機動戦士ガンダムDRAGOON 『LAST STARDUST』 作:COTOKITI JP
課外などもあって疲れていたので少しばかり休んでおりました。
《UC.0096 2/16》
ここは工業コロニー、インダストリアル7。
元はサイド5だったが、現在はアナハイム・エレクトロニクス社によって管理されている。
つまり人の住める大きな工場という事だ。
その街中を駆け抜ける人間が2人。
1人は高校生ぐらいの少年で、もう1人はその少年に手を引かれている質素な服装を除けば貴族のような雰囲気を纏った女性だ。
かなり全力で走っていたのか、女性は息も絶え絶えでそれに気付いた少年が足を止める。
「も、もう撒けたでしょうか?」
「まだ追ってくるかもしれないし、なるべくここから離れよう」
女性が息を整えた事を確認した少年が再び走り出すと、ちょうど角から現れた通行人と鉢合わせ、勢い良く衝突した。
「うわっ」
「どわっジ!」
少年は何ともなかったが、勢い良くぶつかられた男の方は尻もちを突いた。
その時に右手にあったレジ袋の中身が飛散し、大量の食品や医薬品が歩道にばら撒かれる。
「す、すみません!」
「あぁいや、大丈夫だ」
そそくさと荷物を拾い集める男を少年も手伝い、レジ袋に全ての荷物を戻し終えると、男は一言礼を言った。
「全く、前は見て歩けよ。 青臭いカップルめ」
「そ、そんなんじゃないですよ!」
慌てて否定する少年を見ながら男は笑う。
「その感じ、何かから逃げてるって感じがするな。 違うか?」
男の言葉に少年はハッとする。
まさに今、2人はある者達から逃げていた所だった。
言葉に詰まる2人に男は「まぁ、頑張れよ」と一言だけ告げてそのまま去っていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「アリーナ、帰ってきたぞ……」
街中の人目のつかない所にある狭い空き家。
ザハールとアリーナの2人はそこを拝借して一時的な隠れ家としていた。
がらんとした部屋の中には小さなテーブルとパイプ椅子が2つあるだけ。
「……そうか」
パイプ椅子に腰掛けていたアリーナは机に突っ伏し、呟くかのようなか細い声で応えた。
「買ってきたモン、ここに置いとくぞ」
テーブルに街のスーパーで買った食料や薬の詰まったレジ袋を置く。
アリーナはずっと前からこの調子だ。
廃人のように項垂れ、口も開かぬまま食って寝てを繰り返している。
「……これまでに多くの事が起こりすぎた。 俺達が生き延びたのは奇跡と言うべきか……」
ツェザリが死んで以降、ザハール達を待ち受けていたのは最悪の運命だった。
度重なる連邦軍の追撃に団は疲弊し、死者が続々と出始めた。
オッゴ隊は1人残らず全滅し、ミドガルドも砲撃を受けて戦闘員以外の団員も沢山死んだ。
そしてたった2人のMS隊で支え続けてきたその長きに渡る逃走劇も、アーサーの戦死を皮切りに崩壊した。
ミドガルドを捨ててここ、インダストリアル7に密かに逃げ込んだ時には生き残っていたのは脱出艇でやってきたザハールとアリーナの2人しかいなかった。
その頃からアリーナはおかしくなった。
いつもの余裕そうな顔を見せることは無くなり、日々仲間達の名前を呟いてはそのまま喋らなくなる、といった事が続いた。
最近アリーナの様子が更に悪化し、夜中に魘されたかと思えば急に悲鳴を上げて泣き出したり、酷い時には嘔吐までしていた。
医者に見せようにも、多分自分達は指名手配されている。
だから不用意に外に顔を出す訳にはいかなかった。
顔がバレていないとしても逃げた先がインダストリアル7だと発覚すれば、直ぐに捜査が始まるだろう。
その時に真っ先に疑われるのは住所不定無職で戸籍の無い2人だ。
「アリーナ…とりあえず今は寝とけ。 この時期だ、風邪引くぞ」
団長としての威厳の欠片も無くなった1人の少女はとぼとぼと席を離れ、ブルーシートを間に挟んで床に敷かれた寝袋の中に潜り込んだ。
「……これからどうしろってんだ……」
自身の空っぽの手を見ながら、ザハールは呟いた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ああああぁああああああああああああぁぁぁあああああああああああぁぁぁ!!!!!」
夜中の空き家の中に突如鳴り響く少女の悲鳴。
ザハールもう何度目だと愚痴りながら彼女の元へ駆け寄る。
まるでもがき苦しむようにブルーシートの上をのたうち回る彼女を抑えながらザハールは必死に宥める。
「落ち着け! 目ェ覚ましやがれ!!」
「嫌だ!!嫌だぁ!! みんな置いてかないでくれぇぇぇぇ!!!」
昔のアリーナだったら決してしないような話し方。
なんだが幼さすらも感じるその様子にザハールは不気味さを覚えつつも必死に声を掛け続ける。
しかし今日に限って彼女はやけに荒れており、泣き止む気配は無かった。
そうして暫く叫び続けていると、アリーナは不意に誰かの名を叫び始めた。
「プルスリー!!プルファイブ!!プルエイトぉ!!みんな!みんな溶けて無くなる!!!」
聞いたことも無い名を叫び続けるかのようなを宥め続けることかれこれ20分。
漸くアリーナは静かな眠りについた。
「ま…………す……たぁ」
そう虫の音のような声で言いながら眠りに落ちた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「お前に、伝えておきたい事がある……」
朝、起きて朝食を取ろうとした時にアリーナはそう言った。
ちょうどピザパンに齧りつこうとしていたザハールはそのまま停止し、彼女の目を見る。
彼女の表情は暗いままだが、何だかいつもと違う。
まるで、何かを決意したかのような強い意志の宿った目をしていた。
「……何だ?」
「私には両親は存在しない」
「そりゃどう言う……」
「私を産んだのは人でも生物ですらない。 ただの機械だ」
「……!!」
その言葉にザハールは目を見開く。
アリーナはザハールが入団した時、前団長の父親の話をしてくれた。
「私が父親と呼んでいたのは、血の繋がりもないただの親代わりだった」
彼女の告白に暫く呆然としていると、アリーナは勝手に話し始めた。
「昔、第一次ネオ・ジオン抗争時の事だ。 あの時ネオ・ジオン軍はある新兵器の計画を実行した」
第一次ネオ・ジオン抗争についてはデラーズ紛争以降の歴史を知らなかったザハールも仲間から教えてもらったり、本を読んだりしてよく知っている。
言ってしまえばあの辺りがジオン公国のピークだったのかもしれない。
今も残されているネオ・ジオン残党は最早嘗てのジオン公国の面影など無い、烏合の衆に過ぎない。
まだデラーズ・フリートの方がマシに思える程にだ。
「その新兵器……いや、新兵器達は『プルシリーズ』と呼ばれた」
「まさか……」
ザハールはジオン軍内で言えばまだまだ雑兵の類だ。
しかし長い事軍人をやっていると妙なきな臭い噂を聞くこともあった。
我が軍は何処かの研究所で人間を改造してニュータイプの兵士を作っていて、しかも連邦軍も全く同じ事をしている……とか。
結局その話の真偽は不明のままだったが、ジオン軍は一年戦争時代から記録上に存在しない謎の部隊があったという話は聞いたことがある。
彼女も、まさか……。
「私は…………」
今まで所属不明の部隊だの、強化人間だの、妙な噂を信じて来た事は無かったが、それがもし目の前に実在したとしたら……。
そしてそれが身近にいたとしたら、。
「プルシリーズの
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
《はい、ミドガルドの航路から
《では例のブツの受け渡しと同時に、2人を回収すると》
《そのようにお願いします》
《しかし、あの者らにそれ程の価値があるのか》
《勿論。 特に彼はイレギュラー……下手をすればこのゲームの盤をひっくり返しかねない代物です。 しかしその能力は……》
《軍事機密……だろう?》
《察しが良くて助かります》
感想、評価をお願いします。
コレで私は明日も頑張れます(›◜௰◝‹ )