キャロルちゃんをママと呼ぶ話が書きたかっただけ   作:小指のファウストローブ

9 / 13
前触れはあった。
だけど気付かないふりをした。
いずれ起こる悲劇だと思いたくない。夢や泡沫の類であればどんなに幸せだろうか。
そしていつも後悔する。

それが私のモーニングルーティーン。


アリアちゃん日常の音と非日常の音で耳がキーンってなる

 ママにあんな手やこんな手で懐柔を試みたけけど、結果は虚しいものとなった。糠に釘とかそういう次元じゃない。もう何も無い中空に釘を打ってる気分だった。取り付く島もないって感じかも。

 

 悲しむアリサちゃんにどうにか元気になって欲しくて粘ったけど、もう当日までYESを引き出せなかったからタイムアップだね。糠喜びさせないように何も言わなかったの結果的に功を奏しちゃった。

 

「ガリィにも色々手伝って貰ったのになぁ」

 

「ガリィ的にはぁ、免罪符有りでマスターをおちょくれたので満足ですよ」

 

「免罪符になってた?」

 

「なんだかんだでマスターも負い目があったりするんですよ」

 

 そんな素振りなかったと思うけど。

 まぁ私よりママとの付き合いが長いガリィが言うんならそうなのかも。いや本当にそんな感じはしなかったけど。

 

 ツヴァイウィングのライブ、行ってみたかったな。人気はうなぎ登りでチケットも手に入りにくいとかアリサちゃんも言っていたし。歌もダンスも演出も素晴らしいの一言に尽きるって絶賛されてたし。

 

 結局具体的なライブ禁止の経緯さえも教えてはくれなかった。ママにしては珍しい力技。何時もなら理由も含めて、納得させる為に説き伏せてくるし、代案やら妥協点を提示してくれるし促す。

 

 けれどそう言う流れもなくすっぱり。ツヴァイウィングだからって理由にもならないかも。

 

 考えられる否定理由はライブがテロリストに襲撃されるとか、凄惨な実験の会場だとか。でも騒ぎにならないはず無いし、荒唐無稽ってものだよね。

 

 あとはツヴァイウィングの2人が実は重要人物でママがしようとしていること、若しくは私に良くない影響を与えるって言うのが来る。でも後半はどんな悪影響を被るのか予想出来ない。前半はママがしようとしている事の仔細が不明だから何も分からない。

 

 結果、材料が足りないので解が出ない。

 

「ずっと近くに居たのに、アリア全然ママのこと知らないや」

 

「ガリィはそうは思いませんよ」

 

「そうかな? ママが今まで何を思ってアリアを育ててくれたのか知らない。ママの過去も今の目的も全部知らないよ?」

 

「何から何まで知ろうなんて、アリアちゃんは根っこから錬金術師ですね。あぁ嫌だ嫌だ」

 

 首を左右に振り、両肩を竦ませる。うーん計算されたウザさ。さすがガリィ。

 

「自分の親の事を全部知ってる人間なんて、それこそ人っ子一人居ませんって。そこに貴賎や性別、年齢は問いません。ほら親の心子知らずなんて言葉もあるじゃないですか?」

 

 と人形が人間を語っている。

 

「あ、今人形がなんか言ってるとか思いましたね? 思ったでしょう! そんな事を思ってしまった悪い子には冷水を喰らわせてやります」

 

「うひゃー!」

 

 水鉄砲くらいの水がおでこに直撃。冷た気持ちいい。でも服とか髪が濡れるからやめて欲しい所存。

 

「話を戻しますよ」

 

「脱線させたのガリィじゃん」

 

「黙らっしゃい!」

 

 理不尽なんだぁ。

 

「まぁ結果何が言いたいのかと言うと、マスターの事をあんまり知らないのは普通で、世間的にはアリアちゃんはマスターの事を十分理解しているってことです」

 

「そんなものかなぁ?」

 

「そんなものです」

 

「そっか……って結果何にも解決してないじゃん!?」

 

 ガビーンと音を合成。

 ケタケタと笑うガリィは解決するとか言ってませーんと舌を出している。

 

 まぁ何を言おうと時間切れな訳で、今頃はアリサちゃんもライブでウキウキなことでしょう。私が行けないことがあとを引かないように努力したから純粋に楽しめるんじゃないかな。あんなに楽しそうに待ち侘びている姿を見たら、行かないでなんて言えなかったな。

 

 でもやっぱりママの真意が分からない以上不安な訳で、一応は対策を打てるように手配はしたけれど。まさか本当にテロリストとかシャレになんないことが起きなきゃいいな。

 

 ソファにぐでぇっと凭れ、手短にテレビのリモコンがあったので何としに持ってみる。うんどこにでもある普通のリモコンだ。

 

「この時間ってバラエティ無いですし、正直見ててつまんないんですよねぇ」

 

「ガリィってテレビ見るんだ?」

 

「暇な時くらいですけどね。昼はドラマとかもあって退屈しないんですが」

 

「ドラマ見るんだ……」

 

 尚更意外というかなんというか、この分だと他の人形たちも見てるのかな?

 

 ママは見なそう。いやもしかしたらくだらないと言いながらも最後まで見たりして、そして最後にやっぱりくだらなかったなとか言いながら次の週も見てる可能性があるかも。

 

 ママそういうとこあるよねぇ。いや想像だけど!

 

 電源を起ち上げてやるとワイドショーが流れる。最近は目立ったニュースもない為平坦な内容だ。そもそも小学生はそれほどこの手の番組は見ないでしょう。今も芸能人の電撃婚について特集が組まれているが私的には興味もない。

 

「本当にこの時間帯って何もないねぇ」

 

「そうでしょうとも」

 

 番組表を開けど特に琴線に触れる内容の物もない。あと2時間もすれば見てもいいかなと思える番組もやるのだけど、それまでの繋ぎをどうしようかな。

 

 宿題もママからの課題も終わってる。錬金術に没頭するのを防止する為にこっちの仮拠点に来てるから錬金術の研究は選択肢に入ってすらない。本は……まず錬金術の本しか持ってないかも。エルフナインが普通の本持ってたりするかな。

 

「よし思い立ったが吉日! エルフナインのところにでも──」

 

 預けていた身体を起こして背中を伸ばしている時、テレビが急に切り替わった。

 

 番組が終わったかと思ったがそういう雰囲気でもない。アナウンサーの背後に並んだモニターや騒がしく動く人。厳かに喋り出される言の葉。

 

 キュッと胸が苦しくなった。『悪いな』と言った時のママの表情が目の裏を掠めた気がした。タイミングが悪い。

 

 揺さぶられた私が聞き取れた内容はシンプルな事実。

 

『ツヴァイウィングのライブ会場にノイズが出現』

 

 特異災害『ノイズ』

 ママ曰く太古から存在したヒトがヒトを殺す為に作られた生物兵器。物理攻撃の効果が薄く化学兵器による殲滅が困難な事から災害として認定された存在。

 

 出現条件は定かじゃないらしいけれど、これには作為的なものを感じてしまう。冗談なんだよ、冗談だったのに、冗談よりタチが悪い。テロリストの方が良かった。ノイズは人を殺すこと以外に目的がない。そして一般人に抵抗する術はない。

 

 つまりアリサちゃんがノイズと対面した時、確実な死が待っている。

 

 喉が渇いていく。

 ガリィに浴びせられた水なんて目じゃないくらい急激に冷たくなる心と体。今一分一秒でアリサちゃんが炭になってしまうかもしれない。紛れもなく私は恐怖している。

 

 冷たい籠の中以来の恐怖。

 

 その恐怖の中、私は外に出ようとした。無意識だった。

 

「何処に行くんですかアリアちゃん」

 

 手首をガリィが掴んだ。ヒトの温かみを感じさせない素体が私の意識を引き戻す。

 

「いや、アリサちゃんが……」

 

 言葉が上手く紡げない、上擦って吃る声が私の冷静さを奪う。ガリィはそんな私を抱き留め背中を撫でつけて安心させようとする。その意図は十分に私に伝わっているのに、暴れる思考は大人しくはならない。

 

「助け、に……」

 

「駄目です」

 

「え?」

 

 どうにか紡いだ私の意思は一声で打ち消された。

 どうして、ガリィの顔を覗き込んだ。いつも三日月に嗤うその口は一文字を刻んでいる。

 

「危険ですからね」

 

 事実である。あの場所は間違いなく危険だ。けれどだからこそ友達があの場にいる事が不安でならない。私には助ける術がある。だから──

 

「オレの許可なく錬金術を使うことを禁じる。前にそう言ったなアリア」

 

「ママ?」

 

 何処からかモニターしていたのか、ガリィが念話で知らせたのかは不明だけどママが事態を理解して目の前に現れた。本当に私を行かせない気だ。

 

「でもママ! あそこにはアリアの友達がいるの!」

 

「それで?」

 

「アリアなら助けられる」

 

「それで?」

 

「だから行かせて!」

 

 ママは暫し瞑目し、溜め息を吐いた。

 

「駄目に決まってるだろう」

 

「ピギュ!?」

 

 ママが怒った。過去一でブチ切れてる。なんかもう目が光ってる。

 

「戦闘経験もない。友人が現在生きているのかも分からない。他の錬金術師に悟られるリスクがある。これの何処にお前を送り出す根拠がある?」

 

「それ、は……」

 

 全く、これっぽっちも、爪の先程もない。

 

「じゃあアリサちゃんは」

 

「勘違いするな。オレはお前の友人なんて自発的に助けよう等とは思わない」

 

「どうしてそんなに酷いことを言うの?」

 

 分からないことだらけで頭痛がしてくる。残された手段はなんなのか、もう強行以外に浮かんで来ない。でもそんな事したらママは私を──

 

「全く、世話が焼ける」

 

 意識が遠のく。たぶんママが強制的に私の意識を奪っているんだろう。完全に意識が途切れるその瞬間、私は琴の音色を聞いた気がした。




翡翠の子可哀想(笑)

アリアちゃん:
楽観視してたら非日常がレバー目掛けて拳を穿ってきて無事内臓を傷めた。アリサちゃんに錬金術でマーキングして場所は把握出来る。でも死体でも反応するから生死は不明。ただ炭にはなってない事はわかる。

ガリィちゃん:
昼ドラとかでニッコニコするヤベェ奴。あと意外に笑いに厳しく、つまらないバラエティを見てる間はずっと顰めっ面になる。アリアちゃんの手首を掴んだ際にあまりの力強さにめっちゃ脚に力を入れた。

キャロルちゃん:
例え友達の為とはいえ危険な場所に手塩に育てたアリアちゃんを行かせるわけないだろ、いい加減にしろ!
心境は無月を教える直前の天鎖斬月。

アリサちゃん:
炭にはなってない。炭には……

生かしても殺してもアリアちゃんの糧に成れるから生存は正直悩んでた。
次回はアリサちゃんがどうなったのか、アリアちゃんは何をするのかって所から始めたいですね。

あと最後に問いたい。
シンフォギア世界で普通の子育てって無理筋だった?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。