あまりありふれていない役者で世界逆行   作:田吾作Bが現れた

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お久しぶりです。一週間と八日ぶりですね(白目)
では改めまして読者の皆様に盛大な感謝を。

おかげさまでUAも217054、お気に入り件数も945件、しおりも468件、感想数も750件(2024/9/9 6:27現在)となりました。誠にありがとうございます。拙作を読んでくださることで日々の足しになるのならば幸いです。

そしてAitoyukiさん、今回も拙作を再評価してくださり誠にありがとうございました。おかげで後編を書き進めるモチベが高まりました。感謝いたします。

今回の話の注意点として少し短く(9000字足らず)なっております。いつもの分割癖ですはい(遠い目)

では上記に注意して本編をどうぞ。


九十七話 勝利者は誰?(前編)

 一糸乱れぬ軍靴の音、無数の馬蹄が土を踏み鳴らす音、何台もの馬車の車輪がカタカタと鳴る音が王国の国境近くの平原中に響き渡る。地平線の彼方まで続くかの如く、列をなして進む兵士達の姿がヘルシャー帝国現皇帝、ガハルド・D・ヘルシャーの視界には映っていた。

 

 帝国だけでなく王国から寝返った貴族、そして昨日合流したばかりのアンカジ公国と聖教教会の大量の旗がひるがえっており、その威容を愛馬に乗りながらながめていたガハルドはふとつぶやいた。

 

「勝つな」

 

「ですな」

 

 後方で馬に乗って並走していたベスタがそのつぶやきに答え、それに気をよくしたガハルドは口角を上げる。そのためにこの数を用意したのだと思っていると、前方からやって来た斥候と思しき兵士がベスタの下へと行った。

 

「一応聞いとく。何があった」

 

「全軍、無事に国境を越えられたそうです」

 

「そうか」

 

 そう離れてもいなかったことから報告は筒抜けであった。しかし、ここで何も言わなかったり報告をそのまま口にしてしまえば、この側近から『皇帝の威厳に傷がつく』だのと口やかましく言われることはガハルドも理解している。故に礼儀として尋ねれば寸分の狂いもない知らせが再度耳に入った。

 

「ベスタ。隊列に乱れは」

 

「特に無いとのことです。裏切り者どもも大人しくしているのでしょう」

 

 兵士も程なくして去り、ガハルドは改めて自軍の陣容の確認をする。ベスタの報告の通りならば先鋒を務めている元ハイリヒ王国の貴族どもは大人しく最前線にいるようだ。ならば後詰に置いた自軍の騎馬隊と術師隊も特に動かす必要もないかと前に意識を向ける。

 

「国境を越えた、ということはこれから少しずつ包囲網がせばまっていくでしょう。我が軍はともかく、アンカジと神殿騎士の方は声掛けをしておいた方がよろしいかと」

 

「わかった。任せる」

 

 帝国軍は王国の東から南の端までをぐるりと囲むように進んでおり、公国とアンカジの聖教教会の混成軍は西に部隊を展開している。ネズミ一匹通さない網を張り、その圧倒的な戦力で以て反抗する戦力を徹底して潰す。ガハルドが描いた絵図の通りに事態は進行していた。

 

(しかし今の今まで罠の一つもねぇとはな……籠城戦か、それとも反逆者にでも頼った作戦か)

 

 そしてそのことをガハルドはいぶかしんでいた。王国に仕えていた貴族のほとんどが帝国に鞍替えしていることは既に確認済みであったし、王国の抱えている戦力が自分達と比べてひどく少ないことは把握している。しかし今まで罠があったとの報告も聞いていないのだ。

 

 もし仮に戦う気があるのなら国境近辺に罠を張っても足らないぐらいだろうし、降伏を申し出るのなら物見が使者の一団をそろそろ発見してもおかしくはない。にもかかわらず王国側からのリアクションがこれといってないのである。

 

(ま、全員自害せずに健気に戦う気になってくれていることを祈るか。そうでなきゃこの数を出した甲斐ってモンがねぇ)

 

 未だにウダウダ話でもしているか、それとも既に覚悟を決めて自害したか。反逆者などという戦力を抱えているのだからそれにすがってくれないと困るのだ。ガハルドは目を細めながら鼻を鳴らし、後ろにいたベスタに声をかける。

 

「ベスタ。もし仮に反逆者の奴らが全員オルクス大迷宮を突破していたとして、俺達が圧勝以外すると思うか?」

 

「まさか。かの伝説を軽々打ち破って最奥まで到達したとしてもそれは複数でなしえたことでしょう。これだけの数を前にどれだけ粘れるか」

 

「だろうな。俺が馬鹿だった」

 

 前を向いたままガハルドはベスタに問いかけるが、あざけりを堪えながら返したであろう側近の答えにガハルドは満足げに笑みを浮かべる。

 

 そう。圧勝だ。圧倒的な戦力で蹂躙し、このトータス全土においてヘルシャーの右に出るものはいないと知らしめる。そのために反対する大臣らに剣を突きつけてでも全戦力の八割ほどを動員するよう命を下したのだ。そうでなくては困るとくつくつと暗い笑みを浮かべていると、恐怖で引きつった顔をした兵がこちらに向かってくるのをガハルドは目撃する。

 

「ほ、報告! ほうこーく!」

 

 振り向けばベスタがうなずき、馬を操ってガハルドの前へと出る。大量の汗をかきながらやって来た兵士の男はベスタの乗る馬の前で倒れこむようにつまずき、しかしすぐに頭を上げて報告をした。

 

「お、王都の前に敵三千!」

 

 籠城戦を選ばず打って出たことをありがたく思いつつもガハルドはその蛮勇を鼻で笑う。しかしたったそれだけの情報でここまで焦るはずがないとすぐに思い直し、一体何がコイツを焦らせたのかと今も荒い息を吐き続けている兵をガハルドは静かに見つめる。

 

「それだけか。他は」

 

「そ、それと……車輪がついたと思しき巨大な金属の塊に馬が、前後に車輪を生やした金属の馬にまたがった男どもがとてつもない速さでこちらへと向かってきております!」

 

「は?」

 

 そして兵士が上げた報告にガハルドはベスタと共に素っ頓狂な声を出しそうになってしまう。だが間の抜けた声を自分が上げたら動揺が一気に広まりかねないと無理矢理飲み込み、その報告に出て来た謎の物体についてすぐに知恵を巡らせる。

 

「フン。どうせ反逆者の作ったこけおどしの類だろう――早く言え。ソイツはどれだけ速く動いてる」

 

 ガハルドは手綱を操ると今も四つん這いになっている兵へと近づき、剣を抜いて馬上からその切っ先を突きつけた。

 

「ひっ!」

 

 その金属の塊どもの速度次第では早急に対処しないと被害が出かねない。被害が出ては駄目なのだ。この戦いに必要なのは全ての人間族が帝国に逆らう気力が失せるほどの『圧倒的な勝利』なのだから。

 

 反抗する人間が今後一切生まれなくなるような大戦果を出すためにこれ程の戦力をかき集めたというのに、最後の悪あがきでそれが(かげ)ってしまうことをガハルドは避けたかったのである。

 

「とっとと言え。これから執る指揮がお前の言葉ひとつで変わるんだ。馬と同じか? それとも人間が走る程度なのか?」

 

「う、馬並みかそれ以上ですっ! 全力で走る馬のような、と、とてつもない速さでこちらに!」

 

 もし少しでも答えが遅かったら馬から降りてでもその首を刎ねるつもりであった。ガハルドはほぅと興味深そうに息を吐くと、泣きわめいて股を濡らしている兵士を横に剣を収めた。

 

「ベスタ、裏切り者の後詰めをやらせている騎馬隊を下げろ。それと術師隊で突っ込んでくる塊を左右二つに分かれて包囲。総力を挙げて潰せ」

 

 先の報告は反逆者が用意した兵器を使ったのではないかと考え、ガハルドはベスタに指示を下す。直線状にしか早く動けない騎馬隊は被害を出さないよう回避に専念させる。またそのまま例の物体が戦場を突っ切ることも考え、術師隊の面々にも動いてもらう。帝国の力の前ではどんな策だろうと無意味にしかならないということを知らしめるためだ。

 

「であれば火と風、それと裏切り者どもを盾にすればいいでしょうかな」

 

「ついでに土も出せ。元王国の奴らを使えば多少は勢いを殺せるはずだ。その後土で下から突き上げて勢いを削いで、火と風で溶かし尽くせ。反逆者どもに無意味ってモンを教えてやれ」

 

 ベスタの提案にガハルドは腕を組みながら答える。元王国の貴族を盾として使うことにためらいがないのは、武功を挙げて参陣したのでなくただ裏切っただけの輩でしかなかったからだ。これで向こう側の兵器に対処したというのならその実力を認めるが、今の時点では何も持たない相手をマトモに取り合う気は彼にはなかった。それよりも帝国軍に被害が及ぶことを恐れたのだ。

 

「テメェはいつまで腰を抜かしてるつもりだ?」

 

「ひっ、ひぃっ!」

 

 そして今までずっとへたりこんでいた兵士にガハルドは愛馬の上からねめつける。すると男も短く悲鳴を上げ、震えながら立ち上がろうとしたその時異変が起きた。

 

「あ~怖いこわぁ~い。震えて泣いちゃいそうだよぉ~。戻ったらハジメくんになぐさめてもらおっかなぁ~」

 

 聞きなれないどこか小ばかにしたような女の声がこの場に響いたのである。そのねばついた声の主は突如平原に現れた光の膜をくぐるようにして現れ、その白髪赤目の少女にガハルドは覚えがあった。

 

「ハッ、だったらお前の連れに(ねや)で慰めてもらったらどうだ――中村恵里」

 

 光の膜はある反逆者の少女が姿を現すと同時に消える。少女をこけにするようなセリフを吐くと共にガハルドは腰元にしまった剣を抜く。ベスタそして自分の後ろからついてきていた近衛兵もすぐに少女の下へと近づき、抜剣なり馬上槍を構えるのをガハルドは見た。

 

「セクハラなんて今どき流行らないけどぉ~? “選定”

 

「手加減はいらねぇ。殺せ」

 

 女が何かをつぶやいたようだがそんなものなど関係ない。仮に光の膜を通る前に詠唱を済ませていたとしても今の時点で魔法は発動していない。ならば次の手を打つ前に全員で血祭りにする。強力なものであればその分詠唱も長くなるのが常識だからだ。

 

 この場にいた全員が一斉に武器を振るっていたことから、自分が下した命令をベスタ達も正しく理解していたのをガハルドもわかった。

 

「なっ!」

 

『何ぃ!?』

 

 しかしその全ての攻撃は空を切ってしまう。ゆらゆらと落ちる木の葉を連想させる動きで、反逆者の少女は自分達の攻撃を全て避けてしまったのである。

 

「お前ら、このまま一気にぶつけ――」

 

「ざぁ~んねんでしたぁ~――“崩軛”」

 

 ゆらりと少女が動くと共に空振りした武器が絡まってしまい、そこから横になぎ払うのが困難となってしまう。そこでガハルドが音頭を取って一斉に武器の塊をぶつけようとした時、少女が何かの魔法と思しきものを口にする。次の瞬間、ガハルド達の身に異変が起きた。

 

「へ?――どぁああぁあーー!?」

 

 風もないのに体が宙に浮き、そのまま上空へと一気に()()()()()()()()吹き飛んでいったのである。それはベスタや近衛兵も同じであり、ガハルドは愛馬ともども仲良く空へと放り出されていったのであった――。

 

 

 

 

 

「よし。とりあえずこっちも第一段階は終了かなぁ~」

 

 恵里は驚愕の表情や叫びを上げながら一気に上空へと行く帝国の兵士達を見上げていた。嫌味ったらしく手を小さく振って見送りつつ、両脇からやってくる兵士達の足音を聞きながら次はどう相手しようかと考える。

 

「調子に……乗ってんじゃねぇぞ!!」

 

 だがあちらもただ黙ってやられてはくれなかった。短く切り上げた銀髪の偉丈夫を中心に数十人がこちらに向かって落ちてきている様子なのである。それを見て恵里は思いっきり顔をしかめた。

 

「あーもう面倒くさいなぁ。大人しくやられてくれればいいのにさぁ~」

 

 迫ってくる相手の一人の表情が一瞬痛みにもだえた様子であったこと、全員が何かを堪えるように噛みしめている顔つきであること、そして何かを推進力としていることから大方風属性の魔法でも自分に当ててきているのだろう。

 

 そんなことを推測し、簡単にやられてくれないことに業を煮やしつつもどうするかと恵里はほほに人差し指を当てながら考える。

 

「それはこっちの台詞だ! 大人しく帝国の礎になりやがれぇ!」

 

「あっそ。“堕識”」

 

 そして狼のような鋭い目つきの銀髪の大男を筆頭に兵士達は武器を構え、こちらを攻撃しようとしているのを恵里は見た。心底どうでもいいとばかりに目をうっすらと細め、恵里は愛用している闇属性の魔法を発動する。

 

「くた――ぁ?」

 

『ぅ、ぁ……』

 

 ほぼ一直線上にこちらに落ちながら、それもかなりの速度で進んでいるのを見て恐らく横に避けるのは難しいと恵里は考えた。そこで選んだのが明滅する球体を見ている間のみ、相手の意識を数瞬の間だけ飛ばすこの魔法だったのである。

 

「じゃあ大人しく帰ってねぇ~。“風球”」

 

 相手はこちらへと加速しながら落下している。ならば下手に横に動いてしまえば位置がズレる上に速度も落ちてそのまま地面にぶつかりかねない。また目をつむることもそらすこともそのまま地面にぶつかって汚いシミになる可能性を高くする。だから絶対にこれは避けられないと恵里は考えており、その目論見は見事に当たった。

 

「なっ、しま――ごぇっ!?」

 

『ぐぇっ!?』

 

 人数分展開した風の球体を操り、それを全て落ちて来た奴らのみぞおちにクリーンヒットさせる。すると全員意識を失ったのかだらりと手足を垂らして武器を落とし、発動し続けていた重力魔法の効果によって再度空へと上がっていく。

 

“ねぇ皆ー、大丈夫ぅ~? なんか強そうな見た目の奴が抵抗してきたんだけどさぁ~。上手くいってるー?”

 

 馬に乗った兵士や術師が発動したと思しき無数の魔法が左右からやって来てるのを確認しつつも、恵里はため息を吐きながら“念話”を飛ばす。

 

“あ、恵里のところもなのか……いや、少し焦ったよ”

 

“ま、仕方ねぇよな。大人しくやられてくれるワケでもねぇし”

 

 繋がったのは自分と同様に()()戦場を引っかき回している光輝と幸利であった。二人も似たようなことがあったらしくどこか疲れた様子で返しており、やっぱり面倒だなーと思いつつも恵里は横から飛来する炎の弾丸や頭大の(つぶて)をかわしながら答える。

 

「この……化け物がぁー!」

 

“だよねぇ~。数が数なんだからさぁ~、楽に終わってほしいのにぃ~”

 

“っと、ごめん恵里、幸利! 俺は次の場所に移る!”

 

“俺もだな。ま、死ぬなよどっちも”

 

“はいはーい。わかったよー”

 

 両足に思いっきり力を入れて跳躍し、馬上槍や剣を構えて突撃してきた騎兵の真上を飛んでかわす。軌道を変えて襲い掛かって来た水の刃を、もはや津波と形容するほどの数で襲い掛かる炎の球も“空力”で作った無数の足場を蹴って縦横無尽に駆け巡る。

 

「“選定”――さて、ここらでいいかなぁ~」

 

 空を駆け抜けていく際に四方八方で帝国側の兵士達が上空へ投げ出されるのを見て、皆で作った()()もちゃんと機能しているなーと思いながら魂魄魔法を発動する――簡単に言えば術者が選んだ魂、もしくは特定のエネルギーを持つ者をターゲットとするものだ。

 

「数だ! 初級でいいから数で押せ! ここに焼撃をのぞ――」

 

「“崩軛”」

 

 新たに作った足場を踏み抜く程の力で真上へと跳び、十数メートル上空で恵里はくるりと宙返りをする。そして三日月のような笑みを浮かべながら地面を見下ろし、恵里は重力魔法を発動して指定した範囲の『引力』を切断した。

 

「え――ぎゃああぁあぁああ!?」

 

 愛用する杖には光輝の技能である“複合魔法”を付与されており、“選定”によってターゲットとなった生物全てを“崩軛”で遥か上空へと飛ばす。数百もの兵士が間抜け面や怯えた様子で空へと上がっていくのをすれ違いざまに見つめ、くるりと体を横に半回転させる。

 

“浩介君、それに鷲三さん霧乃さ~ん。あとアレーティアも。次の奴送ったからー”

 

 “空力”で作った足場を軽やかに蹴ると、そのまま体を丸めて恵里はくるくると落ちる。体操選手のようにきれいなフォームで地面に着地すると、恵里は次の工程を担っている四人に“念話”で報告を上げた。

 

『承知! 我ら真なる影、深淵の使者に任せよ!』

 

“もちろん。私達に任せなさい”

 

“皆が用意してくれた名誉挽回の機会ですからね。ちゃんとやってみせます”

 

 “遠見”の技能を併用して空を見上げれば深淵卿となった浩介が、鷲三と霧乃が分身も込みで空を自在に駆け巡っているのが見える。“縛岩”や“縛地陣”で空に舞い上がった兵士達を十人ぐらいでひとまとめにして拘束していくのもだ。

 

“は、はいっ! 浩介さん達から受け取り次第、無力化します!”

 

 “遠見”の技能を使ってようやく見える高さに彼女の乗ったボートが浮かんでいる。かつてグリューエン大火山攻略の際に使用した、“金剛”を消して代わりに“崩軛”を付与したものに乗ったアレーティアが返事をする。そのボートを中心として六機の鳥型ゴーレムも円を描くように滞空しており、ちゃんと()()を果たしている様子だった。

 

“新たな敵兵を受け取りました。いきます!”

 

 彼女が返事をするのとほぼ同時、拘束された兵士達はボートの周囲へと行き――ボートを中心に円を描くように振り回されていく。

 

「やだぁああぁあ~~~!」

 

「やめ、ちょ、吐いちゃ――ヴぉえぇえぇえぇ!?」

 

「たかいところこわいよ~!  おがあぢゃぁぁぁ~ん!!」

 

 ――今恵里達がやっているのはリリアーナが口にした作戦、それを基に複数に作業を分担してブラッシュアップしたものだ。

 

「反逆者がぁー! 大人しく死んでろってんだよぉー!」

 

「あーうるさい。もう追加来たの?」

 

 リリアーナが提案したのはシンプルなものだ。まず全員で重力魔法を使って敵兵を空に浮かべ、加減した“震天”が出した衝撃波で気絶させる。そして“崩陸”で流砂となった地面にゆっくりと下ろすというものである。

 

「反逆者よ。このジェマ=エルドレッドの剣の錆に――」

 

「あ、邪魔。“選定” “崩軛”」

 

「きゃあぁぁぁあー!?」

 

 それを全員で一丸となって進みながら行うことで全員の負担を減らす、というのが()()だった。しかしここで全員で話し合い、作業を分けることで各々の負担を減らし、かつ複数に別れて一気に相手を攻撃できるように改良したのである。

 

「どうしたのぉ~? ボク達の相手するのが怖くなっちゃったぁ~?」

 

「お、おのれぇ……!」

 

 自分達の中で一番長けていたアレーティアは別として重力魔法が得意な数名――光輝、恵里、幸利の三人が“界穿”で直接戦場に行き、“選定”と“崩軛”で敵を無数に浮かせる。また同じ魔法を付与した何百もの時限式の爆弾も全員で協力して各地に少しずつばら撒いて被害を拡大させる。

 

「ま、ボクには関係ないけどさぁ~」

 

「ひっ!? く、来るなぁー!」

 

 そして浮かび上がった敵兵は深淵卿を発動した浩介、分身を限界まで展開した鷲三と霧乃が魔法により拘束していく。相手の動きを止めるというより単に複数人をひとまとめにするのが目的であった。

 

「“選定” “崩軛”ぅ~」

 

『ぎゃあああぁああぁ!!』

 

 十人ぐらいでひとまとめにしたものは上空百メートル辺りに浮かぶ、例のボートに乗ったアレーティア――ボートを浮かせる人員でありボディーガードとして大介、龍太郎、シア、礼一も同乗している――が受け取る。

 

 そして重力魔法を使って一定方向に()()()()()()。洗濯機のドラムを回転させるように思いっきり振り回すのだ。ちなみにこのアイデアは優花発案であったりする。

 

“皆さん、第一陣落とします!”

 

 だがアレーティアでも習得したばかりの重力魔法で、何百人単位相手にここまで器用な真似は中々出来ない。それを補助するのが滞空している鳥型のゴーレム、それの足が掴んでいるアーティファクトであった。

 

 魔晶石や量産計画で作られた神結晶全てを動員して制作されたそれは一定方向に重力魔法、ゆるやかな放物線を描くように対象を横に落とすよう重力を操作する仕組みとなっているのだ。アレーティアはゴーレムとアーティファクトを介して重力魔法を発動していたのである。

 

“恵里、そろそろそっちに着くよ!”

 

“うん! ありがとうハジメくん!”

 

 そして最後の要となっているのがキャンピングカーにバスにバイクといった恵里達が制作した車両に加え、ゴーレムの馬が引く十台の馬車だ。

 

“じゃあハジメくん、鈴。後は頼んだよ!”

 

“任せて恵里! じゃあ恵里も次の場所に行って!”

 

 地面を流砂にして柔らかくする“崩陸”を担当する人間、そしてアレーティアの手によって気絶させられ地面へと落とされた兵士達の落下速度を抑えるために重力魔法を使う人間が一人乗っている。他にも埋まった人間が窒息死したりしないよう地面を掘るなりするサポート要員が数名それぞれの車や馬車に同乗しているのである。

 

 ハジメが御者台に乗った馬車が近づいたのを確認すると恵里は“念話”と“仙鏡”を発動し、ハジメに声をかけるとすぐに今回の作戦において一番重要な人物に連絡を取る。

 

“フリード! ボクは次どこに行けばいいの!”

 

“ここからはるか西、アンカジの部隊の対処を頼む!”

 

 それはフリード、そして彼の乗るウラノスだ。どちらも“気配遮断”が付与された腕輪と首輪を身に着け、遥か上空から戦場を俯瞰して的確な指示を出す『目』と『脳』の役割を担っているのである。彼の指示に従い、アンカジの兵士達がいる場所を探していく。

 

“見つけた! ハジメくん、鈴! 後は頼むよ!”

 

“行ってらっしゃい恵里! ここは僕と鈴に任せて!”

 

“うん! 恵里は恵里のやることをやって!”

 

 馬車から伸びた光の鎖で足を絡めとられ、足からゆっくりと兵士達の塊が何百も落ちてくる。それを横に恵里は“界穿”を発動し、そしてアンカジの部隊をさっさと無力化するべく飛び込むようにゲートをくぐり抜けていった。子供達の戦いは、まだ終わらない。




色々考えてたら最終的に新世紀田植えになってしまいました。私は好きです(謎の告白)

ちなみに元は“震天”を上空で何度もブッパした後にバスやバイクで駆け抜けて、“崩陸”で地面を流砂にして全員沈めるっていう二番煎じかつ地味なものだったり。


2024/12/8 ちょっと修正しました。
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