キャロルちゃんをママと呼ぶ話が書きたかっただけ   作:小指のファウストローブ

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実はこの話までがプロローグ的ななにかだった。

今回少しばかり長くなったのと、昨今の流行りに乗った曇らせの様な表現がございます。
でもアリアちゃんとキャロルちゃんの成長には必要なんだ!

あとこの話はライブの惨劇から数日間が空いてたりする。


アリアちゃんの錬金術

 起きた時には全てが終わっていた。

 流れるニュースも既にライブの惨劇と終わった物のように扱い、死亡者や行方不明者の人数も集計されている。

 

 アリサちゃんに施した座標特定の錬金術を起動し居場所を調べると大きな病院から反応が帰ってきた。少なくともアリサちゃんの身体は病院まで運ばれている。

 

「あとは無事を直接確かめよう」

 

 目標を声に出して、復唱して、前を向いて、そうして正常を保つ。

 

 大きく息を吐いて自室の扉を開ける。すぐ傍らにはレイアが立っている。いきなり飛び出さないように監視する目的だろうと思う。

 

「どうしたアリア?」

 

 数秒固まっているとレイアから話しかけて来た。別に私を傷付けようなんて思っていないだろうし、そもそも責めてもいない。けれど私は居心地が悪かった。

 

「う、ううん……別に? ところでママから外出許可ってまだ降りないの? アリア退屈しちゃったかも」

 

「退屈しのぎなら付き合おう。ミカも呼ぶか?」

 

 ファラもレイアもガリィも、ミカでさえこれだ。外出なんて単語は無いと言わんばかりに躱す。

 

「うん、みんなで人生ゲームでもしよっか!」

 

 そして私も強く言及出来ない。アリサちゃんは心配だし直ぐに確認に行きたいけど、それと同じくらいママたちに迷惑をかけたくない。

 

 

 ──そう思っていた。

 

 

 けどいくらなんでも長い!

 何時までこうしていればいいのかハッキリして欲しい。もう十分に冷静さを取り戻してる。あの時だって落ち着く時間さえ作れてれば先走ることもなかったし、もっとマシな対応も出来ていたかも。それなのにママったらいきなり問答無用と言わんばかりに意識を奪ってきて!

 

 つまり私は少しばかりご立腹なのである。

 

 けれどママたちに迷惑をかけたくないというのも本心ではある。あんな説得とも取れない酷い言葉を向けられたけれど、たぶんきっと絶対ママ的には私を思っての言葉のはずだ。ちょっと自信ないけど!

 

 だから強行突破はしない。正々堂々外出許可をママ本人からもぎ取るのだ。大丈夫よアリア、私はやれば出来すぎるから加減しろ馬鹿者と言われた女。やって出来ないことは程々にしかない。

 

 勇んで歩をママのもとへ向ける。私を掲げるミカが!

 

「いつものアリアに戻って嬉しいゾ!」

 

「人生ゲームは飽きちゃいました」

 

 

 そしてママの所まで来たわけだが、やっぱりと言うか冷たい視線が刺さる。あの時ほどじゃないにしても怒ってる。

 

「降ろしていいよミカ」

 

 ゆっくり地に降ろされた私は向かい合う形でママと対面する。とりあえず頭を下げて迷惑を掛けたことは謝る。明らかにパニック状態だったし、きっとあのまま行ってもロクなことにならないのは確かだったと思う。

 

 非があるのは否定しないし、ママが怒るのも理解出来てる。納得はちょっぴりしていないのはご愛嬌かも。

 

「だからごめんなさい」

 

「……分かってるならそれでいい。お前自身の立場を実感するのは恐らくもう暫く後だ、今回の件は教訓にしろ」

 

 立場。

 

 超高密度、超大容量のヒトを超越した魔力。私が錬金術師に見つかると血走った目で拉致してくるらしい。実感する時って攫われる時なんじゃないかなぁ。

 

「それでね外出許可についてなんだけど!」

 

「それとこれとは話が違う」

 

 だよね。

 

「だけど何時までも引き篭ってるのは嫌なの! だから妥協案を提示します!」

 

 お互いに通したい意地がある。私はアリサちゃんについて、ママは私の安全について。ならどっちも解決する。

 

「まずアリアは絶対に外出をしたいの。けどママは今のアリアに外出させるのは危険と判断してる。ここまでいい?」

 

 頬杖をついてるって事は聞く気があるって事だ。監禁ではなく軟禁に留めてる辺りで何となく察するものがあったけど、ママ自身もこれ以上私を留めておくことに懐疑的になってる。

 

「つまり外出する際にアリアに危険が無ければ」

 

「まぁそうだな。だが解決策はあるか? お前の言う危険を無くすなんて言うだけなら簡単だぞ」

 

 言うは易し、行うは難し。確かに言うほど簡単じゃないかもしれない。だがしかし私にはそんな状況をひっくり返すジョーカーがある。

 

「それはママだよ!」

 

「は?」

 

「世界で一番安全な場所はママの隣だもん。だからママと一緒にお外に出れば解決だよね」

 

「あ、いや」

 

「それにママ言ってたよね。しばらくはフリーだって!」

 

 私は記憶力に定評があるのです。

 

 腰に手をあてて胸を張ってママ便りなプランを提示する。ママもこれには度肝が抜かれることでしょう。事実額を押さえて前髪を掻き上げている。

 

 正に穴がない解決案かも。

 

「お前、オレが断るとか考えなかったのか?」

 

「ふぇ?」

 

 断る要素が何処に?

 まさか私が見落とした穴が!?

 

「断っちゃうの!?」

 

「ん゛、いや……及第点だな、うん」

 

「じゃあ!」

 

「但し、本当に様子を見に行って帰るだけだ。余計な事はするな」

 

 コクコクと首肯する。

 

 ミカと喜びのハイタッチ、ちょっと指先が怖いな!

 大っきい手の時は控えようかハイタッチ。いや待ってそんな悲しそうな顔しなくていいよミカ。今度換装の機構を付けよう。

 

「アリア」

 

「なぁにママ?」

 

 指をチャキチャキさせるミカを宥めていたら、先程の怒気が嘘のように消え去っているママが落ち着いた語調で話しかけて来る。何処か言いにくそうに視線を下げながら。

 

「オレとしては今でも行くことは勧めない」

 

 二の句を言わせない迫力がそこにはあった。

 

「外敵からは守ってやれる。だが内からくる敵に抗えるのは何時だって自分だけだ」

 

 何処か断定的で、この先起こることをハッキリ見据えた言葉。良い事であれば言いけれど、ママの物言いからはそうは受け取れない内容、それに対して私は神妙に頷くことしか出来なかった。

 

 

◇◆◇

 

 

 意外だろうが私は病院に縁がない。クリニックから大病院まで行ったこともない。それこそ産まれた時から。全部ママがどうにか出来るし、行く必要が無かったんだよね。

 

 だからいきなりこんな大きい病院に来て正直困惑している。受付で迷子になりそう。人が多い。何より受付台と私の身長差がえげつない。

 

 この病院にかかる事は無いだろうけれど、診察室まで辿り着ける気がしないよ。科が多いのも考えものだよね。

 

「病室が分かった。特に検査の予定も無く面会も出来るそうだ」

 

 大っきい状態のママがアリサちゃんの病室をナースステーションで聞き出してくれた。持つべきものは身長。いや別に普段のママがダメなわけじゃないよ?

 

 特に迷うことなく病室までたどり着いてしまった。ネームプレートにもアリサちゃんのフルネームが書いてあるから間違いない。どうやら個室を貰っているらしい。

 

 ノックに返事はなかった。病室に居ることは確かなので寝ているのかもしれない。

 

「オレは此処で待っている」

 

「分かった」

 

 意を決して扉を開く。清潔な印象を与える病室は、窓が空いていて清涼な空気を中に取り入れているのかクリーム色のカーテンが揺らめいている。

 

 最近活けられた花は花瓶で瑞々しく咲いている。

 

 アリサちゃんはそんな病室でやっぱりベッドで眠っていた。ちゃんと脈拍も呼吸もある。血色はやや悪い気もするし、疲れやストレスを感じさせるけれどちゃんと生きている。

 

 まず来たのは安堵感だった。

 何となく生きている事を察していたものの、やっぱりきちんと目視していない状態だと不安感が拭えなかった。もしかしたら過ぎってしまう。ちゃんと生きていてよかった、心からそう思う。

 

 何となく簡単なバイタルチェックを済ませようと思ってベッドの側まで寄る。呼吸回数に異常は感じない。あとは体温と脈拍だけ少し観よう。

 

「体温は大丈夫。あとは脈拍……」

 

 左手首内側で測ってみても問題はないと思う。一応左右差を測ろうと思って反対側、アリサちゃんの右側に回る。

 あとはアリサちゃんの右手首内側から脈を──

 

「ない」

 

 なかった。

 

 脈がない、と言うか測ることができなかった。

 

 測るための腕自体が綺麗に無くなっていたから。

 

 まるで最初から無かったかのように消失していた。

 

 呼吸を忘れた。ドカりと横付けされた椅子に座り込む。更に転げ落ちようとする身体をどうにか起こす。そんなグラグラな状態でも無くなっている右腕から目が離せなかった。いや離してはいけないのだと何処かで私は叫んでいる。

 

 そうかママはこの事を知っていたから私を止めたのか。そうだよね、たくさんの死者が出てる災害の只中から戻ってきて、はい五体満足なんて虫のいいこと中々ないよね。

 

「ん」

 

 瞼が開いて琥珀色を覗かせる。初めて見た時と変わらない綺麗な色。けれど私はその色を見るのが怖くなっていた。

 

「来ていたのね。いつ来るのかと思っていたのに、随分待ったわ」

 

 何もないですよとばかりに通常運転なアリサちゃん。だけど身体を起こし難そうだし、疲れた相貌が邪魔をして日常とは掛け離れてしまっている。私には寧ろ痛々しく見えてしまう。

 

「アハハ、ごめんねアリサちゃん。ママがしばらく外出禁止だって聞く耳持ってくれなくって」

 

「そう、よね。ごめんなさい、そういう所まで意識が回ってなかったわ」

 

「いいよいいよ! アリサちゃんは自分の事だけ考えていればいいの!」

 

 そう言った辺りでチラリと向いてしまった視線にアリサちゃんは目敏く気付いた。

 

「これ? 少しばかり軽くなってしまったわね」

 

「軽くってそんな簡単に……」

 

「何時までも引きづって居る訳にもいかないもの。お父様もこの程度瑣末だと仰っていたし」

 

 だとしてもそんな直ぐに飲み込める内容でもないはずで、時間を消費してやっと飲み込める事柄なはずなのに、どうしてそんなに気丈に振る舞うの。

 

 楽をして欲しい。私に少し当たれば、責める対象にしたら楽になるのに。いやアリサちゃんは私が錬金術師だなんて知らないから責める理由も出来ないか、じゃあこれは私の願望かな。私が楽をしてどうなるんだってぇの。

 

「何より私だけで良かった。友人も巻き込んでしまったかもしれないと考えるとゾッとするから」

 

 違う。私はどうにか出来た。自衛する手段も、友だち1人くらい守りきるのに必要な手札もあった。なのにアリサちゃんは腕を失っている。

 

「また生きて会えて良かったわ」

 

 奪ってしまったのは私だ。

 

「全くぅ! それアリアのセリフだよアリサちゃん!」

 

「苦しいわ宝条さん」

 

「アリアだよ」

 

「え?」

 

「何時までも苗字なんて他人行儀。呼び捨ててよ! 親友らしくさ!」

 

 補完してあげなきゃだよね。

 

「いきなりは照れるのだけれど、でも確かに他人行儀が過ぎたかしら。……じゃあ改めてよろしくアリア」

 

「うん、アリサ!」

 

 錬金術の基本は等価交換。アリサの右腕の分、私は対価を差し出すべきだ。

 

 そのあとは腕の話を避けて日常を取り戻すようにたわいの無い話をした。別れる時もまた来ると言って。

 

「あ、今日来る事に意識が行き過ぎて、見舞い品持ってきてなかったや」

 

「気にしなくてもいいのに」

 

「うーん、じゃあ次はとびっきりの物を持ってくるよ!」

 

「フフ、じゃあ期待しておくわ」

 

 そうして病室を出た。

 

 笑顔を保てていたかな。平静を保てていたかな。アリサに気付かれなかったかな。

 

「終わったよママ」

 

「……ああ」

 

 手を繋いで元来た道を戻っていく。帰り道に独特なファッションを貫く人が居たくらいで特に変化のない道のりだった。なんて言うかネクタイはあれで良かったのかな。

 

 

◇◆◇

 

 

 疲労感が凄まじい事になった。スタミナには自信ありだったのにな。けれどやる事が出来たからうだうだしてられない。

 

「アリア」

 

「ん〜?」

 

「お前何を持ち帰ってきた?」

 

 流石にママにはバレちゃうか。私はこっそりアリサからあるものを拝借してきたのです。さぁ何でしょう!

 

「これ!」

 

「髪の毛? 藤咲有咲のか?」

 

 枕付近に落ちていた物を何となく追求を避けるために、バレないように持ってきたのでした。正解者に拍手。私は当たったので自分に拍手!

 

「そんな物で何をするつもりだ?」

 

「腕を錬成する」

 

 失くしたものは補えばいい。それに私に差し出せるのは錬金術くらいだから。

 

「駄目だ絶対に!」

 

 鋭い視線は殺意と変わりないくらいに鋭利でトゲトゲしている。まぁ想定はしていたけれど、いざ止められると困った。

 

「後でアリサには説明するよ」

 

「どう説明する。錬金術だとでも伝えるか? 誰が信じる、誰が納得する! よしんば友人にはそれで通るとして周りはどうする!」

 

 捲し立てるママは苛烈だった。けれど震えていた。怒りからなのかは分からない。

 

「腕が勝手に生えましたは通らないんだぞ! 理解し難い内容をいくら凡夫に突きつけようと返ってくるのは戯言だけだ」

 

 今のママは何処に目があるのか定かじゃない。少なくとも現在を見ているようには見えない。過去を呪うような怨念めいたものがある気がする。

 

「いいかアリア聞け。そういう奴らはいつも決まってこう言う、『奇跡』だとな! そして『奇跡』はお前を殺す」

 

 たぶん今の今まで吐き出された言葉がママの根源なんだろうと思う。過去に何があったのかはわかんない。ただ少し方針を変えてやるだけでママの懸念は解消出来るかも。

 

「ママの言い分は分かったよ。だったら腕の錬成は取り止める。代わりに義手を作る。最新テクノロジーとか適当に理由を付ければ何も言われないよ」

 

 実はこっちが本命。

 

「勝手にしろ」

 

 どうやらママも気付いたみたい。拗ねちゃったかもしれない。

 

「ママ!」

 

「いきなり抱き着くな! 今の何処にそんな流れがあった!」

 

 頭上からガミガミ言ってるけれど、どうか許して欲しい。私も限界はあるんです。底抜けの明るさなんてあるわきゃ無いのです。全てはエネルギー保存の法則から逃れられない。

 

「ハァ、もういい。悪かった、すまないアリア」

 

 ギャン泣きなんて何年振りなんだろうね。前と変わりなく何だかんだとあやしてくれるママが大好きだよ。




アリアちゃんが話を重ねる毎に幼さそのままのナニカに成長()している気がする。

アリアちゃん:
曇ったけど自力で晴らしに掛かる豪の者。シンフォギア装者の属性を少しずついい感じに踏襲出来てる感じがする。あくまで作者がそう感じてるだけだが……
こっそり親友の髪の毛を拝借する何処ぞの名探偵じみたやばさを感じさせる小学生に成長してしまった。罪悪感と使命感がごっちゃになった結果だからしょうがないね! そして親友のために義手を作ることにしたけど何かいい資料あったかな?

アリサちゃん:
一時曇り、一時晴れ、一時曇った。関係を響と未来のようにしよう、とした結果、亜種的な化学反応を起こした。大体アリアちゃんが悪い。
生き残った場合絶対に何処かの部位は欠損して貰うつもりだった。今回は右腕。ただ断面は綺麗だったらしい。らしい。
あと呼び捨てするのとされるのにポカポカした。書いてた作者もポカポカした。

キャロルちゃん:
雷雨。
アリサちゃんの腕については把握してた。先延ばしにしてもアリアちゃんを行かせたくなかったけど折れた。でも面会の後でアリアちゃんが覚悟完了みたいな目をしてて思わず顔が引き攣った。
過去のトラウマを想起させられてヒスったがアリアちゃんのギャン泣きでママを全力で執行する事になったので頭が急速冷凍される。
義手? こちとら動く人形作ってるんだぞ、余裕余裕!

シンフォギア世界はやっぱり過酷すぎたな。子育てには向かないよ!

次回はもう時間を飛ばしてしまってもいいんですけど、マスゴミとかアリサちゃんのお家とか描写出来ていないのよね……
どないしょ……
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