案内されたのは関所もどきに併設された休憩所っぽい場所だった。
仮眠室も兼ねているようで部屋の奥には二段ベッドがいくつも並んでいる。
「********」
「そこに座るといい」
相変わらず言葉は分からないが、とりあえず門番さんが指さした椅子に腰かける。
少しすると皿に乗った干し芋を出された。
ありがたくいただくとしよう。
「**、*」
「さて、と」
門番さんが向かい側の席に腰掛け口を開く。
「*****。********************。******************? *********」
「お嬢ちゃん。ここは知っての通りエルロー大迷宮の入口だ。そんなところへ一人で何をしに来たんだ? それもこんな時間に」
どうせ言っても伝わらないので首をかしげて言語がちがうよアピールを試みる。
伝わるかなぁ。
無理だろうなぁ。
とりあえずせっかく出された干し芋をいただこう。
……。
味がしない。
あれぇ?
味付けがないとかじゃなく、芋本来の味さえ感じない。
どうやら味覚まで死んでいるみたいだ。
聴覚視覚触覚嗅覚が働いているから気が付かなかった。
うーん、ショックだ。
とは言いつつも、そっかぁくらいの感傷しかないから、恐らくもともと自分は食に執着する人間ではなかったんだろうな。
思わぬところで生前の自分の人となりを知れた。
なんてことを考えていると、外から物音が聞こえてきた。
それを聞いた門番さんが小さくため息をついて立ち上がる。
「*********************。***?」
「危険だからお嬢ちゃんはここで待っているんだ。いいね?」
何かを告げて去っていく門番さんの背中を眺めながら考える。
自分はどうするべきだろうか。
このままここで待つか、それともこっそり門の内側への侵入を試みるか。
まあ考えるまでもなく後者だよね。
気になるんだから仕方ないね。
それに好奇心は身を滅ぼすとも言うけど、どっちにしろここに留まってボロ出して正体がばれでもしたら、そのまんまの意味で身を滅ぼされることになるだろうし。
この部屋には扉が二つあって、片方は最初に入ってきた、門の外側に通じる扉。
もう片方は門番さんが出て行った、恐らく門の内側に通じている。
どっちから出るかが問題なんだよなぁ……。
門の外側に出れば今なら人もいないだろうし見つかる心配は少ないけど、どうやって内側へ入るかが問題になる。
壁を乗り越えてとかも行けるかもしれないけど確証がない。
《熟練度が一定に達しました。スキル〈思考加速LV1〉を獲得しました。》
また声が聞こえた。
この唐突に他人から思考に横やりを入れられる感じは慣れないな。
考えを戻そう。
門の内側に出た場合はそれだけで目標達成だけど、見つかる危険性がある。
……。
まあいいか!
今の自分は幼い少女だし、見つかってもちょっと怒られるくらいだろう。
それにどんなこと言われても分からないから痛くもかゆくもない。
そうと決まれば作戦開始だ。
こちら自分! ただいまよりスニーキングミッションを開始する!!
☆ Side change 主人公 → とある門番 ☆
洞窟から出てきたエルローフロッグの処理を終え、休憩室へ戻る。
するとあの少女は姿を消していた。
部屋を見回しても二段ベッドを覗いてみても見当たらない。
「どうしたオリバー、探し物か?」
鎧の留め具を外しながら部屋に入ってきた同僚が俺に声をかけてきた。
「ああ、ちょっとな。ところでお前の腰よりちょい高いくらいの身長の子供見なかったか? いいとこの嬢ちゃんみたいな格好してるんだが」
「誰との子だよ? ……そういや、カエル殴ってるときに誰かが迷宮ん中入ってったような気がすんな」
「なんだって?」
あんな子供が迷宮に一人で?
自殺行為だ。
やはりあの子は迷子ではなくここを目指して訪れたのだろう。
今すぐにでも探しに行かなくては。
子供を見殺しにするなんてごめんだ。