キャロルちゃんをママと呼ぶ話が書きたかっただけ 作:小指のファウストローブ
でもアリアを矢面に出す為には必須な存在だから。主人公はアリアちゃんとキャロルママだからね。
至って私は平静。
ママにため息を吐かれようと、親友に懐疑的な視線を向けられようと私は平静なのだ。それにしてもアリサの視線が痛い。時折義手をグーパーと動かしている所からして義手に何かあるのはバッチリ見ちゃってたんだろうね。
まぁアレやって気にせずの方が心配になるけどね。明らかに変形してたから。
だから直ぐにでも問い詰められると思っていたんだけど。
「何故か距離を取られてるような」
「ケンカでもしたのアリアちゃん」
「ケンカ、じゃないと思う」
「何か煮え切らない感じだね。どうせアリアちゃんがなんかしたんでしょ?」
いやそうだけど、そりゃ無いよセッちゃん。いやそうなんだけど!
さっさと謝っちゃえと背中を押すセッちゃんに困窮する。本当にケンカではないんだよ。ただ裏世界に親友を巻き込まんとしただけなんだよぉ。
「あ、藤咲さん来た。私はおじゃまだろうからはけるね!」
「ちょ、待ってってば!」
こんなところでそんな気遣いは要らないよ。
抵抗虚しくセッちゃんは借りていただろう本を持って教室から出ていってしまった。学校図書館に行っちゃったみたい。
「アリア話があるのだけれど」
「ぁ、うんどうしたの?」
私は切り替えが早い女と自己暗示を掛けながら笑顔で応対する。冷静さを取り戻せアリア。大丈夫だよママに折檻されるより圧倒的に緩い緊張感だって。
「義手の事で話があるのよ」
「故障かな? メンテナンスが必要なら直ぐにでも良いよ! レクリエーションルーム行こっか?」
「いえ故障ではなくて、いえ故障なのかもしれないのだけれど。実は義手が火を吹いたの」
「あ、あはは、それは大変だね。排熱に不備があるのかも……」
ド直球!?
何でそんなに冷静なのアリサ。特別な訓練でも受けてるの。怖いほど真顔で聞いてくるじゃん!
「そんな感じでも無くて、なんて言うかこの義手に備わった機能という感じで」
「それは、危ないね。ちょっとママに頼んでそんな危険な機能を省いたモデルに替えよう」
「いえ、私はこれでいいわ」
なんか流れがおかしな方向に向かってる気がする。なんで義手で手刀の素振りしてるのアリサ。
「でもとても小学生が持っていいものじゃ」
「学校からは許可を下ろさせるわ。それに大義名分なんて幾らでも後からから付け加える事が可能よ」
怖っ、何処にそんな物騒な思考を持つ小学生が居るのさ。あと許可を下ろさせるって言った? どしてそんな強気なの。
「そんなことより」
お願いだからそんなことで済まさないで!
「この義手の製作者に会わせて欲しいの」
目の前に片割れがいるんだよね。
「どうして会いたいのかな? クレームなら私に預けて貰えば」
「この義手の使用法を知りたいから」
これは日常で使う動作のこと、じゃないんだよね恐らく。これは予想外だ。いや本当にどうしてそんな事を?
腑に落ちないと顔に出ていたのかアリサは私に耳打ちする。手でカバーを作って音を漏らさないように工夫して。
「義手の火でノイズを倒せたの」
ピクリと耳が跳ねてしまった。
「その様子だと知っているようね。ノイズに対して現存する兵器では有効打にならないのを。おかしな話よねじゃあなんで義手の火は有効だったのか」
位相差障壁は現世に存在する比率を調節することでインパクト時に比率を下げてダメージを軽減する。けれど決して当たっていない訳ではない。確かにノイズは現世に存在していて、星の法則に縛られている。
イミテーション・レーヴァテインは当たっている少ないダメージを最大化するための毒だ。触れた傍から侵蝕し、燃やし尽くすまで消えない。要は当たれば勝ちみたいなコンセプト。
でもアリサにそんな説明は出来ないししちゃいけない。
「作成法までは聞くつもりはないの。ただ使用法を教えてくれればそれでいいから」
「もう使う機会なんてないかも。と言うか避けてよ」
「使うわ、絶対」
燻る瞳が私を射貫く。
「ノイズに対抗出来る手段なの」
「アリサ……」
真っ直ぐな琥珀色をした瞳に私の顔が反射して見えるくらい顔が近くある。お願いと小さく呟かれてこしょばゆい。
「ここ教室だよ? 皆に見られちゃうし、聞かれちゃうよ。何時までも内緒話じゃ不審だし」
事実何人かのクラスメイトからの視線が熱い。
アリサも周りを見て放課後改めて話をすると言ってから予鈴がなった。
「どうだった?」
「スゴかった……」
「何があったの!?」
何はともあれ放課後まで時間を稼げた。後はどうやって穏便にアリサを説得するか考えるだけだね。
◇◆◇
なんにも思い浮かばなかったよ。
あの目を見た限り危険だから止めようって説得しても聞かなそう。試みるつもりはあるけど。
「ねぇアリサは、ノイズと戦うつもりなの?」
「そうね」
「危険だよ、次は片腕じゃ済まないかも。死んじゃうかも!」
「でもこの義手なら戦える。この義手だから戦えるの」
あげちゃダメな人間に義手あげちゃった感じだね。覚悟キマってる目してるよアリサ。これがSAMURAI?
「お願い! 頼めるのは貴女だけなの」
「うっ」
さっきから近いよ。アリサの方が背が高いんだから圧迫感がある。後退りしても電柱があるから下がれないし。
手は握ってくるし、壁には追いやられるし、近いし、圧がすごいし、いつものアリサじゃないみたい。オマケにサイレンまで聞こえてくるし!
「ってサイレン!?」
「ノイズ!」
「アリサ!? どこ行くの?」
サイレンが鳴った途端走り出しちゃった。どこに行く気なのか何となく分かるけど、大分向こう見ずが過ぎるんだけど。
「待って待って! それはダメだよ!」
義手はアリサの意思で起動する訳じゃない、私にしかプログラムのアクセス権は用意されてないんだよ。だから今一人で突っ込んでも無駄死になの。
脚は私の方が速い。だからジリジリ距離は詰める。もう嫌な汗が止まんないよぉ。
「マジでノイズ居るじゃん!」
偶然か必然か分からないけどノイズの群れがゾロゾロいる。ノイズ災害が多発してるのはここより遠いのにどうしてこんな忙しい時にやってくるのさ。
「ノイズは時間経過で自壊するはずだよ。逃げようよアリサ!」
「私が引きつけるから。アリアは近隣の未避難者がいないか探して」
マジかアリサ。やる気なの? 本当に?
もしかしてこの前の時も囮役をやってたとか、いやでもイミテーション・レーヴァテインの事はそれ以前に知られていない筈。わけわからないよぉ!
「取り敢えず逃げるよ!」
急いでアリサの手を掴んで後ろ向け後ろ。引き摺ってでも帰るからね。拒否は認めない。
「どうやらそうも行かないみたいね」
「囲まれちゃったじゃん」
後ろ向いてもノイズがいる。前向いてもノイズがいる。逃げ場無し。終わり。今ココ。
「絶対こんなの可笑しいよ!」
おのれノイズの司令塔。と言うかもしかしてアリサが狙い撃ちされてるのかな?
「やっぱり義手を使うしかないわ。アリア教えて、貴女でしょこの機能を付けたのは」
「うぇ!?」
何故バレたし……私の隠蔽は完璧、とは言えないかもしれないけど素人に分かるはずないのに。
「今悩んでる暇は無いし、拒否権もないか」
「今更と言われるかもしれないけれど、ごめんなさい。どうしてもこの力が、貴女の力が必要なの」
「許さないよ。危険な事ばっかり率先してしようとするんだから」
「ごめんなさい」
「ダメですぅ。絶対に許さないんだからね!」
術式を隆起させてプログラムを起動する。アンカーが射出されて、火が点る。
「私からの操作は必要ないの?」
「私の操作しか受け付けないように設定してるから」
義手に手を這わせ、アリサの手を握り込む。前回で魔力を使っちゃってるからね補充が必要なんだ。アリサの魔力を使っちゃうと体調を崩しかねない。
「貴女が何者なのか聞くつもりはないの。きっと聞かない方がいいんでしょう?」
何から何まで今更だよアリサ。ここまで見られたら言っても言わなくても答えが出ているものなのに。本当に意地悪なんだぁ。
「もういいよ教えてあげる。でも内緒だよ?」
対象をノイズに絞って私たちに当たらないように演算する。火が吹き出し始めると掌の砲塔が開放され白熱する。
「アリアは錬金術師なんだ」
放出された火炎は私たちを避けて拡散し、辺りのノイズを次々焼き切る。掠っただけで消え去るノイズが攻撃する体勢にも入れずに塵へと還った。
残ったのは炭だけになった。
実は一部風景を全てママに観測されてたという事実。アリサちゃんが錬金術師を喧伝するようなら容赦はされないだろう。
アリアちゃん:
自業自得だけど強引な手で錬金術師だと暴かれた。アリサちゃんが危険な事を進んで行う事には憤りを感じているもののアリサちゃんの意志の硬さが滲み出ていた故に無理やり止められない。切っ掛けはあの事件だと察している上で自分の責任だと思っているから余計に。
アリサちゃん:
何か身体スキャンを義手ごとしたらと唆された。誰にとは言わない。
キャロルちゃん:
キレてる。誰にとは言わないけど!
近々赤いやつが出てくるかも、その時赤くないけど。