キャロルちゃんをママと呼ぶ話が書きたかっただけ 作:小指のファウストローブ
あとアリアちゃんが本格的に話し出します。賢いので。
あとチートの要素が少し出ます。
アリアが熱を出した。脈も早く、額から汗がじんわりと滲んでいる。意識も何処か虚ろでいつもオレを見ては笑顔だった顔も苦痛に歪んでいた。
咳や鼻水は出ていなかった。兎に角意識がぼんやりしているらしく会話のキャッチボールが上手くいっていない。どちらにしても人間が耐えうる体温を超えれば細胞が破壊され命に関わる。
「クソ、まさか錬金術を看病に使う時が来るなんてな」
太い血管がある場所を氷で冷やし、脱水を防ぐため水分を摂らせる。焦って解熱剤を使うのはタブーだ。早急に根源を抑える必要がある。
これは風邪ではないのは分かってる。問題は解決法が極めて困難という事。
「凄まじい魔力の波動だ」
現在アリアは自分自身の魔力に蝕まれている。生命力が根源とされる魔力にその生命を侵されるとは流石に予想出来なかった。
魔力の結晶体を1日に2回吐き出して調整されていたアリアの魔力。これが最近になってまた跳ね上がった。それが原因で結晶体の排出が間に合わなかったんだろう。
迂闊だった。結晶体の精製は濃度の高い魔力が起こす自然現象とばかり思っていたが、実際は手に余る魔力を排出する防衛反応だったなんて。
「シャトーの全域の大気にまで魔力反応が……」
猶予が迫ってきている。魔力を吸い出す道具もカートリッジ全て使い切った。おかげで当分は魔力に困らない生活だ。
かくなる上はオレがアリアの魔力を制御するしかない。錬金術を学んでない子供が魔力を制御しきれず暴走している、ならば外部的でも御しきれば正常に戻るはずだ。
だが制御できるか、この魔力。
下手を打てば街一つが軽く吹っ飛びクレーターだけが残るぞ。
下手を打てば?
失敗するというのか?このオレが?
巫山戯るな!
「オレの錬金術を舐めるなァーー!!!!」
溢れる魔力の鎮静化。高まる魔力の正常化。それに伴う熱を冷却。それでも抑制出来ない余剰魔力は直接オレを介してリソースとして変換。アリアの魔力が尽きないなら実質永久機関だ、要らないわオレが過剰に酷使される永久機関なんて!
「ッ! ダウルダブラ!!」
ファウストローブを纏い錬金術に補正を入れる。本来このような使用はしないが既にそう言える範疇を超えた。こちらもなりふり構っていられない。
一際明るい光が照らした時。
先程まで渦巻いていた魔力は消え失せた。
「解析。脈拍、体温、免疫共に正常。魔力は依然として凄まじいが安定を確認。成功、した……な」
流石に精神をすり減らし過ぎた。意識が持たない。
目を覚ました頃には何ともなかったかのように走り回っていた。仮にも発熱で寝込んでいたと言うのに、元気なのは結構だが気を張っていた分がドっと気が抜ける。
「ママ起きたぁ? お寝坊さん?」
「ああそうだな。お寝坊さんだ」
悪びれろなんて言う気は無いが、もう少し自覚を持って欲しい。あわや大惨事という所をオレが助けたんだぞ。原因はお前だ。
十中八九記憶が無いんだろうが……
「アリア、お前文字は覚えたな?」
「覚えたよー! レイアも褒めてくれたの。派手に頭が良いって!」
「そうか」
となるとそろそろ本格的に錬金術について教える必要があるな。そう何度も暴走されてちゃ此方も敵わん。最低限自分の魔力を扱えて貰わないと歩く時限爆弾を住まわせてるようなものだ。
「前にお前の特異性について教えてやろう」
「ギュッとするとピカピカするこれでしょ?」
拳に魔力を集中させて見せてくる。身近に魔力を感じていた分魔力の扱いもそこそこ出来る。まぁそれが油断に繋がった一因なわけだが。
「今日からそれの運用を本格的に学んでもらう」
「お勉強?」
「嫌か?」
「ううん、ママが教えてくれるんでしょう?」
「オレしか居ないからな」
「じゃあアリアやるぅ!」
何が嬉しいのかニコニコと跳ね回っている。本当にさっきまで熱に魘されていたのか?
この時分は全てが新鮮で全てが楽しいんだろう。いつかの為に
いい加減止めないと教本に穴があきそうだ。
「まずは魔力の運用の基礎を固めていくぞ」
本当は知識から学ばせたかったが、アリアの場合はこっちの方が急務だからな。冶金や薬の調合、解析、分解、再構成は追々詰めていく。術式の構成は一朝一夕じゃ身につかないからな気長にやっていこう。
◇◆◇
思わず頭を抱えた。
魔力の運用については直ぐに解決した。アリアに施した術式の所有権を本人に移し、意識的に魔力の生産量を調節すれば問題は発生しなかったから。それでも溜まる魔力は今まで通り、されど自分の意思で結晶化させる事でリスクを減衰出来る。実質暴走の可能性はゼロだ。
ただ常に術式を回す分無意識下でも機能させなければならない。しかしアリアは天才肌だからな、既に何となくでできるらしい。いや錬金術たるものもっと理論的に実行して欲しいが。
何処かの無邪気な太陽のせいで最近は魔力には困っていない。記憶を焼却しなくていいのは将来的にも大変ありがたい話だが、有り余るというのもいいものではなかった。
溜まるからな物理的に。
「結晶体の保管場所を考える必要があるな」
意識的に結晶体を作れるようになってからその生産量は倍々になった。今までは研究やらシャトー建設のリソースにして来たがいよいよ持って消費が間に合わなくなってきた。
獅子機の改良にでも使うか?
結晶体の運用について悩んでいるさなか違うフロアからけたたましい轟音が鳴り響いた。すわ侵入者かと見てみれば。
「誰だ
アリアが盛大に教えた事も無い錬金術を使っていた。オレも使う
「教えて欲しいと言われましたので……」
「もっと派手に錬金術を扱いたいと……」
「ガリィちゃんこうなるとは思わなかったんですぅ。ぴえん」
「アリアとたくさん遊んだんだゾッ!!」
色々段階を踏み越えた術式の行使。丈夫な部屋で大事にならなかったから良かったものの、駆けつけた時には心臓が飛び出ると思った。つい最近まで術式の解読に四苦八苦してた子供が高度な術式をガンガン回してるんだからな。
オートスコアラーたちが各属性の術を行使出来るとはいえ、流石に子供に教える所まで理解が深いわけじゃない。まさか展開した術式から解読を?
フラッシュバルブ記憶でもしてるのか?
「ごめんなさい。ママが喜ぶと思って……」
「オレが?」
「錬金術を教えてくれる時のママが楽しそうだったから。アリアがもっと上手くなったらもっと喜んでくれると思って」
「──」
嗚呼、ダメだ。これは強く叱れない。
頬を1発くらいひっぱたいてやるつもりだった。だがこれは、そんな気も萎む。喉元まで出てた詰問を溜息に変えて吐き出す。振り上げていた手は所在なさげに彷徨う。
彷徨った手は最終的に銀糸の髪を梳く。
「見事な錬金術だった。……よくやった」
「ママッ」
「ただ! 次からオレに確認を取れ。オレの前以外での錬金術の使用も控えろ。いいな?」
「うん分かった! アリアちゃんがんばりまっす!」
「ガリィの真似はやめろ。性根が腐るぞ?」
「ひっど!?」
撫でていた手をアリアの頬へ誘導される。まるで猫みたいだな。オレの手に頬擦りしてくる。
「あとお前たちもアリアを甘やかすな」
「甘やかすのは派手にマスターでは?」
「そんなわけがないだろ!」
食事、おやつ、睡眠以外は基本勉強だぞ。本人が望んでやっているとはいえ子供はもっと外で遊び回るものだろう。シャトーから外になんて滅多に出せていないし。
やはりもっとメリハリというか、アメとムチというか。何か出来たり達成した時に褒美をとらせるべきか。今回もある意味その手の齟齬の結果だったのかもしれないしな。
「重症ですわ」
「こういうのは泳がしてた方が面白いんですって。言わないでおきましょう」
「性根が腐ってる……」
裏でオートスコアラーたちがアリアちゃんに構い倒していたよって話でした。
まだ2話だけどやっぱりキャラがなぁムズいよなぁ。ファラとレイアがアリアに対してキャロルと同じ口調なのかが特にわからん。
あとアリアちゃんの見た目銀髪赤目の幼女です。ある意味キャロルとは真逆の見た目なんかなぁ……
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