機動戦士ガンダムDRAGOON 『LAST STARDUST』 作:COTOKITI JP
ここは、どこだ。
瞼が重い。
目が開けない。
背中の感触が柔らかい。
きっとベッドの上に寝かされているのだろう。
………………誰かがベッドのすぐ側で話している。
─うるせェな……お喋りなら他所でしやがれ……。
─眠いんだよ。
─俺は死ぬほど疲れ────────
「なんてこった……! 目ぇ覚ましやがった!」
「マジか!? ゾンビじゃねえよな!?」
重い瞼が、気付けばもう軽くなっていた。
目の前にいるのは医療用ベッドを取り囲むガラの悪そうな男達。
趣味の悪いタトゥーを体に刻み、戦闘服と兼用しているのであろう単色の衣服で着飾っている。
その服装や装備の統一性の無さからジオン軍兵士や連邦軍兵士であるという線は消えた。
自分の状況が理解出来ずキョロキョロと辺りに視線を巡らせ、元の位置に戻った。
「俺、カシラ呼んでくる!!」
一人の男が誰かを呼びに飛び出して行った。
ここは最初、病院か何処かだと思ったがどうやら違うようだ。
窓は無いしベッドは数を重視して寝心地は度外視された配置。
恐らく宇宙船の医務室だろうここは。
自分の顔をジロジロと見て男達がざわめく中、医務室の扉が再び開いた。
「本当に目覚めるとはな」
「えぇ、カシラの見込み通りでしたぜ」
女。
女だ。
彼女が彼らの言うカシラなのか。
恐らく宇宙海賊かその類の輩の頭領にしてはその女は余りにも若く、そして華奢な身体だった。
銀髪を一つに束ね、前髪は青い鉢巻のような布切れで押し上げられている。
それによって真っ二つに別れた前髪はまるで二本角のようだ。
男は彼女に疑問をぶつけようとするが何故か声が上手く出せず、ちょっとした発音にも手間取る。
「あ……アンタがカシラってぇのかよ……」
「如何にも、私がこの海賊団を率いている」
何とか絞り出せた嗄れた声に女頭領は答える。
現代を生きる若者にしては少し古臭い物言いで、海賊と言うよりはなんだか、騎士を相手にしている感じがした。
「して、
─待て、こいつは今なんと言った。
彼女のたった一言が信じられず、理解出来ず、混乱が巻き起こる。
あの時より一体どれ程の月日が経ったのか、その真実は彼を納得させるには余りにも残酷過ぎた。
「ジオンの亡霊よ」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
時の流れと言うのは恐ろしく早い。
瞬きする度に月日が流れゆく。
9年の昏睡によるブランクは日々のリハビリと訓練によって徐々に取り戻しつつあり、今では兵士として充分に動く事が出来るくらいにはなれた。
この海賊団の団員は皆、若くそしてそれぞれが何かしらの事情を抱えて海賊になっていた。
ある者は借金を抱えた親に捨てられ。
ある者は戦争でコロニーごと家を失い。
またある者は連邦兵に全財産を奪われ、一攫千金を目指し。
海賊団団長であるあの銀髪の女、『アリーナ』は先代の団長の娘だったらしい。
父親の死後団長を引き継いだとの事だ。
どんな理由であれど、彼らは互いにそれを理解し団結している。
ジオンや連邦のような正規軍の統率とはまた違う、どちらかと言えばまるで
そして自分自身も、その雰囲気に絆されてしまったようだ。
団員と酒を飲み交わし、今後の方針を話し合い、明日の生存を祈り合う。
とにかくそんな関係が、今はとても心地良かった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
《UC.0095 10/21》
「では、もう一度作戦概要を伝える」
宇宙海賊にとっての仕事場はもちろん宇宙だ。
標的である輸送船団の航路を把握し、待ち伏せし、物資をかっ攫う。
今回業務再開した海賊団の標的は月へと向かう物流会社の輸送船団だった。
物資内容は不明。
ひとつ気がかりなことがあると言えば護衛の規模がやけに多い事ぐらいだ。
サラミス級巡洋艦が6隻に3隻の輸送船の内の一隻は偵察隊によるとMSが発進出来るように細工されているという情報まである。
これ程の戦力で守る物は相当の価値がある物と踏んだ彼らは予測した航路に沿ってデブリに紛れて戦力を展開。
こちらの戦力はMP-02A駆逐モビルポッド『オッゴ』が8機、MSが3機だ。
その3機の内に元ジオン兵の彼、『ザハール・マリノフ』も含まれていた。
Q:輸送船団の物資の中身は何でしょう?
ヒント:作戦決行日とユニコーンガンダムの完成日