あまりありふれていない役者で世界逆行   作:田吾作Bが現れた

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リアルの都合で遅くなりました。申し訳ありません(白目) これもそれもハーメルンとカクヨムにある名作が面白くてタイムシーフなのが悪いんや(責任転嫁)

では冗談はここまでにして読者の皆様への盛大な感謝を。
おかげさまでUAも168751、しおりも399件、お気に入り件数も848件、感想数も606件(2023/5/21 15:15現在)となりました。本当にありがとうございます。こうして拙作を読み返して下さる皆様には頭が上がりません。

そしてAitoyukiさん、今回もまた再評価してくださってありがとうございます。無論拙作を書くモチベーションが消えた訳ではありませんが、こうしてまた筆を執る力をいただきました。本当にありがとうございます。

では今回のお話を読むにあたっての注意点として結構長め(約15000字程度)となっております。ではそれに注意して本編をどうぞ。


六十八話 迷える兎はどこを行く?(後編)

「助かったぞお前達……やっとこっちも一息つけるな」

 

 シアやハウリアに関しての問題を光輝達に任せ、メルドと合流した恵里らは早速帝国兵達にはめる洗脳効果のある首輪作成に移った。今回はアレーティア及び幸利がいるため恵里だけが首輪に込める効果を負担せずに済むのは大きい。何せ数が四百名にも及ぶのだ。

 

「すいませんメルドさん。ちょっと時間がかかっちゃいました」

 

「これ程の数だ。何日もかかると思っていたが、日をまたぐどころか数時間そこらで済ませたんだ。感謝こそすれど責めなどするものか」

 

 そのため全員で分業して作業にあたった。首輪そのものの作成はハジメが、首輪に魔法を付与するのは恵里、アレーティア、幸利の三人が行う。大介、優花、奈々は魔晶石に魔力をこめて四人に渡すバッテリー兼取り付け係だ。

 

 事前の取り決めではこうだったのだが、実際はメルドや他の騎士団員も魔晶石に魔力を込めるなり首輪の取り付けを手伝ってもらったりしている。そのことには恵里らも感謝を示していた。

 

「……わかってるけど罪悪感あるね」

 

「そうよねー……向こうの自業自得なのはわかってるんだけどさ」

 

 そうして作業を終えた奈々と優花は未だ拘束されている帝国兵を見ながらボヤく。既に彼らは敵意を向けるどころか怯えに怯えて自分達を見返しており、その様子を見た二人はため息を吐いていた。

 

「ったく、園部も宮崎もいい子ちゃんかよ。洗脳なんて今更だろうがよ」

 

 そしてそんな二人を見て大介は軽く呆れた様子を見せた。帝国兵のやろうとしたことは彼女達も聞いているのだし、恵里がこういうことをやるのも今更である。にもかかわらず未だに真っ当である優花らに呆れとからかい混じりの称賛、それとちょっとした憧れの混じった言葉をぶつけたのだ。

 

「大介……」

 

「あー、うん。檜山君の言うことはわかるよ。でも……」

 

「あの様を見たら……ねぇ?」

 

 アレーティアはそんな大介に言外に言い過ぎだと服の袖を引っ張ることで伝え、奈々と優花は大介の指摘を聞いてある一角に視線を向ける。そこは特に異様な空気が漂っていた。

 

「いいか皆、()()は今こそ罪を悔い改めてこの亜人の皆さんに、そして使()()()()()のために尽くすべきだ!」

 

()達が間違ってたんだ! こんな悪行を喜んでやるなんて……皆、血の通った素敵な隣人なんだ! 今こそ生まれ変わろう!」

 

「時は来た……弱肉強食というルールに囚われていた我らはそれを捨て、新たなステージへと向かうのだ。人も亜人も皆友達なのだ。それを我は使徒様のアーティファクトを通じて知り、この境地へと達したのだ」

 

 ……そう。例の首輪の効果で心が『とってもきれい』にさせられた奴らが同僚どもを説得していたからだ。帝国兵の中で特に気性が荒い奴らがこの首輪を外そうとして思いっきりカウンターを食らい、魂を()()されてしまう。結果、ラブ&ピースがモットーの奴らになってしまった。

 

「怖ぇ……怖ぇよぉ……」

 

「ぐ、グリッド隊長ぉ、目ぇ覚ましてくれぇ……」

 

「嫌だ、嫌だぁ……俺こんなのになりたくねぇよぉ」

 

 もちろん帝国兵の奴らはそんな同輩どもを見て怯えに怯えきっていた。何せちょっと前までは『力ある者こそが全てを支配する権利を持つ』といった具合の自分達と同様の思想を持っていた奴らなのだ。それがいきなり反転したことを考えれば怖くて仕方がないのも無理はない。それを哀れんで優花と奈々は先程あの言葉を漏らしたのである。

 

「いいだろ別に。力がある奴が偉いなんて考え持ってる奴らにゃいい薬だ」

 

「僕もかなぁ……シアさん達のこともそうだけど、浩介君達をただお金のためだけに殺そうとしたことを考えたらね」

 

「これぐらいやんなきゃ反省なんてしないって。アイツらボクや優花達の体をチラチラ見てきたじゃん。こっぴどくやられてる癖によくやるよ」

 

「そういやそうだったわね。同情して損したわ」

 

「うん、そうだったよ。別にいいやあんな人達」

 

 ちなみに幸利とハジメは特に同情はしておらず、恵里も遠慮がちに色目を使ってきた奴らが多くいたことから呆れていたのを伝える。結果、優花と奈々もそれを思い出して無表情になり、すぐに彼らから視線を外した。

 

「まぁ敗北を受け入れられない以上、相応の目に遭っても仕方あるまい。さて、もう一仕事頼めるか」

 

 『帝国にケンカを売っといて無事に済むと思うなよ』だの『世界を敵に回して生き延びれると思ったら大間違いだ』と怯えながらもたてついていた帝国兵から恵里達は意識をメルドへと移す。今度は一体何かと考えていると彼はあることをお願いしてきた。

 

「これ程の数だと牢屋に入れるのも不可能だからな。かといって練兵場に連れてきても移動の手間も考えるとな……収容所か何かが欲しい。ハジメ、ほら穴でもいいから造れるだろうか」

 

 メルドが頼み込んできたのは彼らを一時的とはいえ押し込んで置ける場所であった。確かにこれ程の数の人間を収容する施設なんてそうそう簡単には用意できない。ルルアリア王妃に頼み込んだにしても、今はもう夜だ。お触れを出したところで手配するのも苦労するだろう。そこでハジメに頼ったのだ。

 

「あ、はい。やれます。“錬成”」

 

 無論ハジメとしても大したことでもなかったため、靴に仕込んであった魔法陣を使って“錬成”を発動。適当な大きさのほら穴をすぐに作成し、それを見て軽くうなずくと共にメルドは指示を出した。

 

「よし。助かった――お前達、このほら穴の中に入れ!」

 

「すぐに立て! もたつくな!」

 

 メルドのかけ声と共に帝国兵達は立たされ、一部を除いて力なくほら穴の中へと入っていく。周囲には騎士団が並んでいるし、それ以前に首輪の効果で反旗を翻そうとしてもすぐに洗脳される。結局どうしようもならない状況なのであきらめて入るしかなく、洗脳済みの奴らも『ご迷惑をおかけしてすいません』と謝ったり神妙な様子で進むばかりであった。

 

「よし。“ガーディアンズ各機、散開してほら穴の周辺を警戒。外に出ようとした奴らがいたなら蜂の巣にしろ” それとサイオン班とテスラ班はここに待機、他は休憩に移れ!」

 

 しかも帝国兵が全員入ったと同時にガーディアンズも出して起動し、周辺の警戒にあたらせる。その上幾つかの班に分けた騎士団の人間まで布陣する。その見事な手腕にオルクス大迷宮を一緒に突破した仲である恵里達はうんうんとうなずくも、号令を聞いた騎士団全員は思いっきり引いていた。どう考えてもやりすぎだと誰もが思ったのである。

 

「や、やりすぎでは、団長……?」

 

「く、首輪の効果もあるんですし、ここまで慎重にならなくても……」

 

「ん?……そういえば、そうか」

 

 そこで部下からの言葉に一瞬首をかしげるが、言われてみればその通りだと考えてメルドはうなずく。なお解除しようという気配は一切ないため余計に団員は引いているが。容赦がなさすぎて恐怖を感じていた。

 

「改めて感謝するぞお前達。今回の礼はエヒトとの戦いで必ず返させてもらう」

 

「期待させてもらうよメルドさん」

 

「おう。百倍返しで頼むぜー」

 

「恵里、もう……大介君も。えっと、あまり根を詰めないでくださいね皆さん」

 

 これでひと仕事が終わったと張り詰めていた気を解いたメルドに礼を述べられると、恵里はひらひらと手を振りながらそれを受ける。大介もにししと笑いながら冗談を返し、ハジメもそれに苦笑しつつ残った団員に向けて気遣いの言葉をかけた。

 

「大介ぇ……えっと、その、もし私でも手伝えることがあったら言ってください。いつでもどうぞ」

 

「決戦の時は頼むぜ、メルドさん」

 

「メルドさんも団員さん達もお疲れ様。じゃあユキ、ナナ、皆。早く部屋に戻って休みましょ」

 

「そうだね、優花っち。じゃあまた明日だね、皆」

 

 そして各々あいさつもそこそこに王宮へと戻っていく。この日もいつも通り恵里達はお風呂に入って一日の疲れをとって休むのであった。

 

 

 

 

 

「そんな……そんなことが……どうしてこんな悲しいことが……」

 

 その翌日、朝ご飯を食べ終えた恵里達はそれぞれゲートキーを使ってハウリアの皆を王国の郊外の土地へと連れて来た。もちろん帝国兵のいるほら穴の近くではなく、別の場所だ。ちなみにフリードやメルド、デビッド達も説得の要員として同席しており、主に愛子の暴走を止めるためだろうと誰もが考えていた。

 

「うぅ……むごい。なんてむごい! どうして皆さんがこんな目に遭わなければならないんだ!」

 

 そこでシアとカムの口から恵里達の事情を説明してもらったところ、彼らも思いっきり号泣したのである。モロに昨日の焼き直しであった。

 

「ひどいよ……お兄ちゃん達もお姉ちゃんが達もかわいそうだよ……」

 

「あ、あのー皆さん……パル君も他の子もそうだけど、そこまで気になさらなくても……」

 

「無理です光輝さん! アビスゲート様や良樹さん、礼一さんだけでなく友人知人である貴方達も想像を絶する苦しみを受けてたんですよ! これを、これを泣かずには……うわぁあーん……」

 

「雫ちゃん大丈夫だからね! お姉さんは貴女の味方よ!」

 

「あ、その、はい……」

 

 どいつもこいつも涙を流しては恵里達一人ひとりに労りの言葉をかけてきている。光輝達はそんなカムとシア以外のハウリアの行動にどうすればいいのかと困惑しており、恵里と愛子もため息を吐いている。

 

「話進まないんだけどさぁ……」

 

「頭痛がしますね……本題はこれからだというのに」

 

「その優しさは美徳だとは思うがな……」

 

「他の亜人族もこんな感じなのでしょうかね……」

 

 頭痛を堪えるように手を当てる恵里と愛子、彼らの様子に理解は示しつつも下手に巻き込んで大丈夫なのかとボヤくメルドにチェイス。デビッドらも似たような考えのようでどうしたものかと視線をさまよわせたりしていた。

 

「話……な、なんでも言ってください! 私達ハウリアは皆さんのためにも誠心誠意尽くします!」

 

「そうだ! 皆さんに恩を返さないまま北の山脈地帯に行くことは出来ません! どうかなんでもお申しつけください!」

 

 事前に話を通していたシアとカム以外のハウリアは、今も涙と鼻水を垂らして恵里達に同情している。これじゃあしばらく話は無理だと誰もが思っていたものの、愛子のつぶやきを聞いてシアら二人以外のハウリアは愛子の方へと視線を向けた。

 

「へぇ、なんでも――」

 

「ま、待てお前達! わ、私の話を聞いてからでも――」

 

「何言ってるんですか族長! ここまで世話になっておいて助けないなんて選択肢はないでしょう!」

 

「え、えっと、その、流石になんでもは言っちゃダメですぅ!」

 

「? どうしてなのシア? この人達は私達の恩人なのよ? なら今度は私達が助ける番よ!」

 

 しかも『なんでも』という単語に反応し、愛子はとてもにこやかな笑顔を浮かべた。そして彼女が言葉を紡ぐよりも先にカムとシアがインターセプトを決める。下手したら一族の命運がここで決まるのだ。二人は必死であった。

 

「じゃあ皆さん。申し訳ありませんが、皆さんのご厚意に甘えさせていただけますか?」

 

「み、皆さん! 話を聞いてから受けた方が――」

 

『はい、何なりと!』

 

「ありがとうございます。じゃあ皆さんを保護しますから代わりに兵士として働いてください」

 

『……え?』

 

 そしてそのにこやかな表情に何一つ似合わない言葉を愛子が吐いた途端、一気に気温が三度ぐらい下がったと当人以外が感じとった。ハジメも迷いながらもやはり止める方に動いたものの、もう手遅れ。微笑みと共に投げつけられた爆弾に徐々にハウリアはカタカタと震え出す。

 

「へい、し……えっと、それって……」

 

「あ、あの、愛子……さん?」

 

 全てのハウリアが体を寄せ合い、体を震わせながら愛子の方を見ている。これまたいつぞやの焼き直しである。しかし愛子は特に意に介することもなく言葉を続けていく。

 

「ですから衣食住は私達の方で手配するので戦ってください――皆さんは斎藤君、近藤君、遠藤君に助けられたのでしょう? だったらその恩、返していただけますよね?」

 

 見返りを用意した上に恩義につけ込む形で頼んできた。控えめに言って最悪である。その言葉に恵里だけがやるじゃんと口元を緩め、ハジメ達が頭を抱える。そして意を決した様子のシアとカムは今もにこやかな笑みを浮かべる愛子に向かって口を挟んだ。

 

「み、皆さんを巻き込まないでください! わ、私が頑張りますから!」

 

「そうです! わ、私が……私が皆の分まで働きます! ですから、ですから何卒……シアと他の者達だけは……」

 

 そう言って頭を下げたシアとカムを愛子はただ冷めた目で見つめるばかり。そんな様子を見ていられなくなった良樹達も苦い表情を浮かべつつ、ハウリアを助けるべく愛子に口をはさむ。

 

「……なぁ畑山先生よぉ。そこまでこだわる必要ねぇだろ」

 

「そうだぜ。戦うのが怖い奴らを巻き込んでどうすんだ。あ?」

 

「あぁ、良樹と礼一の言う通りだよ……トータスに来た時、先生は俺達を戦わせたくないって言ってたよな? だったらハウリアの人達も――」

 

「駄目です」

 

 だがハウリアをかばおうとした彼らを愛子は端的な言葉で制し、鋭い目つきでハジメ達を見据える。その瞳に強い意志が宿っているのは誰もがわかり、生半可な反論は許さないとばかりにじっと見つめ返していた。

 

「斎藤君、あなたに問います。あなたはシアさんのことをどう思っていますか」

 

「ど、どうって、その……」

 

「ではシアさん。あなたは斎藤君に好意を示してますよね? それも斎藤君達と行動を共にすると述べましたよね?」

 

「は……はいっ! 私は本気ですぅ!」

 

 愛子の問いかけに良樹は頬を染めてそっぽを向いたが、シアの方は顔を赤くしながらもそれにうなずく。その様を見た愛子は一層真剣な面持ちで全員にあることを述べた。

 

「だとすればそこをエヒトに狙われます。シアさんに斎藤君、近藤君、そして遠藤君の動揺を誘うために。そのためだけにハウリアは囚われるでしょう」

 

 その言葉で恵里はだろうねと言わんばかりの表情でうなずき、ハジメに光輝、アレーティアなどハウリア以外の面々は話を振った予想がついたことから無言となった。恵里や鷲三、霧乃をさらって改造したことを考えれば自分達と親しい間柄の人間を狙うのは容易に想像がついたからである。

 

「そんな……」

 

「えっ……そう、なの?」

 

 そしてエヒトの恐ろしさを理解させられた全てのハウリアは絶望していた。自分達が関わらなければ、自分達のせいで、命の恩人である浩介や良樹らに多大な迷惑をかけてしまう。彼らの親友を危険な目に遭わせてしまう。ざわめきが止まらなかった。

 

「そんな……み、皆さんが……私が、私が……」

 

 この指摘で一番動揺したのはシアであった。自分が良樹達と接触したせいでハウリアの皆が危険な目に遭わされようとしていることにショックを受けたからだ。

 

 ――もし仮に彼女がで目の前の障害を切り拓く()と揺らがぬ()()を持っていたら、他のハウリアも()()()()()()を持っていたのだとしたら話は別であった。たとえこの世界の神であったとしても真っ向から牙をむいて気炎を上げて戦いに臨んだだろう。

 

 だが()の彼女は違った。恵里のおかげで力を持っていることを理解し、好きな人についていきたいと思ってはいても自信も十分な力も無い。ハウリアは戦う気概すら持っていない。故にただ打ちひしがれるしかなく、シアもカムも、そして他のハウリアもただ己の無力さを前に何も出来ないでいた。

 

「……お前達、それとハウリアの者達には悪いが俺としては戦力となってくれると助かる」

 

「……こちらも参加をすすめておく。愛子と同じ理由だ」

 

 そんな折、今まで沈黙を貫いてきたメルドとデビッドが口を開く。まさかの意見にハジメ達は目を見開くも、どちらも苦々しい表情であったのを見て、出かかった言葉を吞みこんでしまった。少なくとも良心の呵責はあると思ったからこそ何も言わないことを選んだのである。

 

「エヒトの軍勢である神の使徒だが、恵里の話ではそれが無数にいると聞いている。お前達の恩人である良樹達であっても苦戦は免れない強敵が山のようにいるんだ」

 

「ですが今ここで敵の軍勢と戦うという訳ではありません。どれだけ先送りに出来るかはわかりませんが、まだ未来の話です」

 

 メルドの言葉によって更なる絶望を、チェイスの言葉で今すぐ立ち向かう訳ではないということを知った。

 

「そっちの思いを利用しているのはわかってるよ。恨んでくれてもいい。けれどいいの? 何もしないままでいられる?」

 

「あぁ。お前達は恩人を放っておいて安全な場所にいるつもりか?……おそらく、出来ないだろう?」

 

 クリスの言葉に怒りと悔しさを感じた。ジェイドの言葉に悔しくとも同意しか出来なかった――ここにいた全てのハウリアは思う。自分達はただ安全な場所で引きこもっているだけでよいのか、と。

 

「でも私達、戦いなんて怖くてやれないのに……」

 

「他の亜人から見下されている私達に、何が出来るんですか……」

 

「お兄ちゃんたちとお姉ちゃんたちに怖いことを押しつけるなんて嫌だよ……でも、でも、僕そんな力なんてないよ」

 

 だが出てくる言葉は嘆きばかり。自分達に力は無い。自分達じゃ何も出来ない。そんな無力感に囚われた者達の言い訳がぽつぽつと出てくるだけだった。

 

「それでいいのか、貴様らは」

 

 そんな時、フリードがかすかな苛立ちと冷笑を浮かべながらハウリアへと問いかける。

 

「それでいい、って……」

 

「何も出来ない。何もやれない。そう決めつけてただうなだれるだけで生き延びれると思ったら大間違いだ。世界はそんな弱者に優しくなどない」

 

「――フリードさん!」

 

 微塵の容赦もない問いかけにハウリアは一層うなだれてしまう。結局自分達は何も出来ないまま死ぬ運命なのかと絶望した矢先、彼らを見捨てるのかと光輝が怒鳴りかかる。

 

「光輝、お前は黙っていろ――このままお前達は這いつくばっているだけなのか。立ち上がる気概すら無いのか。言え。足掻く気概を持たないのなら、お前達はそれで終わりだ」

 

 だがフリードはそれを真剣な面持ちでそれを切り捨て、再度問いかけたことで光輝だけでなくハウリアの皆も気づく。戦う意志があるのなら、この運命に抗う意志があるのならば()()終わりではない。そう遠回しに述べているのだとわかったからだ。

 

「……ねぇ恵里さん」

 

「何、シア」

 

「私、戦う力があるんですよね? この魔力があれば少しはお役に立てますよね?」

 

 そんな中、震えながらもシアは恵里に尋ねる。自分が忌むべきものとして扱われることになったこの力を使えば何かを変えられるんじゃないかと。この力でハウリアを守ることが出来るのではないかと問いかけたのだ。

 

「シアの力がどれだけのものかはわからないから詳しくは言えないね。でも、そこらの兵士程度には戦える。それだけは保証するよ」

 

「――わかりました」

 

 恵里の答えを聞いた時、シアの中である決意が固まる。ゆっくりとうなずくと、ハウリアの方を振り向いて彼女は宣言した。

 

「私、戦います。忌み子と呼ばれたこの力を使って、エヒトと戦います」

 

 その姿はまだあまりに弱々しいものだった。さながら卵からかえったばかりのヒナのようではあったが、しかしその思いは本物であった。

 

 ただハウリアを守るために。そのためにも持っていた力を使うこと、暴力を振るうことをシアは決意する。

 

「だから皆さんは私が――」

 

「戦おう、皆」

 

 私が守ります。そう誓いを立てようとした時、キッとした表情のカムがそれをさえぎった。

 

「と、父様! それは――」

 

 今まで守ってくれていた皆を自分が守りたい。だからそう伝えようとしたというのにカムはそんな自分の思いに真っ向から対立するような言葉を投げかけた。シアはすぐに父の真意を尋ねようとすると、カムは全てのハウリアへと問いかけてきた。

 

「良樹殿、礼一殿、アビスゲート様が苦境に立たされているのに私達はただ黙って見ているだけでいいのか?」

 

 カムの問いがハウリアの心をえぐる。それはあまりにも深く、苦しい一撃であった。何も出来ない不甲斐ない存在のままでいるのかと言われたような気がした……否、そう遠回しに言われたからだ。

 

「それは……」

 

「我らの恩人と、そのご友人が……戦いにおもむいている時に、私達はただ自分の身の安全を思うだけでいいのか?」

 

「で、ですから父様! 私が、私が皆さんを守れば、そうすれば傷つかずに――」

 

「シアは黙っていなさい!」

 

 臆病なまま、ただ恩人に助けてもらうだけの恥知らずでいいのかとカムは続けて問いかける。それを聞いてシアはこれまでの恩返しとばかりに自分が皆を守るのだと伝えようとしたが、それをカムはいつになく厳しい表情ではね退けたのである。

 

「っ!? と、父様……?」

 

「……このままでは、私達ハウリアはただの恩知らずになる。ただ助けられ、庇護されるだけの存在になってしまう。私は嫌だ。お前を守ろうとした一族皆がそんな存在に成り下がってしまう。それを、それを……黙って見ていられないのだ!」

 

 一人の男の叫びが草原にこだまする。他の亜人族から蔑まれてもそれを受け入れていた。けれどもたった一人の同胞を守るためにハウリアは力を合わせたのだ。ならば自分達を助けた恩人に何もしないというのはどうなのだ? それはハウリアとして正しいのか?

 

 そう考えた時、カムの中で思いが爆発した。このままハウリアを貶めるようなことをしてはならない。その思いに突き動かされるまま、カムは叫んだのである。父の思いを知ったシアは沈黙し、この場にいた誰もがその経緯を見守っていたその時、ふとハウリアの誰かのつぶやきが漏れた。

 

「嫌、です……」

 

「コリン……」

 

「そんなの、嫌です……! 恩人の皆様に何も、何もしないでいるなんて……そんなこと、出来る訳ないじゃないですか……!」

 

 あるハウリアの青年の慟哭が漏れた。己の無力感に苛まれていたハウリアの一人であった彼であったが、弱い自分自身への怒りが上回り、恩を仇で返してはならないと涙を流しながら前を向いた。

 

「シアが、族長が戦うっていうなら自分だって、自分だって戦います!」

 

「……私も。私も戦う! シアと族長だけに全部押し付けるなんて耐えられない! 私達は、私達は家族なのよ! だったら戦う時だって一緒よ!」

 

 コリンが戦う意志を見せた時、また別のハウリアが覚悟を決めた様子でシアとカムに視線を向けた。

 

「わしも……わしも戦おう! 若者だけを戦わせるなど恥ずかしくて死んでしまう! 老いぼれなれどわしだってハウリアだ!」

 

「僕も……僕もやるよ! ウルマーおじいちゃんがやるんだったら僕だって!」

 

「わたしもー!」

 

「私も! シアちゃんが戦うと言ってるなら私だってやるわ! パル君みたいな男の子がやるって言ってるのに逃げ回るなんてできない!」

 

 そうして次々とハウリアは立候補していく。最早老若男女関係ない。誰も彼もが理不尽に抗おうとその心意気を見せる。その様にシアは圧倒され、両の瞳から自然と涙がこぼれ落ちていた。

 

「みな、さん……」

 

「よいか、シア。お前が守りたいと思っていた者達はな、お前に守られるだけの存在じゃないんだ。共に戦おう。一緒に理不尽に立ち向かおう。私達は家族だ。何時までも皆一緒だ」

 

 涙を流すシアの肩に手を置きながらカムは優しく声をかける。ひとりじゃない。共に行こうと言われ、シアの瞳が一層涙で潤んでいく。

 

「はい……はいっ!」

 

「どうかお願いします皆さん。私達ハウリアを、少しでも戦えるようご指導ください!」

 

 そうして全員で愛子やメルドに向かって頭を下げた。それを見たメルドやデビッドらも力強くうなずき、教えを乞おうとするハウリアに向けて声を張り上げる。

 

「ならばお前達の身柄も俺が責任をもって預かろう! そしてどこに出しても恥ずかしくない立派な兵士として鍛え上げてやる!……畑山殿、デビッド、チェイス、クリス、ジェイド。いいか?」

 

「構いません。むしろ本職であるメルドさんなら安心です」

 

「私達では政務に時間をとられてしまいますからね。つきっきりでやってくださる騎士団のトップである貴方ならば安心できます」

 

「わかった。感謝する――よし、これから俺は王妃様に報告を上げる! お前達に下す最初の命令はこの場での待機だ。いいな!」

 

『はい、わかりました!』

 

 事後承諾という形になったが愛子やデビッド達にハウリアを預かることの是非を問うと、どちらも問題ないと返してきたため即座にメルドも己の裁量で動く。初めての命令を受けてハッキリとした声で返すハウリアを見てハジメ達は複雑な表情を浮かべた。

 

「これで、良かったのかな」

 

「確かにありがたいよ。けど……」

 

 ハジメと光輝のつぶやきに彼らの幼馴染の多くは何も反応を返せない。今目の前で起きたことはかつて自分達がトータスに来た時の光景と大して違わないからだ。違うのはハウリアがかつての自分達に、自分達がイシュタルと同じ立場になったという点だけ。

 

 エヒトとの戦いを考えれば彼らが戦うことに前向きになってくれたのはありがたいことではあったが、とても手放しには喜べなかった。特に良樹と浩介は一層苦い表情を浮かべていた。

 

「俺達のせい、かな」

 

「いや、俺達が助けなきゃシアや他のハウリアの奴らも助かってなかったかもしれねぇんだ……けど、あんま喜べねぇな」

 

 ハウリアの皆を戦いに巻き込むことなく救う道はなかったのかとこの場にいた多くが思う。もっと他にやりようがあったんじゃないか、どこかで違う行動をとっていれば良かったんじゃないかと過去を振り返っていく。

 

「はいはいやめやめ……皆、もうこうなった以上はどうしようもないでしょ」

 

 だがそんな時恵里がパンと手を叩いてハジメ達に呼びかけた。どうしようもないお人好しのハジメ達ならば絶対にやってしまうだろうと想像はついていたし、その疑問に対して納得できる答えなんて絶対に出るはずがないとわかっていたからだ。

 

「皆さん、その……中村さんの身に起きたことを考えると、これで良かったと思います」

 

「……良かったのか、アレーティア? 礼一もよ」

 

 アレーティアの口から出た言葉に大介も遠慮がちに問いかける。彼もハウリアが戦ってくれることには賛成ではあったが、浩介と良樹のことを考えればそれを口にすることは出来ず。そこで二人と一緒にハウリアを助けた礼一にもこの疑問をぶつけると、彼の方も少し迷いながらも自分の考えを言葉にしていく。

 

「いいんじゃねぇの? 安全なとこなんてこの世界のどこにもねーんだ。だったらせめて自分の身は自分で守れるようになった方がいいだろ」

 

「ボクも近藤君の言うのに賛成かな。それに、少しであっても戦える人間なら欲しい。ハジメくんと鈴、それに皆が生きて地球に帰る確率が少しでも増えるだろうからね。選り好みしたせいで誰かを死なせるぐらいならボクは進んで嫌われるから。たとえハジメくん……であっても、ね」

 

 礼一の言葉にハジメ達も言い返せず、恵里もそれに乗っかる。そして自分達を平気で優先することを言ったり、ハジメに嫌われるのを何だかんだ本気で恐れてる様子のブレない恵里にアレーティア以外がため息を吐いた。

 

「恵里……でも、そうだね。巻き込んじゃった以上、鈴達も協力するよ」

 

「もう恵里ってば……大丈夫。恵里の言いたいことはわかるし、向こうも乗り気になってるしね。ならハウリアの皆さんが戦えるように僕もアーティファクトを作る。そうして戦えるようにする」

 

 とはいえ彼らの言葉が間違っているかというとそうでもない。実際エヒトがいつどこでちょっかいを出してくるかは予測がつかないし、たとえほんのわずかといえどハウリアが戦えるようになれば勝率は上がるのだ。ましてやこうして力を振るう気になった錬成師のハジメがいる。

 

 魔物の肉を食べた自分達程ではないにせよ、今以上に強くなるのは確実だということは明らかであった。

 

「……中村さんの言うことに一部賛成、です。エヒトの差し向ける神の使徒の強さと数を考えると、私達でもどこまで相手出来るかわかりません。けれどアーティファクトを作れる南雲さんがいるし、部隊の運用に長けたメルドさんもいる」

 

 そしてアレーティアも王として活躍していた経験を基に補足した。彼女がかつて王として君臨していた頃は自分が主体となって戦場を駆け抜けていたが、かといって他の者達が弱いという訳ではなかった。たとえ自分が敵陣に風穴を開けても後に続く兵達が弱くては意味が無い。彼女は軍隊という存在の強みを理解していた。

 

「彼らが()()となれば、相応の強さを手に入れられると思います。絶対に」

 

 兵士一人一人の質が高く、扱う武具も高水準であればいかなる数の有利も覆せる。少数の種族でしかなかった吸血鬼族はそうして戦乱を切り抜けて来た。たとえ過去の同胞に及ばずとも彼らは必ず強くなれる。そう信じて彼女は力強く断言する。

 

「……仕方ねぇか。なら乗り掛かった舟ってヤツだな。俺らも手伝ってやろうぜ」

 

「あぁ……やろうぜ、皆」

 

 良樹と浩介も腹を決めて友人らの顔を見渡す。この場にいた一同全員の意志がまとまり、うなずき合う。恵里達はメルドに声をかけて自分達も手伝うと伝えるのであった――。

 

 

 

 

 

 練兵場の一角に軽い地割れが走る。下手人はシアであった。

 

「どりゃぁああぁあぁ!!」

 

 手に持った大槌を振るい、目の前で機敏に動く恵里目掛けて振り下ろした一撃は風を切り、大地を割る必殺の一撃となっている。しかし恵里はそれにわずかにかすることすらなく、微妙な苛立ちを表に出しながらも余裕でシアの攻撃をいなし続けていた。

 

「ったく、面倒くさいなぁ――“呆散”」

 

「――なん、のぉっ!」

 

 適当に発動した闇系魔法も気合で耐え、意識が持っていかれそうになりながらもシアは恵里に追いすがらんと()()()()()()で思いっきり地面を踏み込んだ。

 

「はぁぁあぁあぁ!!」

 

「勢いだけで、勝てる訳ないでしょっ!! “縛岩”! “風球”!」

 

 一撃でいいから当てようと必死になっているシアの動きを止めようと“縛岩”を発動。宙に浮いたわずかな隙を狙って両の足首を岩の鎖で繋ぎとめ、後ろに引っ張ると同時に見えない弾丸をぶつけようとする。

 

「なん、のぉおおぉ!!」

 

 しかしシアはそのまま大槌を振り下ろして地面に叩きつけて強引に鎖を破壊すると、柄から離した左手で風の弾丸を迎撃する。その瞬間、恵里の口元がかすかに動いたことにシアは戦慄した。

 

「こ、このっ――」

 

「甘い。終わり」

 

 そしてシアの腕を掴むと同時に恵里は“纏雷”を一瞬だけ流して彼女の動きを止め、そのまま明後日の方向へと投げ飛ばしたのである。

 

「ぐぇっ!?……きゅぅ」

 

「はいはい。この程度で勝った気にならないの。そっちの成長速度が化け物染みてるのはわかるけどまだまだボク達のステータスには届いてないんだしね」

 

 のびてしまったシアに向けて辛辣な言葉をかけつつも恵里はシアの目覚ましい成長に内心ニマニマと笑みを浮かべていた。

 

 ――エヒトと戦うことをシアが表明してから()()たった現在。もう彼女は自身の技能である“魔力操作”だけでなく、その派生技能である“身体強化”という技能すらも幾らかモノにしていた。そしてそれは恵里達も把握している。

 

 ハウリア全員が戦うことを決意した後、シアの強さを確認するためギルドマスターからステータスプレートを融通してもらい、彼女のステータスも確認した。その後メルドや恵里達オルクス大迷宮攻略組のメンバーで彼女を鍛え上げたのである。

 

 

====================================

 

シア・ハウリア 16歳 女 レベル:10

 

天職:占術師

 

筋力:20 [+最大775]

 

体力:25 [+最大780]

 

耐性:20 [+最大775]

 

敏捷:30 [+最大785]

 

魔力:755

 

魔耐:800

 

技能:未来視[+自動発動]・魔力操作[+身体強化]

 

====================================

 

 

(やっぱりすごいよこの子。拾い物にしちゃ想像以上に優秀じゃん)

 

 まだ気絶しているシアの懐からステータスプレートを抜き取り、恵里は現在のシアのステータスを確認する。新たにシアが得た“身体強化”という技能は『魔力1に対して身体能力が1変換されて上昇する』というものだ。そのため魔力がずば抜けている彼女がこの技能を発動すればとてつもない強さを得ることになる。

 

(これだけ強けりゃその内使徒相手でも結構いいとこ行くんじゃない? ありがたいねぇ~)

 

 とはいえまだまだ自分達にはステータスの数値は遠く及ばない。そのため使う魔法も制限し、本気で相手をしない状態でシアと組手をしているのである。それ以外にも他のハウリアと一緒に“身体強化”なしでメルドにしごかれたりしていることもあってかほんの三日でここまで強さが向上していた。

 

「はい起きる。次が待ってるよ……って仕方ない。“心導”」

 

“はいシア起きる。次は優花とだからね”

 

“は、はいぃ……い、今起きますぅ~……”

 

 そしてステータスプレートをシアの懐に戻すと、地面で仰向けになって目を回す彼女の頬を何度か軽く叩き、“心導”を使って魂に呼びかけ無理矢理起こす。ごまかしようがない鬼畜の所業であった。

 

「エリ、アンタ鬼すぎない? いくらハジメとスズがデートしてるからってシアに当たるんじゃないわよ大人げない」

 

「うるっさいなぁ。図星突かないでくれる?」

 

 そんな恵里に心底呆れた様子で優花がツッコミを入れると、恵里もかなりイラッとした様子で優花に言い返した……なお恵里がこの組手の中でずっと苛立っていたりするのは先程優花が挙げたことが理由だったりする。

 

 シアを含むハウリアを鍛え上げることになった際、何人かがシアや他のハウリアと組手をするようになった以外に恵里達のやることはハルツィナ樹海の探索を除いて変わりは無かったりする。そのため今日も他の皆はライセン大迷宮の探索やゲートホールの設置を行っているのだ。

 

「ちゃんと話し合って決めたんでしょ? だったらその恨みをシアで晴らそうとするんじゃないわよ」

 

 ならばどうしてハジメと鈴はデートが許されているのか。それは恵里が自分の魂を治してもらった後、ハジメを一晩好きにしていいよと鈴から言われたことに由来する。その負い目があったのとハジメの方から恵里に鈴と二人きりでデートしたいと打診があったからだ。

 

 負い目があったからそれはまぁ受け入れられなくも無かったが、自分を通さずにこの話が浮かんだことから密約か何かをしたと勘ぐって問い詰めた結果大当たり。いつぞやの産業革命モドキをハジメが提唱した日に鈴と約束したことが判明したのだ。つまり自分を通さず鈴とこっそり約束した恨みつらみをシアにぶつけていたのだ。とんだとばっちりである。

 

「そうだけどさぁ……うぅ」

 

「アンタがハジメとスズのことでやきもきするのはいつものことだけど、それをあんまり親しくも無いシアに向けないの……じゃあシア、少し休憩したらやるわよ」

 

「は、はいぃ……わかりましたぁ~……」

 

 優花に完全に言い負かされ、恵里はすごすごと練兵場のすみっこへと行き、青空を見上げる。今頃ハジメと鈴はデートを楽しんでいるであろうことを想像しては大いにへこんでため息を吐く。

 

「でも優花さん、良かったんですか? 確か幸利さんは奈々さんと一緒――ヒィッ!?」

 

「……アンタの尻尾の毛、今すぐ丸刈りにしてやってもいいわよ?」

 

「ご、ごめんなさいぃぃー!!」

 

(いいよいいよ。明日は絶対ハジメくんとイチャイチャするもん。ボクが一番だってハジメくんと鈴にわからせるもん)

 

 シアが優花にいらんことを尋ねてエラい目に遭いそうになっているのを聞き流しつつ恵里はしょうもないことを決意する――本来この世界がたどるはずの未来がまた少し形を変えた。幾度も起きる変化がもたらすものは嵐か凪か。それを誰も知らないまま今日も時は過ぎていく。




という訳で拙作においてはハウリアを鍛える人間と経緯がこのように変化しました。やっぱメルドさんていう教官として優秀な人がいるし、組手に関してもユエ以外に頼れる人間がいますしね。

え? 拙作のアレーティアはどうしてるかって?……未だに大介から離れられないところから察して()
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