ヒータに生まれ変わった少女―生命を燃やす物語   作:ヴィルティ

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懐古の激突

「わ、わぁ~」

 

ウィンが少し離れた場所でウィンネクトールを見る。

ウィンネクトールは休む間もなく鎌鼬を連発する。

風の刃は目に見えないが、ウィンは風を専門としている魔法使い。

故になんとか回避し続けることは出来ていた。

 

『シツコイ……』

 

自身と同じウィンの顔部分が喋り、睨みつける。

同じ顔が半分に別れ、片方にウィンダールの顔が貼り付けられてるだけでこうも不気味になるとは。

 

「しつこくて結構だよ~。親子関係かもしれないけど、それぞれ付かず離れずの気持ち悪い見た目をしてる者に負けるわけにはいかないから~」

 

そんなウィンの声にこたえ、彼女の傍に一匹の竜が現れる。

 

(大丈夫か?)

「あ、ランラン。大丈夫だよ~」

 

別の世界では『パンダ』と呼ばれる生き物に付けられていそうな名前だが、ランランこと『ランリュウ』は気にした様子を見せない。

ずっとウィンの肉体を守るために憑依していたが、さすがに協力した方がいいと思い出てきたのだ。

 

(あれがウィンの父親かもしれない男と、ウィンが合体した魔物か。素敵に悪趣味だな)

「やっぱりそう思う~? だったら、私の顔半分だからって遠慮しないで思いっきり戦って~」

(無論そのつもりだ!)

 

ウィンとランリュウは反撃するべく、ウィンネクトールに向かっていく。

 

 

『ハッ!』

 

アウスはサブタムの剣を何とか避ける。

筋肉質な戦士が女性の下半身と闇の天使の翼を受け、軽々しく動く。

なんとか肉体強化の魔法で動きを早くしてるアウスだったが、苦戦を強いられていた。

 

「とうっ!」

 

サブタムの顎めがけて蹴りを入れたが、さすがは元々屈強な肉体を持つ男の顔。

大したダメージにならず、逆に殴りかかる。

 

「わわっ!」

(危ないぞ!)

 

デモが翼でサブタムの拳を受けるが、勢いはサブタムの方が強く、デモが地面に叩きつけられた。

追撃の剣が降り下ろされる前にデモを抱えアウスが少し放たれた場所へと撤退する。

 

「大丈夫?」

(なんとかな? にしてもあの男化け物、なかなかやるぞ)

 

デモが呟くが、サブタムの目線はデモにではなくアウスにのみ向けられていた。

しかも、その目は明らかにイヤらしいことを想像している下品な目だ。

 

「もし負けたら……」

 

絶対先ほどマーコがしでかしたこと以上のことをされてしまうだろう。

筋肉マッチョな男相手なら受け入れても良いとほんのちょっぴり思うが、目の前に立つ化け物相手だったら絶対にノーサンキューだった。

 

(アウスがやらしい目に……ダメだ、色気がないからイマイチだな)

「ちょっとどういう意味!?」

 

アウスとデモが言い争いを始めようとした瞬間、サブタムの翼から放たれる黒い羽がアウスとデモに襲い掛かる。

 

「わ、わわわっ!?」

(つまらないこと言い合ってる場合じゃないな。なんとか勝つぞ)

 

アウスとデモが慌てて逃げながらも、その目から闘志は消えていなかった。

 

 

「じゃ、私のターンね。確かにグラットンは厄介だけど、対処出来ないわけじゃないよ。私は手札の『Sin スターダスト・ドラゴン』を特殊召喚」

 

白黒の仮面をかぶせられた星屑の竜が空へと飛び立とうとしたが、神縛りの塚の糸に縛り付けられる。

LV8の魔物だとしても、Sinモンスターの生存条件はフィールド魔法が場に存在していること。

故にフィールドに縛られ、自由を奪われているのだろう。

 

「そして魔法カード『禁じられた聖杯』を発動。攻撃力を400上げる代わりにグラットンの効果を無効にするよ」

 

グラットンの口めがけてゴブレットから液体が垂らされる。

液体がグラットンの口に粘着し、口を開けられなくされてしまった。

 

「むっ」

「さぁ、バトル。『Sin スターダスト・ドラゴン』で『百万喰らいのグラットン』に攻撃!」

 

仮面をかぶる竜の口から風の勢いを得た光線が放たれる。

グラットンの口が無事なら、口で光線を吸い込むことが出来ただろう。

だが、口を接着されてしまった状態ではそれが出来ず、攻撃を受けて消滅してしまった。

 

「うわあああ」

 

マーコ LP7000→4900

 

「よし。メイン2に入ってこのままターンエンド」

 

ラヴァス LP6200

 

モンスター:Sin スターダスト・ドラゴン

魔法・罠:セットカード2枚

フィールド:神縛りの塚

手札:1枚

 

「私のターン!」

 

マーコがカードを引き、ラヴァスの場と手札を見比べる。

 

「カイクウを守備表示に変更して、モンスターをセットしてターンエンド」

 

マーコ LP4900

 

モンスター:霊滅術師 カイクウ セットモンスター

魔法・罠:セットカード1枚

手札:3枚

 

「ふふ、正しい歴史の前には偽りの歴史の力では勝てないということかしら? 私のターン、ドロー」

 

ラヴァスは無言で手を振り上げる。

Sin スターダスト・ドラゴンがそれを攻撃の合図だと受け取りカイクウにブレスを放つ。

膝をつき目を閉じていたカイクウはあっさりとブレスに飲み込まれ消えていく。

 

「ふふーん。このままターンエンド」

 

ラヴァス LP6200

 

モンスター:Sin スターダスト・ドラゴン

魔法・罠:セットカード2枚

手札:2枚

 

(あの『Sin』モンスターはEXデッキから特定のモンスターを除外するというだけの簡単な手間の割に、並べない?)

 

そこでマーコは一つの推測を立てた。

 

(あの『Sin』と呼ばれるモンスターはフィールド上で1体しか存在できないのでは?)

 

だとしたら、付け入るスキは十分にある。

マーコはふぅと一息つき、心を落ち着ける。

 

(ぽんぽんと最上級クラスのモンスターが出てくるからマズいかと思っていたけど、なんとかなりそうね)

 

「私のターン、ドロー。私はセットしておいたモンスターカード『メタモルポッド』を反転召喚」

 

壺の中からじっと一つ目がラヴァスを睨みつける。

 

「な、なんですかその眼はー」

「メタモルポッドがリバースしたとき、お互いのプレイヤーは手札を全て捨てて5枚ドローする」

 

自分が5枚ドロー出来るこのカードのドロー能力は最高だ。

だが、相手にも5枚もドローさせてしまうというデメリットがある。

 

「…………」

 

だが、ラヴァスはイマイチといった感じの顔で手札を見ている。

 

(いくら手札があってその中に強力なモンスターが存在していても、呼び出せなければ意味がない)

 

その隙に攻め込む。

それがマーコが立てたプランだった。

 

「私は魔法カード『ハーピィの羽箒』を発動! あなたの魔法・罠カードを全て破壊するわ!」

 

マーコの場に現れた巨大な箒が一気に伏せられた魔法・罠カードを弾き飛ばす。

だが、『Sin スターダスト・ドラゴン』が翼を羽ばたかせ、風を起こす。

その風と箒がぶつかり合い『神縛りの塚』のカードだけ吹っ飛ばされるのを防いだ。

 

「私の場に『Sin スターダスト・ドラゴン』が存在している限り私の場のフィールド魔法は破壊されないですよー」

「むっ」

 

一気に魔法・罠カードを突破し攻め込もうとしたマーコにとってそれは予想外だった。

だが、伏せられていたカードは『次元障壁』と『虚無空間』だった。

厄介なカードを破壊できた以上、ここが攻める時だとマーコは決めた。

 

「私は『紅蓮魔獣ダ・イーザ』を召喚!」

 

サソリと悪魔が合体し、屈強な肉体を手に入れた虫悪魔が君臨する。

 

「このカードの攻撃力は除外されている私のカードの数×400ポイント。除外されているカードの枚数は15枚、よって6000になる!」

 

先ほど展開された『Sin サイバー・エンド・ドラゴン』の攻撃力を遥かに上回っている。

それをなんのコストもなく召喚するとは。

 

「くっ……」

「どうやら余裕の態度を見せていたあなたもこのモンスターにはびっくりしたようね。バトル。ダ・イーザで『Sin スターダスト・ドラゴン』に攻撃!」

 

ダ・イーザが思いっきり飛び上がりハサミを振り上げる。

星屑の竜の視界が仮面で見づらいこともあり、魔獣の襲撃を見落としていた。

その隙に容赦なくハサミで首を両断し、星屑の竜の首は地面とキスする羽目になった。

そして残された胴体が消滅していき、地面の首も間もなく消えていった。

 

「おのれっ」

 

ラヴァス LP6200→2700

 

「『メタモルポッド』で追撃!」

 

メタモルポッドが壺の中から舌を出し、ラヴァスの顔面を舐める。

 

「うわ、汚い!」

 

ラヴァス LP2700→2000

 

「私はカードを2枚伏せてターンエンド」

 

マーコ LP4900

 

モンスター:紅蓮魔獣ダ・イーザ メタモルポッド

魔法・罠:セットカード2枚

手札:1枚

 

「よくもここまでやってくれましたね……私のターン、ドロー」

 

ラヴァスがカードを引き、ふふっと笑う。

 

「来ましたね。私はEXデッキから『Sin パラドックス・ドラゴン』を除外し出でよ『Sin パラダイム・ドラゴン』」

 

仮面をかぶる白き竜。

それが神縛りの塚から生えてくる無数の糸に絡みとられ、動きを封じられる。

先ほどのSin サイバー・エンド・ドラゴンとSin スターダスト・ドラゴンの比ではない糸の量に思わずマーコも目を疑う。

 

「な」

「本来『Sin パラダイム・ドラゴン』は『Sin World』と呼ばれるフィールド魔法がなければ破壊されてしまいますが、神縛りの塚の効果でLV10以上であるパラダイムはカード効果で破壊されることはなく、カード効果の対象にもなりません。よって場にとどまり続けるのです」

「なんてことを」

「そして『Sin パラダイム・ドラゴン』は除外されているLV8のシンクロドラゴン族モンスター1体をEXデッキに戻し、そのまま特殊召喚することが出来るのですー」

 

パラダイムが雄たけびを上げると同時に闇の靄が現れる。

その中から闇のオーラを纏った『スターダスト・ドラゴン』が飛び出してくる。

 

「手札1枚から攻撃力4000と2500のモンスターを並べるなんて。だけども、攻撃力はダ・イーザに及ばない」

「余計な心配は不要ですよー。手札から魔法カード『サンダー・ボルト』を発動します。これであなたの場のモンスターは全て破壊されます」

 

古より伝わる、伝説の雷魔法。

それがまさか得体のしれない女から放たれるとは。

 

マーコが驚愕している間に巨大な雷がマーコの場に降り注ぎ、雷によって一瞬でメタモルポッドとダ・イーザが蒸発する。

 

「そしてバトルフェイズです。『Sin パラダイム・ドラゴン』でダイレクトアタック」

 

糸が一瞬だけ緩んだ瞬間、白き竜の目が光る。

敵であるマーコを認識し、強力な光を浴びせたのだ。

 

「きゃああああっ!」

 

光を浴びたマーコは全身が焼けつくような痛みを味わった。

この光そのものが炎よりも遥かに熱いエネルギーを放っていた。

 

マーコ LP4900→900

 

「『スターダスト・ドラゴン』で攻撃」

「……っ!」

 

思わずマーコが顔面を左手で覆う。

だが、スターダストもまた光により視界を奪われ、明後日の方向にブレスを放つことしかできなかった。

 

「……出来たら良かったんですけどね。パラダイムが自身の効果を発動した場合『Sin』モンスターしか攻撃できない制約が付いてしまうんですよ。ですが、今のあなたのリアクションであの2枚のセットカードは攻撃を防ぐ系ではないと分かりました」

 

ラヴァスが意地悪く笑うと、マーコがぎっと歯ぎしりする。

 

「あなた、それを確かめるためにわざと……!」

「ええ、嘘をついたわけでもないですし。あなたがノーリアクションを取れるような冷静な人物だったら戸惑いましたけども、そうでもなくて助かりましたー」

 

ラヴァスはきっちりとカードを3枚伏せてターンを終了させた。

 

ラヴァス LP2000

 

モンスター:Sin パラダイム・ドラゴン スターダスト・ドラゴン

魔法・罠:セットカード3枚

手札:1枚

 

「私のターン、ドロー!」

 

マーコがカードを引き、手札を見つめる。

 

「よし、私の場にモンスターが存在していないことで手札から『ダイナレスラー・パンクラトプス』を特殊召喚」

 

顔がトリケラトプスと呼ばれる角竜の顔を持つ屈強なレスラーがマーコの場に降り立つ。

 

「攻撃力2600……ですか」

「これなら『スターダスト・ドラゴン』は倒せるわね」

「残念ですがカウンター罠カード『神の宣告』を発動します。LPを半分払ってあなたのパンクラトプスの特殊召喚を無効にします」

 

パンクラトプスめがけて光が降り注ごうとしたが、急に大きな音が鳴り響く。

 

「伏せておいたカウンター罠カード『レッド・リブート』を発動よ。これはあなたの発動した罠カードの効果を無効にしてセットしなおさせ、デッキから罠カードを1枚伏せさせるわ。ただし、あなたはこのターン罠カードを発動できない」

 

『神の宣告』のカードがセットしなおされ、ラヴァスがデッキから『ブレイクスルー・スキル』をセットする。

 

ラヴァス LP2000→1000

 

「だけどもあなたのパンクラトプスじゃ『スターダスト・ドラゴン』は倒せてもパラダイム・ドラゴンは倒せないですし、LPも0に出来ないですよ」

「ご心配無用。セットされた『激流葬』をコストに手札から速攻魔法『禁じられた一滴』を発動します。これにより『スターダスト・ドラゴン』の攻撃力は半分になります」

「な、なんですとー!」

 

ラヴァスが叫ぶと同時にスターダスト・ドラゴンに液体が浴びせかけられ、闇のオーラが弱まっていく。

 

スターダスト・ドラゴン ATk2500→1250

 

「バトル! 『ダイナレスラー・パンクラトプス』で『スターダスト・ドラゴン』に攻撃!」

 

パンクラトプスが星屑の竜の胴体を掴み、そのまま空高くジャンプする。

そして竜の頭を地面に向け、そのまま勢いよく地面へと叩きつけた。

竜の頭が地面に埋まり、その衝撃がラヴァスを襲った。

 

「きゃああああああああっ!」

 

ラヴァス LP1000→0

 

『ッ!』

『ガ!?』

 

そして生み出した主の敗北により、ウィンネクトールとサブタムの動きが止まる。

 

「今だよ~!」

 

ウィンが風をランリュウに纏わせる。

 

(行くぜ!)

 

ランリュウがウィンとウィンダールを縛り付ける糸に向かって突撃していき、その糸を断ち切った。

 

『ウィン……パパはユルシマセンヨ』

 

ウィンダールがそう言いながら手を契れたウィンの半身に向けたがその手が届くことなくお互いの肉体が闇に飲み込まれ消滅していった。

 

「はあああああっ!」

 

アウスがサブタムの胴体を掴み、思いっきり持ち上げた。

 

『スバラシイマッスルガール……ゼヒトモテゴメ二シタカッタ』

 

持ち上げる際にサブテラーの戦士とイシュタムを繋ぎ合わせていた糸がぶちぶちと音を立てて切れていき、戦士の胴体と堕天使の下半身が完全に千切られた。

そして切断面から闇が放出され、その闇に飲み込まれサブタムが完全に消滅していった。

 

 

「ま、まずいですねー」

 

ラヴァスが転がってきた硬貨を拾い上げるが、目の前にはマーコ、ウィン、アウスの3人が立っていた。

 

「あなたのその力、調べつくして皆に報告しないといけませんね」

 

マーコが術を唱えると、魔力の縄がラヴァスに向かっていく。

 

「断ち切れ」

 

その一言が聞こえた瞬間、ラヴァスの目の前に異形の化け物が立ちふさがり、その縄を一刀両断する。

 

「絶望という名の雨が晴れれば希望という名の虹かかる。だが、それはお前らにもたらすものではない」

 

『蒼穹の機界騎士』の上半身と『DDD壊薙王アビス・ラグナロク』の下半身が電気によって機械的に接続されている魔物……『壊穹接続ジャック・ラグナロク』が剣をマーコたち3人に向ける。

 

「レイバー! 助けに来てくれたんですかー!」

 

ラヴァスが安堵した顔でレイバーと呼ばれた男の名を呼ぶ。

ジャック・ラグナロクの背中からひょっこりと顔を出すと、地面に降りる。

 

「この大バカ者が!」

 

そして思いっきりラヴァスの尻を叩く。

 

「な、何するんですか!?」

 

ラヴァスが顔を赤くしながらレイバーを睨みつける。

いきなり、しかも男にお尻を叩かれるとは思っていなかったのだろう。

だが、レイバーの顔はそれ以上に怒り心頭だった。

 

「ヒストリア様から計画を受け継いだくせに失敗した挙句醜態を晒すとは。そのせいで我がお前の回収を命じられたのだぞ」

 

そしてジャック・ラグナロクがラヴァスの体を俵担ぎし、その手で何度もラヴァスのお尻を叩く。

ラヴァスが涙混じりの悶え声を上げてる中、レイバーが3人に向かいため息をつく。

 

「まったく……この度は我が同志が見苦しい真似をして申し訳がない。だが、次に会うときはこうはいかないのでね……お忘れなきよう」

 

レイバーが笛を吹くと闇の柱が現れ、その中に入っていく。

 

「まったく……歴史の面汚しに頭を下げる羽目になるとは……屈辱もいいところだ」

 

それだけを言い残し、闇の柱もろともレイバーとラヴァスは姿を消した。

 

「一体何だったんだろう」

 

残されたアウスがぽつりと呟くと、マーコがため息をつく。

 

「どうやら、紋章軍以上に変な連中も動き始めてるみたいね。クロキ様とウィザルドと話をする必要がありそうね」

 

それを言い残しマーコがデュエルディスクを消滅させ、踵を返す。

 

「ウィン、修行に励みなさい。今以上の戦いをするかもしれないのだから」

「は、はい~!」

 

ウィンがきっちりと答えると、マーコがアウスの手を取り山を降り始める。

 

「マーコ様、ワープしないんですか?」

「何言ってるの。激戦で疲れたんだからアウスとスキンシップしながら精神を癒しつつ降りていくのよ」

 

それを聞いたアウスが目線でウィンに助けを求めたが、ウィンはすっと目を逸らしこれから何をされるか分からない同志アウスを見送ることにした。

 

 

「ウィザルド様」

 

ウィザルドが目を開くと、ハクロウが待機していた。

 

「この間の変な魔物に引き続き気配を感じたから監視を命じたが、どうだった?」

「はい。マーコ様とウィンとアウスがまた別の変な魔物と、その魔物を操る何者かと戦い、見事に撃退しました」

「そうか、さすがはマーコだ。それに憑依装着の娘たちもヒータ以外も成長しているようで何よりだ」

 

ウィザルドが感心したように呟くと、ハクロウがふぅと息をつく。

 

「ただ、その魔物を操る何者か……ラヴァスはレイバーという男に連れられ逃げていきました」

「そうか。まあ激戦で疲れていたから取り逃がしてもしょうがない、か。報告ご苦労だったな」

 

ウィザルドがハクロウの頭を撫でるが、ハクロウは少し顔を赤らめもじもじしていた。

 

「どうした? 頭を撫でてあげるだけじゃ不満か?」

「いやそんなことはありません。ただ、ラヴァスが失敗の罰としてレイバーと呼ばれる男にお尻を何度も叩かれて泣かされていたので……私ももしウィザルド様の命に失敗したら、ウィザルド様にお尻を叩かれてしまうのかと思って」

「……ハクロウ、そういった変なことは忘れろ。精神の乱れは魔力を制御するのを邪魔する。いいな」

 

ウィザルドが少々呆れながらハクロウに告げると、ハクロウはぺこりと頭を下げる形を取りながら理解した。

 

「……にしても最近面白いことばっかり起きるな。これはしばらく自由に放浪することも出来なくなりそうか」

 

ウィザルドの顔には、どこか楽し気な笑みが浮かんでいた。

 

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