あまりありふれていない役者で世界逆行   作:田吾作Bが現れた

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まずは拙作を読んでくださる皆様に多大な感謝を。
おかげさまでUAも176730、しおりも416件、感想数も633件(2023/8/16 8:19現在)となりました。本当にありがとうございます。ほんの数日でここまで増えて作者も嬉しいです。

そしてAitoyukiさん、今回も拙作を再評価してくださり本当にありがとうございました。筆を執る力が衰えずに済んで本当にありがたいです。

今回も少し短く(8000字足らず)となりました(しろめ)
原因は例によって分割です。なんで増えるワカメみたいに書けば書くほど増えるんだよ!(逆ギレ)

では上記に注意して本編をどうぞ。


七十四話 さまよえる者達

「――なるほど。そちらはそうだったんですね」

 

 愛子の言葉に恵里らはうなずく。話し合いを終えた恵里達一向はフューレンでデートすることなく()()()()終えてからそのまま王宮へととんぼ返り。食堂に仲間を集めて商業ギルドで起きた一連の話をしたのである。同席したのはクラスメイト一同や愛子、鷲三に霧乃だけでなく、リリアーナやヘリーナ、クゼリー、デビッド達元護衛騎士、メルド、フリード、ハウリア全員も参加していた。

 

「そういえば皆、持ち込んだ食料はどうしたんだ?」

 

「とりあえずハジメくんの宝物庫に入れてお持ち帰りしたよ。まだ日持ちするだろうし、外で待ち構えていた奴らもいたしね。あえて取引が成立したのを装って外へ出たんだ」

 

 光輝の質問に対して恵里がすかさず答える。恵里の言う通り、あえて自分達だけで商業ギルドを出ると裏組織の構成員と思しき奴らは襲ってきたのだ。その際恵里達は路地裏へ、それも人目につき辛い行き止まりを探しながら逃げたのである。

 

「思った通り来たよ、ろくでなしがさ。だからソイツらにしっかり()()して戻って来た、ってワケ」

 

「……まぁ、話し合いが終わったらすぐにゲートキー使うよりはマシだったとは思いたい、んだけどね」

 

 いやー疲れた疲れたと言わんばかりに肩をすくめる恵里に、ハジメが心底疲れたような面持ちでそうつぶやく。彼の一言で恵里が一体何をやらかしたかを同行しなかった面々も即座に理解を示し、光輝ら付き合いの長い面々が深くため息を吐いたのは言うまでもない。

 

「……また“縛魂”を使ったのか」

 

「大方、お前らの実力が向こうにバレないようにしたのと向こうの事情を探るためだろ?」

 

 光輝のボヤきと幸利の推測に『ご名答』と恵里は笑みを浮かべながら返した。彼女の言う通り襲ってきた面々に“縛魂”を使い、傀儡にして上手く立ち回ったのである。本人は一挙両得といった具合に軽くドヤ顔を浮かべているが、恵里以外は全員目をそらしている。やはり思うところがあったらしい。

 

「おかげで相手の情報もある程度抜き取ることが出来たからねぇ~。ま、下っ端も下っ端の奴らみたいだったし、大した情報はあまり持ってなかったけどさ」

 

「聞いた話は俺とシアで向こうに伝えた。ま、あっちもあんまいい顔してなかったけどな」

 

「何とも言えない顔でしたもんね……あちらの方も私達の事情がわかるからそこまで言ってはきませんでしたけど」

 

 ギルドの方で面倒ごとが起きたと暗に語る良樹とシアにこの場にいた多くが同情を向け、やれやれと言わんばかりの仕草をしている恵里に地球から親しくしていた面々が違和感を覚えた。これは絶対何か一つは使える情報を掴んでいるなと全員があたりをつけたのである。

 

「エリ、アンタ何掴んだの? ホントに何の成果も無かったんならそんな顔絶対しないでしょ?」

 

「あ、わかる優花? うん。下っ端どもが仕事を受ける場所と後は指示役の顔がわかったんだよ」

 

 いち早く反応した優花に恵里はフフンと上機嫌な様子で答える。洗脳した恵里が下した命令は二つ。自分達は捕まえられなかったことを向こうに伝えること、そして知っている情報を全て教えろというものだ。その際先程語った情報を手に入れたのである。ちなみに顔に関しては下っ端どもに似顔絵を描いてもらい、ハジメがその中で一番マシなものをブラッシュアップした形で判明している。

 

 ちなみにその際“縛魂”を使った相手の顔もハジメが“錬成”を使って似顔絵として描き、良樹とシアに渡していたりする。もちろんイルワに襲ってきた下っ端の情報をリークするためである。

 

「怪しまれて場所と人間を変えられる可能性はあるけどね。でも何もないよりはいいかと思って斎藤君達にもお願いしたよ」

 

「あっちは驚いてたぜ。どうも昔ギルドで悪さしてた元冒険者らしくってよ」

 

「改めて情報を精査するってイルワさんも言ってました。何か思い当たることがあったかもしれません」

 

 鈴に続いて再度良樹とシアがそう述べれば、軽くざわめきが起こる。手に入れた情報が使えるかはともかくとして価値があったこと、話を聞いた通りフューレンの腐敗具合がうかがえること、それを聞いてどう動くべきか迷うなど理由は様々だ。

 

「先に皆に言っておくけど僕は動くつもりだよ。この組織を放っておいたらどんな影響が出るかわからないし、商業ギルドと冒険者ギルドの助力を得るまたとないチャンスだから。それと――」

 

「一番は中村と谷口じゃねぇの?」

 

 どうしたものかと迷いを見せる()()にハジメは持論を語りつつ自身は参加する旨を述べていく。が、そんな彼に向けて大介はしれっと核心をついた言葉を投げかけ、ハジメの言葉を止めた。

 

「そりゃ幸利や浩介、光輝達より俺らは日は浅ぇよ。でもよ先生、ダチになってから別に浅い付き合いなんてした覚えはねぇぜ? それぐらいわかるっつの」

 

「……敵わないなぁ、もう」

 

 シシシ、とからかうように笑いながら語る大介にハジメは思わず苦笑いを浮かべる。実際ハジメが動いた一番の理由は恵里と鈴のことなのだ。彼女達に下卑た視線を向け、しかも口にするのもはばかられるような真似をしようとしていた輩はやはり許せなかったからである。

 

「ああいう人達のおかげでダブルデートもご破算になっちゃったしね……その恨み、しっかり晴らさせてもらわないと」

 

『いや私怨かい!!』

 

 私情丸出しの本当の理由を明かせば光輝、雫、優花、奈々にメルドらのツッコミがキレイに入った。それを聞いて恵里はハジメの愛を感じて身悶えし、鈴も鈴で呆れはしたものの頬を染めるだけでツッコむことは無かった。

 

「……リリアーナ様、その、大丈夫なのでしょうか? この方々に任せてしまっても」

 

「私としてはむしろありがたいぐらいです。こういう時は私的な情がわかる方が納得も理解も出来ますしね。それに南雲さんが自ら参加を促してくださったようなものですし」

 

 この話に参加していたクゼリーがそばにいたリリアーナに不安げに尋ねるも、リリアーナ本人としてはそれを拒むどころか目を細めて嬉し気に微笑む始末。フューレンにおける闇がいつ王国に降りかかるかもわからなかったし、ハイリヒ王国の混成軍を打ち破った元・神の使徒の一人であるハジメが参加を申し出れば少なくとも悪くない結果に収まる。それにハジメが行くのであれば恵里と鈴はまず間違いなくついていくだろうし、他の面々もそれに乗じるだろうと思ったからだ。

 

「え、えーと、リリアーナ、さん……?」

 

「信治様。驚かれたとは思いますが、それもリリアーナ様がそれだけ国を思っているからです。それと南雲様の実力を評価されているということも……もちろん、信治様のお力は理解した上で、ですが」

 

「あ、そうか?……いや、その、ならいいけどよ」

 

 なおそれを間近で聞いていた信治は好きな人が見せた腹黒さの片鱗にちょっと怯えたものの、ヘリーナの言葉にちょっと落ち着きを取り戻した。特にぽろっと漏れた私情の部分に。なかなかにチョロい男である。

 

「どうせ貴様らのことだ。そこの迷いを見せている者達以外は参加する気なのだろう? ならば留守は私達に任せておけ。大迷宮の捜索も――」

 

「いえ、反対します」

 

 フリードも彼なりにハジメらに理解を示し、やれやれといった様子を見せながらも行きたいのなら行けばいいと促そうとする。だがそれに愛子が待ったをかけた。

 

「……何? 今度のヒスは何が原因?」

 

 せっかく光輝達も参加を申し出そうな流れだったというのに水を差された恵里は愛子を軽くにらむ。軽くため息を吐きながら理由を尋ねれば愛子は静かにその理由を話した。

 

「……少し考え事をしてました。向こうの提案に乗るべきかどうか。それと、中村さんの前世やトータスで来た当初に起きたことを踏まえた上でどうするべきかをです」

 

 その愛子の言葉にこの場にいた全員が首をかしげる。前者の摘発に参加するかどうかはともかくとして、後者の恵里の過去のことが何故今の反対に繋がるのか結びつかなかったからだ。どういうことかと恵里本人もいぶかしげな視線を送れば、愛子も語り出す。

 

「確かにこの提案にはこちらにもメリットがあります。引き受けることで中立であった都市が丸々私達の味方につきますからね……それが嘘でなければ、ですが」

 

 その言葉にリリアーナやメルド、デビッドらは思わず顔を伏せてしまいそうになり、光輝達や重吾らも何とも言えない表情を浮かべる。過去の手ひどい裏切りは今も彼女の中で尾を引いているということを改めて認識したからだ。しかし問題はそこではないと恵里は愛子に視線で続きを促し、彼女もそれを了承したかのように話を続けていく。

 

「前に神の使徒が各地に現れて引っ搔き回したことが再度起きないとも限りませんしね……そうしたリスクを考えた時、ふと中村さんの身に起きたことが気になったんです」

 

「それはさっきも言ったよね。どうしてボクがそこで関わってくるのさ?」

 

 愛子が述べた通り、またエヒトが神の使徒を派遣して再度盤上をひっくり返してこないとも限らない。その懸念や改めて示したトータスの人間への不信感は理解したものの、恵里が言った通りどうして彼女のことがそこで関わるのかが誰もわからない。不思議で仕方なかったのである。

 

「記憶が確かなら中村さんはこのトータスとは別の世界、エヒトの居城と呼ばれる場所に二度行ってるはずです。それと先日の空間魔法の実験のことが気になったんです」

 

「空間……あっ」

 

 確かに恵里は前世? で“縛魂”をかけた光輝と共にエヒトの居城へと赴いたことがあったし、トータスに来て早々ノイントに連れ去られてしまったことがあった。どちらにしても苦い記憶であったが、そこでいきなり出てきた『空間魔法の実験』に恵里は他の皆と同様疑問符を浮かべたものの、いち早くその関りにハジメとアレーティアが気づく。

 

(ハジメくんは何か気づいたみたいだけど……空間魔法……実験……やったことは色々あったけど――もしかして!)

 

「……恵里や神の使徒がどうやって望む場所へと行くことが出来たか、ですか」

 

「望んだ場所に移動できる。それも、世界を超えてやれる方法があるということですよね?」

 

 どういうことかと考えを巡らせてふとあることに恵里が思い当たった瞬間、そのことを二人が口にしていた。それを聞いたクラスメイト一同や鷲三に霧乃、リリアーナもハッとして愛子の方を見れば、彼女も一度うなずきを返してから一同の疑問に答えていく。

 

「妙な話ですよね。空間魔法に適性のあったアレーティアさんと谷口さんでも地球に戻ることは出来ない。けれどもエヒトは私達をこの世界へと引きずりだすことが出来ましたし、向こうの居城へと自由に出入りが出来る……中村さんの話しぶりからして、そこは()()()だとしか思えないんです」

 

 そう。愛子が疑問に思ったのは何故エヒトやその陣営は自由に『世界』を行き来できたか、ということだ。言われてみれば確かにそういうことかと理解できたし、どうして愛子がそんなことを言い出したかを恵里も理解できた。故に、彼女が話そうとした内容すらもすぐに理解が及んだ。

 

「……前世のアイツもそこに攻め込んできてた。それを考えれば――」

 

「じゃ、じゃあ……本当に、世界を自由に行き来する方法はあるってことですか?」

 

 恵里のつぶやきに鈴が乗っかれば、にわかに食堂が騒がしくなる。あの実験で少なからず地球出身の人間は失意に襲われたが、地球に戻る方法はまだあるかもしれないという希望が再度芽生えたからだ。だが今の話の主題は厳密にはそこじゃないと考えた恵里は愛子に答えを言うよう催促する。

 

「それはわかったよ。それで、先生が言いたいことって――」

 

「中村さんのお察しの通りだと思います――地球に戻る方法があるのなら、無理にこの世界の人間を助けなくてもいいんじゃないですか?」

 

 ――あまりにも冷たい言葉にクラスメイトの多くがその場で凍り付く。そしてそれはトータス側の人間もそうであったが、デビッド達だけは苦しみを堪えようと強く手を握りしめるだけであった。

 

「ひ、必要でしょう畑山先生! だ、だって、ただの人助けじゃなくて俺達と共に戦ってくれる人間が増えるかもしれないんですよ!?」

 

「単に戦力だったら南雲君が作ったゴーレムを並べるなり、アンカジ公国やヘルシャー帝国を倒して支配下に治めるなりすればいいのではありませんか? そこまで肩入れしなくってもどうにかなるはずです」

 

「だ、だからって……愛ちゃん先生はここの人達がどうなったって本当にいいの!? 先生でしょ! そんな冷たいこと言わないで!!」

 

「言ったはずです。もう私は教師などではありません。私にとって一番重要なのはこの世界に来させられた皆さんの安否、ただそれだけですよ」

 

 半ばヒステリー同然のように訴えた光輝と優花にもただ冷淡に、にこやかに微笑みながら愛子は返す。まさかこれほどまでに人間不信をこじらせていたとは思わず、優花や香織ら女子を筆頭に何人もの人間が恐怖していた。得体の知れない何かを見るような目つきで彼女を見つめる人間も決して少なくないし、なんて言葉をかければいいかわからず惑うのが大半だった。

 

「た、確かにトータスの人間が憎いのはわかります! で、ですが愛子殿! そこまで容赦なく切り捨てるなど――」

 

 そんな中、きっとそこに自分達も含まれているとわかりながらもカムが叫ぶ。恵里らの話を聞いた限りでは彼女はクラスメイトから友人に近い距離で親しまれていたはず。ならば親しくしていた相手に疎まれたりするような真似をしていいのかと咎めようとしたのだ。自分達が嫌われているのも経緯からして仕方ないと考えつつ、訴えようとしたものの愛子はそれを途中でにべもなくさえぎった。

 

「だから何です?……私はただ、クラスメイトの子達がもう傷つかなくて済むように()()()()()()()()だけですよ?」

 

 愛子は微笑みを崩すことなくそう述べる。ふとその言い回しに恵里やハジメがいぶかしげな視線を送れば、彼女は悔恨を噛みしめるようにしてぽつぽつと語っていく。

 

「中村さんは真っ先にこの世界から切り捨てられました。彼女と親しくしている南雲君達もそうです」

 

 そう苦々しく吐き捨てるように過去を述懐する愛子に誰もが何も言えなくなる。魔王だと自称したりトータスの人間に敵意を見せるようになった彼女から、かつての愛らしくも頑張り屋で自分達を思ってくれる優しかった頃の面影が垣間見えたからだ。

 

「天之河君達もそれに深く傷ついたはずですし、永山君達とオルクス大迷宮や王国と衝突した時に傷つけ合ってます。それに本来ならしなくてもいいサバイバル生活だってやらざるを得なかった……まぁ私が思ってた以上にたくましく生活してたみたいですけど」

 

 結局オルクス大迷宮で色々やってなんだかんだエンジョイしていたのを思い出したのか、恵里達に一瞬やや恨みがましい視線を送りつつも愛子は更に胸の内を明かしていく。

 

「永山君達だって王国に、エヒトにいいように操られてその挙句手の平を返されて傷ついた――デビッドさん達は別ですけれど、私はこの世界の人間なんて信用出来ません」

 

 やはりトータスの人間に対してあふれんばかりの敵意を抱いているのは、地球から来た皆を必死に守ろうとしているからだということをこの場にいたハジメ達は理解し、重吾らも再認識する。言動がどこまでも冷酷になったとしてもそこにはクラスメイトやその家族を守るためという責任感ある大人としての思いが根底にあるからだとわかったのである。

 

「けれど皆さんを助けられるほどの力があるとうぬぼれてなんてもういませんよ。あまりに私は非力です……だからこそ、手を伸ばして守りきれる場所だけは守りたいんです。そのための、リスクはやはり減らしておきたいんです」

 

 その時浮かべた穏やかでどこか寂し気な笑みにクラスメイトの多くが静かに涙する。変えてしまった。自分達のせいで彼女はこうなるしかなかったのだと罪悪感に襲われ、もっと他に何か出来なかったのかと後悔したからだ。

 

「しかし、畑山先生……一切合切切り捨てるというのは間違ってはいないだろうか」

 

 そこで鷲三が絞り出すように声を出す。力不足であった、一人の大人として孫娘とその友人達を守りたかったと思っていた自分にも、先の愛子の言葉が深々と突き刺さっていたからだ。

 

「それが雫達のためになるとでも言いたいのですか? 絶対に違うでしょう」

 

「雫達が慕ったのは貴女がどこまでも真剣にこの子達と向き合う優しい先生だったからだと思います。冷たく容赦がなくなった貴女を、あの子達は望んでいると思うのですか」

 

 それは隣にいた霧乃も同様であり、けれども教え導く立場であった彼女がそのようなことをしてよいものなのかと説得を試みるも、愛子はただ首を横に振るばかりであった。

 

「反面教師、という言葉はあるでしょう? 少なくとも私のような大人にはならないように育ってくれるでしょう……それで、いいんです」

 

 しかし何もかもをあきらめたかのような言葉を出した愛子に鷲三も言葉が詰まってしまう。きっと説得しようとしても彼女は変わることはないという予感が頭をよぎってしまったからだ。それをどうにか振り払おうとしても結局何て言えばいいのかわからない。

 

「で、でも……だ、大介や永山さん達のように立ち振る舞いを変えても貴女を慕っている人はいます! 以前の貴女に戻ってほしいと思ってるんです! い、今の貴女の行動は、上に立つ人間としても間違ってて……」

 

「それで? その程度の説得で止まると思いましたか? 人の上に立っていたのなら、私がどれだけ本気でこうしているかわかるはずですよね」

 

「う、うぅ……」

 

 大介の後ろでアレーティアが必死になって訴えるも、愛子がそれを意に介する気は全くない。半端な思いでやってなどいないとにらみ返してきたのと、愛子にとって大事な存在である大介達を傷つけた罪悪感からアレーティアは怯えて彼の後ろに隠れてしまう。

 

「お願い愛ちゃ……畑山先生! アレーティアさんが言ったように私達は先生がそうすることを望んでなんていないの! だから!」

 

「構いませんよ。皆さんがこれ以上傷つかずに済むというのならどれだけの悪行を繰り返しても耐えるつもりですから」

 

「ったく、取り付く島もないね……!」

 

 雫が訴えるもそれがどうしたと言わんばかりの様子でハジメ達もどうすればいいのか途方に暮れ、恵里もどうやってこの頑固者を丸め込もうかと知恵を絞っている。

 

 “鎮魂”を使ったところで向こうに冷静に反論をする機会を与えるだけだし、どう見ても捨て鉢で自分達を守れればそれでいいと言わんばかりだから中々に質が悪い。そんな愛子をどうすれば説得出来たものかと考えあぐねていると、ふとハウリア族のパルという少年がぽつりと漏らした。

 

「じゃあ愛子姉ちゃんは、愛子姉ちゃんは誰が守ってくれるの?」

 

 あまりに単純で、稚拙で、けれども核心をえぐるその言葉に、誰も答えることは出来なかった。




最後のセリフ、ホンットにパル君に言わせたかったんです……!
だって拙作の愛子、自身の血肉を削りながら子供達を守ろうとしてるんですもん! そんなの恵里達は絶対に望んでませんから!

近いうち(2023/8/16 17:00)に次の話の投稿を予定しております。
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