煌きが、一等星にとても良く似ていたからだ。

 

 其れに少年を見ていると、まるで二十五年前の自分を見ている様な錯覚に陥る。

 まだ世界を美しく感じ、未来を信じていたあの頃の自分のようだ、と。

 其の性なのか、最近は唯でさえ悪い夢見がより悪くなってしまった様に感じる。

 

 そんな少々寝不足気味の少女は、少年にある事を願う。

 

 「どうか、世界を信じられますように」と。

 

 そして、どうか少年が敵になりませんように、と。

 

 

 

 そんな願い事をした少女が見た夜空に、流れ星は現れなかった。

 

 

 

 

オリジナルポケモンはあり?

  • あり。
  • なし。
  • 知らん。

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