例の二人組が逃げ出した方向に人里があるのだろうと仮定して反対方向に向かってみることにした。
野生動物に襲われたらまずいと思いランタンは拾わずに置いてきたが、この体のおかげか、明かりがなくとも少し薄暗く感じる程度で済んでいた。
それでも生い茂る木々のせいで視界はあまり通らないけど。
時々聞こえる物音にビビり散らしつつしばらく歩を進めていると、少し広めの道に突き当たった。
舗装などはされていないがきちんと地面が均され、踏み固められている。
広さはトラックが通れるくらい。
わずかに溝ができているのは馬車かなにかが通っている証拠だろう。
方角的には二人組が行った方へと伸びているように見える。
反対側はどこに続いているのだろうか。
きっと足場の悪い森の中を歩くよりは体への負担が少ないだろう。
とりあえずこの道を辿っていくことにしよう。
しばらく歩き続け空が白んできた頃、大きな砦のようなものに行き当たった。
砦と言っても、見た目としては関所に近いような感じ。
大きい門があって、周りには門番らしき人物が居たり、見張り塔みたいなのがあったり。
少し疑問に思った点を挙げるとすると、森の中にポツンとあるため、町や村の門ではなさそうな点と、見張り塔が内側を向いている点だ。
……昔の偉い人は言いました。
『君子危うきに近寄らず、されど気になっちゃうからしかたないね』と……。
てなわけで何があるのか見に行ってみよう!
近づいてみると、鎧に身を包んだ門番さんが不審げな目を向けてくる。
この世界での人間との初邂逅だ、怪しまれないように振舞わなくては。
あの二人組は話した内に入らないからノーカンね。
まずは第一印象を決定づけるために元気に挨拶しよう。
「はろー、あいむふぁいんせんきゅーえんじゅー?」
「……*、*****************?」
「……君、こんなところに一人でどうしたんだい?」
わーおコミュニケーション失敗だ。
これは予想外。
そもそも使う言語が違った。
どうしたもんかな……。
「************。*************? ***********」
「とりあえずこっちにおいで。長い距離歩いて疲れてるだろ? 少し休憩していきなさい」
何を言ってるかは分からないが、手招きをしてるからきっと案内か何かしてくれるのだろう。
おとなしくご厚意に甘えるとしよう。
☆ Side change 主人公 → とある門番 ☆
「さて、と」
机を挟んで向かいの椅子に座った少女に目をやる。
服装からしてどこかの貴族や金持ちの娘だろうか。
「お嬢ちゃん。ここは知っての通りエルロー大迷宮の入口だ。そんなところへ一人で何をしに来たんだ? それもこんな時間に」
少女は俺の言葉に首をかしげる。
少し考えるそぶりを見せた後、何も言わずに机の上の干し芋を口に運んだ。
口に合わなかったのか、しかめっ面をしながら咀嚼する姿を見て毒気を抜かれる。
恐らくこの少女は迷子になったかなにかでここに辿り着いてしまっただけなのだろう。
昼頃に町まで送って行ってやるか。
そんなことを考えていると迷宮入り口側の外が慌ただしくなる。
微かにに聞こえる戦闘音からして、どうやら迷宮から魔物が出てきたようだ。
上層の魔物は大体が弱いが、もしものこともあり得る。
念のため俺も加勢に行くとするか。
「危険だからお嬢ちゃんはここで待っているんだ。いいね?」
少女の白い瞳が俺を射抜く。
感情がないような表情に一瞬寒気がした。
すぐに俺から興味を失い干し芋を見つめる少女を見て寒気が霧散するが、漠然とした違和感はぬぐい切れない。
軽く頭を振って考えを振り払い、俺は外へと向かうことにした。