あまりありふれていない役者で世界逆行   作:田吾作Bが現れた

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ようやく投稿出来るようになりました。というかします!(やけっぱち)

読者の皆様への盛大な感謝を改めて述べさせていただきます。
おかげさまでUAも214483、しおりも463件、お気に入り件数も936件、感想数も739件(2024/8/12 18:47現在)となりました。誠にありがとうございます。

そしてAitoyukiさん、今回も拙作を再評価してくださり誠にありがとうございます。おかげさまでまた執筆する力をいただきました。感謝いたします。

今回の注意点として少し短く(約7000字)なっております。では上記に注意して本編をどうぞ。


九十四話 夢へと進む者達・破

 岩で出来た広間の中央、武器を構えた恵里達の眼前には突如現れた直径十メートル大の魔法陣があった。脈動するように赤黒い光を放っていたそれが遂に爆発するように輝くと、咆哮を上げながら地を踏み鳴らす異形が姿を現す。

 

「グゥガァアアア!!!」

 

「ひっ!? あ、あぁ……」

 

 その名はベヒモス。トータスでかつて“最強”と言わしめた冒険者が歯が立たなかったと()()()()化け物が顕現したのだ。途端、ウィルは情け無い悲鳴を上げてその場にへたり込んでしまい、それを横で見た恵里は短く舌打ちする。

 

「チッ。打ち合わせで見栄張っといてコレぇ~?」

 

「む、無理を、無理を言わないでやってくれ! お、俺達でウィルを守るぞ! 命に替えても傷一つつけさせるなっ!」

 

「「「「りょ、了解っ!」」」」

 

 ベヒモスを見て腰砕けになっていたのはウィルだけではなかった。ゲイル達の方にも視線を向ければ、彼らも顔面蒼白で全身を震わせている。とはいえウィルの盾にならんと周囲に陣取っていく辺りまだマシかと恵里は前方に意識を向けた。

 

「くっ……陣形を変えるぞ! 俺が前に出る! クリスとジェイドは両翼、チェイスは俺達が抑えている間に一撃を入れろ!」

 

「「「了解っ!」」」

 

 その一方、デビッドはすぐ立て直した様子で打ち合わせとは違う陣形をとるよう指示を出した。だが恵里は彼らの剣を握る手が震えているのを偶然見てしまい、過去の自分を思い出して苦笑いを浮かべる。

 

(あの時も割といっぱいいっぱいだったなぁ。ま、話し合いの時も言ってたし、援護以外は任せよっか)

 

 前世? で最初にベヒモスと出くわした時も当時のクラスメイト達と同様に焦っていた。再度トータスにやって来てハジメと騎士団の面々と一緒に埋め殺した時だってかなりの綱渡りだった。その時の自分を見てるかのようでちょっとだけ微笑ましさを感じつつも、恵里はこの階層を潜る前にやった打ち合わせ通りに彼らの援護に回る。

 

「“堕識”」

 

「グォ?――ゴフッ」

 

「はい。アイツの意識奪っといたから後は上手くやりなよ」

 

 ベヒモスが突撃を仕掛けてきたものの、恵里が瞬時に発動した“堕識”によって両足がもつれて前のめりに転倒する。あごをしたたかに打ち付けて未だ立ち上がれていないベヒモスを確認すると、恵里は口の端を吊り上げながら振り向いてデビッド達に声をかけた。

 

「すまん、助かる!」

 

「ありがとう中村さん!――少しでも君達に追いついて、愛子ちゃんの力になるためにも倒さないとね!」

 

「譲り受けた武具もある。ここまでお膳立てしてもらって負ける訳にはいかん!」

 

「伝説ぐらい越えなければ目的も果たせないですからね!」

 

 彼らも声を震わせながらも感謝や意気込みを伝えると同時に恵里を横切って伝説の魔物へと向かっていった。その横顔はいずれも死地に臨むかのような厳めしいものであり、せいぜい頑張れと思いながらも恵里はデビッド達を見送る。

 

「すごい……」

 

「デビッドさん達、上手く使いこなしてるみたいだね」

 

 誰かが何かつぶやいたようであったが、恵里は隣にいたハジメの声の方に意識も顔も向いていた。彼の言葉を聞いて様子はどうなのかと前を見れば、劣勢ながらもデビッド達はベヒモス相手に懸命に戦っているのがわかった。振るった剣は伝説の魔物の肉体を薄くではあるが切り裂き、その身にまとった鎧は前足のなぎ払いや振り下ろしによる一撃をもらってもビクともしていない。

 

「見事な切れ味だ! 後は俺達が使いこなせるか、だな!」

 

「えぇ! 試作品とはいえ、筆頭錬成師を超える腕の南雲君と彼の友人が作ってくれたものですからね!」

 

 チェイスが述べたように彼らが使っているのはハジメが作った試作品の武具だ。エヒトとの戦いの際に一般兵に支給するものを開発するため、研究やフューレンの騒動などの合間を縫って全員で協力して作ったものである。

 

「ぐっ……今の一撃をもらって、壊れすらしないとはな」

 

「無理をし過ぎだよジェイド! 愛ちゃんが怒っても知らないからね!」

 

 前足の横薙ぎを剣で受けたジェイドだったが、剣にはヒビ一つ入っていない。クリスが彼の無茶をたしなめはしたが、その顔にはうっすらと笑みが浮かんでいる。

 

「うん、良かった。あれぐらいで壊れないようにちゃんと作った甲斐があったよ」

 

「うーん、そうかなぁ~」

 

 クリスと同様に横にいたハジメも薄く笑みを浮かべて何度もうなずいていたが、恵里は何かが引っ掛かってしまって素直にデビッド達を評価出来ないでいた。使っている武具をせわしなく見つめ、左腕を腰に当てながら軽く眉間にシワを寄せていたのである。

 

「どうしたの恵里? 何かマズいものでも見つかった?」

 

「いや何かさ、前にボク達がテストした時より弱くない? そんな気がしたんだよ」

 

 そこでようやく恵里はその理由に思い至る。デビッド達に渡して色々と調整する前、実はあれらの武具は真のオルクス大迷宮で実際に運用試験をやっていたのだ。

 

 ズブの素人である自分やハジメに鈴などの面々はともかく、光輝や雫、浩介のように剣術に精通している面々はトレントモドキを一太刀で両断していた。いくら量産を前提に設計したとはいえ、自分達素人よりも剣の扱いが上手であろうデビッド達が使っていても光輝達ほどの強さを発揮できているようには見えなかったのである。

 

「ハジメくんやボク達の合作がさ、頑丈さぐらいしか取り柄が無いものだったっけーって思っちゃって」

 

「デビッドさん達用に重心の調節とか厚みの変更はしたけど、そこまで大きく変化はしてないはずだよ。一緒にテストしたんだし、調整にも立ち会ってるのは覚えてるよね?」

 

「多分それ鈴達のステータスの高さが原因じゃない? 普通の人よりもすごく強いからそのせいで割と力任せでも切れたんだと思うよ」

 

 武具の頑強さはテストの通りであるせいで余計に理由がわからなかったのだ。どういうことかと思っていると、ハジメと彼の隣にいた鈴の二人が苦笑いしながらそれぞれの意見を述べてくれた。そのでようやく恵里も腑に落ちてポンと手を打つ……直前に右腕がないことを思い出してちょっと口元をヒクつかせた。

 

「あ、そっか……まぁそこまでは考えてなかったね」

 

「ちょくちょく自分達を基準にしちゃうからね僕達……」

 

「永山君達の時とかも失敗しちゃったしね……それを反省して――」

 

「いやアンタ達は早く逃げる準備をしてくれ!!」

 

 手が無いことを不便だと思いつつも、二人よりはマシなんだからと恵里は出かかった言葉を呑み下す。代わりに考えが及ばなかった旨を明かせば、二人も力関係で失敗したことを思い出して苦い顔をしていた。それを聞いて確かにと恵里も連られて苦笑いを浮かべた時、ゲイルの悲鳴じみた懇願が広間に響く。

 

「神殿騎士達が今命がけで戦っているんだぞ! もう十分時間は稼げたはずだ! なのにどうして逃げない!」

 

「すぐに撤退すべきだ! あのままじゃ彼らだって長くは保たない! いくら“聖典”が使えるからって、死んだら元も子もない!」

 

 その声に一瞬あっけにとられた顔をしていた恵里であったが、すぐにゲイルと治癒師のワスリーが掴みかからん勢いで迫って来る。再度デビッド達の方に視線を向ければ吐血はしてるし、顔にアザなんかも残っている。剣を支えにしているようではあるが、四人とも目つきがギラギラしているのが見えるため大丈夫なように恵里には見えた。

 

 とりあえず鈴が“聖典”飛ばせばまだ粘れるんじゃないだろうかと思って騒ぎ続けるゲイル達を無視していると、少し渋い表情をしたハジメと鈴がデビッド達に声をかけたのであった。

 

「デビッドさーん、()()()()使ってくださーい! このままだと負けちゃいますよー!」

 

「ごめんなさーい! 今“聖典”使いまーす!」

 

「ぐぉっ!?――不要だ! お前達の助力をこれ以上受けて勝ったのでは微塵も強くなれん!」

 

 打ち合わせの際、デビッド達は提供された武具以外にも自分達の援護を受けては強くなれないと述べていた。どうにかねじこんだ『最初に“堕識”を撃って動きを阻害する』以外のサポートも断っていたのである。

 

 先程前足の振り下ろしを剣で受け流そうとして失敗した様子であったが、右腕をプラプラとさせても拒否したのを見て恵里はデビッドを半目で見つめていた。

 

「そう言ってる場合じゃないでしょう、教皇代理、どのっ!」

 

「ぐっ!? チェイス、お前……っ!」

 

 そしてベヒモスが別の前足で横薙ぎを仕掛けようとした時、チェイスがデビッドの左腕を掴んで一気に後ろへと跳躍する。二人が離脱するのと入れ替わるように、クリスとジェイドは苦い表情をしながらベヒモスの両脇へと跳びかかった。

 

「ジェイド、あの機能を使って倒そう!」

 

「ここまでやられている以上、もう意地を張る場合でもあるまい――行くぞ」

 

 やっと折れたかと恵里は二人を見てため息を吐く。横にいたハジメと鈴もホッと息を吐いたのを聞き、これならいいとこ戦闘不能にまで持っていけるんじゃないかと恵里も期待を寄せる。だが次の瞬間、ベヒモスは両前足を力強く叩いて予想しなかった動きに移った。

 

「グルゥアアァアァ!」

 

「っ! ベヒモスが立った!?」

 

 前足を叩きつけた勢いで立ち上がったのだ。そういえばコイツこんなことやったっけと思いつつも、最悪鈴が“聖絶”を使って何とかしてくれるかと思ってただ恵里は静観する。そしてその期待通りに二人は動いてくれた。

 

「ぐっ、やっぱり魔力が――」

 

「だが、この瞬間を逃せはしない!」

 

 そのまま倒れこもうとするベヒモスに対し、クリスとジェイドは更に踏み込むと共に刃に紅の光が灯った。横と縦にそれぞれ振りかぶると、二人はそのまま一撃を叩き込もうとする。

 

「む、無理だ! あの剣じゃ薄皮を切るだけで――」

 

「「でやぁああぁ!」」

 

 前衛をやっていたナバルの焦りに満ちた声を聴いて恵里は鼻で笑う。その直後に二人が剣を振り抜いたからである。

 

「――グオォオォォォ!?」

 

 後ろ足は見事に両断され、苦悶に満ちた叫びと共にベヒモスは前へと思いっきり倒れこむ――その理由は彼らの剣に付与されたものの一つが空間魔法の“分解”であったからだ。魔力を流すことで刃にうっすらと“分解”の魔力を纏わせ、あらゆる物を切り裂ける仕組みがあの剣には仕込まれていたのである。

 

「やっぱり、一回が……」

 

「俺達の、限界か……」

 

「っ! “聖絶・桜花”!」

 

 だがその分魔力の消費もかなり激しく、後ろ足を切り捨てた直後にクリスとジェイドはそのまま地面に倒れこみそうになっていた。即座に鈴が自在に舞う無数の破片状のバリアを展開し、ベヒモスが倒れこんだ際のダメージを防ぐと同時に彼らが地面に体を打ち付けないよう下に回り込んでいく。

 

「グルゥ、ウゥゥ!!」

 

「ひっ!?」

 

「がれきがっ!」

 

 鈴の技量の高さに舌を巻いていると、倒れこんだベヒモスが最後の悪あがきとばかりに前足や残った後ろ足を地面に叩きつけて暴れ出した。そのせいで広間が大きく揺れ、割れた地面からつぶてが無数に飛び散っていく。

 

「恵里、鈴、皆をお願い!」

 

「はーい。“崩軛”っと」

 

「うん。これで浮かせて……“崩軛”」

 

 しかし恵里は特に心配もしていなかった。一足先に車イスの機能で浮いていた彼に倣って恵里も重力魔法を発動する。自分とデビッド達を少しだけ体を宙に浮かせることでやり過ごし、鈴の方も車イスの機能と同じ魔法を使ってウィル達を浮かせて揺れを回避していた。

 

「あ、助かるよ!」

 

「感謝する!」

 

「う、浮いてる浮いてる!? な、何が!?」

 

「し、神代魔法とでもいうのか!?――って、ガレキが!」

 

「「あ、大丈夫です。全部鈴が防ぎますから」」

 

「「「「「いや、えぇ……」」」」」

 

 デビッド達は口々に感謝を示したが、冒険者達は急に浮いたことで錯乱したようであった。その直後、幾つも飛んできたつぶてを鈴が宣言すると同時にバリアを操って的確に防ぐ。顔面蒼白になりながらもドン引きしている冒険者達を見て恵里は胸がすく思いであり、ためらうことなく彼らにドヤ顔を披露する。

 

「ふふっ、二人も結構底意地悪くなぁ~い?」

 

「いや、今のは余裕の笑みっていうかなんていうか……その」

 

「あんまり揚げ足取りしないでよ恵里。それよりもそろそろ鈴達の出番じゃない?」

 

 ハジメと鈴も振り向いて彼らに余裕たっぷりの笑みを見せており、やっぱり考えていることは一緒かと目が合うと二人はすぐに表情を苦笑いに変える。先程の様子をからかえばハジメはわかりやすいくらいうろたえており、鈴も露骨に話題をずらそうとしていたため、恵里は軽くスッキリしたのであった。

 

「さて。そろそろ潮時でしょ。はいここからはボク達がやるからねー」

 

「えぇ、お願いします!」

 

 それはそれとして鈴が述べた通り、これ以上はもう戦えないだろうと恵里はデビッド達に選手交代を申し出る。苦渋に満ちたデビッドが何かを言おうとしたが、彼を引きずっていたチェイスが先に返事をしてくれた。すぐに恵里は横にいたハジメと鈴の方を向き、二人も顔を合わせてうなずき返す。

 

「じゃあデビッドさん達、それとゲイルさん達にウィルさんも。後は鈴達に任せてください!」

 

「僕達が後始末します!――じゃあ鈴は飛んでくるガレキを全部防いで。僕はドンナーで残った前足を撃ち抜くから恵里は“緋槍”で頭を貫いて。いい?」

 

「「了解!」」

 

 デビッド達に声掛けをするとすぐにハジメが作戦を立案してきた。特に異論は無かったため恵里は鈴と一緒に返事をし、手にした杖の先をベヒモスの頭へと突きつける。

 

「“聖絶”」

 

 アレンジした魔法の展開を続けたまま、鈴がその元となった魔法を詠唱する。駄々っ子のように暴れるベヒモスの真ん前まで迫り、そして天井まで覆わんほどのバリアを一瞬で彼女は張ったことであらゆる攻撃はこちらに届かなくなった。

 

「ありがとう鈴」

 

 ハジメが感謝の言葉を彼女に告げると同時に持っていたドンナーから二発の爆音が響く。空気を砕くような音と共にベヒモスの両前足が爆ぜ、肘から先が血しぶきと共に宙へと舞う。

 

「グォォ――」

 

「じゃあトドメもらうよ。“緋槍”」

 

 そう宣言すると同時に恵里の目の前に灼熱の槍が作られる。それはもだえ苦しむベヒモスの頭を一切の狂い無く貫き、角と手足だけをウェルダンで焼いて残りを炭にしたのであった。

 

「はいお疲れ。二人とも」

 

「僕達よりも気遣う人がいるでしょ、恵里」

 

「そうだよ。デビッドさんやゲイルさん達の方が先だよ」

 

 いい仕事をしたとばかりにニカッとした笑顔を浮かべてハジメと鈴に声をかけた恵里だったが、当の二人は苦笑を浮かべるばかり。二人の視線が一瞬別方向へとブレたのを見て恵里もようやく察する。

 

「あーはいはい。そっちもお疲れ」

 

「……やはりまだまだお前達には敵わんな」

 

 そこでやや投げやりに恵里がデビッドにねぎらいの言葉をかけると、あちらもため息を吐いてから羨望と軽い嫉妬の混じった視線を向けてきた。

 

「彼女達がどれだけ長い間困難と向き合っていたと思うんですか。デビッド教皇代理……まぁ、私も嫉妬しないと言えば噓になりますが」

 

「道具頼りでもこれが限界だからね……」

 

「一つ言えるのはまだ今の俺達では修行が足りないということだな」

 

「そうだね。頑張れ頑張れ」

 

 そんなこと言われてもと思いながらも恵里はチェイス達の方にも視線を向けるが、彼らもまた同様であった。恵里としてもそう簡単に追いつかれるというのもしゃくに触ったため、軽く鼻で笑ってから雑な励ましの言葉を彼らにかけた。

 

「恵里、めっ!……ごめんなさいデビッドさん、チェイスさん。クリスさんとジェイドさんも」

 

「いいや、仕方あるまい。俺達がいらん対抗心を燃やしたせいだからな……だから頼む。そんな顔でにらむな。変に怖い」

 

 そしてハジメに叱られた恵里は軽くほっぺを膨らませて彼を見つめる。しかし彼は無視してデビッド達に謝罪したため、わびの言葉を入れた彼らを恵里は思いっきりにらむ。

 

「もう恵里ってば。そういうことするからハジメくんに適当にあしらわれるんだよ」

 

「……ボク悪くないもん。ちゃんとねぎらったもん」

 

「悪いことしたらちゃんと謝る。じゃないと駄目だからね……すいませんゲイルさん。もし良かったら僕が武器をハンドメイドで作りますんで」

 

「………………ごめんなさい」

 

 直後、鈴からツッコミを受けてしまい、恵里はリスみたいにほほを膨らませて不機嫌さをアピールする。なお鈴は半目で彼女を見つめており、ハジメも恵里に注意した後でゲイルの方に声をかけていた。結果、恵里は折れて渋々デビッド達に頭を下げたのだった。

 

「……すまない」

 

「ここで謝られても嫌味にしか、いえ助けてもらってこれを言うのは筋違いですね。ありがとうございます」

 

 一方ゲイル達の方も全員がうつむいており、弱々しいながらも反応を返したのもゲイルとレントのみであった。その弓使いのレントは唯一ハジメを見ながら答えたのだが、反発を見せていた辺り鬱屈した思いがあるのだろうと恵里は察する。それはそれとして一瞬だけ彼に“威圧”を飛ばしてビビらせた。なおすぐさまハジメが“威圧”込みの笑顔を向けて来たため、バレたと察した恵里は即座にレントに頭を下げていた。

 

「まぁ魔石は灰になっちゃったし角も黒焦げになっちゃったけど、吹き飛んだ手足はまだ売れるかもしれないしそれとりあえず持って帰らない?」

 

「そうだね。じゃあ皆さん、今戦利品を回収して来るので――」

 

「どうして、ですか」

 

 ひとまず目的も果たしたのだからともらえるものだけ持って帰ろうとした時、ウィルの弱々しいつぶやきが石造りの広間に響く。

 

「どうして、どうしてハジメ殿達はお強いのですか」

 

 か細く、弱々しい声であった。しかし恵里はその湿った声に羨望と嫉妬が混じっているのに気づく。振り返れば青年は涙も鼻水も垂れ流し、こちらをじっと見つめていたのであった……。




続きは今週中に挙げられたらなー、と思ってます。


2024/8/12 22:59 前話含めてタイトルちょっと修正
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