キャロルちゃんをママと呼ぶ話が書きたかっただけ   作:小指のファウストローブ

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多忙を極めていた私の私生活。
マスターしたり、トレーナーしたりしてたらもっと忙しくなった。
何故この時期にウマ娘なんて始めちまったんだ私!

結果、うまびょいしてました!


キャロルちゃん授業参観に行く

 授業参観のご案内。

 アリアの通う学校からのプリント。内容も授業参観という児童たちの普段の授業風景を保護者に見せるイベントの知らせで、日時や場所も記載されている。

 

 こう言ったイベントがあるのは知っていた。だからオレの手元にプリントが来ることは理解できる。

 

 ただ──

 

「何故ミカがオレに渡してくる?」

 

  ──問題はアリアが渡してこなかった訳だ。

 

「勉強机の引き出しに入ってたゾッ」

 

「せめてクリアファイルに入れっぱなしの方がマシだったな」

 

 つまり意図的にプリントを隠したことになる。後で渡す予定だったと言われても置いていた場所が引き出しでは説得力がない。せめてもっと目につく場所に置くはずだろう。

 

 それにアリアはその都度の提出を怠らない、そう教えてきた。

 

「どうせまたぞろ回さなくてもいい気を回しているんだろう」

 

 何時もの要らぬ気遣いに頭を悩ませながらもデスクに置いてあるペンを抜き、児童氏名と出席番号に保護者氏名を記入し参加するを丸で囲む。切り取り線に沿ってプリントを割く。

 

 これであとはアリアを通して担当教諭に提出するだけだ。提出期限もまだ大丈夫、か。

 

「さて」

 

 別に隠されていた事を気にしてるわけじゃない、しかし此処で指摘せず放っておくのは保護者としてよろしくないのだ。それに理由を聞いてみないことには叱るも何も無い。オレはアリアに対して無意味に理不尽を強いる気はない。

 

 部屋で課題を消化しているアリアに用紙を押し付け視線で理由を問い質す。当初困惑するも渡されたものを確認して唖然として、急いで机の引き出しを確認する。本当に引き出しだったのか……

 

 軈て観念したアリアは訥々と話すのだが、オレとしても驚愕だった。いや納得が出来る内容ではあったが。

 

 ママの見た目はママらしくない、ときた。

 

 自分の身体を見てみる。凡そ一児の、と言うか最早大人の女性としての外見はしてない。どんなに穿った見方をしても親子関係だとは思うまい。

 

「アリアはオレのこの外見は好きじゃないか?」

 

「好きだけど、ママが奇異な視線に晒されるのは好きじゃないかな」

 

「……なるほど」

 

 好き、か。

 

 

 この後肉体を成長させる錬金術がある事を教え、無駄な気を回したアリアの額を指でピンと跳ねておいた。子供が気を使う必要はないと何度教えれば学習するのか。

 

 いやまず気を使うことを誰から学習したのかが謎だ。オートスコアラーたちでは絶対無い、それだけは分かるが。もしかしてオレか?

 

 

◇◆◇

 

 

 いつもの身体とは違うという違和感を払拭出来ないまま、オレは悪目立ちしない程度の化粧と服装に着替えた。こちらから授業参観に行くと言った手前アリアの懸念を打ち消してやる必要がある。

 

 容姿は大人らしい姿に、服装は硬すぎず楽すぎないものを、無論仮に保護者間の会話があっても問題ないように一人称を私に変える。バックボーンも無理のある内容がないか洗い直した。

 

 何も問題ないはずだ。

 

 先に家を出たアリアも学校でね、と笑顔で登校して行った。大丈夫だオレの計画に穴はない。

 

 さして遠くない道のりをゆっくり進んでいく。

 

 何気にアリアの学校生活には興味があった。毎日楽しそうに友人が面白い子だとか、勉強は退屈だとか聞かされては居たものの、オレ自身が学校に通っていない為に想像しづらい。今回はイメージを固める良い機会でもあるということだ。

 

 ゆっくり歩んでいた気がしたが想定した時間より速く着いたらしく、時計台に示された時間は受付より少々早い。腕時計も確認したが結果は変わらない。

 

「少し早かったか?」

 

 遅れるよりずっといいと思い直し受付に向かう。

 受付にはオレと同じ様に早く着いた保護者が何人かいた。と言っても名簿にチェックを入れる程度の簡素な受付だった為か、既に済ませた者も居るらしい。

 

 昇降口を潜り、各々自分の児童の下駄箱空きスペースに靴を詰め、持参したスリッパに履き替える。一緒に入っていた紙は念入りにバラバラにしてゴミ箱に捨てるのを忘れず行う。

 

 上級生か、なるほど。

 

 

 授業は作文の発表、黒板には『私の尊敬する人』とテーマが書かれていた。アリアがそんなものを書いていた様には見えなかったが、手元にある原稿用紙からオレの居ぬ間に認めたことが分かる。

 

 生意気な顔でVサインをしてるから間違いない。

 

 友人、家族、有名人。

 テーマの答えは大体がこんな所、身近にある人物だと必然的にこの辺りに固まるのだろう。さてアリアの場合は誰だろうな。ガリィじゃなければこの際誰でもいいが。

 

「あの」

 

 アリアに番が回ってくるまで他の児童の発表を聞き流していたらすぐ横から小さい声が掛かった。当たり前だが同じ女性保護者だった。

 

「どうしました?」

 

 むず痒い思いをしながら返答すると女性がニコリと笑いアリアに視線をやった。

 

「あの銀髪の子のママさんですか?」

 

 頷いて肯定すると目の前の女性は嬉しそうにやっぱりと手を叩く仕草をとる。

 

「そうだと思いました。海外の方は貴女だけのようでしたから」

 

「えっと」

 

「あ、いきなりすみません。私は娘さんの前の席に座る子の母親で、娘からアリアちゃんのことを聞かされていたので、つい」

 

 確かアリアから出てくる登場人物によく前の席に座るセッちゃんなる人物が居たはずだ。何かと気に掛けてくれる友人と言っていた。

 

「私もアリアから話を聞いています。最初にできた友人だとか」

 

「あら、だからあの子ったら喜んでいたのね。最近はアリアちゃんアリアちゃんってそればかりなんです」

 

 アリア以外から学校での話を聞くとどこか安心した。あの子は上手くやっていけてるようだ。少なくとも最初の友人とはきちんとした関係を築けている。

 

 ただ女性から又聞きした範囲で組み立てられるアリアの人物像がやや変人気質なのは何故だろうな。おかげでオレの顔はやや熱い。コツコツ消しゴム彫刻を作成したり、習字の授業で余った時間を水墨画教室に変えたりと話題性に事欠かないのが原因なんだろうがな。

 

 頬に貯まる熱を手で扇いで散らしているとアリアに番が回ってきた。

 

「『私の尊敬する人』」

 

 凛とした玲瓏な声で題名が読まれ、思わずオレも背筋が伸びる。

 

「私の尊敬する人はママです」

 

 まず安堵した。そして緊張した背筋も弛緩する。

 

「ママはなんでもできます。料理も美味しい、裁縫も上手、お勉強を教えるのだって先生顔負けです」

 

 教壇からの視線が痛い。

 隣からの視線も生温い。

 

 居心地が悪いな此処は!

 

 内心こんな事は思いつつも表面には出さない。

 

 

 その後も褒めに褒めちぎられた、恥ずかしいやら嬉しいやら何とも心乱された文章を臆面も無く語られた。此奴本当に授業参観の紙を隠してた奴と同一人物か?

 

「私は私の知らない事をたくさん教えてくれるそんなママを尊敬しています」

 

 どっと疲れた身体を壁に寄り掛かりながら持ち堪える。内容は正直お粗末なものだった。最初から最後までオレがヨイショされてるだけだからな。

 

 しかしながら少なくともオレは、オレだけはA評価を送っといてやろう。

 

「アリアちゃんママは愛されてますね!」

 

 アリアちゃんママ!?

 

「あ、いえ、どうも?」

 

 どう反応するべきか戸惑いながら返事をする。いやなんだこの距離の詰め方は、だが嫌味の無い笑顔を前に何も言えん。

 

 オレが気圧されてる、だと!?

 

「なのにうちの子ったら尊敬する人にアリアちゃんって。妬いちゃいますよ全く」

 

 プンスカプンと擬音が見える怒り方に、もうオレは苦笑いしか返してやれない。きっとそういう人種なんだと納得しておく。初対面だよな……

 

 

 授業は滞り無く終わり、殆どの児童は保護者と帰ることになるようだ。それはうちも例外ではない。

 

「帰るぞアリア」

 

「うん! あ、でもアリサちゃんも一緒に帰っていい?」

 

「その子の保護者がいいならな」

 

 そうやって連れてきた子供はよく話に出てくる一人だろう琥珀色の少女だった。

 

「どうも藤咲です」

 

 簡素な挨拶に応えるように返し、周りを見回す。彼女の保護者らしい人間は見当たらなかった。

 

 それに気付いたのか藤咲はやや俯きがちに今日は来てないと小さく零した。なるほどアリアに絡まれるわけだ。

 

「今日も一緒に帰ろうアリサちゃん。ほらママも手、繋ご!」

 

 未だ生暖かい視線を寄越す保護者に挨拶してから帰路につく。最後までアリアちゃんママと言われ、むず痒さはここに来た時の比じゃなかった。

 

「宝条さ、アリアちゃんのお母さん。あんまりアリアちゃんと似てないわね」

 

「……そうかな?」

 

「落ち着きがある」

 

「心外かも!」

 

「こら手を繋いだ状態で暴れるな!」

 

 友人に対しても、学校での振る舞いも、どれもこれもオレの知るアリアで人知れず息を吐いた。たぶん安心したのだと思う。この子は何処に居ても自然体だ。きっとオレの居ない場所でも。




私の小学生時代の記憶を引っ張り出しながら書いてた。
スリッパ持ち込んでたなとか、授業内容が保護者向けみたいなものになってたりとか。割と保護者間の交流も少しあったかなみたいな。

以下、グッピーが死ぬ警報。

キャロルちゃん:
隠された授業参観のプリントを手に入れた他称ママ。今回で更に他称が極まった。行事ごとには可能な限り出てあげようとしてる。ただ見た目で転ける事になるとは思わなかった模様。
最近は無理を押し隠そうとするアリアちゃんが悩みの種。でもそういうのを無視して行動する所は貴女似だと気付けママ。

セッちゃんママ:
ゆるふわほんわか天然ママ。ママみが強い、抱擁力で全てを包み込み心の距離感をゼロにする埒外ママ。3割の確率でドジを起こし、周りを巻き込む台風でもある。セッちゃんの適応力はこのママ有りき。
最近の悩みは娘のセッちゃんからの扱いが雑な所。旦那さんに相談するも『そのままの君が好き』となんやかんやあってイチャつきだす。なおセッちゃんはこの際お口がセンブリ茶。

アリアちゃん:
机の奥に授業参観のプリントを隠すも、ガリィの策略にミカが乗せられ白日の元に晒される。見つかってしまった後は直ぐに切り替えて作文をキャロルちゃんが来る想定で書き直した。その数3枚半。
下校中にアリサちゃんに言われた一言で、一瞬目の奥が黒く澱んだ気がしたが気のせいだった。

アリサちゃん:
彼女の両親は授業参観には来なかった。プリントに目を通した筈だが両親は提出日までに彼女に参加届を渡さなかった。彼女は何も言わない。最初から察していたから。
お手伝いさんが代わりに参加しようとしていたが、彼女は業務の対象では無いからと断った。
けれど彼女は孤独では無い。新しい友人が出来たから、だから作文は友人に宛てようと思っていたけれど、途中まで書いて恥ずかしくなったのでボツになった。
彼女は期待してる。新しい友人が自分の片翼であればいいのにと。


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