あまりありふれていない役者で世界逆行   作:田吾作Bが現れた

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まずは拙作に目を通して下さる皆様への感謝を。
おかげさまでUAも143925、感想も493件まで上り、またしおりも372件、お気に入り件数も802件(2022/11/22 12:52現在)を維持できております。

そしてAitoyukiさん、今回も拙作を再評価していただきありがとうございます。おかげでまた筆を進める力をいただきました。感謝いたします。

……さて、それでは今回の話を読むにあたっての注意を。結構長め(約14000字)です。そして何より『本番』です。作者の杞憂で済めば御の字ですが、御覚悟の程をお願いいたします。では本編をどうぞ。


幕間三十五 黄昏の中、立ち上がる『勇者』たち

「……は?」

 

 聖教教会における教皇という最上の地位に就いているイシュタルもまた他の司祭と同様、一体どういうことかわからないと顎が外れそうなぐらい大口を開けていた。

 

 イシュタルらは有事に備えてここ聖教教会の総本山である大聖堂に籠り、祈りを捧げながら神の使徒の凱旋を待ちわびていた。エヒト様が遣わして下さった方々ならば反逆者どもを容易に皆殺しに出来るだろうという根拠のない自信を持って。

 

『我が言葉を心して聞くが良い』

 

 そんな時、ふと自分達の頭にあの声――唯一神エヒトの声が聞こえて来た。神託である。誰もがそれに歓喜し、よもや勇者が反逆者どもを皆殺しにしたことを自分達のために伝えて下さったのかと神の慈悲に感謝した。

 

『今までご苦労だった“反逆者”ども。貴様らはもう我が盤面には不要だ。では最期まで私を楽しませよ』

 

 だが、聞こえてきたのは理解を超えるものであった。平時と変わらぬ神々しい声で仰せになったというのに、どうして嘲っておられるのか。その言葉に誰もが頭を揺さぶられ、しばし呆然とするばかりであった。

 

「エヒト、様……?」

 

「反逆者……? そうか、反逆者どもに宣告をなさったのですね! そういうことでしたか!」

 

 まだ言葉の意味を理解し切れず呆けている者、神託を聞けるのは限られた人間でしかないというのにその言葉を都合よく捉えている者と対照的に分かれ、場は一時混沌とする。

 

「そうなのですね、エヒト様。これで我等人間族の心を苛む不穏の種が一つ減ったと仰せになってくださるとは……その慈悲に感謝いたします、エヒト様」

 

 そしてイシュタルは後者の人間であった。エヒトへの感謝を捧げ、再度祈る。他の司祭達もそれに倣って祈りを捧げた。その言葉の意味を考えもしないまま。そうして祈りを捧げていると不意に扉が勢いよく開かれ、全員が振り向けば片手で戦棍を握りしめた修道女がその音を立てた下手人だとわかった。

 

「何用ですか。今我等はエヒト様に祈りを捧げている――」

 

「――見つけました。見つけましたよ使徒様」

 

 振り向いたオド司祭は扉を開け放った修道女をたしなめようとするものの、その当人の言葉に反応して口を止めてしまった。もう使徒様がお戻りになられたのかとその場にいた司祭と教皇は喜び、こちらに来られることを心待ちにする。

 

「なんと! ならば今すぐ使徒様をお呼びするのだ」

 

「ここまで早く反逆者を討つとは……流石はエヒト様が遣わした方々というもの」

 

「背教者共め……私達を裏切り続けていた俗物どもが」

 

 だがいつまで経っても永山らは祈りの間に入ってくることは無く、代わりに自分達と共に籠っていた修道士達が入ってくるだけ。そんな彼らの手にも戦棍が握られており、入って来た一人がつぶやいた言葉も含めて一体どういうことかと教皇も司祭達も戸惑ってしまった。

 

「は、背教者だと! ど、どこだ? どこにいるのだ?」

 

 彼らの言葉の通りならばエヒト様の教えに背いた愚か者がいるはず。そのために用意した武器を彼らが握っているのは理解できた。だが肝心の背教者の姿が見当たらず、一体どこに不届き者がいるのかとイシュタルらはただただ恐怖するばかりだった。

 

「……やはり救えない。己が罪に気づけぬなど。万死に値する!!」

 

 そんな時、修道士の一人が怒りに満ちた声を上げ、この場に入って来た全員が戦棍を構えてイシュタルらをにらみつける。

 

「よ、よもや我等の背後にいると――」

 

「背教者イシュタル、オド、パノス、カイサル、ラアナン、他十余名……魔人族に寝返った罪で粛清する!!」

 

 そして自分達の名前を挙げ、天を衝かんばかりの声を上げて修道士達は一斉に向かってくる。その瞳にすさまじいまでの憎悪と怒りを、狂気を宿しながら。

 

「ひっ……ひぃぃ!?」

 

「死して詫びよ、獅子身中の虫よぉおおおぉぉぉぉ!!!」

 

 すさまじい気迫と共に振り下ろされる鉄槌。爆ぜる司祭の頭。ここで彼らの頭の中で全て繋がってしまった――自分達はエヒトから()()()として捨てられてしまったのだと。

 

「ち、違う!! わ、我等は背いてなど――」

 

「天誅ぅうぅぅ!!」

 

 弁解しようとした司祭の一人の顔面が窪んだ。

 

「あ、あ……わぁあぁぁあぁぁあぁ!!」

 

「逃げるなぁぁあぁぁぁあぁ!!」

 

「殺せ、殺せぇー-----!!!」

 

 逃げ出した司祭が取り囲まれ、そのまま戦棍で何度も滅多打ちにされて血だまりを作った。

 

「荒ぶ疾風よ 姿なき刃よ 鋭き刃となり――」

 

「止めぬか! この大聖堂を傷つけ――」

 

「大聖堂を壊そうとした、その罪も償えぇえぇぇぇぇ!!」

 

 死にたくないとばかりに魔法で迎撃しようとした時、隣の司祭から言われた言葉で一瞬躊躇してしまい、二人共々鉄槌の頑固な染みになった。

 

「“風刃”!!」

 

「ぐぁっ!――まだ、まだぁ!!」

 

「抵抗するな死ねぇえぇぇえぇぇ!!」

 

 仮に迎撃できても威力が足らずにそのまま袋叩きに遭った司祭は、硬いものが砕ける音と粘り気の混じった音を幾度か発してからいびつな肉塊へと変えられた。

 

「――“聖壁”!!」

 

 イシュタルはどうにか“聖壁”を発動し、数人程度の司祭も範囲に入れると彼らに向けて大声を出す。

 

「早く、早く魔法を唱えるのだ! このままでは私達は皆殺しに――」

 

「だぁぁぁぁああぁ!!!」

 

 修道士の一人が光の壁に向けて戦棍を振り下ろし、ガキンと硬い金属同士がぶつかり合ったような音を立てた。高々一撃で砕けるほど柔な造りなどではないが、自分達を襲ってきた修道士達は三十名以上いる。このまま数で押されればいずれこの壁も砕かれてしまうかもしれない。だからイシュタルは早く他の司祭に結界魔法を発動するよう命令する。

 

「そ、そこに入れて――がはっ!!」

 

「生き延びようなんて浅ましいことをするな!!」

 

「エヒト様に裁かれろ極悪人め!!」

 

 何せこの魔法の外は紛れもない地獄なのだから。

 

 なんとかして入ろうと手を伸ばした司祭は背中の骨を折られ、血反吐を吐きながら倒れこんだところを血まみれの鉄槌でひたすら殴られて原型を失っていく。

 

「あ、あぁ……」

 

「も、もう無理だ……わ、私達はここで死ぬんだ……」

 

 そしてイシュタルの叫びに従う者は誰もおらず。外の地獄を見てしまったがために誰も彼も心が折れ、絶望のあまり失禁したり、口から泡を吹いて気絶してしまっている者すらいたのだ。

 

「早く、早く結界を張るのだ!! 早く、早くしろ!!」

 

「壊れろ壊れろ壊れろぉおぉぉ!!」

 

「エヒト様の御名の下にぃぃいぃぃぃぃ!!」

 

「もう少し、もう少しだ!! ようやくこの蛆虫を駆逐出来るのだ!!」

 

「ひっ!?」

 

 もうなりふり構わず喉が潰れんばかりに大声を上げるが状況が好転することはなく、罵声と共に何度となくミシリミシリと響く音が自身の終わりが迫っているのを告げている。そのことにイシュタルはただただ恐怖していた。

 

「な、何が望みなのだ! きょ、教皇の地位か!? く、くれてやろう! 私が後見人となってお前達を支え――」

 

「我らの望みは、貴様らゴミどもの抹殺だぁあぁぁぁ!!!」

 

 苦労して築き上げてきた自分の地位すら差出し、もうこの際奴隷同然となってでも死にたくないと命乞いをしたイシュタルだったが、無情にも返ってきたのは自身の張った壁を砕く一撃であった。その瞬間、武器が壊れて後ろで魔法を詠唱していた修道士達の口元が吊り上がり、裏切者の処刑を始める。

 

「――“風灘”ぁ!!」

 

「ぐあぁあぁあぁあぁ!?」

 

 吹き付ける突風で壁に叩きつけられ、老人は背骨と内臓を損傷する。

 

「“水槌”!!」

 

「げぶっ!!」

 

 真正面から叩きつけられた水の塊に肋骨ごと肺を、まだ無事であった内臓も全て潰される。

 

「た、たすけ……えひと、さま……」

 

 そして地面へとうつぶせに倒れた老人は救いを求めて手を伸ばす。慈悲深き我らが神は自分を絶対見捨てはしないと信じ、哀れな自分を助けてくれると願って。

 

「お前ごときがエヒト様の名を語るなぁあぁあぁ!!!」

 

 だがもたらされたのは助けではなく、怒り狂った修道士の一人の無慈悲な一撃。腕は簡単にひしゃげ、指もだらんと垂れてしまう。その手が何かを握ることはもう、無い。

 

「あ……がっ……!」

 

「これで終わりだイシュタル……その罪、エヒト様に永劫裁かれ続けるがいい!!」

 

 搾り出すようにして悲鳴を上げた老人に、遂に裁きの時が訪れた。何人もの修道士に囲まれ、一斉に振り下ろされた戦棍でその体は見るも無残に砕け散る……エヒトのために人生を捧げ、異世界から来た子供達の運命を狂わせた人間の一生は今、ここで幕を閉じたのであった。

 

 

 

 

 

「しっかしよぉー、いつまで後ついてきゃいいんだ?」

 

 禿頭の男を追って早十数分。皆と一緒に()()()をしていた大介は心底面倒くさそうにそうつぶやく。

 

「あーもう、檜山。アンタもう黙っときなさいよ。別に馬鹿正直に登山してる訳じゃないんだからいいじゃない」

 

 そんな彼のボヤきを優花は呆れながらそう答えた。

 

 男の後をついて歩き、神山のふもとまで到着したメルド達一行。例の男はそのまま神山を音もなく登っていき、全員それに黙ってついていったのだがそこで大介が軽くかんしゃくを起こした。慣れない山道を歩くのを面倒くさがり、『どうせ頂上に用があるんだろ』と“空力”を使って上を目指そうとしたのである。

 

 途中で魔法を使って宙に浮きながら楽して移動していたアレーティアもこれには流石に顔を引きつらせ、他の面々も『うわぁ……』と言わんばかりの表情で彼を見つめた。その反応に大介は逆ギレしたのだが、なんと振り返ったあの禿頭の男が不意に大介と自分達の中間あたりのところまで浮き上がったのである。しかも宙に浮いたまま動いていったので『空飛ぶのアリなんだ……』と全員が思ったところですぐさま方針転換。リクエストで大介はアレーティアを横抱きし、全員“空力”を使いながら登山することになったのである。

 

「檜山君のリクエスト通りにこうして空を歩きながらだから辛くないでしょー? いや私も空中登山……登山? がアリなのは驚いたけど」

 

「怪我の功名と言うべきだろうが、頼むから事前に相談ぐらいしろ。それぐらいオルクス大迷宮で学んだだろうが……」

 

「……こればっかりはメルドさんが正しいと思う」

 

「へいへい俺が悪うござんしたー」

 

 呆れた様子の奈々に妙子もうなずき、自分を諫めてきたメルドとそれに同意してくるアレーティアに大介は唇を尖らせながらそう返す。確かに自分が悪いことは一応わかってはいるし、普段べったりなアレーティアも自分を想って言ってくれてるのは大介とて理解している。でもそれはそれ、これはこれ。なんだかんだ自分のおかげで楽出来たのだから誉めて欲しかったのだ。

 

 そうして軽くスネた大介と一緒に男を追って山の上空を駆け抜けていく一行。遂に頂上付近へとたどり着き、そこに建っていた大聖堂とそれを守る結界に誰もが感心した。

 

「建物もバリアも立派だよなー。あのハゲそのまま向かってったけど俺らは普通に無理じゃね? あれ壊せるか?」

 

「聖教教会の総本山だからな。造りが立派なのは言うまでもないし、相応の防備が固めてあるのも道理だ。ま、俺達なら地面を掘り進められるから問題――うん?」

 

 軽くアレーティアの方を見ながら大介は感想を述べると、アレーティアも少し首をかしげながら障壁の方を見た。あそこまで頑強そうなつくりだと彼女とて骨が折れるようである。だがメルドは馬鹿正直にやりあわなくってもいいだろうと述べたところであるものに気付いた。大聖堂正門にある台座に人影が見えたのである。

 

「台座が動いている……? お前達、見えるか? あの台座の上の人影が」

 

 メルドの問いかけに全員が首を縦に振ると、“遠見”の技能を持たないアレーティアを除く全員がじっと目を凝らす。動いてハイリヒ王国へと向かうあの台座の上にかなりの人間がいる様子であり、また恰好からして修道士の類なのも理解できた。

 

「大介、何が見えたの?」

 

「んあー……シスターとか僧侶のおっさんだな。しっかし変わってんな。まだら模様に赤が入った服なんか着てて……まさか」

 

 クイクイと襟の近くを引っ張りながら教えてほしいとねだるアレーティアに答える大介であったが、あの集団の異常さを他の皆と一緒に理解してしまう……あれは服の模様などでなく、血でベットリと汚れているのだということを。

 

「め、メルドさん!」

 

「二手に別れるぞ! 大介、アレーティア、妙子。奴らは俺と優花、奈々で調べる。お前達は男の方を追え。いいな?」

 

「りょ、了解っす!」

 

「んっ! わかりました」

 

「は、はいぃ~! 了解ぃ~!」

 

 正門の近くでこちらを振り向いていた男の方へと三人は向かっていき、メルド達は今も動く台座の方へと一気に空を駆け抜けていく。

 

「反逆者だー!!」

 

「殺せぇー!! 奴らを殺し、エヒト様にその血と心臓を捧げるのだぁー!!」

 

 自分達を迎撃せんと放たれる幾つもの魔法をひらひらと避け、難なくメルド達は修道士達へと接近していく。この程度、訓練で浩介が撃ってきた魔法の弾幕よりも遥かに密度も精度も低いため、あくびをしながらでも余裕で近づける程度でしかなかった。

 

「奈々!」

 

「はいっ! “凍柩”!!」

 

 魔法の射程内に入ったことですぐさまメルドは指示を飛ばし、それを待っていた奈々も氷の魔法を発動して彼らの下半身を一挙に凍らせる。体の半分を分厚い氷で覆われた彼等も寒さに身もだえして動けなくなり、三人は悠々と着地する。そしてメルドが武器を向けながら理由を問うた。

 

「……貴様ら、一体何の目的でこの台座を動かした? その服と戦棍に着いた血はなんだ? 答えろ」

 

「だ……黙れぇ……反逆者風情が、我等の成すことの邪魔を、するなぁ……」

 

 やはり体の半分が凍り付いているのは堪えるのだろう。歯をガタガタ言わせながらも懸命に答える修道士にやれやれと思いながらも改めてメルドは問いかける。

 

「俺が聞きたいのはその減らず口じゃない。お前達の目的と何をしたのかを尋ねてるんだ……そこで氷を解かして反撃しようとしてるのも見えているぞ」

 

 何人かが必死になって魔法で氷を解かそうとしているのを横目に見ながらもメルドは修道士達を見据える。これ以上黙っているようならば容赦などしないとばかりに剣の切っ先をその一人の首元へと突きつけて。

 

「ふざけ、るな……ふざけるなふざけるなふざけるなぁ!!」

 

「我等は、我等は反逆者達を皆殺しにするだけだ! それを神の使徒様から託されたのだ!!」

 

 目を見開き、口から唾やよだれをまき散らして狂乱しながら修道士達はそう答える。

 

 反逆者? ならば自分達のことだろうが、大介達がこの程度の輩に後れを取るはずがないとメルドは理解していたし、何より服に着いた血の乾き具合からして殺してから幾らか経っている。そして『神の使徒』はここにいる優花や奈々のことでなく、あの銀髪の女のことだろうと察した時、三人の中で何かが繋がった。

 

「まさ、か……」

 

「うそ……」

 

「……殺したな? 教会の関係者を」

 

 メルド達の背筋に寒気が走った。殺したり返り血を浴びたのが自分達でないとすれば最早教会の中で醜い争いがあったのではないか、と推測してしまったからだ。

 

「関係者……? 違う! 獅子身中の虫を私達は排除したのです!! 魔人族に寝返ろうと画策していたお前達の仲間を!!」

 

「貴様らもイシュタルの後を追わせてやる! 絶対に、絶対にだ!!」

 

 想像をはるかに超えた最悪の答えに三人は一瞬で血の気が引く。まさか教皇を既に手をかけていたなどと思わなかったのだ。

 

「――うっ! うぇぇ……」

 

「なんだよ、これ……どうなってんだよ」

 

「惨い……」

 

 ……それは奇しくも大介達が禿頭の男を追って、大聖堂で幾つもの血だまりとぐずぐずとなった肉の塊を見たのと同じタイミングであった。

 

 

 

 

 

「――エヒト様は仰せになられました。真なる“反逆者”は我が声を聞きながらも魔人族に屈し、奴らに与しようとしていた教皇一派、そしてそれに付き従っていた王族どもであると」

 

 ――時は少し遡り、城下街の広場にて。既に降り立っていた一体の神の使徒は集まった民衆に『世界の真実』を語っている最中であった。真なる『悪』は国の上層部にあり、と。

 

“見えたよ! 中央の広場!”

 

 キャンピングカーを降り、例の神の使徒を追って恵里達もパルクールさながらに街の屋根を駆ける。ようやく“遠見”で目的の人物を探し当てることに成功したものの、四人は相手の周囲に住民が取り巻いている状況に歯噛みした。

 

「そしていずれ異界から現れるであろう魔人族の手先を“神の使徒”と呼ぶことを画策し、彼らをもてなして力を蓄えさせていたのです」

 

“流石にドンナーもシュラークも使いづらいね……”

 

“鈴もちょっと、あそこまで人がいる中で魔法は使えないよ……”

 

 あまりに人が多すぎるため、下手に攻撃して誤爆してしまう可能性があったからだ。自分達の目的は無益な殺生ではないし、一般市民を傷つける理由も趣味も無い。だからこそ下手を打ってしまうことが怖く、相手のそばへ近づきながらも攻撃を一切できずにいた。

 

“闇魔法も通じないだろうしねぇ……浩介君、お願い”

 

 無論それは恵里もだ。相手諸共町民を殺してハジメ達への悪印象を与えるのは避けたいし、最悪“縛魂”があるにしても一人一人に何分も、それも何人もやることを考えれば魔力と時間の無駄になる。だからこそここで最高の鬼札にお願いをする。遠藤浩介。自分達の中で最強の存在にだ。

 

“わかった。音響手榴弾と閃光手榴弾をくれ!”

 

“うん! 使うタイミングは任せたよ!”

 

 恵里のお願いを聞き届けた浩介にハジメは指定された手榴弾を三つずつ投げて渡し、それらを受け取った浩介は更に速度を上げて広場へと向かっていく。

 

「楽に終わってくれよ――“限界突破”ぁ!!」

 

 そしてためらうことなく“限界突破”を使い、更に“気配遮断”で存在感を極限までそぎ落とし、八重樫道場で学んだ足音を殺す技術も遺憾なく発揮しながら。まるで日が沈むに従って伸びる影のように。

 

「そんな……」

 

「嘘だ……じゃあ、じゃあ国王も教皇も俺達をずっとだまして……」

 

「ふざけんな……ふざけんなよ!! アイツらは俺達のことをなんだと思ってるんだ!!」

 

「皆様がお怒りになられるのは理解できます。ですからどうか、その正しき怒りを燃やし続けて下さい。そして皆様を騙した者達を討つために立ち上がるのです。真なる信仰を取り戻す――来ましたか」

 

(クソッ、この距離でもか! やっぱり“熱源感知”や“魔力感知”みたいな技能が備わってると見ていいな!!)

 

 残り三百メートルといったところで神の使徒にバレてしまい、思わず浩介は内心舌打ちしたくなるも、それでも勝つしかないと腹をくくって持ってた手榴弾を“纏雷”で引火する。

 

「ど、どうされました使徒様……?」

 

「敵が来ました。ですがお気になさらず。高々気配を消すことが出来る程度の卑劣な魔人族の手先でしかありません」

 

 神の使徒の急な動きに民衆は不安を掻き立てられたが、神の使徒は特に何も思うことなくただ迫って来る浩介を悪し様に言って翼を展開するだけ。事実、浩介が予測した通りこの神の使徒も“魔力感知”をエヒトから与えられている。そのため浩介の動きは筒抜けであり、たとえ不意討ちをしようとも余裕で対処できるとそう考えたのだ。

 

「言ってろ量産型が!――皆、目と耳が大事ならとにかく塞いでろ!!」

 

 そう言うと同時に浩介は音響手榴弾と閃光手榴弾を素早く広場上空へと投擲する。そんなあまりにも見え見えなやり口に神の使徒は特に表情も動かすことなく、ただ翼から放った二枚の羽根でそれらを跡形もなく消滅させる。

 

「ハッ、案の定引っ掛かったな」

 

 もちろん投げたのはブラフである。点火自体は一応やっていたものの、当然それは無効化されるのは目に見えていた。だからこそ本命は爆発寸前の状態で自分が持っていたのだ。それをパッと放すと同時に耳に指を突っ込んだまま“金剛”も発動。瞬間、彼のすぐ近くでおびただしい光とけたたましい爆音が広がっていく。

 

「ぎゃぁあぁあぁ!?」

 

「目が、耳がぁー!!」

 

 一挙に場は騒然となるものの、神の使徒はほんの少し表情を歪めただけですぐに広場上空へと跳躍した浩介目掛けて銀の羽根を撃つ。

 

「当たるかよ」

 

「ならば当てに行くまで」

 

 しかしそれも木の葉が舞うように動いてかわし、ならば直接仕留めに行くべきかと神の使徒は飛び掛かる。

 

「ありがとう、浩介君――“縛羅”」

 

「っ!」

 

 途端、神の使徒の体はその場に縫い付けられた――空間魔法“縛羅”。対象を空間に固定するという防御にも捕縛にも使える魔法である。消費は相当激しく、それを行使した鈴の魔力もかなり持っていかれたものの、それでも十分な隙を作れた。

 

「皆!!」

 

 鈴の声と共に恵里とハジメも広場へと躍り出る。こんな絶好の機会を逃す必要なんてない。ハジメは恵里にシュラークを投げ渡し、恵里もそれを受け取って口角を上げながら二人して神の使徒へと接近する。

 

「ありがとハジメくん!――鈴、また一歩リードさせてもらったよ」

 

「はいはい。あんまりマウントとらないの」

 

「こんなとこでも夫婦喧嘩するんじゃねぇっつの――これで終わりだ、クソ女」

 

 恵里はバレルにキスしたシュラークを神の使徒の左耳に当て、ハジメは下からドンナーを胸に突きつけ、浩介は鞘から抜いた愛刀『黒曜』を首筋に添える――二発の銃声、一筋の煌きと鮮血が飛沫を上げた。

 

「し、使徒様! 使徒様どうかお助けを!!」

 

「目が、耳が、な、治してください! どうか、どうかご慈悲を!!」

 

 神の使徒の始末は終わったものの、まだ住民の方は強烈な光と音のショックから回復した訳ではないようだ。そこで自分達が起こした惨状を見せる訳にはいかないと思い至ったハジメはすぐさま宝物庫に神の使徒の死体を入れ、恵里も鈴も浩介も急いで水魔法を使って血を洗い流す。

 

“ど、どうするよ!? アイツは倒せたけど、これどうにか出来るのか!?”

 

“……よし。浩介君は先に城に行ってて。ここはボク達でどうにかするから”

 

“だ、大丈夫なの恵里!?”

 

“いや、これ流石にどうにかなるのかな……”

 

 流石に自分の服に着いたものはどうにもならないし、既に神の使徒が何かやっていた様子であったため、どうしたものかと焦っていると不意に恵里があることを思いついて“念話”ですぐにそれを明かす。

 

 三人もそれに軽く引きながらもそれに応じることにし、すぐさま恵里、ハジメ、浩介の三人は“気配遮断”を使いながらそそくさと建物の屋根へと飛び移っていく。そのまま浩介は城へと向かって行き、鈴だけがこの場に残ることになるのであった……。

 

 

 

 

 

「……それは誠か?」

 

「ウチのギルドの中でも腕利きの斥候が持ち帰った情報です。間違いないでしょう」

 

 ハイリヒ王国王宮の軍議の間にて、ギルドに所属していたランク“銀”の冒険者からもたらされた情報に、王族も大臣達もそして冒険者ギルドのマスターであるバルス・ラプタもまた絶望の色を隠せなかった。

 

 “勇者”永山重吾の敗北。

 

 いくら準備にあまり時間をかけることが出来ず、王国に従う諸侯の協力をほとんど取り付けられなかったにせよ、神の使徒だけでなく三千もの兵と選りすぐりの冒険者をかき集めたのだ。それがたった二十名足らずの人間相手に負けたのである。その衝撃が小さい訳がなかった。

 

「しかも魔人族もいるというではないか! あの恥知らず共め……我らを恨むだけでなく魔人族にまで与するというのか!!」

 

 しかもその斥候の報告には続きがあった。なんと空を白竜が飛んでいたというのだ。もしそれが何度か報告に上がった例の魔人族が使役していた魔物であるのならば、当然自分達に煮え湯を飲ませてくれた憎い相手もそこにいるということになる。つまり今のハイリヒ王国は魔人族の手によって滅ぼされる可能性が非常に高いことも示しているのだ。

 

「ここにいる守備隊で諸侯が集結するまで時間稼ぎは出来ぬか? 彼らの力を合わせればどうにかなるやもしれん」

 

「この城に残った戦力は精鋭揃いとはいえ五百そこらです。神の使徒様も加わった軍が一日すら保たなかったことを考えればどれだけ時間を稼げるか……」

 

「降伏は……? 最早降伏する他あるまい! 潔く負けを認め、苦渋をすする覚悟を持てばいつか寝首を――」

 

 こうしてエリヒド王や大臣、ギルド長らが話し合いをする中、リリアーナだけは放心したようなホッとしたような何とも言えない心地となっていた。

 

(……これで、これで良かったんです。きっと)

 

 国が滅ぶ。それがもう秒読みの段階にあるにもかかわらず、こうも落ち着いていられるのはやはり後悔をずっと引きずっていたからだろうとリリアーナは力なく笑う。

 

 裏切り者として扱われた三人を結局どうにも出来なかったこと、永山達を結局戦場に出させて同郷の人間と殺し合いをやらせてしまったこと。そしてそんな彼らを大事に思っていた愛子に最悪の仕打ちをしてしまったこと。

 

 自分が思いつくだけでこんなにもあるのだ。たとえ彼等が魔人族に寝返っていようと、これから自分達に復讐しにかかってこようともおかしくないと感じていた。

 

(滅ぶべくして滅ぶ……ただそれだけですから)

 

 これが根っからの悪人や暴力を好むような粗野な輩であれば話は別だっただろう。今この状況でも彼らの怒りをどうやったら抑えられるかを自分自身も考えてたに違いないとリリアーナは思う。だがこうして現れたのは元々は心優しい少年少女なのだ。彼らの人となりを見ていたからこそ自分達の罪深さをリリアーナは知っている。だからもう抵抗はしない。そのつもりだった。

 

「こうなればその命を捧げてでも魔人族を滅ぼすべく戦い抜くべきだ!」

 

「魔人族は我ら人間族を一人残らず始末するに違いない。徹底抗戦だ!!」

 

「だがどうするというのだ!? いくら勝てないから、殺される可能性があるとはいえ、私は反撃の機会を失いたくはないのだ!」

 

「見つけたぞ、反逆者ァ!!」

 

 議場が混沌とする中、不意に扉が開け放たれると同時に尋常じゃない様子のメイドと兵士がなだれ込んでいく。そして――。

 

「何用だ貴様ら! 持ち場に戻れ! 今は軍議の最中だ――」

 

「エヒト様の名の下にぃ、反逆者と裏切り者を始末するゥー-!!!」

 

 恐怖劇が、始まった。

 

「何を言って――!? 正気か貴様ら!?」

 

「私達は、正気だぁぁあぁあぁ!!」

 

 包丁を持ったメイドの一人がこの場にいた近衛兵へと襲い掛かり、それを近衛兵がいなして抑え込もうとすると同時に何人もの兵士が襲い掛かってきた。急ぎ腰の剣を抜いて斬撃を弾くものの、それが致命的な隙となる。

 

「ごほぉっ!?」

 

「死ね……死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇー-!!!」

 

 この場にいた国の上層部の人間を守りながらであったが故に、遥かに実力が上であっても近衛兵は狂乱した兵士達に押し込まれ、背後から先程抑え込もうとしたメイドが包丁を突き刺す。そしてグリグリと包丁を動かして傷口を広げ、内臓を傷つけられた痛みから剣を握る力が弱くなり、そのまま兵士達に切り捨てられてしまう。

 

「や、やめよ! やめるのだ!!」

 

「反逆者に与する者にも死を!! 恥知らずな王族どもはなぶり殺しだぁぁぁぁぁ!!」

 

「――“天絶”っ!!」

 

 当然守る人間がいなくなった大臣らも凶刃が振るわれる。だがその一撃はリリアーナが咄嗟に詠唱した“天絶”によって防がれ、すぐさま無事な者も後ろへと下がっていく。

 

「どうして、どうしてなんですか!? 私達がこれ以上どんな罪咎を――」

 

 いきなり近衛兵が何人か死んだことがショックではあったが、このままではいけないと即座に判断したリリアーナは彼らに問いかける。自分達は神の使徒と呼ばれた彼等にやった行い以外に何をしてしまったのかをだ。

 

「エヒト様の意に背き、魔人族に屈し、我らの命と引き換えに自分達が生きながらえようとしたことだぁ!!」

 

「……えっ?」

 

「イシュタル共々我らを欺いただけでなく、魔人族に与するとは言語道断!! その命を以て償えぇえぇぇ!!」

 

 その問いの答えを聞くと同時に自分達を守るはずの壁は力を失う。微塵も予想できない、どうしてそんなことを言われなければならないのか理解できないものだったからだ。だがそれと同時に暴徒共が自分達の方へと殺到していき、おびただしい殺意と共にその刃を振るってくる。

 

「そんな、そんなはずは――ぎゃぁあぁぁあぁ!!」

 

「我等は真なる神の使徒様から啓示していただいたのだ!! これまで仰いでいた神の使徒は魔人族の手先でしかなく、お前達は俺達人間族を裏切った屑の集まりだとなぁ!!!」

 

 意味の分からない言葉に混乱しつつも、残った近衛兵はただ守るべき主の盾となるべく彼らの攻撃をいなし続ける。

 

「姫様だけに守りを強いらせるな!!」

 

「魔法を使える者は使え!! この際誰でも構わん!!」

 

 そして国の上層部の人間もこのままではじり貧どころではないと理解し、すぐに攻撃防御問わず魔法を展開して襲い来る兵士とメイド達へと対処していく。そんな時であった。

 

「随分と手間取っているようですね」

 

 銀髪の戦乙女がこの場に現れたのは。途端、その神々しい姿に抵抗していた王族達も目を奪われ、狂乱していた兵士とメイド達もピタリと攻撃の手を止める。

 

「使徒様!!」

 

「今この不届き者を始末している最中です! どうか、どうかお待ちを!!」

 

 他者を惹きつけ、魅了する容姿を持った存在に兵士もメイド達も崇拝の念を捧げ、それを見た王族や大臣達もああなってしまうのも仕方ないと誰もが納得してしまっていた。

 

「わかりました。では少々力を貸すとしましょう」

 

 途端、その女の背中から翼が生え、放たれた銀の弾丸と共に生き残った近衛兵は瞬く間に穴開きチーズと化していく。そして重力に負けてぐしゃりと潰れた肉塊に特に興味を見せることもなく女は告げる。

 

「エヒト様の遣いである私が命じます――反逆者の始末を。それに与する者の抹殺を」

 

 そう言うと同時に女は踵を返し、場は再び狂乱と恐慌が支配する。自分達を守ってくれる心強い存在が一瞬にして無残な姿となり、神秘そのものと言っていい存在に「悪」と断じられたことで生き残った王族や大臣、ギルドマスターも恐怖するしかなかった。自分達は二度と救われないと確信してしまい、戦う意志を失ってしまった。

 

「や、やめて! た、助け――」

 

「嫌だ! し、死にたく、死にたくなんて――」

 

「はは、はははははは!! 死ねぇぇ!!」

 

 幾つもの命が一気に消えていく。兵士の持った剣が、メイドの持ったナイフや包丁が、彼らの衣服や亀裂のような笑みを浮かべた顔が、幾度も紅に染まっていく。

 

「これで終わりだァアアァァァア!!」

 

「ぐはぁっ!!」

 

 自分達の目の前に現れた存在が本当にエヒト神の遣いかどうかなど関係ない。ただあの圧倒的な存在が一方的に命を奪い、そして命じた時点でもう全てが運命づけられたのだ。自分達は死すべき存在なのだと。

 

「はは……」

 

「エヒト様、見ておられますか! エヒト様ぁー!!」

 

 それを理解してリリアーナはただ乾いた笑みが浮かぶ。因縁の相手である魔人族でなく、自分達が陥れてしまった神の使徒と呼ばれた少年達でもなく、ただ神の使いと彼らに呼ばれた存在によって死兵と化した、自分達の国に仕えていた兵士やメイドによって。

 

(これが、終わり。これで終わり? こんな、こんなのって……)

 

 理解も納得もいかない、この上なく理不尽な理由で死ぬ。その時は近づいていてもう逃げ場などない。目の前に迫る血まみれの刃を見てそう思った時、ふと目の前を誰かが横切った。

 

「ぐぅうぅっ!!」

 

「――えっ」

 

 父だ。父のエリヒド王が身を挺してリリアーナに迫る死を防いだのである。

 

「死ぬがいい! 諸悪の根源め!!」

 

「ぐ、おぉ……」

 

 リリアーナすらも心が折れ、誰も魔法を使えない状況で命が逃げ惑い、悲鳴を上げては散っていく中、エリヒドだけが自分を守るために体を張ったのだ。うめき声を上げ、血反吐を吐きながらも歯を食いしばりながら自分達家族を心配する眼差しをこちらに向けている。

 

「あなたっ!!」

 

「ちち、うえ……?」

 

「おとう、さま……?」

 

「逃げ、よ……秘密の通路を、つかうのだ……」

 

 悲痛な叫びを上げる母、自分と同様にただ茫然としているだけのランデルに向けて父はそう言った。この王宮はどこの部屋からも城から王都へと抜け出せる隠し通路があり、それを使って逃げ延びるのだと伝えてくれた。

 

「そんな!! 父上を置いて逃げるなど――」

 

「今は、そのような――」

 

「逃がすかぁあぁぁ!!」

 

 自分を置いて逃げることを嫌がったランデルをエリヒドは叱ろうとするも、彼の体を更に刃が突き立てられ、その端正な顔と上等な服を鮮やかな血が汚していく。愛する家族の命が急速に失われようとしている様を見せられ、リリアーナはただ涙を流すばかりだった。

 

「逃げ、ましょう。王の覚悟を踏みにじる訳には――」

 

「お前も逃がすかぁぁぁぁあぁあぁ!!」

 

「あぁぁぁあぁあぁ!?」

 

 青ざめていきながらも覚悟に満ちた父の表情を見て、自分達の手を引こうとした母親の背中にも刃が投げつけられる。何本も背中に刺さった痛みで叫びながら母も倒れ、リリアーナとランデルはもう動けなくなってしまう。

 

「にげ、て……いきのび、なさい!……リリィ、ランデル……!!」

 

「ははうえ! ちちうえぇ!!」

 

 遂に父も前のめりになって倒れ、母も荒い息を吐きながらこちらを見るばかり。そして近くまで来たメイドの一人が自分に向けてナイフを振るった。その様がひどく緩慢に見える中、リリアーナはただ思う。

 

(嫌……もう嫌)

 

 家族が目の前で死にかけ、まだ無事であった自分とランデルもすぐにその後を追うだろう。けれどもこんな状況でも信じていたはずの神様は何もしてくれない。自分達をこうして追い詰めて死に追いやっただけでその慈悲を示してなんてくれない。

 

(誰か、誰か助けて!! もう誰でもいいから!! お願いだから私達を――)

 

 自分の従者であり、姉のように慕っているヘリーナもこの場にいない。何よりただただ死ぬことが怖い。誰も助けてくれない。自分達を守ってくれない。そのことに絶望し、ただ救いを求める彼女の前に刃が落ちていく――。




……さて、『本番』は楽しめていただけたでしょうか? ちなみにそのままお出しすると不味いと作者はチキって半分程度に抑えました。はい。

どうせですから『デザート』もいかがでしょうか? そちらは今週の金曜日に投稿出来たらいいなー、と思っております。くふふ。
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