機動戦士ガンダムDRAGOON 『LAST STARDUST』   作:COTOKITI JP

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そういえばオリジナルMSのタグ付けなきゃ。


悪魔の心臓

《UC.0095 10/21》

 

《レーダーに感あり! この規模は間違いなく例の輸送船団だ!》

 

「来たか……!」

 

ザハールは緩んだ手の力をもう一度入れ直し、操縦桿を強く握り直す。

 

サラミス級6隻にMS数機となればこちらもそれなりの苦戦は覚悟しなければならない。

 

犠牲を無くす為にもこの作戦に参加する全ての団員が役割を確実にこなす必要がある。

 

《もうすぐポイントに入るぞ》

 

ヘッドセット越しにアリーナの声を聴きながらレーダーとデータ共有済みの戦略マップを交互に見る。

 

襲撃予定ポイントであるA(アルファ)へ輸送船団はもうすぐそこまで来ていた。

 

デブリに隠れたオッゴとMSはモノアイでその様子を見る。

 

《サラミス6隻……一体どんなお宝を隠し持っているのやら……》

 

ザハールと同じMS隊である『ツェザリ・イオールビチ』が値踏みするように船団の様子を見守る。

 

「それを知る為にも、失敗は出来ねえな」

 

《もしお前が死んだらそのMSを棺代わりにしてやるよ》

 

そう言って笑いながらツェザリのギラ・ドーガがMMP-78の安全装置を解除した。

 

「よせ、俺はドラッツェ(・・・・・)の棺桶なんて御免だ」

 

ザハールもドラッツェに装備された大量の(・・・)シュツルムファウストと右手に装備したハイパーバズーカの安全装置を解除する。

 

ジオンのMSに連邦の兵器を持たせるのは少しばかり違和感を覚えたが、これが海賊のやり方と言うのは分かりきっていた。

 

《しっかし、軍艦を沈めるためとはいえどんだけロケット砲持って行くんだよ》

 

ザハール、ツェザリと同じくMS隊でジムスナイパーIIのパイロットの『アーサー・バーネット』まで会話に混じってきた。

 

「俺はマシンガンやビーム兵器よりこっち(・・・)の方が性に合ってる。 デラーズ紛争の時は1回シミュレータでシュツルムファウストとバズーカの命中率100%叩き出した事あるんだぜ」

 

ドラッツェの至る所にポン付けされた何発ものシュツルムファウスト。

 

腰にはオッゴのロケットポッドまで積んでいる。

 

右手のハイパーバズーカと合わせれば一体何と戦争する気なんだという程の単体火力となる。

 

仮にこのドラッツェに名前をつけるならば……

 

《『ドラッツェ・ロケッター』……か、まさにザハールの為に用意された機体だな》

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

今回の作戦に於いてザハールの役割は敵護衛艦隊の無力化。

 

具体的には単機で船団直上からトップアタックを仕掛け、船団右側面の2隻を無力化する。

 

前後の2隻はオッゴ隊がやってくれる。

 

後は敵MS隊を物資を傷付けないように撃墜すれば作戦は成功となる。

 

《目標、Aポイントに到達! 作戦開始だ!》

 

「よしっ……!」

 

早速待ち伏せていたオッゴ隊が前後の護衛艦への攻撃を開始した。

 

ロケットポッドによる爆発音を聞いたザハールのドラッツェはデブリから飛び退き、真上から突撃する。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

突然目の前の護衛艦が爆ぜた事により艦隊は混乱に陥る。

 

「な、何事だ!?」

 

「艦長!! 先頭と後尾のサラミス級が撃沈!! 敵はジオンではありません!!」

 

真っ二つにへし折れるサラミスを見ながら艦隊司令官は歯軋りする。

 

「おのれ……よりにもよってこんな時に海賊とは……!!」

 

するとブリッジのレーダー要員から悲鳴のような声が上がった。

 

「更に高速接近反応確認!! ち、直上です!!」

 

「ええぃ!何をしている! 全艦対空戦闘用意! 敵を決してこの輸送船に近付かせるな!!」

 

「MS隊が発進許可を求めています」

 

「全機発進させろ! なんとしてでもここを突破する!!」

 

残り4隻のサラミスはなんとか応戦を開始することが出来たが、それももう手遅れだった。

 

《な、なんだあのMS!?》

 

《速すぎる!! 対空砲が当たらん!!》

 

《だ、駄目だ!! こっちを狙って────》

 

途切れる無線。

 

隣を見れば右にいた2隻のサラミスがいつの間にか爆炎を上げながら内1隻がコントロールを失い、こちらに寄り掛かるように向かってきた。

 

「い、いかん! 最大戦速!!上げ舵30度!! 回避しろ!!」

 

急に舵を上げたことによって船内が滅茶苦茶になるが、最早それどころではない。

 

MS母艦に改造された輸送船はその腹の中に1機のMSも残さぬまま上昇する。

 

すぐ真下を掠める寸前で通り過ぎた燃え盛るサラミスを見て船員は皆顔が青ざめた。

 

「い、一体何者だ……!? これ程の手練……!」

 

「艦長!! 9時の方向よりMS更に2機接近!! 残された護衛艦は残り1隻です!!」

 

最後に残されたサラミスは懸命に対空砲火で応戦するも、MS2機による機動戦に着いていけず、着々と無力化されていく。

 

「なんて事だ……」

 

その光景に唖然としていた時、ブリッジ船員達が唐突に悲鳴を上げた。

 

何事かと前を向けば、窓を覆い尽くすのは赤く輝く巨大な1つ目。

 

ギラ・ドーガのモノアイだった。

 

《輸送船団に告ぐ、荷物を置いて直ちにこの宙域を離脱せよ。 安心しろ、脱出艇まで追いかける程我々は外道ではない》

 

「オープン回線です!」

 

「馬鹿な!MS隊はどうなった!?」

 

《ジェガン4機、ただの物流会社にしちゃあ随分と贅沢な機体使ってるじゃねえか。 パイロットは未熟だったがな》

 

視界にジムスナイパーIIも割り込んで来る。

 

もう戦闘音は止み、辺りを静寂が支配していた。

 

艦隊司令官は悩んだ。

 

この荷物を海賊ごときに決して渡す訳にはいかなかったのだ。

 

それも船員全員の命と天秤にかけるほどに。

 

《抵抗すれば、ブリッジを吹き飛ばして荷物だけ貰っていくぜ》

 

ギラ・ドーガがMMP-78の銃口をブリッジに向けた。

 

ざわめく船員達。

 

皆不安の眼差しを司令官に向けている。

 

荷物は渡したくない。 しかし自分達に最早抵抗する力は無い。

 

悩み苦しんだ末、司令官は遂に決断した。

 

「分かった……荷物は置いて行く……」

 

《協力感謝する。 貴官らはそのまま脱出艇でここを離れてくれ》

 

アリーナの指示通りに船員は全員脱出艇に乗り込み、この宙域を離れて行った。

 

《さて、家主もいなくなったことだ。 空き巣の時間と行こうぜ》

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「オーライ!オーライ!」

 

「ゆっくり下ろせ! 床凹ますんじゃねえぞ!!」

 

輸送船団が運んでいた荷物はそれなりに大きく、人力での移送は難しいと判断してMSで積み込んでいた。

 

荷物は幾つかに別れていたが、どれも頑丈な箱と緩衝材、そしてカバーによって強固に守られており、ただの資源や機械部品では無い事は明らかだ。

 

《積み込み完了!MSが着艦し次第ハッチを閉鎖!》

 

MSの格納を終えた団員達は我先にと並べられた戦利品へと群がった。

 

特に視線を集めていたのは箱の中でも一際大きい物だった。

 

軽自動車かそれ以上はあるサイズの箱を見ていると、遂に開封が始まった。

 

「さぁ、何が入っているやら……」

 

「ただのガラクタだったりしてな」

 

「だったらこれを運んでた物流会社の本社にカチコミかけてやる」

 

数人がかりでカバーと緩衝材を外し、箱の鍵をこじ開けた。

 

バキンっと鈍い音が鳴り、鍵が開く。

 

「開けるぞ……」

 

その中に入っていたのは、見慣れない形をした機械部品だった。

 

「なんだこりゃ?」

 

「これは……見た事無ぇ型だな」

 

傍らで様子を見ていた整備士の1人が呟いた。

 

「知ってるのか?」

 

「知ってるも何も、こいつぁ俺達みてえな奴らがいつも弄り回してる部分だぜ」

 

これが何かはアリーナも知っていたようで、訝しげにそれを見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コイツは、MS用のジェネレータだ」

 

ただの部品。

 

その筈なのに、何故かザハールにはそれが恐ろしく見えた。

 

 

 

 

 




シュツルムファウストだいしゅき

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評価もしてくれていいのよ

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