アンデッドですが、なにか?   作:〜ゆ

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アニメ化記念に初投稿です


1 土葬への直行便

 唐突だが、気がつくと真っ暗などこかに寝かされていた。

 なぜこんなところにいるのか思い返してみても、自分自身に関する記憶だけがすっぽりと抜け落ちている。

 思い出せるのは、日本での一般常識であろうもの。

 こんな状況になる前に、誰かに会ったこと。

 その人物が、『D』と名乗っていたこと。

 それだけだ。

 

 ……まあ取り敢えず、状況の把握を試みよう。

 

 手を伸ばす。

 すぐに手が天井に触れ、硬質な音を立てた。

 横に手を伸ばしても同じ結果に終わった。

 どうやら自分は自らより少し大きい程度の長方形の箱のようなものに閉じ込められていることがわかった。

 次は、この空間に自分以外のものがないか探してみる。

 

 手探りで辺りをべたべたと触っていると、自らの周りに乾燥したなにかが大量に敷き詰められていることに気がついた。

 一つを手に取って触ってみる。

 小さな円形の物に薄いものが無数に生えている。

 引っ張るとポロポロと簡単に抜け落ちた。

 ……花?

 コスモスの花を思い浮かべながらいじくりまわすと、その疑惑は確信に変わった。

 少し形が違うため、コスモスではないようだが、花であることは間違いないようだ。

 状況を整理してみよう。

 

 人が入る大きさの箱と、その中に敷き詰められた大量の花。

 そしてその中央に横たわる自分。

 ……。

 どう考えても棺桶しかあり得ません本当にありがとうございました。

 ちょっと意味が分からない。

 どうして自分は棺桶なんかの中で寝かされているのだろうか。

 ……。

 考えてもらちが明かない。

 そもそも記憶がないのにこんな状況に陥った理由に思い至ることは不可能に近いのだ。

 早急にここからの脱出を試みよう。

 不思議と息苦しさは感じないし、謎の安心感があるが、このまま棺桶の中で生涯を終えるわけには行かないのだ。

 確かに生涯を終えてもお膳立てバッチリだが、さすがに嫌だ。

 とにかく嫌だ。

 蓋を全力で押し上げる。

 

 開かない。

 重い。

 恐らく既に土に埋められているのだろう。

 ますますお膳立てバッチリである。

 こんなことをしでかしてくれた立役者に拍手を送りたい。

 ブラボー。ついでに一発殴らせろ。

 

 《熟練度が一定に達しました。スキル〈怒LV1〉を獲得しました。》

 

 唐突に頭の中に声が聞こえた。

 機械のように、一切感情の感じとることの出来ない声だ。

 ……それにしても、スキル?

 まるでゲームだな。

 ……で?

 なんだ?

 おちょくってるのか?

 記憶のなかのDが嘲笑ったように感じた。

 犯人はきっとDに違いない。

 自分の直感がそう言っている。

 もう一度会ったら本当に殴ってやろう。

 と怒りをたぎらせていると、体に力がみなぎるような感覚を覚えた。

 なんだか分からないが、今なら行けるかもしれない。

 もう一度全力で押し上げる。

 すると今度はゆっくりと蓋が持ち上がり始めた。

 それに合わせるように腕がミシミシと悲鳴をあげる。

 腕への負荷が限界を迎えている。

 それでもここでやめるわけには行かない。

 そのまま力を込め続ける。

 届けこの想い。

 

 

 

 届かなかった。

 少しだけ持ち上がったのだが、腕の「メキッ」という異音に驚いて力を緩めてしまった。

 結果。

 無情にも蓋は閉じた。

 まぁそりゃそうか。

 ゲームみたいな世界とは言え、ただの人間が分厚い木の板と大量の土を腕の力だけで持ち上げられる訳がない。

 致し方なし。

 

 ……さて、と。

 諦めてふて寝でもしようか。

 

 

 

 一体どのくらい経っただろうか。

 寝ていたため分からないが、蓋の上の方から土を掘る音が聞こえてきた。

 助けが来た!

 掘る音はどんどん近くなってくる。

 このまま待っていればきっとこの誰かが助けてくれるはずだ。

 爆睡しておいて今更なんだという話ではあるのだが、限られた酸素を無駄にしないためにじっとその時を待つ事にした。

 

 

☆ Side change 主人公 → とある泥棒2人組 ☆

 

 

 「聞いてねぇ! 聞いてねぇよ! なんで生きてるんだよあのガキ!」

 「つべこべ言ってねぇで足を動かしやがれ!」

 

 泣き言を言いながら走る相棒に怒号を投げながら走る。

 光源がランプしかない中で夜道を走るのは危険だが、それ以外に恐怖を紛らわせ る方法が無かった。

 濁りきった目、動く度に軋む体、うわ言のように何かを呟きながら伸ばされる小さな手。

 思い出すだけで吐き気がしてくる。

 

 「もしかしてあれがアンデッドって奴なのか!?」

 「そんな訳が……ッ」

 

 相棒の馬鹿げた想像を否定しようとして口を噤む。

 アンデッドはおとぎ話の存在だ。

 そんな事はスラムのガキだって知っている。

 しかし先程のアレは言い逃れができないほど、アンデッドと呼ばれる怪物に酷似していた。

 

 「訳わかんねぇよ! 訳わかんねぇよ!!」

 「いい加減黙りやがれ!!」

 

 あの小さな影の幻影を振り払うように、俺たちは町への道を走り続ける。

 今夜あったことは二度と忘れることが出来ないだろう。

 だが、この事を誰かに語れる度胸があるほど、俺たちは非凡な人間ではなかった。

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