キャロルちゃんをママと呼ぶ話が書きたかっただけ   作:小指のファウストローブ

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ちょっと悩む所が出てきたんでアンケートでも取ろうかと思ってます。

あとやっぱり独白させるとそのキャラっぽさが抜ける気がしますね。でも無理にキャラ寄せするとくさくなっちゃうのよね。


キャロルちゃん外出してみる

「アリア外に出てみたい」

 

 突然そう言い出しオレの服の端を逃がさないと言わんばかりに掴んでくる。捲れ上がる前に手で押し留めるもアリアは引かなかった。とりあえず話くらい聞こうと先を促してみる。

 

「ガリィがね外には人がたくさんいるって言ってた」

 

「余計な事またアイツは……」

 

 何かとあることないことを吹き込んでいるらしい性根の腐った自動人形はあとで殴ってやると心に留める。

 

「綺麗なもの、美味しいもの、初めて見るものが溢れてるって教えてくれたよ。気になるの!」

 

 アリアの好奇心を刺激して嗾けて来たか、厄介だな。真っ向から駄目だと否定するのは簡単だがそれをすればアリアは目に見えて落ち込む。だのに本人は明るく振舞おうとする。

 

 それは困る。想像しただけで心がザワつく。なんてはた迷惑な奴だ。

 

「どのようなものでも代償が必要だ。外には危険も多い。必要なものは用意するから外出は諦めろ」

 

「たっくさん頑張ったよ」

 

 指を折りながら頑張った事を数えていく。そして最後にハッと思い出したようにオレに抱きついてくる。

 

「ママと居れば危険じゃないでしょ! だってママはスゴい錬金術師なんだから!」

 

「オレを勝手に引き合いに出すな!」

 

「あぅ」

 

 小突かれた額を擦りながらそれでも何とかして貰いたいらしい。全くしょうがない。

 

「だがオレが一流の錬金術師なのは事実だ。決してオレから離れるなよ?」

 

「いいの!」

 

 ありがとうと勢い余って飛び込んで来るアリアを受け止めながら覗き見てるガリィを鉄塊で狙撃する。笑っている中隠れるも何もないぞバカめ。

 

「だが出掛ける前に服を拵える必要があるな」

 

 最近針仕事のスキルが衰えるどころか上がってる気がするのは気のせいか?

 

 

◇◆◇

 

 

 服を作る度に採寸しなければならないのが悩みどころだな。だが子供服を買いに行った時の視線が不愉快でならなかったのに比べればどうということはないが。

 

 いや子供連れが多かった所に1人で行ってのが悪かったのか?

 

「それで、なんでお前たちまで一緒に来てる?」

 

 オートスコアラー4機全員がアリアの周囲を固めていた。いや敵陣地か此処は。護衛だとしたら明らかに過剰だぞ。

 

「腕を換装して貰ったゾ!」

 

「手が握れるねミカ!」

 

「抱っこもできるゾー」

 

 わーきゃーはしゃぎ回ってる1人と1機はこの際放っておくとしてだ。

 

「なんでこうなったのか一から全部説明してもらおうか?」

 

「アリアちゃんが一緒に行きたいと……」

 

「派手に押し切られました」

 

 同じかぁ。

 

「じゃあちゃっちゃと行きましょうよマスター」

 

「なんだそれは?」

 

「嫌ですよマスター、観光マップくらい用意しなきゃ。まぁわたしも適当に取ってきたんですけど」

 

 こ、この人形より狡猾になってる。明らかに今回アリアを唆したのはガリィのはずだ。だがオートスコアラーたちを引っ張って来たのはガリィの仕業じゃない。アリア自身の選択だ。

 

「はぁ、それでアリアはどこに行きたいんだ?」

 

「うーん、ん? あれ何?」

 

 指さす方向には観覧車があった。ガリィの持つマップをぶんどればそこには遊園地とある。

 

「遊園地?」

 

「行ってみるか?」

 

 鼻息荒く頷くアリアの手を引き遊園地を目指す。観覧車に向かって進めばやがてエントランスが見えてくる。受付も入口のすぐ脇に設置されている。

 

 大人、小人で料金が違っていてその他にも年寄りや学生でも割引が効くらしい。

 

「大人3人、小人3人ですね。学生の方は居られますか?」

 

 ん?

 

「大人は4人だが?」

 

「えっと……」

 

 大人はオレ、ファラ、レイア、ガリィの4人のはず。

 

「子供扱いされてますよマスター」

 

 は?

 

「ッ!? 大人4人ですねハイ!」

 

 慌ただしくチケットを発行する受付に金を渡して入場する。知りもしないが恐らく流行り曲をBGMとして流しているようで入場早々騒がしい。

 

「そんなちんまい姿で大人は無理があるでしょうに」

 

「それでも小人料金を払うのは違うだろうが」

 

「変な所で律儀ですねマスター」

 

 気を取り直して園内マップを広げる。

 

「ジェットコースターは派手でいいな」

 

「アリアちゃんの身長が引っかかる気がしますわ」

 

「ティーカップってなんダ?」

 

「くるくる回ってるぅ。アレ乗ろ!」

 

「こら勝手走って行くんじゃない!」

 

 全員で乗るには流石に小さいティーカップを考慮してオレ、アリア、ミカとファラ、レイア、ガリィの2組で乗った。中心の円盤を回すのか。

 

「たくさん回すゾッ!」

 

「ちょ、ま! うわぁ!!」

 

 次の瞬間視界がぶれる。

 

 ミカはオートスコアラーの中でも戦闘に特化した人形。ただでさえ膂力が人外の域にあるオートスコアラーたちの更に戦闘特化型。如何に腕をアリアと触れ合いの為にグレードダウンしたとしてもその全開出力から繰り出される力は強力無比。

 

「ぐぅ」

 

 全く腕が動かない。掛かる遠心力が強すぎる。終了のアナウンスが流れるまでこの地獄は続いた。

 

「酷い目にあった。アリアは」

 

「楽しかったねミカ!」

 

「なん、だと?」

 

 ノーダメージ!?

 

「大丈夫ですかマスター?」

 

「大丈夫なものかよ。1番目のアトラクションからグロッキーだ。先が思いやられる」

 

 最近こんな目に合うことが多くなった気が……気のせいか? 気のせいであってくれ。

 

 未だ目の回っているオレを差し置いてアリアたちは次に乗るアトラクションを探している。いやなんでアリアはアレを受けて無事なんだ。オレが特別ひ弱なのか?

 

「次はメリーゴーランド!」

 

「オレはその間休む。行ってこい」

 

 口先を尖らせて一緒にとせがまれたがファラが行きましょうと先を促せば渋々といった様子で向かって行った。

 

 軽快な音楽と共にメリーゴーランドは回り出す。

 白馬に跨るアリアは傍にあったベンチに座るオレを視認すると手を振ってきた。いやガリィたちまで手を振るのは止めろ。変な目立ち方するだろ。

 

 そう思いつつもオレも手を振り返した。思い做しかアリアの振る手も力強くなった気がする。

 

 休憩という事になっているが思いのほかメリーゴーランドの稼働時間が短くて全快には至ってない。言い換えればそれ程までにミカとのティーカップはハードだった。

 

 少し待ったがアリアたちは戻って来ていない。出口付近でスタッフと話してる、と言うか質問してるようだ。やがて満足したように帰ってくる。

 特にレイアが。

 

「次はジェットコースターだよママ!」

 

「身長の制限があったのではないか?」

 

「地味に基準をクリアしてるそうです」

 

 悲鳴をあがる方向を見てゾッとする。安全なんだろうなと。自分で飛んだ方が良いだろ、と。

 そんなオレにガリィは楽しそうにこう語り掛けてくる。

 

「怖いんですかぁマスター?」

 

「あ゛、そんなわけないだろ。見くびるな!」

 

 気付けばジェットコースターに乗っていた。目の前の安全バーを下げてから一瞬後悔したがすでに遅い。ロケット型の機体は徐々に高所へ迫り上がり、遂に頂まで届いた。

 

「ところでなんで隣がよりにもよってお前なんだガリィ!」

 

「そんなの決まってるじゃないですか。隣の方がよく見えるからです」

 

「この、覚えてろよォ──」

 

 肝心な所は他の客の声で掻き消された。

 

 急上昇、急降下、急旋回。目まぐるしく景色は変化し、内蔵が浮いたり落ちたりする感覚がする。無意識に安全バーを強く握り、ふと前に座るアリアを覗き見たが。

 

「たっのしぃーーー!」

 

 両腕を上げて顔は見えないが恐らく満面の笑みだろう。無敵か?

 

 この後他のジェットコースターやバイキングと呼ばれる船型の巨大ブランコに乗った。フリーフォールは記憶に無い。もっと身長制限の基準を引き上げろ。

 

 トリを飾ったのは一番最初に目に付いた観覧車だった。

 空もすっかり日が落ち闇色にポカンと月が乗っていた。窓から下を覗き込むと少しずつ出口に向かう人の波が形成されている。そろそろ閉園時間か。

 

「満足したか?」

 

「うん」

 

 元気よく頷く様子に笑みがこぼれる。割と散々な目にはあったがそれでもアリアが楽しかったのならばその甲斐もあったというもの。

 

「ママは?」

 

「オレか?」

 

 言葉に困った。

 自分でもよく分からなかったからだ。素直に楽しかったのかそうでないのか、いまいちピンとは来ない。しかし嫌ではなかった。

 だからこう返そう。

 

「楽しかったさ。たまには悪くない、こういうのも」

 

「えへへ、良かったぁ」

 

 こんな事は2人きりでしか言えなかったろうな。

 ジェットコースターとは違いゆっくり変わっていく景色を横目に密かに観覧車に感謝した。

 

 手頃な距離だったからかアリアの頬に手を伸ばす。相変わらずこの娘の肌は温かった。




遊園地に行ってみたってお話でした。
結果的にエネルギー問題が問題ではなくなってミカも普段から動き回ってるというね。思い出は魔力へと変換して使うのだし問題ないよねたぶん。

感想評価随時募集してます。

アリアの年齢を決めたいの会

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