穴の縁に腰掛け、ため息をつく。
蒼褪めた肌は、つねっても痛みを発する事はなかった。
そして何よりも。
手首に人差し指を添え脈を測ろうが、首筋に指をあてようが、胸に手を当ててみようが、温かさも鼓動も感じ取ることはできなかった。
つまりだ。
自分は既に死んでいるのではなかろうか。
うそぉん……
どうしてこんな状況に陥っているのだろうか。
そして死んでいるのならなぜこうやって意識があるのだろうか。
これがもしかして噂に聞く『哲学的ゾンビ』ってやつなのかな*1?
にしてもこれからどうすっぺ……。
……。
よし、変に考えるのをやめよう!
考えても現状は好転しない!
なに自分?
どう考えても自分が死んでいて困る?
自分、それは死をマイナスなものだと捉えているからだよ。
逆に考えるんだ。
「死んじゃっててもいいさ」と考えるんだ。
そうだ、まずは状況整理から始めよう。
まず周りは夜。
そして周りは森。
穴のすぐそばに自分のものと思われる目測1メートルくらいの新しそうな墓石あり。
周囲には他の墓石がいくつも並んでいる。
見た感じ周りの墓石は比較的古そうだ。
墓石には控えめな装飾と、名前らしき文字列とよく分からない文章が彫り込まれている。
文字の形状は見覚えがない。
少なくともひらがなやカタカナ、漢字とアルファベットではないはずだ。
ふむふむ……。
次は自分を見てみよう。
控えめな装飾の、それでいて高そうな生地を使った簡素なドレスを着せられている。
自分の手の大きさや体格、足の長さから見るに、年齢は10台前半と言ったところだろうか。
そして服装からして性別は女かな?
これが日本にいたときからの体なのか、それとも憑依転生のようなものなのかは分からないが、恐らくは後者だろう。
なんとなくだが、思考の仕方や知識が子供のそれとはかけ離れている気がする。
いかんせん記憶喪失のためはっきりとは分からないが、きっとこの体は他人のものなのだろう。
つまり自分は他人の死んだ娘の体を使っているわけだ。
……。
流石に罪悪感を感じるが、こちらも転生の被害者なわけだし許してほしい。
さて、これから自分はどうするべきなのだろうか。
そういえば棺の中で聞こえたあの声。
『《熟練度が一定に達しました。スキル〈怒〉を獲得しました。》』
あの声からすると、ここはゲームのような世界なのだろう。
そうすると、動く死体である自分は『アンデッド』になるわけだ。
そんな自分が人間に見つかったらどうなるか。
答えは簡単。
サンドバッグよろしくタコ殴りにされて日光だの浄化魔法だので滅却されるに決まっている。
これで今後の方針は決まった。
いつかこんなことにしてくれた下手人をぶん殴ることを夢見て、陰でこそこそ生き残ってみせる。
待ってろよ! Dとやら!!
☆ Side change 主人公 → とある一匹の蜘蛛 ☆
鑑定スキルが産廃性能だった以上、ここから先は自力で生き残らないといけない。
スキルポイント使い切っちゃったからね!!
はぁー。
こんな世界に蜘蛛として転生しちゃうし、せっかくとった鑑定も役に立たないし。
ないわー。