では今回の話を読むにあたっての注意点として本文だけでも長い(約15000字)です。では上記に注意して本編をどうぞ。
(お願い南雲くん、無事でいて!)
戻れたことへの安堵、短い間ながらも共にいた仲間への心残り、そして自分が恋した男の子に会いたいという一途な思いを抱え、香織はホルアドの宿屋を走り抜けていた。けたたましい音を立て、すれ違う人が悲鳴を上げていることにすら気づかないまま。
「南雲くん! 今何日!?」
そしておぼろげな記憶を頼りに香織はある部屋の扉を勢い開く。少し体を乗り出して部屋の中を見れば、記憶の通りそこにハジメがいてくれた。驚いた彼を見て何かあったのかと気になったものの、香織はどれだけ時間にズレが出ているかを彼に問いかける。
「うぇっ!?……し、白崎、さん……です、か?」
「うん! お願い教えて!」
「え、えっと、オルクス大迷宮の訓練に備えて、ここホルアドの宿屋に……」
ハジメはどこか怯えた様子になって素性について尋ねてくる。そのことが少し引っかかったものの、今はそれを気にしている場合じゃ無いと考えて香織は再度尋ね直した。すると彼の口から時間のズレがほぼないことを確認でき、香織は大きく息を吐いて胸をなで下ろす。
「良かったぁ……南雲くんが無事で」
夢のことは今も覚えていたし、訓練で無事でいられるかという心配も今まで抱えていた。向こうの世界の恵里の話を聞いていたから余計にだ。だからこそ何も無くて安心した。
「いやあの、白崎さんがどう考えても無事……いや、その、えーっと」
そんな時、何度も目を泳がせて言葉を選んでいる彼を見て一体何がと考えた時、ふと香織は
「そのことも含めて話すよ。入って、いい?」
「その……はい」
「ありがとう南雲くん!」
前と比べて
「えーっと、お茶、いる?」
「うん。気遣ってくれてありがとう」
そして部屋に入るとハジメが扉を閉めてくれ、またお茶もいるかどうか尋ねてきた。彼の心遣いと久しぶりに聞く声に心がじんわりと温かくなるのを覚えつつ、香織は窓際のテーブルセットに座る。
「えーっとその……何があったの?」
「信じてもらえないかもしれないけど、ちょっと違う世界にね。証拠も含めて話すよ」
出して貰った紅茶モドキに口をつけつつ、香織はハジメの疑問に微笑みながら答える。そして向こうの世界の恵里達からもらったおみやげを交え、自分の身に何が起きたかを語っていった。
「――それで、ひと月……じゃなかった。一週間ぐらい鷲三さんと霧乃さんにシゴいてもらって。その日の夕方にやっと戻ってこれたんだ」
「あ、はい」
向こうの世界の恵里達に世話になったことにも触れつつ、香織は感慨深げにこれまでの経緯を述べる。向かいにいるハジメも最初はひどく驚いていたものの、香織が語るにつれて声のトーンも段々と落ちていった。今はもうポカンとした顔つきでティーカップを両手で抱えるだけであり、やっぱり驚くよねと香織は再度苦笑いを浮かべる。
「えっと、その……白崎さんが
「あ、うん。他にも伝えたいことが三つあってね。一つは私が南雲くんが好きな理由」
「……はい?」
するとハジメが口の端を引きつらせて困惑した様子で問いかけてきた。香織はニッコリ笑うと彼にどうしてこの部屋に訪れたかについて語る。直後、ハジメが真顔になってしまい、香織も思わず首をかしげてしまった。
「何かおかしかった? 私が鍛えたのも南雲くんのためだよ?」
「えっ……いや、どうして? へ?」
「中学二年生の頃にね、私が南雲くんを好きになったきっかけがあったんだよ。それはね――」
困惑するハジメにこうして鍛えた理由を口にするも向こうは表情が一切変わらない。首をかしげて言葉にならないつぶやきばかりを漏らす彼に、香織は自分が彼を好きになった理由を語る。彼が小さい男の子とおばあさんを守るために不良に頭を下げ続けていた時のことを。
「――弱くても立ち向かえる人や他人のために頭を下げられる人はそんなにいないと思う。……実際、あの時、私は怖くて……自分は雫ちゃん達みたいに強くないからって言い訳して、誰か助けてあげてって思うばかりで何もしなかった」
当時の後悔も交え、彼の両手をとって握りながら香織は述べていく。ハジメの方も思い出したらしく、ほほを赤く染めながらもコクコクと何度もうなずいてくれた。
「白崎さん……」
そして月明かりに照らされたハジメの顔を見て、彼が自分の名前をつぶやいたのを聞いて香織は胸の高鳴りを覚える。やっぱりこの感情は恋なんだと改めて実感した香織は、更にハジメへの思いを口にしていった。
「だからね。私の中で一番強い人くて、すごいと思えたのは南雲くんなんだ……前はね、私は南雲くんを『尊敬』してるんだって思ってた」
「……じゃあ、今は?」
彼から手を放すと、香織は少しだけうつむいて顔をかいた。そしてハジメに抱いた思いを憧れと勘違いしてしまったことを懺悔する。すると今度はあちらが少しだけ声を震わせ、上目がちに問いかけてきた。
「言ったよね。好きだって……自分の思いに気づいたのは向こうに行ってからなんだけど」
香織はちょっとだけムスッとした顔つきでそれに答えるも、すぐに目をそらしてしまう。自分だってひどい勘違いのままあちらの世界に渡ったことを思い出して恥ずかしくなったからだ。
「でも、だから不安になったんだと思う。不良に立ち向かった時みたいに大迷宮で南雲くんがまた無茶するかもしれないって思って。それと悪い夢も見ちゃったから。それが二つ目」
「あはは……そっか。でも無理はしないつもりだよ」
そうして黒髪の先っぽをいじりながら香織が不安を抱いた理由を語れば、ハジメは苦笑しながらも首を横に振って否定してきた。自分の心に寄り添いつつ、気配りをしてくれた彼に香織はほほが緩むのを止められない。
「気遣ってくれてありがとう、南雲くん。でも万が一がないように、って向こうでちょっと鍛えちゃった」
「いや、その……」
それがちょっと恥ずかしくてごまかしたくなった香織は、右腕で力こぶを作って強くなったよとアピールしてみた。だがハジメの方は思いっきり目をそらし、言いよどんでしまう。それを見た香織も、一日も経たずにこうなったら驚くよねと彼の心情を理解して苦笑いする。
「うん。服も前と違うし、色々と驚いちゃったよね」
「いやごめんちょっとで済む?」
気まずさをごまかそうとした香織は軽く舌を出してウィンクしながらそのことを伝えてみた。が、ハジメの方は思いっきり引きつった顔をしながら容赦なく否定してきた。これには思わず香織もムキになってしまう。
「もう! 南雲くんが傷付いてほしくないから頑張ったのにぃ! 体が前より
「あぁ、ご、ごめん!」
腕を組んでそっぽを向きながらぷんすか怒れば、ハジメも慌てた様子で謝罪してくる。ふと横目でチラッと見てみれば、冷や汗をダラダラ流しながらこちらをじっと見つめている彼の姿が香織の視界に映った。そんな必死な彼がかわいくて素敵で、香織は思わず右手で口元を覆いながらクスッと笑う。
「私ね、後悔してないよ。だって南雲くんが好きだから」
香織はハジメの方に向き直ると、右手を胸元に添えながら彼への思いを語っていく。
「どんなに辛くったって、苦しくったって、進むことが出来たんだ。だから」
彼を守れるなら、共にいれるのならばどんな苦労も困難も怖くない。負けやしないんだと香織は述べる。そして席から立つと、香織はスッと腕を組んで彼に誓う。どんな困難があろうと自分が守ってみせるということを。
「安心して。南雲くんは私が守るよ」
窓から差し込む月の光が香織の流れるような黒髪を、女子レスラーが着るような青のレオタードとそこに浮かび上がったシックスパック、両手首のリストバンドに丸太の如き厚みとなった手足とブーツを照らす。
どんな障害もこの自慢の肉体で打ち砕いてみせると香織は全身を使ってハジメに訴えたのである。
「あ、はい。お願いします」
「もう」
その肝心のハジメはポカンとしながらどこか気の抜けた声で返すだけ。なんだかしまらないなぁと思いながらも香織はクスッと笑った――。
香織がハジメの前で守ると誓ったその翌日。案の定、雫や他のクラスメイト、それにメルドから思いっきり香織は疑われてしまった。だが持ってたステータスプレートを見せたり、新たに用意してもらった新品のものに自分の情報を出したことで本人だと認めさせたのである。
そうして訓練は着々と進み、オルクス大迷宮二十階層へと一行は到達していた。
「“縛印”!」
香織は
「グゥオォ!?」
「えっ!? あれも魔物!?」
がんじがらめになった岩のような球体は悲鳴を上げながら瞬く間に姿を変える。正体はこの階層に生息する魔物であり、同じ魔物が岩に擬態していたこれを投げていたのだ。
「白崎さん!」
「“来翔”」
魔物が擬態を解いた時に何本がロープが破けたけれど、大丈夫。そう判断した香織は何歩か助走してから左足を右斜め前に踏み出して跳躍。それと同時に風属性の魔法を詠唱し、体の後方に発生させた気流を操作して勢いをつける。
「でやぁーっ!」
そして魔物へとフライング・ニール・キックを叩き込み、他の魔物も巻き込んで岩壁へと吹き飛ばしたのであった。
「ふぅ……皆、大丈夫?」
『あ、はい……』
“来翔”を発動したまま体をひねり、先程跳んだ場所へ香織は左の手とひざをついて着地する。誰かけがしていないだろうかと少し心配になって声をかけるが、返事はどこかぎこちなかったり上の空である。上の階層でも似たようなことがあり、その時は遠巻きに見られて皆がひそひそと何かを話していたのを香織は思い出す。
「……そっか。そうだよ――」
「すごい……カッコよかったぁ」
「いやホントね……上の階でも圧倒的だったけど、ここまで鮮やかに動かれると立つ瀬が無いわ」
それに近い光景を見て香織は軽く肩を落とすも、不意に後ろからかけられた二人の声に顔を上げる。
「南雲くん……雫ちゃん」
上の階層で魔物を倒した後、メルドから叱られてから一緒に行動することになった恋人の賞賛に香織の胸は高鳴ってしまう。今も前線に立っている親友のコメントで香織は自信を取り戻し、ほのかにくすんでいた香織の顔に生気が戻った。
「お疲れ様、白崎さん」
「ありがとう、香織……そんな見た目になってもあなたはあなただったわね」
「そっか……そっかぁ。えへへ」
二人に顔を向ければハジメは目を輝かせており、また雫も口元を若干引きつらせながらも笑みを浮かべている。二人の言葉が気遣いではないことに気づいて香織も思わずはにかんでしまう。鍛錬をしていて良かったと香織は改めて感じていた。
「違う……香織はこんなことなんてしない!」
だがそれにケチをつける声が通路に響く。香織がわずかに眉根を寄せながら声のする方を向けば、体をわななかせながら光輝が凝視していたのである。
「光輝……あんたまだそんなこと言う気?」
「まぁ……だな。いい加減認めてやれよ」
光輝の言葉にすぐに雫が苛立った様子で反論してくれた。龍太郎も複雑そうな顔つきで香織を一瞥した後、軽く呆れた様子で光輝を説得してくれた。そのことに香織は嬉しさを感じていた。
「雫も龍太郎も黙っててくれ! 天職が治癒師なのは香織の心根が優しい証拠だ! 戦いに向いてないことの証拠なんだ! それを、それを……南雲、お前のせいだ!」
だがそれもつかの間のこと。光輝は二人の意見を聞くどころか
「……ねぇ
「なんで俺を……やっぱり香織が南雲に操られてるんだ! そうでなきゃ一晩で香織がこんな体つきに、南雲なんかと一緒にいる訳がない!」
聞くに堪えない言葉に香織の額に青筋が浮かぶ。湧き上がってくる怒りを堪えながらハジメを悪く言わないようお願いする香織だったが、光輝はかぶりを振って聞き入れてくれなかった。それどころか自分の思いを否定し、こうなった原因をさもハジメにあるかのようにつらつらと語ってきたのである。
「おい待て光輝! 坊主にそんなことが出来るはずが――」
「そ、そうだそうだ! 白崎がこうなったのも南雲のせいだろ! 絶対そうだ!」
「だ、だよな! ほら、白崎が身につけてるのがアーティファクトとかそういうのだろ!」
遅れてメルドが声を上げて光輝に注意しようとしたものの、檜山を筆頭にクラスメイトの男子達がハジメが悪いと声を上げてきたのだ。
「あのリストバンドとかレオタードが……南雲ってああいう趣味だったの?」
「ナナちんの言うことがそうなら……思ったより変わった趣味なのかな南雲君って」
「いい加減やめろお前達! 仲間のことをとやかく言うんじゃない!」
また他の女子のクラスメイトも声をひそめながらアレコレ言い出す始末。メルドや騎士団の人間が何度も声を上げて注意するも、軽蔑や妙なものを見るような目でハジメを見るのを止めなどしなかった。
「――いい加減にして」
『うわっ!?』
『ひっ!?』
故に香織はキレた。低い声でつぶやくと同時に近くの壁を全力でブッ叩けば、クラスメイト達は短い悲鳴を上げる。彼らの顔をサッと見てから香織は再度口を開いた。
「南雲くんは何も関係ないよ。この姿は私が望んでなったものだから」
自分のこの姿になったのとハジメは無関係であると香織は一オクターブ低い声で訴える。途端、ほぼ全てのクラスメイトが腰を抜かし、顔を青ざめていった。何か恐ろしいものでも見たかのような目つきをしている彼らの顔を再度見渡し、香織は深く息を吐く。
「もし南雲くんをこれ以上悪く言うなら私が相手をするよ。いい?」
そしてハジメの前に立つと自分の胸に一度手を当て、腕を組みながら香織は宣言する。
好きな人とひと月以上離れて心細かったことを思えば、仲のいいクラスメイト以外を敵に回すぐらいなんてことない。近くでハジメを守れることを思えば辛さすら感じない。覚悟を決めた香織がキッと目を細めてクラスメイト達を見据えれば、ハジメのことを悪し様に言う人間はほとんどいなくなった。
「な、なんか変な気分……白崎さ、白崎
「か、カオリンがなんかすごいカッコいい……す、鈴、ちょっと目覚めちゃったかも」
「こ、これが新世界の扉……し、白崎ぃ! 俺の顔にビンタしてくれぇ!」
「ヒッ」
……代わりに変な奴らが幾らか湧き出してしまったが。同性からの熱のこもった視線を、中野ほか男子からネットリとした目つきを向けられてしまったのである。香織は思わず悲鳴を上げてしまい、すぐにハジメの後ろに隠れてしまう。
「な、南雲く~ん……」
「え、えっと……だ、大丈夫。僕がいるからね」
香織が涙目になり、声を震わせながらハジメの名前をつぶやく。彼も振り返って顔を合わせながら言葉をかけてくれたため、香織はグスグス泣きながらもこの上ない安心感を得ていた。
「はいそこっ! 香織に変な目向けるんじゃないわよ!!」
「お前達、今は訓練の最中だ! それを忘れるな!」
そして雫とメルドが苛立ちのこもった声でクラスメイトを叱ったことで変な空気は徐々に収まっていく。とりあえずこの場はなんとかなりそうだと香織は思っていると、不意にガラガラと何かが崩れる音が彼女の耳に入った。
「? 何だろ。どこから音、が……あっ」
その音源がどこかを探ると、先程魔物を蹴り飛ばした辺りを見て香織は思わず自分の口を塞いだ。そこの岩壁が崩れていたことではない。青白く光る水晶のようなものがそこから花が咲くように生えていたのが見えたからである。
「あれ何? すっごいキレイ……」
「サファイアとかトルマリン? おっきいね……」
「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも――」
例の石を見た女子達はうっとりとした表情をしたりアレコレ話をしている。それについてメルドも目を一瞬大きくして珍しいものを見たとばかりな顔つきでその鉱石について語り始める。だがあれの正体を知っていた香織は険しい顔を浮かべながらハジメと顔を合わせた。
「えっ、香織。どうしたんだ」
「南雲くん。あれが」
「昨日白崎さんが言ってた……どうするの?」
あの石を指さしながら声をかければ、彼もすぐにその正体のことを思い出してくれた。あの鉱石は別の階層へと転移させる罠である。別世界の恵里達から聞いた話を、どうにかあの罠が起動するのを防ぎたいということを香織は昨晩の内にハジメと雫に話していたのだ。
「そうか。そういうことなのか」
「出来れば訓練中にあれを出さないでおきたかったんだけど……」
あの罠は後々
「仕方ないよ。あれはきっと誰も予想できなかったと思うから」
しかしこのままではあちらの恵里の話した通り、転移させられてベヒモスとかいう魔物と戦う羽目に遭うかもしれない。自分がその原因を作ってしまったことへの責任を感じていた香織であったが、不意に彼に両手を握られてしまう。そして微笑みながら気遣いの言葉をかけられ、香織は彼の優しさに胸がときめいてしまった。
「……ありがと、南雲くん」
収まるどころかドキドキと一層強くなっていく心臓の鼓動を感じ、香織は本当に彼に恋してしまっているということを改めて実感する――その瞬間、香織の脳裏を不吉な夢の記憶がよぎった。
「とりあえずメルドさんに罠かもしれないって伝えて――」
「メルドさん、きっとこれは罠か何かです! 俺が破壊してみます!」
もしかするとこの罠がハジメが消える夢と関係あるかもしれないと思い込み、すぐさま香織はメルドに声をかけようと前を振り向こうとする。だがその時、光輝の力強い声が通路一帯に響いた。
「っ!? 光輝くん、どうして!」
「待て光輝! 可能性はあるかもしれんが、だからっていきなり壊そうとするな!」
「香織は危険なものを見るような目つきであれをじっと見ていました! だから雫も龍太郎も止めないでくれ!」
自分が声をかけるよりも早く光輝が反応したことに驚き、香織は一瞬固まってしまった。よりによって自分を理由にこの場で壊そうとしているし、下手に壊したらどうなるかわからない。既にすぐに雫と龍太郎が両脇から光輝の腕を掴んで後ろに引っ張っており、香織もすぐに光輝を羽交い締めにして止めようと通路を駆けていく。
「止めるに決まってるでしょうが! 下手に壊したらどうなるかわからないでしょ!」
「落ち着けって光輝! 団員の人に調べて貰ってからでも遅くねぇだろ!」
「離せ! 離してくれ二人とも!」
あと一歩、もうすぐ肩に手が届く。そこまで香織は迫ったものの、組み付いた龍太郎をどかそうと光輝が左腕を大きく振るってしまう。これがまずかった。
「そのまま抑えてて雫ちゃん、龍太郎く――っ!」
「うぉっ――っとと!?」
「うわっ!?」
そのせいで龍太郎が振りほどかれてしまい、たたらを踏んだ。そして例の鉱石を調べていた様子の騎士団員の背中に接触してしまい、その団員が鉱石にぶつかってしまう。その瞬間、その石を中心に魔方陣が広がっていったのだ。
「すいません団長! トラップが!」
「くそっ――撤退だ! 早くこの部屋から出ろ!」
間に合わなかった。結局恵里の話の通りになってしまったと香織は苦しげに顔をゆがめた。この後クラスメイトの皆がパニックに陥る羽目に遭うという恵里の話が頭をよぎったからだ。
「そん、な……」
「すまん! 俺のせいで!」
「白崎さん!」
「皆、敵襲に備えて!!」
顔色が悪くなった雫と青ざめた龍太郎、そして後ろにいるハジメへの申し訳なさで一層香織の顔がゆがむ。今の自分が出来ることは魔物にいきなり襲われてもいいように声をかけることだけ。やらないよりマシだと思いつつ、香織は声を張り上げる。
「そんな……俺は、皆のために!」
(天之河くん、絶交だからね。後でグーで殴るからね)
それはそれとして後悔している様子の光輝は後でひっぱたいてやると香織は決意した。部屋に光りが満ちて香織の視界が白一色に染まっていく。
「――よし! とりあえず大丈夫」
それと同時に一瞬の浮遊感を感じた香織だったが、すぐさまブーツに付与された“空力”を発動。一瞬だけ見えない足場を作って落下を防ぎ、姿勢を整えてその場に着地する。その場を見渡せば巨大な石造りの橋の上であり、平行世界の恵里が話した通りの場所であることを香織は確認する。
(確か雫ちゃん達はえっと……なんやかんやでちょっとの間は大丈夫だったはず!)
雫達のことが気になったものの、記憶が確かならば騎士団の人達がちょっとだけ時間を稼いでくれたはずだと香織は思い返す。それならどこか怯えた様子のクラスメイトを落ち着ける方が先だと判断し、香織は口元に両手を添える。
「皆、落ち着いて! 私達ならそう簡単に負けないから!――南雲くん!」
手をメガホンがわりにしながら香織は浮き足立っている様子のクラスメイトに声をかけていった。皆がここで下手にパニックを起こして橋から落下したり、魔物に襲われて大けがをしてしまう可能性があるかもしれないと考えたからだ。
「し、白崎さん! 僕はどうすればいいの!」
「後ろから骨の魔物がいっぱい出てくる! 魔物を出す地面の魔方陣を南雲くんの“錬成”で壊して!」
その後、冷や汗をかいているハジメの下へとすぐに駆け寄り、彼とこれからどう動くかを短く打ち合わせる。その直後、前方の地面から無数の赤黒い光が放たれると同時に剣を手にした無数の骨の魔物が現れた。
「ヒッ!? あ、あぁ……」
「こ、こんなに魔物が……前からも!?」
そこかしこから悲鳴が上がる。苦々しい顔をしながら香織が振り向けば、ほとんどのクラスメイトが脂汗を流し、恐怖で顔をぐちゃぐちゃにしていたのが見えた。
「落ち着いて! ある程度なら骨の魔物も私がどうにかするから!」
向こうの恵里が言うには、錯乱したクラスメイト達は骨の魔物のいる先にある階段目がけてがむしゃらに逃げ回るらしい。それもめちゃくちゃに武器を振り回したり魔法を使ったりしてだ。
ならば
「し、白崎さん!?」
「か、カオリン!? し、死んじゃうよ!」
「この程度――“光絶”っ! はぁっ!!」
骨の魔物の集団まで残り一メートル。向こうが迎撃態勢を整えるより先に香織は勢いよく跳躍する。そしてフライング・クロスチョップの体勢をとり、またクロスした腕の前に半径数十センチの光の壁を張った。
「――ふっ。はぁあぁあ!!」
香織が飛び込むと共に数匹のトラウムソルジャーが砕け散っていく。地面に着く直前に前転して上手く着地するとそのまま左手をついて足払いをかける。
「“来翔”――そこっ!」
両腕をピンと伸ばしてから“来翔”を発動し、ナナメ方向に一気に立ち上がった。ラリアットまがいの攻撃で二匹の胴体を砕くと、その勢いのままハイキックや逆水平チョップを仕掛けて次々と魔物を倒していく。
「つよ、い……あれが、白崎の」
「カッコ、いい……」
トラウムソルジャーの群れ相手に大立ち回りをしていた香織だが、不意に後ろから無数の視線を浴びていることに気づいた。チラッと向けば自分に憧れやせん望のまなざしを向けているクラスメイトがいたのである。
「勝てるよ! 皆で協力すればこのガイコツの魔物だって怖くないから! はぁっ!」
「……マジ、なのか?」
「やろう。白崎様に続けぇー!!」
『うおぉー!
彼らの様子から立ち直ったのを理解してホッとすると、すぐに香織は彼らに向けて檄を飛ばす。するとクラスメイト達も何度か互いに顔を合わせてから攻撃に移ってくれた。飛び交う言葉の内容に目を背けつつ、これならやれると香織は笑みを浮かべてながら魔物を倒し続ける。
「ありがとう皆! 出来れば魔方陣も壊して!」
「白崎さん、ごめん遅れた!――“錬成”っ!!」
彼らに指示を出しつつ戦っていると、香織の耳に待ち望んでいた彼の声が届いた。ローリングソバットをキメつつ振り向けば、彼らの間を縫ってハジメがやって来てくれたのである。
「遅いよもう! じゃあ南雲くんのカッコいいところ見せて!」
「頑張るよ!!」
ぷりぷり怒って戦いながらもハジメにおねだりすれば、彼も魔方陣を壊しつつそれに答えてくれた。ハジメが一緒に戦ってくれる。たったそれだけで香織は体中に力がみなぎっていくのを感じていた。やれる。勝てる。そう確信しつつ、香織はハジメと熱狂するクラスメイト達と共に魔物の群れをなぎ倒していったのである。
「皆! このまま階段を目指して!――雫ちゃん達は……っ」
そうして魔方陣含めて全てのトラウムソルジャーを片付け終えると、香織はクラスメイト達に指示を出す。ひとまずクラスメイトのほとんどはどうにかした。なら今度は雫達だと後ろへ目を向けた途端、香織は息を詰まらせそうになってしまう。十メートルはあろう四つ足の魔物が雫達を突き飛ばしたのが見えたからだ。
「っ! メルドさん達が――」
「“聖典”っ!」
もしかすると死んでしまうかもしれないと最悪の予想が脳裏をよぎり、香織はギュッと両の拳を強く握る。それだけは絶対させないと香織は残った魔力全てを使って最上級の治癒魔法である“聖典”を放つ。瞬時に光の波紋が香織を中心に駆け抜けていき、地面に倒れ伏した雫達の傷がみるみる内にふさがっていくのを香織は見届けてホッとした。
「すごい。傷があっという間に……あれ、白崎さん?」
「んっ――ふぅ。南雲くんっ!」
すさまじい倦怠感に苛まれながらもすぐに香織は左手のリストバンドに魔力を送る。宝物庫の機能を持たせたそこから強力な魔力回復薬を取り出し、それを一気に煽った。五秒足らずで容器を空にすると、香織はハジメの名前を呼ぶ。
「うん。何をすればいい? 僕でいいなら頼って!」
「ありがとう!――南雲くん。もし私が魔力を渡し続けることが出来たら、ずっとあの魔物を埋め続けられる?」
「やってみる! 行こう!」
顔を向ければハジメは心配げにこちらを見ていた。そのことに無性に嬉しさを感じてほほが緩みそうになるのを堪えつつ、香織はあることを尋ねる。するとハジメも気迫に満ちた顔でうなずき返し、共に行こうと誘ってくれた。香織は笑みを深めながらハジメと共に雫達と相対する魔物、ベヒモスの下へと走っていく。
「傷、が……ねぇ香織。香織がやったの?」
「うん。助けられなくてごめんね……」
「痛てて……おい南雲、どうしてここに来やがった! 俺と光輝に雫、メルドさん達でも敵わねぇ相手だったんだぞ!」
どうやって倒すかを話し合いつつ、香織達は地面に角が刺さったベヒモスの前まで到着した。すると後ろから雫が不思議そうに香織に問いかけ、龍太郎も悲痛な声を上げながらハジメを叱り飛ばしてきたのである。
「白崎さんに考えがあったから。だから勝てると思ってさ」
だが香織はハジメと互いに顔を合わせて笑い合うと、すぐにベヒモスの方へと顔を向ける。
「最初は私が押さえるよ。後はお願いするね南雲くん」
「わかった。白崎さんのかっこいいところ、また見せて」
「もちろん――“天絶” “封縛”っ!!」
そして地面に埋まった角を引っこ抜き、陽炎が見えるほど熱を発した両の角をベヒモスはこちらに向けてきた。量の前足に力を入れた相手を前にハジメと言葉を交わすと、香織は二つの魔法を詠唱する。
「グォッ!?」
「ハァッ――“来翔”っ!!」
一つは勢いを殺すための防御魔法。至近距離なのもあって初動は香織の目論見通り潰せた。更に光の檻を作って相手を入れる捕縛魔法で完全に勢いを殺すと同時に、香織はその場で跳躍する。相手の頭と同じぐらいの高さにまで浮き上がると、“来翔”で体の後ろから気流を発生させて猛スピードでベヒモスへと迫る。
「やあぁぁああぁぁ!!」
「――グオォオォオォォ!!」
勢いに乗ったまま香織は右足を突き出し、光の檻に足が触れる直前にそれを消す。香織の跳び蹴りは見事にベヒモスの脳天を打ち抜く!
「“縛印”っ!――南雲くん、今だよ!」
「了解っ! “錬成”ぇ!!」
そのまま地面に倒れ込むベヒモスの背中へと着地すると、香織は魔法を発動しながら後ろを振り返る。号令を出せばすぐにハジメは地面に手をついて“錬成”を使ってくれ、ベヒモスの体を地面へと沈み込ませていった。
「これで後は――“譲天”っ!」
「うん! やって、みせるよっ!!」
ベヒモスの全身が沈み込まない内に香織は発動した光のロープをベヒモスの首へと通し、一回転させる。ロープの両端を掴んで引っ張り、更に他者の魔力を回復させる魔法を発動。光のロープを出しつつ、ハジメの魔力も回復し続ける――二人でやるベヒモス窒息死作戦が遂に始まった。
「ぐ、ぐぐぅ……まだ、まだぁー!」
「負けて、たまるかぁー!!」
既にベヒモスの体は半分ほど地面に埋まっており、鼻先は岩の中だ。そこに香織が首を絞め続ければ血管もせばまり、脳に送られる酸素も減る。後は相手と自分達の我慢比べだ。
(少しでも力を緩めたら終わっちゃう! 南雲くんや雫ちゃんが危ない!)
空気を得ようとベヒモスがもがくせいで揺れが激しく、少しでも気を抜いたら落とされそうになってしまう。それに加えて魔力を常時使っているせいで段々と虚脱感が強まっていく。香織は歯を食いしばり、下にいるハジメが必死に抑えこんでいる様を見て気力を振り絞って堪える。
「そん、な……香織と南雲で、ベヒモスが……」
「香織……香織、南雲くん! 負けないで!」
「このまま押し切れぇー! 俺達のことなんて構うなー!」
自分ひとりなら大立ち回りをしてでも勝てたかもしれないが、雫達がいるなら話は別だ。被害を出さないためにもこうするしかないと香織は考えたし、ハジメも乗ってくれた。雫達の声援も受けつつ、もがいて暴れるベヒモスの上で香織は必死にロープを引っ張り続ける。
「――ォ、ォォ……」
「終わった、の……?」
時間にして二分そこら。何度となく岩の橋に亀裂を作り、上に乗っていた香織を振り落とさんばかりの勢いで暴れていたベヒモスの動きが切なげな悲鳴と共に止まった。香織は息を荒くしながらも油断せず首を絞め続けてハジメの魔力の回復を続けていた。だがそれもおそるおそるベヒモスに近づいたメルドがベヒモスの目に刃を突き立てたことで終わる。
「動きは……無いな。白目もむいたままだ――勝ったぞ。よくやった香織、坊主!!」
「そっか……勝った。勝ったよ南雲くーん!」
メルドが勝ちどきを上げ、周囲もまた声を張り上げるのを見た香織は魔法を維持するのをやめた。その場で手をついてベヒモスから降りると、香織はピョンピョンとそこで軽く飛び跳ねながらハジメに向かってブンブンと手を振る。
「お疲れ様、白崎さ――うわわわっ!?」
「南雲くん、お疲れ様っ!……良かった。南雲くんのおかげで勝てたよぉ~」
「い、いや、その、僕なんかそんな……そ、その、離れてぇ~」
そして互いに駆け寄り、嬉しさのあまり香織はハジメに抱きついてしまう。ベヒモス相手に全力を出し切り、また長いことハジメと会えなかったことへのさみしさのせいで香織の頭はハイになってしまっていた。そのせいで人前でやってることにも彼の顔が真っ赤になっているのにも気づかない。ただただ愛しい人のほのかに熱くなった体温を感じ、緩みきった顔をさらしてしまっていたのである。
「香織から離れろ南雲ぉ!!」
しかしそれも長くは続かない。光輝のものと思しき金切り声が通路の中でとどろいたからだ。我に返った香織はすぐに自分のやらかしを自覚して顔が赤くなるも、さっきの声を思い出してムスッとした表情のまま光輝の方へと振り向いた。
「あぁもう……光輝、あんたなに香織の邪魔してるのよ!」
「邪魔なんかじゃない! 香織はちょっと気分が舞い上がって南雲の近くを通っただけだ! それを南雲が勝手に――」
「おい光輝! さっきから言ってることもやってることもめちゃくちゃじゃねぇか! 落ち着けよ!」
聞き間違いであることを香織は期待していたのだが、雫と龍太郎が光輝に詰め寄っているのが見えてしまう。光輝が支離滅裂な理屈でハジメが悪いと言って顔を真っ赤にしているのが見えてしまったのである。これには香織も本気でキレてしまい、一瞬だけ口元が引きつってからストンと表情が抜け落ちてしまった。
「ふーん。そっか……ねぇ南雲くん。ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
なら事情を話してないクラスメイトはともかく、光輝はどうでもいいやと思いながら香織はニコニコしながらハジメの方を振り向く。そして彼に質問を投げかけた。
「あ、あの、さっきの無表情……いえ、なんでもないです。どう、したの?」
「うん。昨日ね、私が一緒なら
ハジメの方も何秒かしどろもどろになっていたが、香織は見なかったことにした。そして昨晩自分がハジメを守ると宣言した後に話したことを話題に挙げる。すると彼も真剣な顔つきで香織を見つめ返してきた。
「……わかった。行こう。どこまでも」
――昨晩彼に話したことの中に、向こうの世界の恵里が前世? で体験した記憶のことも含まれていた。そこでエヒトの正体を香織も知り、今自分がいる世界のエヒトも野放しにするとまずいかもしれないとハジメ
家族を守るためなら、と一緒にオルクス大迷宮を攻略することも彼は承諾してくれており、改めて尋ねれば力強く首を縦に振ってくれた。
「ありがとう南雲くん。なら」
「あの、白崎さん? なんで僕に近づい、て――えぇっ!?」
改めてハジメの優しさを、心の強さを噛みしめながら香織は彼に近づいていく。そしてそのままハジメをお姫様抱っこすると、香織は雫の方へと顔を向けた。
「あ、あの、白崎さん! これちょっと恥ずかしい!」
「雫ちゃん。後はお願いね」
「見られてる見られてる! 僕男の子!!」
「あー、そう。あれ本気なのね……で、ちょくちょく帰ってくるのも?」
「僕もう死ぬ! 恥ずかしくて死んじゃう!!」
「うん。そのつもりだよ。流石に洞窟の中で寝泊まりはワイルド過ぎるし」
腕の中でもぞもぞしながら抗議してくるハジメはあえて無視し、香織は雫と話をする。先の恵里が体験した過去のことは彼女にも語っており、その後の身の振り方についても話していた。自分までいなくなったらクラスの皆がどうなるかわからないと雫から訴えられたこともあり、香織は彼女を誘う気にはなれなかったのだ。そこで寝る時だけ部屋を借りることとなったのである。
「うぅ……もうお嫁に行けないよぉ。白崎さんのいぢわるぅ……」
「大丈夫だよ南雲くん。私のお婿さんにするから。ね?――ごめんね皆。私、行ってくるよ」
そして両手で顔を覆ったハジメに苦笑しながら香織は声をかける。恥ずかしいのはわからなくもないし、同様のことをハジメにやられたら彼をぽかぽか叩くぐらいはやるだろうと香織も考えていた。けれども雫と大事な話をしてたし、抗議してくる彼のことがかわいかったからあえて香織は放置していたのだ。好きな人にちょっぴりイタズラしてみたくなったのである。
「その……はぃぃ。す、末永くお願いします……」
「うん。ずっと一緒にいてね」
一応のフォローを入れて指の先まで真っ赤になったハジメに微笑んだ後、香織はクラスメイト達の方へと視線を向けた。
「香織? 待ってくれ、どこに行くんだ香織?」
「し、白崎様! 私も連れてって!」
「カオリンいなくなるの!? カオリンがいなかったら鈴達困るよ!」
「おい香織! 独断行動を許した覚えは――」
「大丈夫。ちょっと大迷宮を先にクリアしてくるだけだから。毎晩雫ちゃんの部屋に戻るつもりだから――行ってきます!」
ギャーギャー紛糾する一同を背にして香織は石造りの橋を横に駆け抜けていく。そして端まであと一歩のところで足に思いっきり力を込め、そのまま奈落へとジャンプした。
「いや待ってちょっと待って怖い怖い怖い!!」
「大丈夫だよ南雲くん。ちゃんと足場出しながら降りるから!」
「そういう問題じゃ無くってぇ~!!」
ブーツに付与された“空力”を駆使して勢いを殺しつつ、香織はオルクス大迷宮を下へ下へと走り抜けていく――かくして異世界に渡り、己を磨き続けた少女の旅が始まった。どれほどの困難が待ち受けていようとも、少女は愛と鋼の肉体と手にした力でその全てを打ち砕いていくだろう。だって彼女は無敵なのだから!
今回使用した挿絵及び元ネタはsahalaさん(https://syosetu.org/user/6986/)のAI絵です。実にいいものを拝ませてもらいました。
追記:色々とやらかしてたんで修正しました(土下座)
2025/9/28 またちょっと修正しました(土下寝)
2025/9/30 またまた修正しました(白目)
おまけその1:ブルックのある場所にて
その後ハジメと協力してオルクス大迷宮を突っ走り、途中で助けたアレーティアとも力を合わせ、なんやかんやで生成魔法を香織達一行は取得する。またその途中でハウリアという亜人族にも力を貸し、なんやかんやでシアという少女と共に旅をすることになった。
「あら~ん、いらっしゃい♥ 可愛い子達ねぇん。来てくれて、おねぇさん嬉しいぃわぁ~、た~ぷりサービスしちゃうわよぉ~ん♥」
……そして一行はなんやかんやでブルックの町に立ち寄り、食料などの補給をしていた。ギルドの受付の人からオススメされた冒険者向けの店に寄った時に事件は起きる。店に入ると身長二メートル強、全身に筋肉を纏った化けも……変わったヤツに接客されたのである。
「と・く・に。そっちのしっかり鍛えてる子……すごいわね。その顔と筋肉からして一途でいい子なのがわかるわぁん♥」
見事な肉体美に香織も思わず見入ってしまったのだが、不意に向こうから評価されたことで香織もちょっとだけニヤけてしまう。
「わかりますか?
「やぁだもぉ~♥ ほめられたって何も出ないわよんっ♥」
前向きでダブルバイセップスのポーズを一瞬とった後、左手を腰に、右手を胸元に当てながらドヤ顔で鍛えた理由を香織は語る。その後香織も店員らしき変人の肉体美を評価すれば、あちらもサイドリラックス、サイドトライセップス、モストマスキュラーとポージングを変えながらも返事をしたのである。
「あ、そういえばギルドの受付をしていたキャサリンさんからオススメだって聞いたんですけど」
「あらキャサリンから。ふふっ。ならあたしに任せてぇ~ん♥ まずはあなたにピッタリのもの、見つけてあげるわぁ~ん♥」
「ありがとうございます……じゃあちょっと待っててねアレーティア、シア」
そう言うとその変人は香織の手をそっと掴んでくる。香織も一緒に来ていたアレーティアとシアに手を振ると、一緒に店の奥へと向かっていったのであった。
「……ん。流石香織様。似てたからこそ共感するものがあったのかもしれない」
「あーうん。まぁそうですねぇ」
一方、アレーティアは腕を組みながらうんうんとうなずいている。ただしシアは半目で二人を見送っていたのであった……。
おまけその2:この世界のアレーティアちゃんについて
平行世界の恵里に入れ知恵されたこともあり、こちらの世界でも香織達はアレーティアを探して見つける&封印された真相を見せようと考えている。
そんな訳で大迷宮を進んで無事彼女を発見。なお魔物肉を食べて更にバルクアップした香織が視界に入ったことからアレーティアは驚いてむせこんでしまい、いきなり死にかける。その後、香織達はアレーティアの事情を聞いてむせび泣き。特に香織は異世界に長いこといた経験もあったせいで余計に長いこと泣いてしまい、アレーティアの方が引いてしまう。
そしてハジメと香織が腕を差し出して血を吸っていいと申し出た際、香織よりまだムキムキ具合がマシなハジメの血を吸って回復。その後真実を知ってアレーティア号泣。二人に不信感やらを抱いたことを本気で悔いる。サソリモドキも即座に“蒼天”発動で燃やして香織達がトドメ。一緒に行くことに。
道中、香織のフィジカルの強さを何度となく目撃したせいで「やっぱり魔物肉食べた方がいいのかな」と悩み、最終的に口にする。結果、髪の毛も金髪からアッシュブロンドへと変化。二ヶ月大迷宮で訓練をするのも相まってステータスの大体の数値も一万近く、魔力に至っては二万そこらにまで化けることに。普通に痩せマッチョ。なお模擬戦で香織が“聖絶”を使いながらほぼ無傷で突っ込んでくることが度々あるせいでちょっとトラウマ気味に。
またこちらだと普通に香織達が雫の部屋を行き来して寝泊まり(食事は別)してるため、ピロートークを介して雫とも仲良くなる。またクラスメイト達との仲も一部を除いて良い。ちなみに香織とハジメに対する感情は“感謝”と“忠誠”だったり。
なおシアとの相性は微妙に悪い。ことあるごとにアレーティアが筋肉つけろとアレコレ言うが、「見た目がゴツくなりすぎるのはイヤですよぉ~!」とシアが拒んでるせいだったり。
おまけその3:こっちの世界のクラスメイト達
光輝がトラップ起動の犯人なせいでクラスメイトからの人望失墜。その上自分のせいで、と自覚があるせいで思いっきりメンタルがボロボロに。ここで雫と香織が説教をかますためちゃんと更生して一からやり直すことに。ちなみに恵里は関心を別のものに移すアーティファクト(今回は鈴への友情。恵里達が香織に情がわいたため)を香織がつけるのと雫が見張りもするため実質無力化。
そしてクラスメイト達がベヒモス戦で心がへし折れるほどのダメージを負わないのと香織の活躍に頭を灼かれてしまったせいでほとんどが筋肉に目覚めてしまう。どいつもこいつもやたらと鍛え出すし、香織が崇拝に近いレベルで敬われてしまう。もちろん香織がすごい居づらくなる。なおハジメだけは印象改善程度に収まってたり。
結果、愛ちゃん親衛隊は結成されないし、オルクス大迷宮で魔人族と出くわしても数の暴力&筋肉で普通に勝利してしまう。しかも光輝が更生して戦うことへの覚悟もキメてるせいでカトレアが特に見せ場も無くやられる。結構イレギュラーな流れとなっている。