キャロルちゃんをママと呼ぶ話が書きたかっただけ   作:小指のファウストローブ

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イメージは第1話って感じ。
視点は飽くまでアリアちゃんだけど、出来ればアリサちゃん視点を想像して欲しい。


アリアちゃん惑う

 アリサが事件に巻き込まれて数年経った。ライブの惨劇と今でも掘り返されてはお茶の間を賑わせる程度に話題は治まり、各々の日常の風景を取り戻し始めている。

 

 勿論、私たちも。

 

「腕の調子はどう?」

 

「問題ないわ。無さすぎて寧ろ違和感があるくらい、どうやって触覚まで再現してるのかしら……」

 

「電気信号とかじゃないかなぁ」

 

 嘘は言っていない。

 

 製作者は私だし。誤魔化し方もお手の物である。

 

 正しくはママとの共同製作で完成したけれど、プログラムを組んだのは殆ど私になる。ママは外装で活躍してもらった。流石に人工皮膚なんて物は私には扱えない。

 

「よくこんな義手を用意出来たものね。それを無償で私に渡すのもそうだけど、正直胡散臭かったわよ?」

 

「だからママがそういう所に顔が利くの! 使用感とか、データとかを送ればそれでタダねって交渉してくれたんだよ」

 

「それが胡散臭いのだけれど……」

 

 そういう事にしてある。データの収集と言う名目でメンテナンスをして、使用感の聞き取りも今後の義手作りの参考にするのが目的。成長する度に作るのだし、どうせなら改善出来るところは改善すべき。

 

「けれど助かってるのも事実。アリアとアリアのお母様には感謝してもし足りないわ」

 

 こういう時は毎回困っちゃうなぁ。やっぱり互いの認識に齟齬があるんだろうけど、それは違うとも言えないのが辛い。

 

「えへへ、当然でしょ。親友なんだから!」

 

 アリサの風当たりは実の所良くない。いや元々近付き難い存在だったらしいので差と言える差はないのかもしれないけど。それでもライブの惨劇の生存者と勘繰られ始めると余計に孤立した。

 

 そもそもの原因は生存者へのヘイト操作によるもの。マスコミを使っての露骨な誘導に民衆は即座に食い付いた。遺族だけならまだいい、問題は野次馬に正義という後ろ盾を用意してしまった事。結果やってる事は明らかに法を犯す内容で有りながら、黙認されてしまう社会が確立してしまった。

 

 アリサの家族はそのヘイト操作を事前に察知して、交通事故として処理しようと目論んだみたい。もしかしたら操作している側かも。けれどアリサちゃんパパがお茶菓子をもって、交通事故という事にして欲しいと頭を下げに来たからたぶん独断なんだろうね。

 

 急拵えながらアリサは迫害を目前で避けた。グレーにはなったものの黒くないので手が出せない。もしかしたら程度じゃ余っ程の脳足りんでも無いと直接手を出してくることも無い。

 

 こればかりはアリサちゃんパパの英断だったね。私が手が出せない所だし助かった。

 

「あぁもう家に着いちゃった!」

 

「また明日学校で会えるでしょ」

 

「むぅ、それはそうだけど! そうだちょっと家にお邪魔していく?」

 

「下校の時は真っ直ぐ家に帰宅する事が義務付けられているでしょ? それに今日は予定があるの。ごめんなさいね」

 

 振られてしまった。

 アリサは子供心がわかってないなぁ。帰りに友達の家で遊んで帰るのは定番って本でみたのに。

 

「まぁ良いけどね。うん本当に良いけどね!」

 

「また今度お邪魔するわ」

 

 なら、いいかぁ。

 

「じゃあまた明日ね!」

 

「えぇ、また明日」

 

 手を振って見送る。もう自然に義手を扱えている様で右腕で振り返してくれている。慣れない時は義手の使用を避けていたので、これもリハビリの成果と言える。

 

「それにしても予定か。最近多いような気がする」

 

「ついて行こうなどとは、まさか考えていませんよね」

 

「ただいまファラ」

 

「おかえりなさいアリアちゃん」

 

 今日はファラの日。

 玄関口でフラメンコし出すのはいつも通り、今日のお迎えもキマってる。

 

「それにしても心外かも。アリアはきちんとやっちゃダメなことの線引きは出来てるよ!」

 

「そう言って最近何を分解しました?」

 

「……アリアの指先を少々」

 

「自分の指を調味料か何かと勘違いしてらっしゃる?」

 

「いやぁだって」

 

「アウトですわ」

 

 よくよく考えると私自身の身体が珍しい検体。錬金術師たち垂涎ものの肉体。ママも私の身体は未知数な部分が多いと言っていた。そしてつい魔が差した。

 

 理論上、分解後直ぐに再構成すれば何も問題ない。万が一でも代替物で補える。リスクは無かった、と思う。ママに見つからなければ!

 

「魔力に対して少し丈夫くらいの身体っておかしいでしょ。普通もっと変質するものだと思うの」

 

「マスターも焦っていました。せめて分解以外の手段を取ればお叱りを受けることはなかったのに」

 

 痛いところを付かれて、つい出されたお茶入りカップで口元を隠す。思い付きで起こす無計画な行動ってよくあるよくある。自由研究とかでよくやらかす。

 

 シュークリームにぱくつきながら話題を逸らすべくテレビをつける。

 

「なんかノイズの出現が頻繁になって来てるよね。少し遠いけど一定の範囲の中で」

 

「その様ですね」

 

「絶対故意的だよ! きっと統率を執ってる奴がいる」

 

 聖遺物による操作と予想できるけれど、果たして目的はなんだろう。まさかここまで来て愉快犯なんてオチはないでしょ。たぶんあの地域に何かある。人か物かはわかんないけど、そんな気がする。

 

 もし、仮に、万が一にもね。あのライブの惨劇が同一犯の故意的犯行、いやどんな理由があろうと元凶だとすれば、

 

「怒っちゃうかも」

 

「アリアちゃん?」

 

「ねぇファラ」

 

 久々に足を伸ばすのも一興ってね。

 

「お出かけしよ!」

 

 

◇◆◇

 

 

「この辺りだよね」

 

 ノイズが出現するエリアまで移動してきた。

 

 ファラの抱っこで。

 

 車より速くて道のない所もスイスイ進めておまけに透明と言う機能付き、移動にはもってこいだ。乗り心地はミカの次にいい。

 

「よくマスターから許可を取れましたね」

 

「アリアもあの時から成長したってことだよ」

 

 あの時の失敗。

 それは冷静さ欠如と手札が少なかったこと、それによって自分の安全を担保出来なかった事にある。

 

 私はあの時と同じ状況に陥った時に同じ過ちを繰り返したいとは思わない。だから自分なりに努力はしてきたつもり。たぶんママにも気持ちが伝わったんだよね。

 

「でもファラ有りきだったから胸は張れないかも」

 

「マスターもそれだけ心配なのです。あれを契機に戦闘訓練を組み込んだのもその現れですから」

 

 人形たちと行ってきた戦闘訓練。

 基本回避とか障壁でダメージを受けないことを重視したものだったけど。うん当たったら即死が当たり前だもんね。

 

「いえアリアちゃんが攻撃してきた場合こっちが消し飛ぶので、結果的にそういうカリキュラムに」

 

「練習したかったな」

 

「シャトーを消し飛ばすおつもりで?」

 

 家が無くなっちゃうのはさすがに嫌だよ。ママも怒るじゃ済まない。

 

 調査に来たはいいものの、やっぱり都合よくノイズが湧いて来るわけもないので暇を潰しながら待った。たい焼き食べたり、クレープ食べたり、ケバブ食べたり、トルコアイス食べたり。私食べてばっかだな。

 

 手元にあるホットクで最後にしとこ。

 

「来ますね」

 

 ファラがそう呟くとサイレンが鳴り響いた。ノイズの発生を知らせる警報。通常ここでシェルターへと避難をする必要がある。

 

 ただ私たちは例外とする。

 

「ステルスをお願い」

 

 人の視線が触れないような場所まで身を潜め、風で姿を覆い隠す。風のベールで覆われた場所は透過し人の目を欺き、気配も遮断してくれる。ここまでの移動中もこれでカモフラージュして来た。

 

 ノイズを倒さず、ノイズに人を殺させない方針で探索していく。もし操る輩がいた場合は容赦無く意識を奪おう。大丈夫だよ大丈夫、ちょっと岩で小突くだけ。

 

 これもママから聞いた話だけど、ノイズを退治する人たちが居るらしい。ついでに見ておきたいから犯人が見つからなくても待機しておこう。話を聞くにファウストローブの様な装備で戦うらしい。確かシンフォギアだったかな。

 

「うーんとは言え目標が居ないなぁ」

 

「何か意味を持って攻撃をしている様には見えません」

 

「じゃあ空振り?」

 

 益々分からなくなってくる、なんで無闇にノイズを使ってるんだろ。何かの実験なのか、誰かを釣っているのか。後者だったら私は見事に釣られちゃってるんだけど。

 

 襲われそうな人も居なさそうだし、今回は何も無いってことで帰ろうかな。この頻度だとまた立ち会う機会もあると思うし。

 

「わざわざ駆り出してごめんねファラ」

 

「いえ、ですがまだ終わりそうもありませんね」

 

 ファラの睨む先には数体のノイズがトコトコ走っていた。見た目の愛らしさとは裏腹な凶悪で全然可愛くない。

 

「あれ?」

 

 更に視線をそのノイズの先へと走らせると、身に覚えのあるシルエットが、身に覚えのある義手をしてる女の子が。

 

 はい、誤魔化し切れません間違いなくアリサです。

 

「の、呪われてるのアリサ!?」

 

 ノイズなんて普通に暮らしてばそう頻繁に会うことも無い。だけど我が親友は例外だったらしい。最早庇いきれないほどノイズと縁があるみたい。

 

「あぁもう! なんで嫌な方向にばっかりィ! そして現実は非常とばかりに有効打が見事な射程圏外!?」

 

 保険を掛けておいたのは間違いじゃなかった。これは完全に遠隔からでも発動出来る。だけど使う気なんてこれっぽっちもなかったのに!

 

「ごめんねアリサ! ちょっと義手の制御を借りるから!」

 

 錬金術師が作る義手がただの義手で済むわけないよね。私もそう思う。使う機会なんて一生来なくて良かったのに!

 

「制御術式、焼却術式、冷却装置、プログラム起動」

 

 方位角固定、アンカーを射出、魔力注入。掌を対象へと広げると白熱した炉心を覗かせる。放たれるのはただ魔力を帯びた火炎にあらず、この炎は概念を保有する。

 

 炎とは始まりにして終わりの象徴。

 時に人類に繁栄を齎し、時に終焉の呼び水となるもの。今回用いるのは後者の破壊特化の炎。ノイズ程度なら掃討するのもわけない。

 

「問題はただ一つ!」

 

 致命的と言うか、初回限定版デメリットと言うかね。

 

「アリサになんて説明すればいいのか、全く分かんないよォ!!」

 

 私の泣き声は風のベールで遮音されるし、放たれたイミテーション・レーヴァテインは綺麗にノイズを炭に還した。位相差障壁も燃やして侵食すれば問題ないってママが言ってた。

 

「シラを切ろう!!」

 

「無理では?」

 

「無慈悲だぁ」

 

 自分で撒いた種ではあるけど。本当に使う気ゼロの機能だったのよ。見た目がちょっと派手でも殺傷性はノイズ以外だと格段に下がる仕様だし。普段の生活では無用の長物と化す予定だった。

 

「ノイズ被害の多い地域にノイズ被災者がノコノコ行くって、訳わかんないィ!!」




Q.前半で絶対になんて事の無い日常をおくらせる意味あるんですか?
A.なんとなくで入れてる。要らないなら避ける。

Q.あの腕は何?
A.アイアンマンとかジェノスとか色々混ざった。だけどこれ日常生活用なのよね(困惑)

Q.イミテーション・レーヴァテインって何?
A.イミテーション・レーヴァテインって何だろうね?

アリアちゃん:
最近いっぱい食べるようになり健啖家ロリへと進化した。時を経て更に魔力が高まってしまい、キャロルママはパラガスになったと言う。義手のプログラムを担当した。使う機会はなくても一応自衛機能を付けた。

ファラさん:
一歩後ろからアリアちゃんを見守るお姉さんになった。手伝って欲しいと言えば内容次第で応じてくれる。個人的に性格が一番掴めない。

アリサちゃん:
最近不可解な行動が多く、アリアちゃんも訝しんでいる。義手が急にガシャンガシャンピカ〜ジュワーみたいになってビビった。絶対にアリアちゃんの仕業だと思った。ついでにアイディアロールに成功したので義手の製作者がオカルト的な技能を習得してることが理解出来ていいでしょう。勿論SANチェックです。
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