ヒータに生まれ変わった少女―生命を燃やす物語 作:ヴィルティ
「くっ……メイン2、私はマイティスラッガーを手札に戻して『U.A.リベロスパイカー』を守備表示で特殊召喚するよ」
リベロスパイカーがマイティスラッガーとバトンタッチを行った後、膝をついて場に待機する。
「私はこのままターンエンドだよ」
アウス LP5250
モンスター:U.A.ドレッドノートダンカー U.A.リベロスパイカー
魔法・罠カード:伏せカード1枚
フィールド魔法:U.A.ハイパー・スタジアム
手札:2枚
「私のターン、ドロー」
引いたカードをちらっと見る。
よし。
これでやれるだけやってみよう。
「『熱血獣士ウルフバーク』を召喚」
ゴーグルをつけ、やたらと爽やかな顔で立つオオカミ戦士がアグニマズドVの横に降り立つ。
「ウルフバークは1ターンに1度、墓地の獣戦士・炎属性のLV4モンスター1体を特殊召喚できる。甦れ『炎王獣ヤクシャ』。そして私はLV4のウルフバークとヤクシャの2体でオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚。出でよ『魁炎星王ソウコ!』」
炎を身に纏い戦う戦士たちを統べる王の姿をとくと見よ。
「随分と格好いい見た目だね。でも、攻撃力は2200、ドレッドノートダンカーには及ばない」
「焦らない。まずはソウコがエクシーズ召喚に成功したとき、デッキから『炎舞』と名の付く魔法・罠カード1枚をデッキからセットできる。デッキから『炎舞-「天璣」』をセット。そしてそのまま発動。このカードは発動の効果処理時にデッキからLV4以下の獣戦士族モンスター1体を手札に加えることが出来る。私が加えるのは『炎王獣ガネーシャ』。そしてオーバーレイユニットを1つ取り除いて効果発動! 獣戦士族以外の全てのモンスター効果は無効になる!」
ソウコが眼を閉じる。
その瞬間にソウコの周りから炎の波が広がっていき、全てのモンスターが炎の波に飲み込まれて力を失う。
(チェーンでリベロスパイカーの効果を発動してプレイングマネージャーを出しても、チェーンの効果処理順でプレイングマネージャーの効果が無効にされてしまう。こうなってしまっては……)
「そして天璣は発動している間、獣戦士族モンスターの攻撃力を100アップさせる効果がある」
「速攻魔法『U.A.ターンオーバー・タクティクス』発動! 私の場に『U.A.』と名の付くモンスターが2体以上存在している場合に発動出来る。場の全てのモンスターをデッキに戻し、私はデッキに戻した『U.A.』モンスターの数だけデッキから『U.A.』モンスターを特殊召喚する」
んなっ!?
まだそんな隠し札を持っていたなんて。
ソウコもアグニマズドVもデッキへと帰っていき、リベロスパイカーとドレッドノートダンカーもデッキへと帰っていく。
「出でよ『U.A.リベロスパイカー』『U.A.プレイングマネージャー』。そしてヒータちゃんはあくまでデッキに戻したモンスターの数だけしか特殊召喚できない、つまりEXデッキへと戻っていったソウコはカウントされない。つまり1体だけしか特殊召喚できない!」
しまった。
しかもプレイングマネージャーは特殊召喚された時、場のカード1枚を破壊できる効果があった。
だとしたらここで呼び出すのは当然。
「『炎王獣バロン』を守備表示で特殊召喚」
「あ、そうなんだ。じゃあ別に『炎王の急襲』を使うのを阻害するから、破壊する必要はないや」
どうやら、ガルドニクスかアグニマズドVを特殊召喚してくると想定していたらしい。
「そしてここで『U.A.リベロスパイカー』の効果を発動。手札の『U.A.マイティスラッガー』をデッキに戻してデッキから『U.A.パーフェクトエース』を特殊召喚し、リベロスパイカーを手札に戻すよ」
選手交代され、今度は光の玉を手に握る野球選手が現れる。
その名の通りピッチャーなのだろうか。
「速攻魔法カード『炎王炎環』を発動! バロンを破壊して墓地の炎属性モンスター1体を特殊召喚できる」
「その効果に対してパーフェクトエースの効果発動。手札1枚をコストにして相手が発動した魔法・罠・モンスターの効果を無効にして破壊する!」
ファンタジスタが捨てられ、炎王炎環に向かって立派なストレートが投げられた。
効果を発揮する前に破壊され、パーフェクトエースが得意げな顔をする。
「ふふん……やはり筋肉……筋肉は全てを解決する……!」
そしてパーフェクトエースと同じようにアウスちゃんもドヤ顔をしている。
だけど、そのドヤ顔はここで崩れ去るよ!
「魔法カード『真炎の爆発』! 墓地から甦れヤクシャ、バロン2体、大稲荷火!」
(よっしゃー、いくぜいくぜいくぜ~っ!)
ファルマ君が炎王たちを引き連れ、一気に私の場にモンスターが4体並び、5体特殊召喚に成功した。
「一気にモンスターを4体も蘇生するなんて、なんて力」
「さぁ、ここからさらに行くよ! 私はLV4のバロン2体でオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!」
――炎を蓄え光となり、古き神となりて現れよ!――
「出でよ『武神帝カグツチ!』」
青きオーラと鎧を身に纏う、光の武神がEXデッキから飛び出していく。
「カグツチがエクシーズ召喚に成功したとき、デッキの上から5枚を墓地へ送る」
カグツチが手にした剣を奮い、私のデッキの上から5枚分を切り捨てる。
「一気に墓地を肥やすなんて」
「これでパーフェクトエースの守備力2500を超えられる。そしてバロンとヤクシャの2体をリンクマーカーにセット。リンク召喚。出でよ『ドリトル・キメラ』」
怠惰な様子で転がってる猫のような魔物が私の場で転がりまわる。
その結果、私のフィールドが炎で燃え盛る。
(いいぜ、これで炎属性のおいらの攻撃力が500アップして2500になるぜ!)
「うん、行くよ! カグツチでパーフェクトエースに攻撃!」
カグツチが手にした剣でパーフェクトエースの胴体を切り裂く。
パーフェクトエースは一切反応することもなくそのまま消滅していく。
「そして大稲荷火で『U.A.プレイングマネージャー』に攻撃!」
パーフェクトエースを呼び出し守りが完璧になったと過信し、攻撃表示で特殊召喚したのが仇になったね、アウスちゃん。
大稲荷火の体当たりを喰らい、プレイングマネージャーが消えていく。
「ううっ」
アウス LP5250→4750
「そして『ドリトル・キメラ』でダイレクトアタック」
ドリトル・キメラが面倒くさそうに立ち上がり、口から炎を吐く。
その炎に焼かれアウスちゃんが顔をしかめる。
「やったな~」
アウス LP4750→2850
「メイン2、このままじゃ『真炎の爆発』の効果で大稲荷火がエンドフェイズに除外されちゃう。だから私は『ドリトル・キメラ』と大稲荷火の2体をリンクマーカーにセット。リンク召喚。出でよ『ドリトル・キメラ』」
ドリトル・キメラが大稲荷火を取り込み、ふぁあと欠伸をしながら場に現れる。
「そして大稲荷火が墓地へ送られたことでデッキから『火霊術―紅』を手札に加えるよ。カードを1枚伏せてターンエンド」
ヒータ LP3150
モンスター:武神帝カグツチ
EXモンスター:ドリトル・キメラ
魔法・罠:伏せカード1枚 炎舞-「天璣」
手札:1枚
「結構やられたい放題やられちゃったね……ドロー!」
さて、ここで何を引くかによる。
手札に残ってるのはリベロスパイカー1枚のみだった。
だから、上級『U.A.』さえ引ければ逆転される可能性はまだある。
「私は『U.A.リベロスパイカー』を召喚」
何度見ただろうか、リベロスパイカー。
「そしてこのままターンエンド」
この流れは、もしかして。
でも、下級の可能性もあるし。
とりあえず、アウスちゃんの次のターンの動きを見てから動かないと。
アウス LP4750
モンスター:U.A.リベロスパイカー
フィールド魔法:U.A.ハイパースタジアム
手札:1枚
「私のターン、ドロー。私は『炎王獣ガネーシャ』を召喚するよ」
ピンク色の象の戦士が現れ、ドリトルと炎舞の力を受けて攻撃力が600上昇する。
攻撃力2400とそれだけでも下手な上級モンスターよりも強くなっている。
「さぁ、バトルフェイズ! ドリトル・キメラでリベロスパイカーに攻撃!」
「リベロスパイカーの効果発動!」
やっぱり、上級モンスターを引き当てていたか。
だけども、私の場には!
「『炎王獣ガネーシャ』の効果発動! 相手がモンスターの効果を発動した場合、手札かフィールドのこのカード以外の炎属性モンスターを破壊して、その効果の発動を無効にする! 手札の『炎王獣ガルドニクス』を破壊してリベロスパイカーの効果を無効にする!」
ガネーシャが咆哮を上げ、地面から炎が吹きあがりリベロスパイカーの体が焼かれる。
その隙にドリトル・キメラが吐いた炎を浴びてリベロスパイカーが消滅していった。
「そんなぁ」
アウス LP4750→4650
「そしてガネーシャとカグツチの2体でダイレクトアタック!」
ガネーシャがカグツチが持つ剣に炎を宿し、カグツチがアウスに切りかかっていった。
「う、うわあああ!」
叫び声を上げるアウスを切り裂き、アウスのLPを0にした。
アウス LP4650→2250→0
「ふーっ、負けちゃった」
アウスちゃんがデュエルディスクを魔法で消し、一息つく。
なんとか勝つことが出来たけど、次に戦ったらどちらが勝つかは分からない。
それほどアウスちゃんの実力は高かった。
「2人とも、お疲れさまでした。ヒータの『炎王』の力も中々でしたが、アウスもデュエルの修行を積み重ねていたようですね。なかなかの戦術でしたよ」
クロキ様に褒められ、アウスちゃんが嬉しそうな顔をしている。
あの反応を見る限り、アウスちゃんは筋肉と同じぐらい、クロキ様のことが好きなのだろう。
(まったく、俺様を使わないから負けたんだ)
「うるさいなぁ、デモ君は。引かなかったんだからしょうがないでしょ」
そしてふてくされたデモ君をアウスちゃんがなだめる。
「ふふっ」
「ヒータちゃん、何がおかしいの?」
「いや、デモ君と仲良いなぁって」
「それってヒータちゃんとファルマ君も同じでしょ?」
そうだった。
活躍したから褒めろと期待の眼差しで私を見つめているファルマ君が隣にいる。
「うん。よく頑張ったね」
(えへへ)
ファルマ君の頭を撫でてあげるとファルマ君がほっこりとした顔をする。
気持ちよさそうで何よりだ。
「さてと、デュエルも終わったことだしこれから他の皆の所へ行かなくっちゃ。じゃ、クロキ様、ヒータちゃん、これで失礼しますね。デモ君、行くよー!」
(へいへい。じゃ、失礼します)
デモ君を連れてアウスちゃんが先に部屋から出ていった。
なんというか、落ち着きのない子だったなぁ。
「では、私たちも用事が終わったし、クロキ様、失礼します」
頭をぺこりと下げ、ファルマ君と一緒に部屋から出ていこうとする。
「ええ。それからヒータ、困ったことがあったらいつでもここを訪れなさい。私が力になりますよ」
「ありがとうございます。じゃ、行こうかファルマ君」
(ああ。失礼します、クロキ様)
ファルマ君と一緒に部屋を出ていき、廊下を歩いていく。
クロキ様も悪い人じゃなかったし、力になってくれると言ってくれた。
もしこの生活で困ったことがあったら遠慮せず頼るとしよう。
…………?
(ヒータ、どうかしたのか?)
ファルマ君がきょとん顔で私の顔を見る。
いや、今誰かとすれ違ったような気がしたんだけど、気のせいだったのかな?
後ろを振り返ると、確かに茶色のジャンパーと黒いジーンズを着て、黒のニット帽をかぶった何者かが歩いていた。
(え、あの人いつの間に!?)
どうやら、ファルマ君は完全に気付いていなかったみたいだ。
というよりも……隣をすれ違ったのに、気配すらほとんど感じさせず歩いていくなんて。
一体何者だったんだろう?
(気にはなるけど……とりあえず帰ろうぜ)
「うん」
「よう」
「おや……」
クロキが部屋に入ってきたとある人物を見て、笑みを向ける。
その人物は茶色のジャンパーと黒いジーンズを着て、黒のニット帽を被っていた。
一見どこにでもいそうなファッションの人物だった。
「気配を消してここまで来るなんて珍しいですね、ウィザルド」
「ああ、お前とマーコが眼をかけて育てていた魔法少女たちが廊下を歩いていたんでね。お前とマーコの知り合いというだけでいちいち反応されるのも面倒なんでな」
「相変わらず他人とのコミュニケーションを取ろうとしないですねぇ」
クロキが呆れ顔でウィザルドを見る。
ウィザルドはそんな彼の呆れ顔を一切気にせず、部屋にあったソファに座りこむ。
「で、何の用事なんですか?」
「いや、単に紋章軍の動きを調べていたんだが……それよりも、途中ですれ違ったあの赤い髪の毛の子……確かヒータだったな」
「ええ」
「何かあったのか? なんというか、以前お前とマーコが育てていた時と雰囲気が違ったような気がしたんだが」
「実は……」
クロキが事情を話し終えると、ウィザルドが興味ありげな顔になる。
「記憶喪失……ねぇ」
「おや、あなたが私とマーコ以外の人に興味を示すなんて珍しいですね」
「ふん。ま、確かにそれぞれの自然元素の魔法なら俺すらも超えそうだからな。興味がないといったら嘘になるな」
ウィザルドはそう言い、ソファの上で大きなため息をついた。
(あのヒータという娘……違和感の正体を確かめるため、今度会いに行ってみるか)
内心そんなことを思いつつ、クロキに対して紋章軍の動きを報告すべくクロキと話を始めた。