それでは拙作を読んでくださる皆様がたに盛大な感謝を。
おかげさまでUAも220378、しおりも473件、お気に入り件数も948件、感想数も757件(2024/10/15 20:42現在)となりました。誠にありがとうございます。今更な発言ではあるのですが、こうして多くの方が拙作をちょくちょく見てくださったり、しおりをはさんでくださってると思うと感無量です。
そしてAitoyukiさん、今回も拙作を再評価してくださり誠にありがとうございます。また話を書くモチベーションをいただきました。毎度毎度ありがとうございます。
では今回の話を読むにあたっての注意点として、久々に長い(約15000字)です。では上記に注意して本編をどうぞ。
『無様よな。ポーター』
極彩色に彩られた世界の最奥、白一色に染まった世界に備えてある玉座の上にいる存在が短くつぶやく。遥か昔よりトータスの全てをもてあそんでいた存在は、心底滑稽とばかりに無数に浮かぶパネルに映った少年少女達を嘲り笑う。
『全て。全てだ。貴様らがそう動くよう我に仕向けられたにもかかわらず、我の描いた通りに動いてくれる貴様らは実に愛おしい』
それらパネルに浮かんでいる映像の多くは、自身の器となる存在を手に入れるためにこのトータスに引きずり込んだ子供達のものだ。しかしそれらもある少女のおかげで見つけた神子と比べれば無価値も同然であり、今は退屈しのぎも込みで
『しかし、この程度で死んでくれては困るぞ。たかだか千や二千の相手だろう?』
派遣した魔人族を撃退するために動くであろう子供達をなぶるため、エヒトは各地の上空に神の使徒を配置していた。ただし大雑把に指示を出したことから各地の上空にいる神の使徒の数は千から三千とかなりのバラつきがある。とはいえ本気で相手をするなと命じており、息も絶え絶えの様子の彼らを見てエヒトはくつくつと笑みをこぼしていた。
『魔人族も倒すどころか逃がして、引き入れようとした者達には蔑まれる。なんたる道化か』
エヒトは幾つものパネルの内の一つに視線を向ける。そこには神の使徒の助力によって逃げおおせた
『最悪神子が生きていればいいが、ある程度は残ってくれねばな……そうでなければ、信徒どもの祈りが強まらん』
これも全てエヒトが考えた通りだ。魔人族は愚かな子供達を引きずり出すための作戦に使われた餌でしかない。これもそれもある『目的』のために行われただけのことでしかない。とはいえここまで上手くいったことにエヒトは愉悦と同時に退屈さを感じてしまっていた。
『……あぁそうとも。我は違う。あやつなどとはな』
そんな時、ふとエヒトはあることを思い出す。引きずり込んだ子供達の中で唯一フルネームで呼んだある少女、その彼女が見せた記憶のことをだ。
『あんなものは我ではない。神子の体も満足に奪えず、神域に亀裂を入れるような惰弱などではな』
自身が神子と呼ぶ存在が『エヒトルジュエ』と名乗った時のもの、そして居城が崩れ去っていく様の二つをエヒトは思い出す。あれが自身と同じ
『我は全てを手に入れる。そう、
その上で改めてエヒトは口にする。このトータスを捨てた後はかつて子供達がいた世界を、『中村恵里がいた世界』をも手中に収めると。ひどく禍々しい決意をだ。あまりに陰惨でおぞましい決意を抱きながら、偽りの神はまた
「俺達の生活を返せー!」
「ウルの次はブルックかー!」
「死ねー! 死んでしまえー!」
太陽が地平線からほんのわずかにだけ顔を出している。今にも沈みゆく太陽から出た光は声のあらんばかりに叫ぶブルックの民衆をも照らしていた。
(……もう私達の悪評を覆すことは出来ない)
無数の神の使徒に囲まれ、使徒に煽導されたと思しき人達の中には涙を流しながら自分達を罵倒している人もいる。完全に自分達が悪だと決定づけられたことにアレーティアはどうしようもない無力感を覚えていた。
“おいアレーティア……まだ、魔力残ってるか”
“……もう、一割ぐらいしか”
血まみれになって息も絶え絶えの大介が繋いできた“念話”にアレーティアは両手でスカートを握りしめながら答える。先程出した“黒天窮”は既に消滅し、迫ってくる神の使徒からクリスタベル達と逃げるために“引天”を使いながら上級魔法も乱発した。
大介も満身創痍で浩介の分身も一人だけしか残っていないし、今は攻めてくる気配がないだけで神の使徒は依然として自分達を包囲している。完全な詰みであった。
“遠藤さん、他の皆さんの状況は?”
きっと他の皆も似たような状況だろうと思い、アレーティアは申し訳なさげに浩介を見ながら“念話”を繋ぐ。すると浩介も沈んだ声色でその問いかけに答えた。
“……悪い。他も変わらない。兵士や冒険者達をかばったり、馬鹿みたいな数の神の使徒に追い詰められて全員死にかけだ”
やはり他の仲間達も上空で待ち伏せしていた何百もの神の使徒に襲われ、追い込まれてしまったようである。これにはアレーティアも苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべるしかなかった。
(……向こうが本気で襲い掛かってこない内に逃げるしかない)
まんまと自分達は追い込み漁に引っ掛かった。このことを悔しく思いながらもアレーティアはいつ撤退するべきかを考える。
今ならばたやすく皆殺しに出来るだろうに使徒達は自分達をただ見つめるだけ。エヒトの思惑もあるにしても今は逃げる他ないとアレーティアは周囲を見渡し、ふとクリスタベル達を見て目の動きを止めた。
(……きっとクリスタベルさん達も無事じゃ済まない。漢女の皆さんも)
アレーティアが気にかかったのはクリスタベル達の安否だった。彼女? 達は浩介が傷を癒したのも自分達が襲われた一部始終も目撃している。先程から迷いを見せている漢女がチラホラいるが、神の使徒の発言がでたらめであることに気付いている人もいてもおかしくはないとアレーティアは考えている。
(……なら、“界穿”でクリスタベルさん達も連れて行くしかない。“砲皇”を放って一気に抜ければ――)
神の使徒がクリスタベル達を無事で帰すとは到底アレーティアは思えなかった。たとえ連れ去って恨まれることになっても漢女達も一緒に連れていくべきだと考え、地面下にゲートを開いて土産を置いて逃げ去ろうとアレーティアは画策していた。
「……アレーティアちゃん達、逃げなさい」
だからこそアレーティアはクリスタベルが苦しげにつぶやいた一言が理解できなかった。まさかそんなことを言ってくるとは思わず、ゆっくりとアレーティアが首を動かせばクリスタベルは微笑みながら彼女を見つめ返していた。
「なん、で……」
「どうして……なんでだよクリスタベルさん!」
「しょ、正気かよ! アンタ達だって無事じゃ済まないぞ!」
何度も口をパクパクと開きながらアレーティアは尋ね返し、大介と浩介もクリスタベルを心配して声をかけている。そして今のつぶやきが聞こえたらしい神の使徒やブルックの住民もそのことに言及してきた。
「なるほど。既にその人間は反逆者に魂を売り渡していましたか」
「う、嘘だろ……そんなの見た目だけにしてくれよ……」
「やはり……クリスタベル、お前までもか!」
「そんな馬鹿な……だ、だってクリスタベルだぞ! あいつが悪い奴じゃないって皆わかってるだろう!」
使徒だけは容赦なくクリスタベルを悪と断じたが、街の人間達の多くは彼女? をかばったり顔を見合わせて迷ってる程度だった。しかし目が血走って興奮した、神の使徒に操られている様子の住民達はしきりに非難の声を上げている。
「惑わされてはなりません」
「私達が起こした奇跡を反逆者が自分のものとしているだけです」
「そう、なのか……」
「じゃ、じゃあアイツらはやっぱり……」
「言わせておけばよぉ……っ!」
そこで神の使徒が浩介の手柄を掠めとったことで戸惑った民衆の声は一気に静まってしまう。大介の憎しみがほとばしった声に、アレーティアも心の底から同意することしか出来ない。エヒトのせいで皆無となってしまった自分達が何を言おうと
「いい加減に……しなさいっ!!」
そしてその一人、クリスタベルが声を張り上げたことにアレーティアは思わず唾を飲んでしまう。このままでは彼女? の立場が確実に悪くなってしまうからだと判断したからだ。
「く、クリスタベルさん! い、今はダメです!」
「悪いわね、アレーティアちゃん……今のあたし、ちょっと冷静じゃいられないの」
それも自分達と同類だと他のブルックの人間が、漢女達が考えかねないと思ったからである。ここで下手に魔法を使おうとしても神の使徒に止められることが目に見えてるし、逃走するための力が足らなくなる可能性もある。故に焦りながら声をかけたものの、それでもクリスタベルは言葉を紡いだ。
「そこのちょっと変わった言葉遣いの男の子がいたでしょう! あたし達以外はわからないけど、あの子が漢女の皆を助けてくれたのは事実よ! 魔物を倒してくれたのもね!」
顔のそこかしこに青筋を立ててクリスタベルは叫ぶ。自分達は悪ではない。自分達が命の恩人であると声高に訴えてくれていた。そのことにアレーティアは嬉しくなるも、クリスタベルの立場が一気に悪くなっていくのを感じて顔が青ざめてしまう。
「だ、駄目……」
「他の皆はどうなの! それともそこの女が言ったのを信じるつもり!……どっちかハッキリしろゴルゥァー!!」
そして咆哮を上げる。空気を震わせるその雄叫びにアレーティアは思わず耳を塞いで周囲を見渡せば、先程まで迷っていた様子の兵士や冒険者達も顔を見合わせるなり『そういえば……』、『そう、だよな……確かにそこの変な奴が助けてくれた』などと口々に漏らしている。
「じゃ、じゃあ使徒様が言ってることは間違いなのか……?」
「お、俺達は何を信じれば……」
「駄目! その女の目を見ないで!」
状況が好転した。故に次に相手が何を仕掛けてくるかが見えてしまい、アレーティアは叫ぶ。だが無情にもそれは叶わなかった。
「哀れな。反逆者に与して魂すら穢れましたか」
「信じてはなりません。私達の言葉こそ正しいのです」
「ぁ……れ?」
十人ほどの神の使徒達が民衆や冒険者達の方を見てすぐ、彼等の身にアレーティアが予想した通りの異変が起きる。目の焦点が合わなくなり、ぶつぶつとうわ言を漏らす。その変化をもたらす相手こそ違えどアレーティアは知っており、もうどうにもならないと判断したアレーティアは撤退するために“界穿”を発動しようとする。
「ぁぐっ!」
だがそれも神の使徒が振るった大剣でのどを半分切られたことで未遂に終わってしまう。焼け付くような痛みが首に走り、両手で傷跡を抑えながらアレーティアはその痛みを堪えようと荒い息を吐く。
「……ふーっ、ふーっ」
「アレーティアっ!!」
「アレーティアさん!」
「アレーティアちゃん!」
「無駄なことを」
「あなた達は主の駒でしかない。それを自覚すべきです」
この程度では死にはしない。だがいつもの癖で魔法の名前を口にしようものなら即座に防がれるということがわかってしまい、アレーティアは首を抑えながら悔し涙を流す。もう自分達には何もやれることが無いのかと心が折れそうになってしまっていた。
「死ね……反逆者は死ねぇー!!」
「反逆者に与する人間には死を!」
「クリスタベル、貴様も神敵だ! 絶対に殺す! 殺してやる!」
「そ、そうだそうだ! やっぱりお前達は倒さなきゃならないんだ!」
ほんの数秒で首の傷がふさがるも、それと同時に口から泡を吹きながら多くの民衆や兵士、冒険者達が敵意をむき出しにして罵倒を再開した。中には洗脳されずに済んだ人間もいる様子だが、それでも流れは自分達を糾弾する方にまとまってしまっている。
(やっぱりもう……私は、どうすれば)
やはりこの流れは止められないと思ってうつむいたアレーティアだったが、突然横から雄叫びが上がった。
「何してくれてんのよォー!!」
「あたし達もブルックの人達みたいにしようとしたのね! 最低じゃねぇかクソがぁー!!」
そこに視線を向ければ、どうやら神の使徒達はクリスタベル以外の漢女達にも洗脳を仕掛けようとして失敗していたのがわかった。全ての漢女達の顔が憤怒で染まり、荒い息を吐いて全身の筋肉を震わせながら神の使徒達を凝視しているのがアレーティアには見えた。
「みな、さん……」
「マジかよ……」
「はは……パワフルすぎるだろ」
これに驚いたアレーティアも大介と浩介と顔を見合わせ、互いに乾いた笑いを浮かべてしまう。すると自分の肩に筋肉で分厚くなった手のひらがそっと置かれたのにアレーティアは気づいた。
「アレーティアちゃん、それに大介きゅんとそこのカワイイ男の子も――あなた達が何と戦って苦しんできたか、やっとあたしも理解できたわ」
すぐ横を向けばクリスタベルが自分達に微笑みかけてくれているのがわかった。ごめんなさいね、と申し訳なさそうにつぶやいてくれただけで真実を伝えられなかったことへの後悔を、それと同時にクリスタベルが手を差し伸べてくれたことへの心強さを感じてしまう。
ここでまだ終われないと立ち上がろうとした時、クリスタベルが他の漢女達の方を向いたのに合わせてアレーティアも顔を動かす。
「最初に謝っておくわ……ごめんね皆。あたし、アレーティアちゃん達と一緒に行くわ」
『店長……』
クリスタベルの決意を聞き、アレーティアは目をわずかに大きく見開いた後でうつむいてしまう。クリスタベルの参戦は願っても無いことであるが、同時に厚かましいことも考えてしまったからだ……かつてアレーティアが王であった頃の感覚が『彼女が説得すれば他の漢女達も味方に加えられるのでは?』という冷たい計算をはじき出したせいであった。
「……クリスタベルさん、その」
だが今はそれを吞み下してアレーティアは声をかける。わずかでも味方になってくれる人間がいるのは心強い。わずかでもエヒトとの戦いで勝率を上げるに越したことはないからと恥を忍びながら。
「他の娘の説得かしら?」
「アレーティア……お前」
やはりクリスタベルには見抜かれていたようでアレーティアは言葉に詰まってしまう。すると大介がぽつりと漏らしたのを聞き、アレーティアはおそるおそる彼の方を見る。
血が抜けていささか顔が青ざめていたが彼はわずかに口角を上げていた。そして目を合わせると共にゆっくりとうなずいたのを見て、アレーティアは再度クリスタベルの方を見つめる。
「まずは、皆で逃げ出してから――」
「もう。クリスタベルお姉さまばっかりひどいわ。あたし
するとクリスタベルが何かを言う前に別の漢女が軽くすねた声色で抗議してきた。まさかと思いつつ他の漢女達の方を見やれば、彼女? 達はアレーティア達を微笑みと共に見つめ返す。
「そうよぉん。あたし達、ここにいる三人の子に二度も助けてもらってるのよん」
「あたしとアラベルちゃんは前に王国に召集された時に戦ったこともあるから三度目かしらね……何度も救ってもらってね、恩の一つも返さないなんて漢女がすたるってモンよ」
「……はいっ!」
今にも擬音が聞こえそうな力強いウィンクにサムズアップ、夕焼けの光を反射して輝く歯を見せつけるかのようなスマイル。それらと共に他の漢女も共に戦う意思を見せてくれたのだ。思わずアレーティアの瞳はうるんでしまい、目元をこすって涙をこらえた。
「やはり反逆者に魂を穢されていましたか」
「全ての愚者に死の救済を」
だがここで取り囲んでいた神の使徒達の方も動きを見せた。侮蔑の言葉と共に
「っ!? アレーティアちゃん、コレって――」
「話は後で! “砲皇”!!」
それは先程発動しようとして失敗してしまった“界穿”だった。自分達のいる地面を対象にゲートを開き、落下する形で逃げようとしたのである。言及しようとしたクリスタベルには後で説明するとしてアレーティアは風属性の上級魔法も発動した。自分達をゲートへと押し込むついでに神の使徒の攻撃を少しでも遅らせようと考えたためだ。
「全員を逃がす訳にはいきません。半分は死んでもらいま――」
全員を下に吹き飛ばす目的で放ったために骨や内臓がきしみ、脳が揺れる。だがそれでも完全に時間稼ぎは出来ず、神の使徒の双剣の切っ先がゲートをくぐったアレーティア以外の面々に迫ろうとしていた。これでも駄目かと後悔で歯ぎしりしたその時、浩介の分身が再度ゲートを超えた。
「だったら俺が死んでやるよ!!」
光の膜越しに聞こえる浩介の叫びと爆音。自爆したと気づいた時にはゲートは閉じ、幾つかの剣の切っ先がアレーティアと大介の私室に落ちる音が聞こえた。どうにか逃げ切ったことを理解すると、すぐにアレーティアは大介に飛びついた。
「大介っ! 大介ぇ!」
「わりぃ……はやく、しんすいでも、さいせいまほうでも……なおして、くれよ」
既に大介の目の焦点は合わなくなっており、肌も土気色となってしまっている。このままでは一分と経たずに死ぬ。そう直感したアレーティアは涙を流しながらも何度もうなずき、腹に出来た大きな傷口にキスをする。
「大介きゅん、死んじゃダメよ!」
「ヘレナベルちゃん! あんた治癒魔法使えたわよね!?」
「とっくにやってるわよ!……天恵よ 彼の者に今一度――」
すると漢女達も気づいたのかこちらに寄って来た。彼女? 達が自分の服を裂いて止血したり治癒魔法を使っていることにも気づくことなく、アレーティアは口いっぱいに血をすすってそれを飲み干す。
「ぷはっ――“絶象”っ!!」
大介の血液でいくらか魔力は回復できたものの、それでも足りない。その分は自分の魂を火にくべることで無理矢理解決する。そうして発動した再生魔法でアレーティアは大介の傷を全てふさいだのであった。
「すご……って、アレーティアちゃん!? 大丈夫? 平気なの?」
だがその代償はやはり大きく、すさまじい倦怠感と体のどこかが欠けた感覚にアレーティアは苛まれてしまった。大介に覆いかぶさるように倒れこむが、彼も優しく抱きしめて受け止めてくれたのであった。
「悪い、クリスタベルさん。あと他の奴らも。ちょいアレーティアも疲れちまったんだよ。な?」
大介は自分を抱えながら上半身を起こしてねぎらいと気遣いの言葉をかけてくれた。アレーティアは顔をほころばせてそのまままどろんでしまいそうになるのを堪え、荒い息を吐きながらもしなければならないことを大介に伝えようとする。
「ん……だい、すけ……みんな……すぐ、ほかのひとたちのあんぴを……」
「わーってる……なぁ皆、他にもここに逃げた俺のダチがいるかもしれねぇんだ。手分けして助けてくれ」
自分の言葉を聞いて適切に指示を出し、頭を下げてくれた大介を見てアレーティアは何度目かわからない胸の高鳴りを覚える。この人を選んで良かった、と思っているとその場にいた何人もの漢女達が声を上げた。
「わかったわ! 大介きゅんとアレーティアちゃんの頼みだもの!」
「二人一組で別れましょう! 治癒魔法は無理でも止血くらいやってみせるわ!」
すぐに役割分担をし、地鳴りのような音をとどろかせながら漢女達が部屋を後にしていったのをアレーティアも目撃する。そして気が抜けてしまったアレーティアはつい瞳を閉じてしまう。
「とりあえず俺らは休もうぜ……ちょい疲れちまった」
「……ん」
大介に手を引かれながらアレーティアも共に床に寝転がる。全員の無事を祈りながらアレーティアはまどろみに身を任せるのであった……。
「そうか……そなたらとトータスは今そのような状況か」
帝国と公国の連合軍を退け、神の使徒から逃げおおせた翌日。食堂の席で聞いた話ではメルドやフリード、ハウリア達が厳戒態勢を敷いて警戒に当たっていたものの、神の使徒が侵攻してくることは無かったらしい。食事を終え、
「……皆も似たような状況か」
「お前達もか……」
「どうにか逃げ帰ることは出来たんだけどね」
「逃げるだけならね……ホント、やってくれたよエヒトの奴はさ」
それを聞いたエリヒド王や大臣らは一様に顔を軽く伏せ、長めのため息を吐いている。また一緒に来た仲間の多くも険しい顔を浮かべたり、身を寄せ合っていたりする。恵里や大介達が心底悔し気に顔をしかめたり、幸利が腕を組んで百面相しているぐらいであった。
「……幸利、浩介は?」
「まだ部屋だよ。昨日こっぴどくやられたのがまだ堪えてるみてぇだ」
なお浩介と愛子だけはこの場におらず、話によるとラナと共に彼の自室にいるそうだ。理由こそ聞きそびれたものの、幸利が述べたように昨日の負けが相当辛かったようである。彼の部屋の前を通った際に『ごめん』と何度も言いながらすすり泣くのが聞こえたため、アレーティアも深く追求しようとしなかったからだ。
「アレーティアちゃん達なら魔王ぐらいは倒すと思ったけれど、まさか神様が相手だなんてね。でも納得よん」
そして漢女代表としてクリスタベルもこの場に同席していた。無論アレーティア達が上げた報告も、そして自分達が本当に戦う相手のことも既に彼女? は耳にしている。だが片手で口をふさぎながら『あらま』と軽く漏らした程度で、クリスタベルは自分達の話を信じてくれたのである。
「……よく受け入れられるな。俺はしばらく受け入れられなかったんだぞ」
「いい漢女ってのは察しもいいのよん♪ まぁ黒幕の正体もそうだけれど、魔人族も既に味方にしてたっていうのは驚いたけれどねぇん」
「正直化け物にしか見えん貴様の方がよっぽど受け入れがたいがな」
「何か言ったかしら? ん?」
あまりにもあっさりと真実を受け入れたことをメルドが突っ込むも、クリスタベルは胸に手を当てながらしれっと返した。なおその際フリードがボソッと何かをつぶやき、クリスタベルが顔に何本もの青筋を立てたことにフリードだけでなくアレーティアもちょっとビックリしたりしている。
「なぁアレーティア、何かあったか?」
「……大介。ん、ちょっと引っ掛かってた」
それと悩んでいたのは幸利だけでなくアレーティアもであった。皆の話を聞き、昨日から抱いていた違和感が一層強まったからだ。
(魔人族を餌にして私達を釣ったのはわかる。それで追い詰めたのも理解出来ないわけじゃない。エヒトの狙いは私だから)
それはエヒトが差し向けた神の使徒の動きであった。恵里の前世? の話、そして今もこうして泳がされていることを考えればエヒトは全ての神代魔法を手に入れた自分の体を欲しているとアレーティアは理解していた。それ故に自分はあの場で死ぬことは無かったという嫌な推測もしていた。
(大介が死なずに済んだのはホッとした……けれどもどこまで相手の意図した通りかわからない。あの言葉の通りなら何人かは死んでも問題ないということになる)
だがそれならどうして恵里達全員が死ぬ寸前とはいえ全員生環することが出来たか、こうして今も神の使徒が王国に攻め入る様子が無いことへの納得のいく理由が全然思い浮かばないのだ。
「エヒトの野郎何考えてたんだろうなー。マジで思いつかねぇ」
「ん。同感」
それだけエヒトは己の力を信じているか、それとも自分が全ての確実に神代魔法を手にするための保険として大介達を生かしたのか。或いはそれ以外の何かか。歯にものが挟まったような心地がしてアレーティアはうんうんうなっていた。
「まさか、ね」
一体エヒトが何を企んでいるのかと頭を悩ませ続けていると、不意に恵里が妙なことをつぶやいた。もしや何か思い至ったのだろうかとアレーティアも他の皆と一緒に恵里に視線を向ける。すると彼女は周りを見渡してからあることを口にする。
「いや、トータス会議のこと……って知らない奴もいるか。ま、話すよ」
彼女が口にしたのは元居た世界で開いていた対策会議のことであった。オルクス大迷宮の解放者の住処に滞在していた頃に自分は耳にしていたが、王国の人間やクリスタベルは耳にしたことが無かったはずだとアレーティアは思い返す。そこで復習感覚で話を聞き直したのがだが、その中であることがアレーティアは引っ掛かってしまう。
「……なぁ恵里、いいか」
「うん。いいよ幸利君。どうせエヒトのことでしょ」
そう。アレーティアも引っ掛かったのはエヒトのことであった。とはいえエヒトの居城は空間魔法で造ったものであろうことは宝物庫から推測が出来るし、神の使徒もフリードが手にした変成魔法で造ったものだろうとも考えている。アレーティアが気にかかったのはそれではなかった。
「あぁ……エヒトの奴がどうやって存在し続けてるかがな」
「うん……そうだね、幸利君」
幸利とハジメが言及したようにアレーティアも気にしたのはエヒトがどうやって自身の存在を維持しているかだ。恵里の前世? とそれに関して色々話し合った会議では『エヒトは幽霊のようなもの』という予測が立っている。これはアレーティアも真実だろうと考えていたが、それでも不可解なものがあった。魂を維持するために『何』を費やしているかである。
「そこが気になってたんだけどさぁ……ねぇ、魂魄魔法の実験のこと、覚えてる?」
一体何を費やしているのかとアレーティアも考えていた矢先、恵里があることを口にした――その瞬間、アレーティアの中で
「……中村さん、まさか」
「そのまさかだよ。アレーティア……じゃあ改めて確認するよ。魂魄魔法の真髄って何だったっけ? 龍太郎君?」
どうやってエヒトは今まで存在し続けていられたか、そして今回どうしてこんな中途半端な真似をしたのか。
声をかけた恵里は軽く瞳がにごっており、おそらく自分と同様の答えにたどり着いたことがうかがえた。そのせいで確信を持ってしまい、頭の中で怒りと悔しさが爆発してアレーティアは無性に髪をかきむしりたくなってしまう。
「いや俺かよ……えっと、魂とか意識、後は体の中の魔力とか電気……あっ!」
――人間族の祈りを変換し、自身を維持する力にしている。
つまり今回わざわざ魔人族を出し、自分達を神の使徒が撃退したという流れを用意した理由もまた『トータス全土にいる人間を信仰に傾倒させ、ひたすら祈らせて力を蓄える』ためであったと。
『あ゛ーっ!!!』
魂魄魔法の真髄の一部を口にした龍太郎だけでなく、それを知っていた皆が一斉に大声を上げるのをアレーティアは目撃した。
「……またやられたよ、エヒトの奴に」
「「“鎮魂” “鎮魂” “鎮魂”っ!!」」
「っだぁー!!! マジか! そんなののために俺ら突き合わされたってか!」
「だけどこれで理解出来たな……エヒトの奴、自分の魂を強化するためにクソみたいな茶番を仕掛けたってこった」
荒い息を吐き、目がすわった状態のハジメに即座に恵里と鈴が“鎮魂”を使った。大介だけでなく礼一や信治、良樹も大声を上げたり髪の毛をかきむしり、地団駄を踏むなどして怒りをあらわにしている。そして幸利は心底疲れた様子でため息を吐くと、アレーティアも出した結論を口にした。
「噓でしょぉ~……それだけぇ~? そんなことで私達もトータスの人達もめちゃくちゃにしたのぉ~……」
「あ゛ー、最悪!!! こんな勝手な理由でエリ、スズ、それに私達の人生めっちゃくちゃにして!」
他の皆も顔が土気色になったり、真っ赤になったりと心の中が荒れ狂っているのが見て取れる。
「……ハァ」
自分と同様に荒れた皆を見て少しだけアレーティアも落ち着けたものの、それでも胸のムカつきはまだ収まりそうにない。しかしここで怒ってもどうにもならないとアレーティアは大介が作ってくれたお守りを取り出し、付与された“鎮魂”を自分に発動し続けて心を落ち着かせようとする。
「ど、どういうことなの? アレーティアちゃん達が神代魔法を手にしたことは知ってたけど……」
「……それに関しては俺が説明する」
この場で唯一魂魄魔法の真髄を知らないクリスタベルにメルドが説明する中、気持ちがいくらか落ち着いたことでアレーティアは長めのため息を吐いた。そしてまだ冷静になれない皆のためにもエヒトの狙いを明確にし、どのようにこの茶番を仕掛けて来たかの整理を始める。
(……まず大介達を、そして私も世界の敵として扱った。そうすることでエヒトはトータス全土で危機感を煽った)
恵里達を神敵とし、人相書きがブルックの街に広まるレベルまで情報が行き渡らせた。そうすることで民衆の危機感を煽り、またその時点では神の使徒として扱われていた重吾達にすがらせる。
(次は教皇……確かイシュタル、が騙していたと嘘を世界に広めて一層追い詰めた)
その次はイシュタルが魔人族と通じていたと嘘を吹聴し、更にトータスの人間達を絶望に追い込んだ。ただ、あまりにも行き当たりばったりではないかとアレーティアは感じており、もしかしたらその場の思い付きではないかと邪推する。
(本当に何もかもがエヒトの思い通り……っ)
ともあれこれでトータスに住まう全ての人間がパニックに陥っていた。再会したキャサリンとクリスタベルの様子や、かつてのフューレンの大捕物を思い出してエヒトの目論見通りであることにアレーティアの心は一層ささくれ立つ。
(そして今回の罠……きっとエヒトは神の使徒を使って狂信に走るようそそのかすはず)
最後に昨日の謀略のことをアレーティアは思い浮かべる。その上でどのように動くかを自分なりに考え、その答えを出す。そうすることで自身の魂を強化し、神殺しの概念魔法にすら耐えられるようにするのではないか。吐き気を催す答えに至り、アレーティアは深い溜息を吐く。
「……なるほどね。事情はわかったわ」
そんな時、クリスタベルがパンパンと手を叩きながらこちらに声をかけた。彼女なりの気遣いなのだろうがアレーティアは苛立ちを感じ、また他の皆も険しい目つきや淀んだ瞳を彼女? に向けているのが見えた。
「まぁ皆が荒れるのもわかるわ……でもね、それは私だって同じよ」
そうして自分達を気遣う言葉をかけた後、ギュッと音を立てながらクリスタベルが両手を握る。こめかみが浮かぶほど歯も強く噛みしめており、あちらも怒り心頭であることはアレーティアもわかって少し怒りが和らいだ。
「あたしのブルックを、そこに住む人達を操って滅茶苦茶にしてくれた。それがトータスのそこかしこで起きているんでしょう?……そこまでやられて落ち着いてられるほど、こちとら呑気じゃないのよ」
自分達に勝るとも劣らない怒りを露わにしたクリスタベルを見て、アレーティアの中にある怒りも更に沈火する。彼女? もまた自分と同様にエヒトに何もかも狂わされた同士であると理解できたからだ。
「私も戦うわ。アレーティアちゃん達と一緒にね」
目を少し細め、口元がヒクついていることからエヒトに対する怒りを堪えているのが嫌と言う程わかる。クリスタベルの怒りは本物だと、絶対にエヒトを倒すために戦ってくれるとアレーティアは確信する。
「あぁでも他の漢女の子達は事情を話して、それでもついて来る子だけにしてちょうだい。流石にこんな戦いに覚悟も無い子を巻き込むなんて出来ないわぁん」
「……わかりました。お願いします、クリスタベルさん」
その後で語った話を聞いて確かにと思いつつ、アレーティアは頭を下げた光輝と握手する二人を見つめる。勝てる見込みのない戦いであっても、参加する意思を見せてくれる人がいることに確かな心強さをアレーティアは感じていた。
「ふふっ。あなたも大介きゅんや龍太郎きゅんに負けず劣らずイイ男ねぇん♥ 嫌いじゃないわぁん♥」
「い、いや、その……あ、あはは……」
……それはそれとして、力強いウィンクをしながら光輝を評価するクリスタベルを見てアレーティアも軽く苦笑いをしてしまう。
彼女? がいい人なのは違いないのだが、初対面の相手には刺激が強すぎる。現に光輝だけでなくハジメや幸利ら、メルドにフリードも軽く後ずさっている。あと雫がちょっと涙目で体を震わせながらも刀を抜こうとしていた。
「あー、クリスタベルさん。俺の親友のことあんまからかわないでやってくれよ……とりあえず、話し合いしねぇか?」
そんな微妙な感じになってしまったこの場の空気を龍太郎が壊してくれた。光輝とクリスタベルの間に入り、話し合いを提案してくれたことで空気が変わったからだ。短く息を吐くと、アレーティアは龍太郎に感謝を伝えながら流れに乗る。
「ありがとうございます坂上さん……じゃあ今の私達に何が出来るか。そのことを話し合いましょう」
そうしてアレーティア達は今後の動きについての会議を始めるべく、イスやテーブルをその場に用意していく。偽りの神ごときにこのまま負けてたまるかと戦意をたぎらせながら――。
「さぁ行っとくれよ」
キャサリンは自室の窓を開け放ち、伝書鳩を外へと出す。ハイリヒ王国の方へと向かっていくのを確認してから窓を閉め、左手の指輪をそっとなでた。
(いくら神様だからってね、やっていいことと悪いことってもんがあるよ)
胸の内に静かに燃え盛る怒りを抱えながらキャサリンは心の中でつぶやく――魔人族の襲撃の際、手足の不自由な老人や怪我人を治療したりなだめるためにキャサリンは教会にこもっていた。
(アレーティアちゃん達を傷つけただけじゃない。あたしのアダムを考えなしの宗教狂いにしてくれた……そのツケは絶対に払わせてやるよ)
その後程なくして
(あの人はこんな状況で馬鹿げたことなんてしない……ホント、アレーティアちゃん達がいなかったら心が折れてただろうね)
またその時から夫であり町長であるアダム・ウォーカーも豹変してしまったのもキャサリンは見てしまった。あの後エヒト信仰のために豪奢な祭壇を街の真ん中に造るよう指示を出したのだ。
こんな意味のわからないことに街の三割の住民も賛同していたことにもキャサリンは困惑を隠せなかった。けれども今ここでやるべきことじゃないと説得をしようとした時、憎悪のこもった眼差しをアダムはキャサリンへと向けたのである。故にキャサリンは目が覚めてしまった。
(表面上は従ってやるさ。でもね、あたしにはアレーティアちゃん達が、あの子の友達がいる。必ず目にもの見せてやるからね)
今ここで抗うべきではないと察してキャサリンも馬鹿のフリをし続けている……今はただ機会をうかがい、全てをひっくり返せるための布石だけを打ちながら。
「申し訳……申し訳ありませんイルワさん……!」
「気にしないでくれ、ウィル。今回ばかりは仕方ないさ」
そして反旗をひるがえす機会を待っているのは一人だけではなかった。
「ですが父上もママも……ウィルさんが裏切ったなんて言うはずが……」
魔人族の襲撃があったその晩、神の使徒と名乗る女達が、そしてクデタ伯爵を含む貴族達が『反逆者達は再度裏切った』と述べたことがきっかけでイルワと保安署の署長は退陣を要求されたのである。
「過ぎた事だよ、ウィル。それに私達も嘘をついていたんだ。信用できないと言われてもしょうがないことさ」
かつてフューレンに巣食った裏組織摘発の際に反逆者を引き込んだことを追求され、民衆の間で不安と不満が膨れ上がってしまう。このままでは暴動が起きかねないと判断し、後々混乱が起きないよう退職と後任のための様々な手続き進めていたのである。
「でも……!」
「いいかいウィル」
ペンをペンスタンドに戻し、書類を手に取ったイルワは事務用の机から離れる。未だ申し訳なさげに自分を見つめていたウィルに微笑みかけ、すれ違いざまに彼に耳打ちする。
「私はまだあきらめてはいないよ。全てね」
ウィルの顔が一瞬で青ざめたことにも気づかぬまま、イルワは執務室を後にする。そして必要な書類を事務員に手渡し、彼らから惜別の言葉をもらいながらイルワはギルドを後にしようとする。
(さて、ここからは賭けだな。取り壊しの前に誰か一人でも訪れてくれるかどうかだ)
歩いて行く先はメアシュタット水族館。そこで恵里達一向が自分と接触しに来てくれることに賭けたのである。だがギルドを出た直後、何者かに首根っこを掴まれてしまい、イルワは路地裏へと引きずり込まれる。
(迂闊だった……! ここまで早く始末に来るなんて――)
今の自分が下手に護衛を連れて出ては余計な反感を買うし、意図を読まれる可能性があった。そのためあえて一人で出たがそれがすぐに裏目に出るとは思ってもいなかったのである。
「申し訳ありませんイルワ支部長。商業ギルドのザックです」
読みの甘さをイルワは心の底から悔い、次に何が起きるかを覚悟していた。だが覚えのある声を聞いて振り向けば、そこには自分と一緒にフューレンのために動いてくれた人間がいたのである。
「悪いな支部長。商業ギルドのマスターからの依頼でな」
「馬車を用意しました。メアシュタットがまだ無事なら中村様がたもすぐ来られるでしょう……恥知らずではありますが、彼女達の力添えを得たいのです。ご一緒願えますか?」
そのザックの隣には前にウィルの護衛につけたゲイル達がいて、彼らもイルワに向かって笑みを向けていた。またすぐ近くにはつぎはぎの布を張った馬車があり、これで移動しようということかとイルワは察する。
(どうする。グウィンギルドマスターが私を売り飛ばすとは考え難い。となれば……)
もしかすると罠かもしれないと一瞬イルワは疑ってしまったが、仮にここで自分を罠にかけたところで恵里達の怒りを買うぐらいだと推測する。それにグウィンがそんな姑息な真似をするとは思えず、またここで迷うよりもすぐに動くべきだとイルワは考え直す。
「頼もう。一刻も早く恵里君達に状況を伝えないとね」
「えぇ。ようやく立て直せそうになったフューレンも……いや、トータス全てが終わります。急がなければ」
そして生つばを飲みながらザックの差し出した手をイルワは取り、彼らと共に粗末な馬車に乗り込んだ。程なくして馬車が動き、反逆者と呼ばれた子供たちに譲った水族館へとゆっくりと進んでいく……反逆者は確かに数を増やし、偽りの神の支配に抗おうと暗躍しているのであった。
実は恵里達がハイリヒ王国の混成軍に勝ってからはずーっとこのためだけに盤上を動かしてました。マジ迷惑(軽っ)
あと某Sさんすいません(土下座)
よくよく考えなくてもガッツリネタが被りました……。