機動戦士ガンダムDRAGOON 『LAST STARDUST』 作:COTOKITI JP
《UC.0096 6/1》
ある一つの事件が起きた。
たった数十人余りの海賊団によって引き起こされたその事件は、宇宙世紀の歴史を大きく歪めた。
この事件はUC計画に大きな遅延を発生させ、計画の一部であった『RX-0』またの名をユニコーンガンダムの完成も大幅に遅れた。
その結果、本来ならば4月7日に起こるはずだった『ラプラスの箱』の譲渡、そしてラプラス事変はこの日まで引き伸ばされた。
結局彼らの敗北という歴史を覆す事は出来なかったが。
しかし、それでも私は戦う。
戦い、抗わなければならないのだ。
恐らく、それが残された者達に与えられた権利であり、義務である。
……もし、私と志を同じくする同志がこれを見ているならば、これだけは伝えておきたい。
……我々に、最早ジオンの旗は必要無い。
このふざけた鎖を喰い千切るのにそんな贅沢な肩書きなど、あってないようなものだ。
牙を剥いた貴族など、不格好ではないか。
我々には泥まみれの
……万が一、我々と終わり無き地獄を共にしたい大馬鹿者がいるのなら、指定する宙域に来い。
群狼よ、連邦を喰い殺せ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「き、急に何が起こった!?」
街中に響く爆発音。
上を見上げれば見慣れない連邦軍のMSとザクとは少々違うが見慣れたデザインのMSが戦っていた。
コロニー内でのMS戦。
それがどれだけ危険なものか、ザハールも分かっていた。
「ここはやべぇ!! 一旦離れるぞ!!」
辺りに戦闘で飛び散った瓦礫が降り注ぎ、地面を抉る。
それを躱しながら2人は避難出来る場所を探してインダストリアル7の中を駆け回る。
アリーナもザハールに手を引かれながら必死に走る。
ここ暫く精神的に参っていたアリーナといえども流石にこの騒ぎには目を覚まさざるを得なかったらしい。
避難場所を街中で探し回っていた時、突然目の前に現れた巨大な影が2人を覆い隠した。
地響きでよろける2人。
見上げるとそこには1機のギラ・ズールが佇んでいた。
紅く光るモノアイが2人の姿を捉える。
しかし銃口をこちらに向けてくることは無い。
「な、何だ?」
《安心されよ! 我等は敵に非ず!!》
ギラ・ズールのパイロットがスピーカーで声を掛けてきた。
彼が一言喋ったその直後に更にギラ・ズールの後方にやたら大きな貨物を積んだ輸送機が着陸した。
あの大きさからして、中身はMSかそれに準ずるものである事は間違いない。
しかし、わざわざ連邦軍と戦闘を起こしてまで自分にMSを届に来るという意図が分からなかった。
それともプル・サーティーンであるアリーナの物だろうか。
《届け物だ、ザハール! 貴公も戦闘に参加されたし!!》
コンテナが自動で開くと、やはり中身はMSだった。
しかし、かなり特殊な形状をしている。
少々頼りない細めの脚部に対してMAレベルの巨大なバーニアスラスタを背中と脚部の裏に装備している。
これは完全に宇宙での使用を前提とした機体だ。
この細い脚部は恐らくAMBAC用だろう。
武装は見える限りでは右腰部に未知のビーム兵器が1丁。
左腕には見慣れないパーツと共にビームサーベルが内蔵されている。
更にビーム攪乱膜投射装置にスモークディスチャージャー、頭部はゴテゴテとした形状でメインカメラはただのモノアイではなく、複数のカメラを組み合わせたより高性能な物に変わっている。
第一印象だけで言えば、ドラッツェとよく似ていた。
《急げ! 早く乗られよ!!》
「あ、アリーナは!?」
《彼女は輸送機に乗せ、戦域を離脱する!》
そう告げられたザハールは暫く迷い悩む。
彼等はネオ・ジオン残党、袖付きだ。
自分も元はデラーズ・フリート所属、つまり友軍である事は確かなのだが、ジオン軍は今と昔では内部の状況がかなり違うと聞いている。
同じジオン軍とはいえ、彼等を信頼するには少し情報が足りなかった。
だが隣にいるアリーナの事を考えれば、そうも言ってられる状況でない事も理解出来る。
ここで迷っていたってどの道彼女を危険に晒すだけだ。
《不安か?》
「違うと言えば嘘になるな……」
彼の声は先程とは打って変わって諭すような穏やかな声になっていた。
「だいたい、何故俺達なんだ。 俺はそんな特別な人間かね?」
《その理由は今は言えん。 しかしいずれ明らかになる事だ》
話している内にも戦火は拡大し、爆風が吹き荒れる。
しかも、連邦軍の機体がこちらに気付いたようで2機接近してきた。
《彼女の身の安全は、ジオン公国軍兵士の名にかけて、この私が保証する!!》
ギラ・ズールがビームマシンガンで連邦軍機体を牽制しながら叫ぶ。
《信頼しろとは言わん!! だが、今だけは我々に委ねてくれ!!》
「……分かった! 今は協力してやる!! アリーナも早く輸送機に!!」
アリーナも渋々だが承諾し、輸送機に乗り込む。
輸送機が飛び立った事を確認すると早速機体に駆け寄った。
横たわった機体によじ登り、コックピットハッチを開く。
ドラッツェは胴体にザクの物を流用していたが、これは機体の殆どがオリジナルだ。
コックピットハッチが開くと座席が前に迫り出してきた。
「最近のMSは気が利くもんだな!」
急いで座席に座り、ハッチを閉じると迫り出した座席がまた機内に引き戻される。
ハッチが閉まったと同時にコックピットの電灯が点き、中を照らす。
「内部までドラッツェそっくりとは、ありがたいこった!」
ジェネレータの起動スイッチを押し、機体にエネルギーを循環させる。
「動力路異常無し」
自己診断システムを起動し、機体のステータスを確認する。
「兵装、マニピュレータ及びペディピュレータ、レーダー、各種電算機能異常無し。 システムオールグリーン!」
完全に起動した機体が遂に起き上がった。
黒みがかった灰色の機体はその三つ目を淡く灯し、目の前の連邦軍機体を捉える。
「ザハール、出るぞ!」
この機体の名は『ワイバーン』。
飛龍とそれを駆る竜騎士は
その肩に、『最後の星屑』を刻んで。
このオリジナルMSの紹介は次回辺りですると思います。