叶わぬ時の呪い頼み   作:hakusai

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えー、なんとなく途中なのに投稿してます。続きを二話として書くか、一話に続けるかは何ともいえません。


第壱話 きっかけ

 

始まりは、本当にただの偶然。なんとなく気になっただけだった。

 

 

 

──────────

 

「いらっしゃいませ」

 

 ドアを開けると、カランコロンと小気味良い音が店内に鳴り響いた。そのまま歩みを進めてカウンターの端、外のテラス席がよく見えるいつもの席に座る。

 この喫茶店はあたしのお気に入り店だ。といっても、通い始めたのはつい一昨日くらいだけど。店主の人が入店する時に案内をしなくなったから、もう顔を覚えられただろうし、常連さんになるのも近いかも? なーんて、いつ来なくなるかもわからないけれど。だって、この店はあたしの通学路にそれなりに前からあったのに、通い始めたのはつい最近だし。そのきっかけも本当につまらないものなんだから。

 

「コーヒーを一つください。あと、チーズケーキも一つ。」

 

「かしこまりました」

 

 この店のチーズケーキは絶品なんだ。このチーズケーキに出会ってなかったらきっと初日で来るのをやめてただろうなぁ。ありがとうチーズケーキ。……そんなことを考えながら、この先からよく見えるテラス席をぼうっと見る。あたしをこの店のチーズケーキの虜にしてくれたきっかけは、そのテラス席にある。正確には居るのだ。テラス席の真ん中あたり、コーヒーを片手にくつろぎながら本を読んでいる男性。その人が私がこの店に来たきっかけだ。まぁ、知り合いな訳じゃないんだけど。

 

「お待たせしました。コーヒーとチーズケーキです」

 

「ありがとうございます」

 

 ぼうっと眺めているとお目当ての品が来た。この店はコーヒーも美味しいからいつも一緒に頼んでしまう。女子高生の天敵かもしれない……。カロリー的な意味で。まぁ、そんなの関係なく食べるけどね。……んー! 口当たりが滑らかでとっても美味しい! そういえば、この店のチーズケーキと出会ったのもテラス席にいる人がきっかけだっけか。彼が注文してたから頼んでみたけど、本当に正解だったなぁ。何回食べてもすごく美味しい。まぁ、何日も連続で食べてるとカロリーもお財布も気になるんだケド。流石にそろそろ控えようかなぁ……。

 チーズケーキを楽しみながら窓の外を見る。件の男の人は、少し伸ばされた、くすんだ茶色の髪を後ろで緩くまとめていて、本を読むのに前髪が邪魔なのか前髪をかきあげて耳にかけているところだった。こちらからはなんの本を読んでいるのかはわからないが、彼のほんの少し青みがかった灰色の目の眼差しから難しい本を読んでいるんだろうなぁ、と予想できる。きっと知的な人なんだろう。

 さて、なんでその人をきっかけとしてこの店に来るようになったのかといえば……本当になんでなんだろう? 一昨日の帰り道、友達と別れて一人で歩いてる時に、ふと、例の男性が目についたのだ。そしてなんとなく気になって、店の中から様子を見てみようと思った。一目惚れ、とかそういうわけでもないし、ただの気まぐれ。それが日課になってしまった感じ。一目惚れって方がまだわかるくらいだなあ。

 まぁきっかけなんてなんでもいいか。今はチーズケーキが美味しいことが大切だし……とか思ってたらもう食べ終わってた。美味しいものは食べ終わるのも早い。不思議だなぁ。

 

 コーヒーを一口飲んで、ふぅ、と息を吐く。ケーキもう一個は……ダメだ。カロリーオーバーでやばい。仕方ないからやめとこう。また明日だな~。って、明日も食べる前提になってた。危ない危ない。毎日こんなにおいしいハイカロリー製品食べてたらやばいからね……、明日は控えとこう。今心に誓った。うん。そういえば、明日の課題何だったかな。今のうち確認しとかないと……

 

「あ」

 

 あ! しまった。スマホがない! 絶対学校に忘れてきたなぁ、しかもこの店まで来ちゃうと結構戻るのも面倒だし……。まぁ仕方ないか。取りに行こう。あー面倒だなぁ……もう面倒だなぁ……

 

「すみません。お会計お願いします」

 

 お会計すら面倒に感じるけど、お会計しないわけにはいかないから仕方ない。お財布が日に日に薄くなっていくのも仕方ないんだ……仕方ないんだ。うん。明日はやめとこう。

 お金を払って店を飛び出す。カランコロンと店のベルが鳴った。日も傾いてきてるし、暗くなる前に早くとって帰らなきゃ。

 

 

 

 

 私は学校に向かって急いで駆け出したのだった。……この後何が起こるかも知らずに。

 

 

 

──────────

 

 

 店を出ていく彼女の後ろ姿を、ほんの少し青みがかった灰色の眼差しが捉えていた。

 

 

──────────

 

「はぁ……」

 

 ため息がこぼれた。学校に行くのにこんなに憂鬱な気分なのは久々だ。さっさとスマホを持って帰ろう。あー、野球部とか吹奏楽部とかまだ練習やってるのね。外まで声が聞こえてる。よく考えたら学校周りに住んでる人ってうるさくないのかな。慣れてるんだろうか。慣れちゃったんだろうなぁ。普段すぐ帰ってるあたしとしては流石に暑苦しく感じる。秋でも暑い。思わず手で顔をあおいじゃったくらいだ。秋なのに。

 

 下駄箱を覗くと結構残ってる人がいた。みんな部活頑張ってるのかな。うちのクラスも結構残ってる人がいるし、そういえば受験も近いから勉強してるのかな? スマホをバレないように回収したかったけど仕方ない。いじりは甘んじてあげることにしよう。少し喋ってもまだ日没まではまだあるだろうからいっか。

 

 上履きに履き替えて自分のクラスの教室に向かう。うちの学校は学年とフロアが同じ数字になってる。つまり3年生の私の教室は3階だ。地味に遠い。階段前の教室だけどもね、3階は3階だし……。って考えながら階段を登っていく。

 

 ……なんか足元が冷える。今日こんなに寒かったかなー?

 

 ……部活動の声がやけに遠くなった気がする。なんだろう。

 

 ……何かおかしい気がする。2階を超えたあたりから何かが。

 

 ……鼓動が早くなって冷や汗が流れた。何となく早足で進む

 

 ……きっと気のせいだ。気のせいに違いない。

 

 ……急がなきゃ。

 

 階段を登って3階に着いた。うちのクラスは階段の目の前だから大丈夫。すぐにスマホを取って帰ろう。何もない。きっと何もない。大丈夫。大丈夫。何をこんなに取り乱してるんだあたし。学校に来ただけじゃん。

深呼吸深呼吸……。よし。

 

 

 私は教室のドアを開けた。

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