あまりありふれていない役者で世界逆行   作:田吾作Bが現れた

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また更新が遅くなりました(白目) いつの間にか経過してる時間が全部悪いんや(最悪の言い訳)

まぁ寝言は置いておいて、こうして拙作を読んでくださる皆様への惜しみない感謝を。
おかげさまでUAも157243、お気に入り件数も836件、しおりも386件、感想数も550件(2023/3/3 0:29現在)となりました。本当にありがとうございます。こうして目を通して下さり、お気に入りに入れてくれたりしおりをはさんでくれる皆様には感謝しかありません。

そしてレミイムさん、Aitoyukiさん、拙作を評価及び再評価してくださり誠に感謝いたします。こうして評価していただけることでやる気が湧きました。ありがとうございます。なんとかそれを執筆スピードに回せたらいいかなー、って(白目)

今回の話は分割した都合上短め(約8000字程度)となっております。いつもより短いですが本編をどうぞ。


六十三話 先人の後をゆく者

「大丈夫ですか先生」

 

「ええ。体も軽いですし、もう意識もハッキリしてますから」

 

 光輝と龍太郎らが愛子とデビッドらに肩を貸そうと近くに寄るも、五人ともそれを断って自分達が使っていたイスに座り直す。そんな彼女達の様子を見てもう大丈夫だと確信した恵里はパンと手を叩いて声をかけた。

 

「それじゃ先生達も落ち着いたことだし、説明に戻ろっか」

 

 先程の愛子とのやり取りで少し時間を食ったものの、経緯に関する説明は既に大方終わっている。後はせいぜい神代魔法に関してのものぐらいだ。そこでハジメ、鈴、光輝に目配せをすれば三人ともそれにうなずいて応えてくれた。

 

「後は俺達が取得した神代魔法についてですね。その一つが生成魔法。無機物……えっと、金属や石などを操作する魔法です」

 

 光輝がまず生成魔法について説明しようとし、つい出た『無機物』という単語があまりポピュラーでないことを思い返して言い直す。ハジメも使い慣れた言葉が使えないことに苦笑しながらもすぐに宝物庫から適当な金属の塊を取り出して包丁やお玉、或いは板状に形を変化させていく。

 

「次は空間魔法です。空間に作用して壁を作ったり、空間に穴をあけて別の場所に行ったりと色々なことが出来ます――“界穿”」

 

 次は鈴が得意な空間魔法を発動し、それがどんなものかを見せていく。食堂にいきなり現れた光の膜の先には先程自分達がいた謁見の間が見える。あまり驚かなかった生成魔法の時とは違い、これには誰もが大いに驚いた。空間に壁を作るというのは結界魔法と大差ないが、場所と場所を繋ぐものなど彼らの知識には無かったからだ。

 

「実際に移動することも出来ます。けど、結構魔力を使うので早めにお願いします……」

 

「ではこの私、メルド・ロギンスが。鈴、もう少しだけ頑張ってくれ」

 

 とはいえこんなとんでもない魔法である以上燃費というものはなかなかに悪いらしい。ちょっとだけ辛そうにしている鈴を見てメルドがすぐさま立候補し、他に気になった重鎮も彼の後をおっかなびっくりついていく。そして何度か往復してこちらに戻ったのを確認すると、鈴は光の膜を消し去り、大きくため息を吐いた。

 

「「お疲れ様、鈴」」

 

「お疲れ、鈴」

 

「よくやった鈴。しかし本当に便利なものだな」

 

「ありがとうハジメくん、恵里。光輝君にメルドさんも」

 

 そばにいた恵里達から声を掛けられ、それに返事をしていく鈴。もう一度息を軽く吐くと周囲を見渡しながら鈴は再度空間魔法についての説明に戻る。

 

「先程御覧になったり体験されたように空間魔法にはああいうものもあります。後は強力な結界魔法や空間そのものを爆発させたり、えーと……空間そのものを真っ二つにしたり。様々です」

 

 鈴が説明を終えると様々な反応が飛び交っていた。やれそれ程の力があれば魔人族にも負けることはないだの王宮の緊急避難に使えるだのどこでもド○じゃねーかだの生成魔法と組み合わせれば小さな大結界が出来るだのといったものだ。

 

 それを見て誇らしげになった恵里はフフンと胸を軽く張りながらも、感慨深げに思いを口にする。

 

「さっすが、鈴にハジメくん。ボクの仲間達だよ」

 

「……ありがと、恵里」

 

「ありがとう、恵里――皆さん、説明に戻ります。俺達が取得した最後の魔法は魂魄魔法。ハイリヒ王国の教会のある場所に取得用の魔法陣が隠されていたのですが、これは先程体験されたように魂に作用したり、魂そのものを造るものです」

 

 ちょっと照れくさそうに返す鈴を見て軽くニヤけていると、自分にお礼を返した光輝が魂魄魔法について語り出したため、すぐに一歩前に出てその説明を補足する。

 

「この魔法が主に出来ることはさっき光輝君が説明した通り。それとこれ、降霊術と同じことも出来るから死体の操作だって可能だよ」

 

 おそらくこれが降霊術のルーツだろうと確信していた恵里がそう述べれば、やはりといった様子でハイリヒ王国の重鎮やルルアリアらはそれを聞いている。あまり騒いでいない辺り、すぐに連想が出来たのと移動前にしまったゴーレムの存在が大きいのだろうと恵里は見ている。

 

「とりあえずおおまかな説明は以上です。他に質問がある方はいませんか?」

 

「な、ならば大結界の代わりになる防御施設を造ってはいただけないだろうか? 現状ハイリヒ王国が丸裸のままなのだ!」

 

「先程謁見の間でそちらのお二方が述べてたように兵士どもを服従させる道具を作ってはいただけないか? 大半はそちらが無力化で留めていただいたおかげで戦力の激減は避けられたのだが、それでも近衛が壊滅したダメージは大きいのだ」

 

「いや、これはメイドや使用人達にも用意していただきたい! この広い城を管理、維持するとなると新たに募集をしてもどれだけの人間が来るかもわからぬし、何より使えるようになるまで時間がかかるのです!!」

 

「お、落ち着いて! 落ち着いてください!!」

 

 そうして光輝が質疑応答に移ればすぐさま上層部の人間から矢継ぎ早に質問、というかお願いを投げかけられてしまう。そりゃそうだよなぁとやや他人事みたいに応答に追われる光輝を横に見つつ、恵里は“鎮魂”で一旦頭を冷やした方がいいだろうかと考える。が、それも杞憂に終わった。

 

「静粛に!!……失礼しました。後で私達の陳情をしたためたものを用意させていただきます。私達のことを思うならばどうか目を通していただけませんか?」

 

「あはは……ありがとうございます王妃様。もちろんちゃんと読ませてもらいます」

 

「実際にやるかは別問題だけどね。最優先はボクらのことだから」

 

 またしても出たルルアリアの一喝に場は静まり返り、後々陳情書を出すことを伝えてきた。そのためお人好しの光輝が余計なことを言い出す前に恵里がすぐに釘をさし、けん制しておく。目を通せばまず間違いなくこのお人好しどもはやれる範囲で全部やろうとするからだ。

 

 自分達が優先だよ、とじっとりとした眼差しで伝えれば光輝だけでなく友人の大半もタジタジといった様子であった。

 

「全く……とはいえ恵里の言うことも尤もだ。お前達のことで優先すべきなのはお前達のことだからな。が、こちらのことも少しは気にかけてくれ。一応エヒトとの戦いに参加するんだからな」

 

「まぁメルドさんの言う通りだけどさ。でも一々聞いてたらキリがないじゃん。ハジメくん達も聞こうとするだろうし」

 

「まぁそれは違いない」

 

 少し呆れた様子のメルドに先の発言をたしなめられる恵里であったものの、ハジメ達が際限なくお願いを聞いてしまいそうなことにはすぐに同意する。ハジメ達も苦い表情を浮かべるものの、やはり心当たりがあるのか反論はせず。その様をだろうなぁと思って大介達四人は苦笑し、やや呆れた様子でアレーティアも見ていた。

 

「……あの、地固めは必要だと思いますけど、まず皆さんのことを優先すべきです。優先順位をはき違えたらいけません」

 

「あ、はい。すいません」

 

「んで、他に何かある?――無いんだね? じゃあボク達はこれから作業に移るよ」

 

「お待ちください中村様」

 

 こればかりは国を動かしていたアレーティアに敵わず、光輝も思わず平謝りしてしまう。とはいえこれで話もひと段落着いたため、これから新たに手に入れた空間魔法の研究がてらアーティファクトの作成に移ろうかとした時、ふとルルアリアの方から声がかかった。

 

「今度は何? 何をする気?」

 

「大したことではありません。その作業とやらに王女を、リリアーナを加えてはいただけないでしょうか」

 

 一体何を言われるのやらと尋ね返せば、その作業にリリアーナも参加させることをお願いしてきたのである。一体どうしてと思いはしたものの、大方一枚かませて何かするつもりだろうと考えた恵里は思わず眉をひそめた。

 

「あ、そう。じゃあきゃっ――ぁ」

 

 何を要求されるかわからなかったため、すぐに却下と言おうとしたものの、ハジメに手を掴まれたことでそちらの方に意識が向いてしまう。

 

「恵里、これぐらい別にいいでしょ」

 

「えー、だって……」

 

「俺達の手の内が露わになるのが嫌なのか? だったらさっき見せてるだろ。それとも単純に気に食わないとかそういう理由……なのか?」

 

「それは、その……」

 

 少し困ったような顔でなだめてきたハジメに口をツンと尖らせながら文句を言うも、光輝から諭されるように問いかけられれば答えに窮してしまう。事実彼の言う通りなのだから。そのリアクションに疑問と確信半々で問いかけた光輝を含めた面々が思いっきり呆れかえってしまった。

 

「そんなことだと思ったよ……」

 

「だってさ……ハジメくんだけじゃなくて皆を追い詰めようとしてた奴らだもん。気に食わないのは気に食わないよ」

 

 皆を窮地に追いやったことの恨みはまだ忘れていないし忘れるつもりもない。そんな様子の恵里を鈴は半目で見つめるも、ハジメだけはため息を吐きながらも彼女の手を取りながら胸元に手繰り寄せる。そして優しく抱きしめつつ語り掛けた。

 

「許してあげよう、恵里。だって今は一緒に戦う()()なんだから」

 

 ハジメにはわかっていた。恵里がどうしてまだ頑なであるかを。だから彼女の心がほぐれるよう少しずつ問いかけていく。

 

「さっきからずっと上の()()にいようとしたのも怖かったからだよね? 僕達に何かあったらと思うと不安でさ」

 

「……うん」

 

「でもさ、恵里。それは本当に必要? 大介君とアレーティアさんのことを本気で崇拝しそうな人達だし、リリアーナ様だって信治君にときめいてる。そんな王国の人達が裏切るつもりだと恵里は思ってる?」

 

「おいハジメマジでやめろ。なんか感情がぐちゃぐちゃになって死ぬんだよ!!」

 

「あぅぅ……」

 

 外野四人が顔を真っ赤にしているのを無視しつつ、恵里の頭をそっとなでながら問いかける。そうすれば恵里もハジメを強く抱きしめ返し、少しだけ悔しさをにじませながら不満を漏らした。

 

「まぁ南雲さんったら……その、えぇ。ふふっ」

 

「お、おう……ったくハジメ、テメェこの野郎……あ、いい匂い」

 

 ハジメが語った通り王国の人間は大介やアレーティアを新たな神として崇める勢いであるし、信治もまた救国の英雄という扱いでリリアーナも恋をする女の子らしい表情を浮かべている。それもわかっていたが故にハジメの問いかけにうなずくしかない。ただの杞憂でしかないとわからされるしかない。

 

「確かにそうだけど……ズルいよ、ハジメくん。そんな風に言われたら何も言えないじゃん」

 

「ごめん」

 

 謝罪するハジメに恵里はもう黙って彼の胸に顔をうずめるだけだった。鈴のうらやましげな視線を受けることしばし、顔を上げた恵里は王国の上層部の人達に向けて頭を下げた。

 

「……ごめんなさい。こっちも神経質でした」

 

「いえ。私達がしたことを考えれば中村様がそのようになるのも致し方ありません。ですので気になさらないのであればそれ以上のことは申しませんわ」

 

 謝罪を口にすれば空気がどこかホッとしたものへと変わる。ルルアリアもまた軽く安堵した様子でそう返せば、恵里も助かったといった具合に口角を緩めた。

 

「そう言ってもらえると助かるよ。じゃあさっきのを受け入れる代わりにもひとつお願いがあるんだけどさ」

 

「なんなりと」

 

「そっちの王女様だけじゃなくてメルドさんにも来てほしい。ハイリヒ王国の中で一番神代魔法に接してたのがメルドさんだろうからね。国としてもそっちの方が都合がいいでしょ?」

 

 その頼みはメルドも自分達の研究に参加させること。王国のために残ることになったからこそ自分達が習得した各種神代魔法やこれから作るアーティファクトについて詳しく知っておいてほしいのだ。ルルアリアも口角を上げながらそのお願いにうなずいて返してくれた。

 

「こちらとしても助かります。ではメルド、彼らに随意なさい。よろしいですね?」

 

「御意。すまん、助かる」

 

「ま、死線をくぐり抜けた仲間だしね。これから王国を守ってもらうんだからちょうどいいよ」

 

「恵里が言い出さなくても僕か誰かが進言してたと思います。ですから気にしないでください」

 

 自分達に感謝を述べたメルドに対し、恵里もハジメもいつもの柔らかい表情を浮かべてそう返す。もちろんそれは友人達も同じであり、彼のために協力は惜しまないという思いが見て取れる。故にメルドも口角をほんのわずかに緩めつつも、人前ということでせき払いをしてそれをごまかす。

 

「ではこれから俺達はハジメが使っていた部屋へと向かいます。よろしいでしょうか」

 

「すいません天之河君。私は永山君達の方についていたいのですがいいでしょうか」

 

「お願いします、畑山先生。永山達を、頼みます――じゃあ行こう、皆」

 

 愛子だけが何とも言えない表情をしている重吾達のそばにいたいと頼み込みはしたものの、これから作業に移ることに誰も異を唱えはしない。そうして恵里達はリリアーナと侍女のヘリーナ、メルドも引き連れて目的の部屋へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

「ようやくか。だがそちらの女どもは本当に大丈夫なのか?」

 

 そうして話をしながらハジメの使っていた部屋へとたどり着いた一行は、昨晩寝るために設置してあった自作のベッドを宝物庫へとしまい、取り出したイスやテーブルを運んで作業がしやすいように模様替えをしていた。

 

 そんな中、作業がてら鈴が“界穿”でフリードが待機していた教会とこの部屋を繋ぎ、彼を招いたのだがここに来て早々リリアーナとヘリーナに対して軽い不信の目を向けたのである。

 

「……俺の仕える国の王女とその侍従だ。気持ちはわかるが信じてくれ、フリード」

 

「いえ、そちらの方の懸念はもっともです。もし機嫌を損ねたというのならばお好きにしてくださっても構いません」

 

「な、なぁフリードさん。姫さんが変なことしないよう俺が見とくからさ、頼むよ。この通りだ!」

 

 そこですぐにメルドが信じて欲しいと頼み込み、リリアーナもまた何か気を害したのならどうなってもいいと毅然とした態度で訴える。また信治が土下座する勢いで頭を下げたため何も言えなくなり、ため息を吐くと彼らに向き直った。

 

「わかった。こちらからはもう何も言わん。一応通される前に話は聞いたからな」

 

「助かります――よし。じゃあ皆、これからハジメ達が手に入れた空間魔法、それとフリードさんの変成魔法がどんな魔法なのか調べていこうか!」

 

「? 光輝さん、何を仰っているのですか?」

 

「お前は何を言ってるんだ」

 

 目をつぶってそう返したフリードに光輝は頭を下げると、早速二つの神代魔法の真髄について調べようと音頭を取ろうと声をかける……が、案の定待ったがかかった。

 

「私の変成魔法については既に話していただろう。もう忘れたのか?」

 

「覚え間違いでなければ私も先程の説明会で空間魔法がどんなものかをうかがっています。応用方法の研究でしょうか?」

 

「王女様の言うことも一応は合ってるよ。でもね、そういう理由じゃないんだ」

 

 フリード、リリアーナ両名から違う形で質問が来るもののそれに恵里は冷静に答え、そこにメルドが被せる形で説明していく。

 

「王女様、先程の説明会では混乱してしまうと考えて光輝達は話しませんでした。理由は神代魔法を取得した時の説明です」

 

 自分の場合は又聞きですが、と強い後悔をにじませながらメルドは語っていく。ハジメ達の口から語られた神代魔法の取得時の説明を、信治のイタズラが原因でその時の説明が正しくはなかったことを。

 

「そして畑山殿の技能とハジメの気づき、検証を経てわかったのです。あの時取得した生成魔法はああいったものだった、と」

 

「元が金属への魔法や技能の付与だと? 全然違うではないか。どうなっている」

 

「……メルド、先程正しくはないと述べていましたがその説明自体は間違っていたのですか? どうなのですか」

 

「えぇ、間違いではありません。しかしそれだけです。厳密には本来出来ることの一つでしかないに過ぎません。だからこそ、わからないのです」

 

 メルドの返答にリリアーナは絶句し、ヘリーナも目が開きっ放しとなっている。何故こうも説明が食い違うのか。否、何故わずかな範囲にしぼって説明がされていたのか。

 

 解放者がはるか昔の人間であったことを考えれば作為的にこうしたのは間違いない。だがその意図が読めないのだ。何故力を託すというのに正しい説明をしなかったのか。これが何を意味するのかリリアーナは考えあぐねてしまったのである。

 

「それはあくまで生成魔法に限った話ではないのか? 他は関係ない可能性も――」

 

「いいえ、フリードさん。それは違います」

 

 自分が手にした力への認識が根幹から揺らいでしまいそうになり、不安を感じたフリードはそう反論するもそれにハジメがノーを突きつけた。一部しか説明がされてない、という証拠は他にもあったからだ。

 

「フリードさんを呼ぶ前、実は僕達はアーティファクトを作っているんです――この子ですけど」

 

 そう言いながらハジメは大型犬を模したゴーレムを宝物庫から取り出すと、すぐに声をかけて芸をさせる。お手、お座り、おかわりといった様々なものだ。その様子を見てどこか違和感を感じていたフリードに恵里が説明をしていく。

 

「ねぇフリードさん、どうしてこのゴーレムは芸が出来てると思う?」

 

「いや、それはコイツが意志を持っているから――っ!!!」

 

 恵里の問いかけに普通に答えようとしたその時、自分の中でかすかに感じていた違和感の正体にフリードは気づく。そして同時に戦慄する。この女はとんでもないことをやってのけた、と。

 

「そうだよ。この子にね、魂を吹き込んだんだ。この子に宿る魂に色々と芸を仕込んだんだよ。魂魄魔法でね」

 

 途端、フリードの口の中が一気にカラカラになった――なにせ取得時に聞いた説明は大雑把に言えば『魂に干渉できる魔法』というものだったからだ。ただ干渉するだけでなく、魂すら造ってこのゴーレムに宿したとなれば矛盾する。生成魔法だけがその効果の説明を限定していた訳ではない。魂魄魔法すらその説明を省いていたのだと認めざるを得なくなる。

 

「多分フリードさんが取得した変成魔法は有機物――生物に由来する物質に干渉する魔法だと思うんです。だって生成魔法の対になりそうなものですからね」

 

「そうだよねぇー。何せ『生き物を魔物に作り替える』、でしょ? ()()に干渉して作り変えてるんだからクロっぽいよねぇ~」

 

 推測を述べるハジメと彼に続く恵里の言葉にフリードはもう二の句が継げなくなってしまう。

 

 まさか自分が手に入れたものは自分が思っていた以上にとてつもない力だったのか、という驚きと変成魔法の真実に迫ったハジメと恵里への畏怖で彼の頭は満たされてしまっていたからだ。

 

「あ、でもこれはハジメくんが導き出した結論ですよ」

 

「いやいや、恵里が前世のことを話してくれて、それで色々話し合ってたらこうなんじゃないのかな、って思っただけで。こうして情報を持ってきてくれた恵里が一番すごいですよ」

 

「何言ってるのハジメくん。そのボクが出した情報を元に色々考えて推測を出したハジメくんが一番すごいじゃん。謙遜しないでよ」

 

 三人でやいのやいのと言い合っている様を見てフリードは脱力し、額に手を当てて深くため息を吐いた。どういう形であれ彼らが味方でいてくれて助かった、と。

 

「……これ程の知恵があって、実力もある方を排除しようとしていたなんて」

 

「ともあれ南雲様がたが私達を処断することなく、配下に置いてくださったのは幸運としか言えませんね。リリアーナ様」

 

 それは近くにいるリリアーナとヘリーナも同じようで、かなり疲弊した様子を見せている。顔を合わせれば『あぁ、そちらも』といった具合に乾いた笑いを浮かべ、自分も表情筋がヒクついたのをフリードは感じていた。

 

「はい三人とも、話はそこまで」

 

「それ以上相手の褒め合いやってたら日が暮れちまうぞ、ったく」

 

 ふとパン、と光輝が手を叩いて恵里達に声をかけた。このままでは話が進まないからだ。龍太郎も何やってんだか、と言わんばかりの表情で見つめてきたため、むぅとほっぺを軽く膨らませながらも恵里は龍太郎をにらみ返す。

 

「そうだね。ごめんね光輝君、龍太郎君」

 

「いいじゃん二人とも。生成魔法の真髄に気付いたのもハジメくんのおかげなんだよ。もっとハジメくんほめてよ」

 

「いやいやここはその気づきに至るための情報を持ってきた恵里をちゃんとほめてあげたほうが――」

 

「そこじゃねぇんだよお前ら。ほら光輝、とっとと説明続けてくれ」

 

 鈴だけは我に返った様子ではあったものの、恵里とハジメはまだ相手を持ち上げようとしていたため、心底呆れかえった龍太郎が催促し、光輝もため息を吐きたくなるのを堪えながら話を再開していく。

 

「えー……とにかく、空間魔法と変成魔法にも隠された力というか、本来の効果があると思うのでそれを調べたいと思います。意見はありますか?」

 

 その言葉に誰も反論はしなかった。




没タイトル「Giant steps」
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