機動戦士ガンダムDRAGOON 『LAST STARDUST』 作:COTOKITI JP
《UC.0096 6/1》
背部バーニアスラスタが周囲の人間の鼓膜を破りかねない程の爆音と共に爆炎を噴き出した。
同時に台風や嵐という言葉で言い表せない恐るべき衝撃波が周囲の建物の窓ガラスを一瞬にして粉砕し、周囲の信号機や標識、観葉樹は地面から引っこ抜かれ、紙吹雪の如く吹き飛ばされた。
その瞬間的で驚異的な推進力は機体は1秒と経たずに飛び上がらせ、パイロットを殺さんとする勢いで加速させた。
「があぁぁぁぁああああああああぁぁぁッッッ!!??」
いつもドラッツェに乗っていた時と同じノリでスロットルレバーを全開1歩手前まで倒してしまったザハールはその圧倒的加速力によるGによって鼻血を吹き出し、目から出血した。
《馬鹿者!! 出力を落とせ!!》
ギラ・ズールのパイロットが呼び掛けるも彼にはそもそも聞く余裕すら無かった。
通常、訓練を受けていない人間の耐えられるGの限界値は6〜7Gである。
耐Gスーツを着用した戦闘機のパイロットで最大12Gまで行けるが、9Gを超える機動は基本しない。
因みにMSのパイロットはより高度な3次元機動を行うので12G以上でも耐えられるように訓練を積み上げ、その上で耐Gスーツを着用する。
彼がデラーズ・フリートでドラッツェのパイロットとして現役だった頃に耐えられた最大のGは21G。
そして彼、ザハールがこの瞬間に体験したGはと言うと……。
実に、
目と鼻から血を流しながらもがき苦しむザハールは目の前に地面が迫ってきている事に気付いた。
途轍も無いGに苦しみながらもザハールは何とか操縦桿を掴み直し、バーニアの噴射口を前方へ向けた。
急停止によるさらなる負荷をその身に受けたが、何とか機体は停止し住宅街にコンピュータの自動制御で着陸した。
その華奢な脚で一軒家を踏み潰して漸く停止したワイバーンにギラ・ズールが無線で呼び掛ける。
《ザハール! 無事か!? 応答を!》
しかしワイバーンの方から応答が来る気配は無かった。
《
ギラ・ズールが連邦機、『リゼル』2機を相手にしながら輸送機とワイバーンに近付かせまいとビームマシンガンを乱射する。
コロニー内の更に奥の方では別の袖付きの機体と複数のリゼルとジェガンが戦っており、爆炎があちこちで上がる。
《ロンド・ベルめッ……!!》
斬りかかってきた1機のリゼルのビームサーベルを咄嗟に引き抜いたビームホークで往なし、至近距離からビームマシンガンのアンダーバレルグレネードランチャーを胴体に放った。
大口径のグレネードをほぼゼロ距離で胴体に食らったリゼルはコックピットが吹き飛び、炎を纏いながら墜ちた。
《ザハール!! 早く目覚められよ!! 私1機では流石にもたんぞ!!》
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
今は遥か彼方。
古の記憶。
そして歴史の改変の始まりでもあった。
この時、ザハールが見ていたのは記憶。
だが、それは自分の知る記憶では無かった。
謎の狭い容器の中に寝かせられていたザハールはガラス越しに声を聞いた。
知らない声。
だが不思議とその声は何処か懐かしく感じた。
『DC計画は凍結だと……!?』
『はい、それで……DC-13は……処分せよと……』
『馬鹿な……今まで研究に研究を積み重ねて漸く生まれた傑作を無駄にしろと総帥は仰るのか!!』
白衣を身に纏った初老の男は机を叩き、怒る。
『完全に……我々の敗北です』
『フラナガンめぇ……あのような奴に!!』
暫く机の上に突っ伏し、唸った後彼は何かを決心したように立ち上がった。
もう1人の助手と思しき若い研究員はその様子を訝しげに見ている。
『DC計画を凍結されたとて、DC-13を捨てる気は毛頭ない!』
『しかし、どうなさるのです! 国外に逃がしたとしても今度は連邦軍に捕獲される恐れも……』
『外に出しはせん。 戸籍を偽造し、記憶を改変してジオン軍に入隊させる!』
『……それは!』
それから急に視界が暗転し、元に戻った時には記憶はかなり飛んでいた。
ザハールは初老の男を前にし、直立している。
その面構えに彼も満足気に笑っていた。
『お前は最強のニュータイプだ。 個人の力でお前に勝る者は未だいない』
彼はザハールの両肩に手を置き、目を合わせた。
『ジオン軍でMS戦の経験を積むんだ。 それで生き残る術を身に付けろ』
このときザハールは次第に大きくなっていく頭痛に襲われていた。
まるで、頭の中にある何かを否定されているような、妙な感覚だった。
『それじゃあ、養成学校では上手くやるんだぞ』
『ザハール・マリノフ』
「……ッ!!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ハァッ……ハァッ……!」
コックピットの中で顔を血で濡らしながらザハールは目覚めた。
全天周囲モニターで周囲の状況を確認すると、リゼルと格闘戦をしているギラ・ズールが見えた。
「クソっ……血垂らしてる場合じゃねえな……!」
先程の反省を活かし、出力は極力上げすぎないように調整しながら再びフットペダルを踏んだ。
血塗れの顔を拭いながら適度な速度でギラ・ズールの援護へと向かう。
しかし適度な速度と言ってもそれはリゼルのウェイブライダー形態の凡そ2倍程の速度があった。
《……! ザハール、目覚めたか!!》
「マニュアルぐらい事前にくれよ。 危うく血の噴水が出来上がるとこだったぞ」
《生きているならば良い! そのMSの性能を試してみよ!》
メインカメラが目の前にいるリゼルを捉えた。
その機体の進行方向や速度、距離から算出された未来位置がモニターに緑色の丸として表示される。
武装選択画面を見ると、『可変式ビームキャノン』という武装が目に止まった。
「ビーム兵器なんて初めてだが……」
それを選択し、ワイバーンの右手が動き出すと背中のウェポンラックに格納されていたMSの身長程の大きさはある可変式ビームキャノンを取り出した。
モニターから可変式ビームキャノンとE-CAPの接続の完了を確認し、安全装置を解除した。
「来た!」
リゼルの放って来たビームライフルをワイバーンの高速性能で躱しながら、可変式ビームキャノンの砲口をリゼルに向ける。
FCSが照準を誘導し、より正確な位置に調節される。
ワイバーンが可変式ビームキャノンの引き金を引いた。
ビームライフルよりも太い赤色の光線がリゼルの胴体に寸分の狂いもなく命中し、コックピットがあった部分には大穴が開いた。
「こ、こいつはすげぇ……戦艦もブチ抜けるんじゃねえか……?」
《今の内だ! 外に逃げるぞ!》
隣に来たギラ・ズールが『お肌の触れ合い会話』で呼び掛けた。
ギラ・ズールの誘導に従いインダストリアル7の外に出ると、そこはコロニー内とは打って変わって物静かな宇宙が広がっていた。
ミノフスキー粒子散布下で対空レーダーは使えないが、代わりにメインカメラが10数km先にいる艦船を捉えた。
カラーリングと形状からして友軍の輸送艦だろう。
コロニーからある程度離れると、ミノフスキー粒子の影響も大分弱まり、向こうの輸送艦の方から無線が入った。
《……こちらサマーラ。 応答願います》
それに応えるのはギラ・ズール。
《こちらゲルト・ハーン少佐、作戦は無事に成功した。 着艦許可を乞う》
《了解、4番と3番を解放します》
輸送艦正面のハッチが開き、着艦用のガイドビーコンが点灯した。
先にザハールのワイバーンが着艦するべく輸送艦に接近した。
「こりゃあ、なかなかデカい船だな。 ヨーツンヘイム級超えか?」
ガイドビーコンに従ってコンピュータが自動で着艦に入る。
バーニアを前方に噴射して速度を落としながら入口に足を付ける。
大きな衝撃と共にワイバーンは綺麗に格納庫の中へと入った。
その後は周囲に脅威がいないことを確認したギラ・ズールが同じように慣れた手つきで着艦し、終わるとハッチは閉じた。
「ザハール、艦長がブリッジにお呼びだ」
コックピットハッチを開いて真っ先に見たのは赤毛で若干女性寄りな顔付きの男だった。
「お、女……?」
「何を言うか、私はれっきとした男だ」
傍から見れば女と見間違えてもおかしくはない容姿だ。
声だってただの低めな女性の声とも聞き取れなくもない。
それに見るからにかなり若い。
ゲルト・ハーンという男、この若さで少佐と言う事が驚きだった。
親族のコネか、それとも天賦の才の持ち主か。
自分はこれからこの青年を上官として扱わなければならないのか、と階級が大尉止まりのザハールは気だるげにそう思った。
常に私のモチベを動かして来たのはひと握りの感想と(ry